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ロン・フォスターの統率者日記
第2回:新しいデッキを作ってみよう!
読者の皆さん、こんにちは! つい先日発売された最新セット『エルドレインの王権』、楽しくプレイされているかと思います。今回の記事では、その顔と言える「騎士」についてお話したいと思います。
騎士というクリーチャータイプは、欧州の神話や歴史から大きな影響を受けているマジックでは古くから存在していて、最初に発売された『アルファ版』に入っている《白騎士》と《黒騎士》がその代表と言えます。(お互いの色のプロテクションを持っているため、戦場で直接対決できないのが皮肉なところですが。)その後に出たセットには騎士はそれなりに入ってはいますが、『エルドレインの王権』まではこの部族がメインになったことはありませんでした。エルドレインに向けてか、去年の『ドミナリア』以降のセットには騎士がより多く入っていて、今ではこの種族がかなりパワーアップしています。今注目を集めているということで、今回のテーマにしてみました。
先ほどお話しした最初のセットの前例に従って、騎士はこれまで主に白と黒でしたが、エルドレインではアーサー王伝説というテーマに合わせ、この部族はすべての色に登場しています。5色で組んでみるという手はありますが、多くのカードのコストに色マナが複数含まれているのでバランスが心配です。それに、このセットでは青と緑に騎士が加わっているもののサポートがあまり無いので、カードプールが豊富な白と黒にすることにしました。
競技フォーマットには、マジックの黎明期から「ウィニー」というデッキがあります。英語の「チビ」という単語から由来している呼称で、相手が対応しきれないほど小さいクリーチャーをどんどん並べてエンチャントなどで補強して相手を押し倒す、というのがこういったデッキの戦略です。そして、赤のゴブリンや緑のエルフもありますが、やはりこの手のデッキの代表的クリーチャーといえば、《白騎士》が入っている「白ウィニー」と《黒騎士》が入っている「黒ウィニー」です。初期のころから、これ以上コスト・パフォーマンスが良いクリーチャーはなかなか無いので、現在に至っても人気は衰えません。
このまま白黒ウィニーを統率者に転用してもいいかも知れませんが、それだとあまりパッとしない気がします。白黒で組むなら、《ウィンドグレイスの騎士、アルイェール》が統率者の候補としてすぐ思い浮かびます。
シナジーは確かにあるけれど、『ドミナリア』が発売された当時よくブロールの統率者として使われていたし、騎士デッキを組むのにはありがちすぎる感じです。他に使えそうなクリーチャーは無いかな……
いや、待てよ。『エルドレインの王権』の設定はおとぎ話や伝説に着想を得て、カードを通して王室のことや世界の様相を語っているじゃないですか。その発想をデッキ構築に活かして、ひとつの物語を作ってみるのはどうか? 騎士と言えば、お城が連想されますよね。《白騎士》と同じ『アルファ版』に《城壁》があるじゃないですか。で、お城に住んで騎士を統治するのは貴族ですから……統治……貴族……あ!多人数戦に持って来いの「統治者」のキーワードがある《マルチェッサ女王》だ!
よーし、見えてきたぞ。このデッキのテーマは「騎士がお城に住む女王様を守る」で行こう! で、騎士は王族を守ったり冒険したりするのに鎧と剣が不可欠だから、装備品カードも入れないと。そんなわけで、最終的にはこんなデッキが出来ました。
3色に絞っても、使える騎士・カードは300枚以上あるので選び出すのが非常に難しかった。まず、テーマに沿って、いくら強くても《アッシェンムーアのしもべ》や《死体騎士》みたいな、人間でない騎士は無しとしました。あと、残念ながら、3色デッキなので『エルドレインの王権』の新能力「一徹」はデッキに合っていないので、あえて却下しました。
とは言っても、絆魂を持つ《夜の騎兵》とエンチャントが再利用できる《暁の騎兵》は必要とする色マナの数が厳しくてもデッキの弱点をカバーしてくれるので入れてみました。こうして新しいカードを選択しながら、《Lim-Dul's Paladin》や《ザルファーの聖戦士》など懐かしいカードも使えるのが嬉しいところです。
一見、《輝く炎のコルバス》はデッキのテーマに合わないように見えるかもしれませんが、騎士の物語にドラゴンはよく出てくるし、彼が騎士・クリーチャーに与える追加能力は捨てがたいです。ドラゴンだって、たまには敵ではなく味方になってもいいじゃないですか?
騎士は単独でも同じマナ・コストのクリーチャーと比べてかなり優秀ですが、特に緑の相手に対して苦戦が予想されるので、エンチャントや装備品で強化したいところです。騎士というテーマにまさに最適な名前で、戦場に大きい影響をもたらす《真実の確信》はクリーチャーベースの白いデッキの常備品です。《一枚岩の努力》で、騎士の持つ能力を全体に共有できます。《聖なる秘宝の探索》で、騎士に相応しい冒険をさせてから聖剣を手に入れさせましょう。
全体除去がよく飛ぶ統率者戦ですとクリーチャーが墓地に送られるのが必然ですので、戦力がなくならないように《定員過剰の墓地》を使って戦況に合わせてクリーチャーを選んで手札に戻します。《鎖鎌》はあまり見かけない装備品ですが、パンプ能力(※1)は先制攻撃を持つ騎士と相性がすこぶる良いだけではなく、ブロックで誘発される効果は相手の全軍を絶滅させることが可能です。《火と氷の剣》は騎士にない「プロテクション(青)」を与える他、このデッキの短所のひとつである弱いカードドローを補充してくれます。同じように、《筋腱と鋼鉄の剣》は「プロテクション(赤)」を与えながらプレインズウォーカー除去にもなりますので、強力な助太刀(おい)となるでしょう。
※1:パンプ能力とは、マナを支払いさえすればクリーチャーのパワーかタフネス、あるいは両方が増える起動型能力です。代表的なカードは《炎のブレス》と《凍てつく影》。
最後に、土地を見てみましょう。今回のデッキは3色ですから、フェッチランド(※2)や2色以上のマナが出る土地は大事です。基本的にウィニーデッキですので展開が遅くならないようタップイン土地(※3)はほとんど使っていません。言うまでもなく、このどちらかの条件にぴったり合うのが『エルドレインの王権』に入っている《試合場》です。部族デッキには《祖先の道》が不可欠です。色マナの調整ができる上、占術能力のおかげでドローの調整もできます。
※2:フェッチランドとは、他の土地カードをライブラリーから探し出すカードのことです。基本土地しか探し出せない《進化する未開地》や、「沼」か「山」など特定の土地タイプを探し出す《血染めのぬかるみ》みたいなものがあります。
※3:タップインランドとは、タップ状態で戦場に出る土地のことを指します。《血溜まりの洞窟》などがあります。
続いて、白と赤は本来カードを引く能力に欠けているので、それを補填するため《オラーズカの拱門》と《ロークスワイン城》でカバーします。
《ならず者の道》は名前からするとあまり騎士らしくないかもしれませんが、とどめを刺すのに便利ですし、他のプレイヤーから統治者を奪い返すのに使えます。加えて《ならず者の道》は、自分が攻撃すると他の攻撃クリーチャーが強くなるけれど自分が弱いままなのですぐ死んでしまう《Marton Stromgald》とも相性がいいです。
《霧覆いの平地》は装備品やエンチャント、クリーチャー以外のパーマネントを墓地から戻すのに使えます。《七曲がりの峡谷》はクリーチャーデッキによく使うカードで、クリーチャーがすぐ攻撃できるように相手のターン終了時に使う他、戦闘中にブロッカーを増やすこともできますが、もっとも有効な使い道は青のプレイヤーが《サイクロンの裂け目》を唱えたあと起動すれば自分の場をより早く立て直せるところです。
《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》を入れている理由は、ほとんど《聖戦の騎士》をでかくするためです(笑)。もしお持ちであれば、遊び心でこのデッキに《Mountain Stronghold》みたいなカードを入れてみたいですよね。
今まで、統率者戦をやってきていろんなテーマデッキを見てきました。エヴァンゲリオンやガンダム、スターウォーズ、アベンジャーズなどアメコミ、「デューン/砂の惑星」みたいな小説までをデッキで再現しようとしている人と対戦したこともあります。いろいろなデッキを創造できる統率者戦なら、強いカードを並べるだけではなくこんな遊び方もできます。今度デッキを組むとき、あなたも自分独自の物語を作ってみてはいかがでしょうか?
最後にお知らせです。マジックフェスト・名古屋2019の「コマンド・ゾーン」に、ゲストとして参加します。
マジック・フェスト名古屋のスペシャルゲストの情報を公開しました!
— BIG MAGIC (@MtgBigmagic) October 5, 2019
Command Zoneで彼らを見つけて、一緒にゲームをプレイしましょう!https://t.co/4ZvmIZoM2x#mtgjp #MTGNagoya pic.twitter.com/WDjUDzh4BL
会場で皆さんをお待ちしていますので、ぜひみなさんも統率者のデッキを持って遊びに来てくださいね。
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