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ロン・フォスターの統率者日記
第1回:はじめまして
読者の皆さん、こんにちは! 月2回ほど統率者の新しい連載コラムを書かせていただくこととなりましたロン・フォスターです。このサイトをご覧になっている方の中には、私の名前に見覚えのある方も大勢いらっしゃるかと思いますが、改めて自己紹介をさせていただきたいと思います。
自己紹介
私がマジック:ザ・ギャザリングと出会ったのは1993年、マジック自体の発売直後です。同じゲーム好きの友人に「アメリカでこのファンタジーのカードゲームがものすごく流行っているみたい」と勧められて、スターターデッキを1個もらいました。マジックプレイヤーならよくある話ですね。
それをきっかけにマジックにはまって、グランプリ・東京(1997年開催)で認定ジャッジになり、国内外でのグランプリをはじめとし、プレリリース、地区予選、日本選手権、当時の大陸選手権までジャッジをやり、2000年にアメリカに引っ越してウィザーズに日本イベント担当として入社しました。そのあと2003~2006年には日本に戻ってウィザーズの東京支社設立のお手伝いをしてから、今度はアメリカに帰って日本イベント担当からグランプリ(現在ではマジックフェスト)のマネージャーを務めることになりました。国内のグランプリ会場によくいらっしゃる方なら、私を見かけたことがあるかもしれません。
ウィザーズにいる間、統率者を含めいくつかのエキスパンションの開発やプレイテストにも関わりました。去年の秋ウィザーズを離れましたが、引き続きマジックに埋没する日々が続いています。
「統率者」という遊び方を初めて知ったのは、2004年に日本で行われたプロツアー(神戸)だったと思います。そのころ、統率者はジャッジの間で流行っていて、国際大会があるたびに皆がデッキを持って遊ぶようになっていました。
ある日大会が終わった後、本戦のところでワイワイと楽しそうにしているジャッジとウィザーズ社員がいて、近くまで行ってみると、マジックをプレイしてはいるけれど、見たことのないようなマジックだったのです。
デッキの厚さが倍ぐらいあって、パーマネントが数えきれないほど戦場に出ていて、しかも1対1でなく複数人でやっている。隣で見ていたジャッジにルールの説明を聞いてゲームを見ていたら面白そうなので、次のプロツアーまでに自分でデッキを組んでやってみることにしました。その最初のデッキの統率者は『レジェンド』の《Boris Devilboon》で、神河の鬼や悪魔カードをたくさん入れていたやつでした。
《Boris Devilboon》
{3}{B}{R}
Legendary Creature - Zombie Wizard
2/2
{2}{B}{R}, {T}: Create a 1/1 black and red Demon creature token named Minor Demon.
--
(カード仮訳)
〈悪魔の寵児ボリス〉
伝説のクリーチャー ― ゾンビ・ウィザード
2/2
{2}{B}{R}, {T}:「下級悪魔」という名前で黒であり赤である1/1のデーモン・クリーチャー・トークンを1体生成する。
バランスが悪くてあまりいい出来とは言えなかったのですが、フォーマットの多様性と創造性に魅かれてデッキをドンドン組むようになって、そのうち統率者戦ばかりやるようになりました。そして最近、「統率者諮問委員会(Commander Advisory Group/CAG)」の一員に選ばれました。
このコラムでは、私がアメリカで毎週プレイしている統率者リーグの出来事や、そこで使われているデッキの紹介(自分だけではなく他の人が使っている面白いデッキも)、CAGのメンバーとしての考えなどを書いていきたいと思います。今週は、まず最近お気に入りのデッキをひとつピックアップします。
今回の紹介デッキ:「キイェルドーの背信者、ヴァーチャイルド」
1 《キイェルドーの背信者、ヴァーチャイルド》
-統率者(1)- 29 《冠雪の山》 1 《血に染まりし城砦、真火》 1 《忘れられた洞窟》 1 《薄煙の火口》 1 《ガイアー岬の療養所》 1 《戦の大聖堂》 1 《海の中心、御心》 1 《ならず者の道》 1 《占術の岩床》 -土地(37)- 1 《巡礼者アシュリング》 1 《ゴブリンの外交官》 1 《Varchild's War-Riders》 1 《ずる賢いゴブリン》 1 《Barbarian Guides》 1 《ゴブリンの密偵長》 1 《特務魔道士ヤヤ・バラード》 1 《ゴブリンの太守スクイー》 1 《砕岩を食うもの》 1 《卑血の芙巳子》 -クリーチャー(10)- |
1 《彩色の宝球》 1 《豪奢の呪い》 1 《信仰無き物あさり》 1 《マグマの洞察力》 1 《破壊放題》 1 《頭蓋骨絞め》 1 《太陽の指輪》 1 《旅行者の護符》 1 《安堵の再会》 1 《冷鉄の心臓》 1 《地震》 1 《終わりなき地図帳》 1 《吠えたける鉱山》 1 《稲妻のすね当て》 1 《ミジウムの迫撃砲》 1 《余韻》 1 《ストリオン共鳴体》 1 《速足のブーツ》 1 《魔学コンパス》 1 《野生の勘》 1 《混沌のねじれ》 1 《ダークスティールの板金鎧》 1 《Glacial Crevasses》 1 《軍族の雄叫び》 1 《舞台照らし》 1 《溶岩震》 1 《ほとばしる魔力》 1 《清純のタリスマン》 1 《反動》 1 《寺院の鐘》 1 《不安定なオベリスク》 1 《稲妻曲げ》 1 《炎の職工、チャンドラ》 1 《礼儀妨害》 1 《移ろいの門》 1 《神話の水盤》 1 《ギラプールの宇宙儀》 1 《面晶体の記録庫》 1 《未来を点火》 1 《発火の力線》 1 《別世界の大地図》 1 《前哨地の包囲》 1 《海賊の略奪》 1 《野生の跳ね返り》 1 《妖術師の衣装部屋》 1 《破滅の刻》 1 《無道の競り》 1 《マナ噴出》 1 《炎呼び、チャンドラ》 1 《絶滅の星》 1 《頭目の乱闘》 1 《冒涜の行動》 -呪文(52)- |
《Barbarian Guides》
{2}{R}
Creature - Human Barbarian
1/2
{2}{R}, {T}: Choose a land type. Target creature you control gains snow landwalk of the chosen type until end of turn. Return that creature to its owner's hand at the beginning of the next end step. (It can't be blocked as long as defending player controls a snow land of that type.)
--
(カード仮訳)
〈蛮族の案内人〉
{2}{R}
クリーチャー ― 人間・バーバリアン
1/2
{2}{R},{T}:あなたがコントロールしているクリーチャー1体を対象とする。土地タイプを1つ選ぶ。ターン終了時まで、それは選ばれたタイプの氷雪土地渡りを得る。次の終了ステップの開始時に、それをオーナーの手札に戻す。(防御プレイヤーがそのタイプの氷雪土地をコントロールしているかぎり、それはブロックされない。)
《Varchild's War-Riders》
{1}{R}
Creature - Human Warrior
3/4
Cumulative upkeep-Have an opponent create a 1/1 red Survivor creature token. (At the beginning of your upkeep, put an age counter on this permanent, then sacrifice it unless you pay its upkeep cost for each age counter on it.)
Trample; rampage 1 (Whenever this creature becomes blocked, it gets +1/+1 until end of turn for each creature blocking it beyond the first.)
--
(カード仮訳)
〈ヴァーチャイルドの戦場の騎手〉
{1}{R}
クリーチャー ― 人間・戦士
3/4
累加アップキープ ― 対戦相手1人は赤の1/1の生存者・クリーチャー・トークンを1体生成する。(あなたのアップキープの開始時に、このパーマネントの上に経年カウンターを1個置き、その後、これの上にある経年カウンターの個数だけアップキープ・コストを支払わないかぎり、これを生け贄に捧げる。)
トランプル、ランページ1(このクリーチャーがブロックされた状態になるたび、ターン終了時まで、これはこれをブロックしている2体目以降のクリーチャー1体につき+1/+1の修整を受ける。)
《Glacial Crevasses》
{2}{R}
Enchantment
Sacrifice a snow Mountain: Prevent all combat damage that would be dealt this turn.
--
(カード仮訳)
〈氷河のクレバス〉
{2}{R}
エンチャント
氷雪山を1つ生け贄に捧げる:このターン、与えられる戦闘ダメージをすべて軽減する。
なぜこのデッキ?
なぜ、このデッキを組んだのか?
赤はドラゴン以外のクリーチャーが弱いうえに、対象を取り1対1交換の効果を持つ呪文が多く、私の周りでは古くから多人数戦で一番使いにくいとされてきた色でした。その考えをひっくり返したいという思いが、このデッキに込められています。
このデッキのプレイスタイルですが、まず《キイェルドーの背信者、ヴァーチャイルド》を早く召喚して対戦相手を順番に殴って、生存者・トークンを生み出して戦闘を促します。ここでのポイントは、同じプレイヤーをあまり殴らず、警戒させないことです。それに、周りから攻撃を受けないようにカードドローやマナ加速をもたらす効果のカードを並べて自分の脅威レベルを低くします。生存者以外のクリーチャーから攻撃を受けないように、火力か濃霧効果(※)のある《Glacial Crevasses》を使います。あるプレイヤーが有利な立場になったら、《豪奢の呪い》を出して攻撃の的にします。そして、タイミングを計って、ヴァーチャイルドを戦場から退場させて生存者のコントロールを得て相手に一気に迫り込むか、《反動》を張ってから《ミジウムの迫撃砲》か《絶滅の星》を打って大勝負に出る。(この前、この方法を使って対戦相手1人になんとダメージ400点を与えて勝ちました。)
※:「濃霧効果」とは、戦闘ダメージを軽減する効果のことです。名前の由来は、『アルファ版』から基本セットに収録されていた《濃霧》です。
《囁き絹の外套》か《ならず者の道》を使ってヴァーチャイルドはブロックされないようにして、統率者ダメージで勝つという手もあります。それから、例えば《炎の職工、チャンドラ》の[-7]能力と組み合わせて《マナ噴出》を巧く使えば、すごいことができます。
このデッキには、最近マジックを始めたプレイヤーの中にとって初めて目にするカード名があるかもしれません。それが、ローテーションの無い、歴代のカードが使える統率者というフォーマットの醍醐味のひとつで、新しいプレイヤーを魅了するところです。いろいろなところで、いろいろな人と対戦していれば、常に新しいカード、新しいデッキとの出会いが待っています。
デッキを新しく組むときの私の方針のひとつは、発売された当時でもあまり使われなかった、評判が良くなかったカードを少なくとも1枚入れることです。このヴァーチャイルド・デッキの場合、その役目を果たしているのが、エキスパンションとしては初めて日本語化され、1996年に発売された『ミラージュ』に収録されていた《無道の競り》です。
《無道の競り》
{3}{R}{R}
Sorcery
Each player may bid life for control of target creature. You start the bidding with a bid of 0. In turn order, each player may top the high bid. The bidding ends if the high bid stands. The high bidder loses life equal to the high bid and gains control of the creature. (This effect lasts indefinitely.)
--
(ルールテキスト仮訳)
{3}{R}{R}
ソーサリー
クリーチャー1体を対象とする。各プレイヤーはそれぞれ、それのコントロールにライフを入札してもよい。あなたは0点の入札から競りを始める。ターン順に、各プレイヤーはそれぞれ、最高値よりも大きい数を入札してもよい。最高値が確定したならその競りは終了する。最高値入札者は最高値に等しい点数のライフを失い、そのクリーチャーのコントロールを得る。(この効果は無期限に残る。)
これはなかなか楽しいカードで、赤の呪文では珍しく、クリーチャーのコントロールを一時的ではなく永遠に奪うことができる効果のあるカードです。ただし、自分がコントローラーになるとは限りません(笑)。結果はどうであろうと、このカードが使われたゲームはプレイヤーの皆さんの記憶に残るでしょう。同じ趣味を持つ人と楽しい時間を過ごして共通の思い出を作ることこそが、ゲームをやる一番の目的だと思います。
『エルドレインの王権』
さて、新セット『エルドレインの王権』が発売されました。このデッキに入るカードはあるでしょうか? リストを見てみると、すぐに目に入るのが《勇敢な騎士、カラ卿》ですね。
ライブラリーの上から呪文をただで唱えるテーマが含まれているこのデッキに能力がピッタリですし、戦闘・火力呪文以外で相手に少しずつダメージを与えることもできます。
《切り離す一撃》はマナ・コストがちょっと高いけれど、魅力的です。そして、どうせ7マナかかる呪文を入れるなら、《アイレンクラッグの妙技》も入れてもいいかもしれません。
どちらかのチャンドラを抜いて《不敵な火花魔道士、ローアン》を使えば、奥義で一発勝負に出る夢が見られます。
アーティファクトの方を見ると、一番使えそうなのはマナ加速をしながらヴァーチャイルドの戦闘能力を高くしてくれる《紋章旗》です。《伝説たちの秘本》もこのデッキと相性が良さそうです。
皆さんも次回の対戦に備えて、今まで「使いにくい」と思ってきたカードを使って新しいデッキを組んで、周りのプレイヤーたちをあっと言わせてみてはいかがでしょうか?
今後また新しくデッキを紹介したり、統率者を遊んだコミュニティのことを紹介していく予定です。それではまた、次回のコラムでお会いしましょう。次回は『エルドレインの王権』のカードを中心に据えたデッキを紹介する予定です。お楽しみに!
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