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お知らせ
2024年6月6日 パウパー禁止告知
2024年6月6日
やあみんな! マジックのデザイナーにしてパウパー・フォーマット委員会(PFP)の一員である、ガヴィン・ヴァーヘイ/Gavin Verheyだ。改めて説明しておくと、パウパー・フォーマット委員会は、パウパー環境と禁止カードのリストを管理するグループだ。
この記事を書いているのは私1人だが、パウパー・フォーマット委員会の7人は常にパウパーの話を交わしている。デッキリストを共有し、イベントの結果やメタゲームの状況について議論し、パウパー環境に見受けられるトレンドを知らせ合っている。5か国にまたがるメンバー同士、オンラインでも対面でもコミュニケーションを密に取っているのだ。私たちが決定を下す際は、必ずメンバー全員で話し合った上で結論を導き出している。私はパウパー・フォーマット委員会を代表して、私たち全員が積み重ねた会話と思考の結果を共有するために筆をとっているのだ。
本日は、全会一致で決定されたことを伝えにきた。《頭蓋槌》は、『モダンホライゾン3』の発売に先がけてパウパーで禁止される。
これは前例のない措置であり、パウパーやその他テーブルトップのフォーマットですぐに再び起こることはないはずだ。この決定には、注意すべき点がいくつもある。ここで私たちがその決断に至った理由をすべてお伝えするつもりだが、まずはこの措置が通常ではあり得ないものであることを強調しておきたい。この措置は、私たちがパウパーやその他のフォーマットを管理するために行う変更の慣例になることはない。非常にまれな事態であり、特別な事由による例外だ。加えて、私がウィザーズの社員であるため、主に幅広く周知するために公式のチャンネルを通して記事を届けていることも付記しておきたい。ウィザーズが直接管理しているフォーマットにおける禁止措置の理念は変わっておらず、どのフォーマットにおいてもセット発売前の禁止が行われる可能性は極めて低い。しかしパウパーはコミュニティ主導のフォーマットであり、私たちはそのことを念頭に今回の決定を下したのだ。
オーケー、それじゃあ詳しく見ていこう。まずは、このカードをなぜ禁止するのか?
《頭蓋囲い》は、アーティファクト土地や軽いアーティファクトとともにマジックの歴史を通してさまざまなフォーマットを支配してきた。このカードはいともたやすく強打を実現し、除去できなければあらゆるクリーチャーが対処必須の脅威となる。これはパウパーで禁止されるに至った。
それから最近、私たちは《きらきらするすべて》をパウパーで禁止した。このカードは《頭蓋囲い》に近い働きをするが、《頭蓋囲い》と異なり再利用はできない。
いずれも強力なカードだが、それ以上にそれらが生み出すプレイ・パターンがあまり楽しいものではなかった。ゲーム序盤では回避能力持ちのクリーチャーにつけられたそれらを除去できないとあっという間に敗北が決まり、ゲーム後半でも除去呪文を構えておかなければ一気に強化されてやられる可能性があるため、決して残りのマナを少なくできない。こういう性質がゲームを極端なものにしていたのだ。
そして私たちは、《頭蓋槌》と相対することになった。前回《きらきらするすべて》を禁止した際に、私は以下のように述べた。
「『モダンホライゾン3』には、パウパーで禁止にする必要性が高い、私たちが過去に禁止したカードに似たコモンが1枚ある。」
そのカードが、まさに《頭蓋槌》だった。《頭蓋囲い》の類似品であることは明らかだ。それらの違いを見ていこう。
はじめに目を引くのは、色が固定されたことだろう。《頭蓋槌》をプレイするには、赤と黒を使わなければならない。たしかにこれは制限となるのだが、現在のパウパーの「親和」デッキで最も人気を集めているのが「グリクシス親和」であるため、その制限は大きな負担にならない。とはいえ《水流破》や《青霊破》が当たることは特筆すべきだろう。
次に、インスタント・タイミングで装備する手段がないこと。これはある程度大きいだろう。《頭蓋囲い》を相手にしたことがある人は、そのカードが持つ力の大部分は普通に装備するだけでも(とりわけ回避能力持ちの脅威につければ)得られることを知っているかもしれないが、特にクリーチャーの数で相手を上回り、最後の一押しをするときに、インスタント・タイミングで装備できることが活きてくる。
そして、装備コストの増加も挙げられる。使用効率はわずかながら落ちるだろう。些細なことに見えるかもしれないが、私としてはこれが最も注目すべき点だと思う。1マナと2マナの差は非常に大きい。わずかながら爆発力が抑えられ、ゲーム序盤に余計にかかるマナの影響は重大だ。
しかしながら欠点ばかりではない。「生体武器」を持つため、装備先となるクリーチャーを用意できるのは極めて大きな利点だ。2ターン目《頭蓋槌》はもはやテンポ面で悪いプレイではなく、2マナで高パワーのクリーチャーを繰り出せる。驚くべき強化ぶりだ。
以上のことを見るに、このカードはパワー・レベルの点で《頭蓋囲い》に極めて近いものである。装備コストが1点多く、インスタント・タイミングで装備できないため、《頭蓋槌》の方がわずかに弱いが、大きな差はないだろう。
このカードはほとんど《頭蓋囲い》と同じであり、「グリクシス親和」が現環境で最高のデッキの1つであり、私たちは《きらきらするすべて》を禁止したばかりだ。《頭蓋槌》を良しとする可能性が非常に低いことは、明白だった。理論上は『モダンホライゾン3』でこのカードが許されるほどメタゲームが動く可能性もあるが、そうなる確率は極めて低い。私たちもデッキリストを作ってみたが、大方の予想通りすんなり採用できた。禁止の網にかかったことも、それほど驚くことじゃないだろう。
では次の事項に移ろう。なぜ発売前の禁止なのか?
私は基本的に、発売前の禁止や「緊急禁止措置」に強く反対している。
禁止されるカードは強すぎることを証明したものであるべきだし、みんながプレイする前に禁止するのは良いやり方とは言えない。理論が裏付けされたかどうかが大切なのだ。マジックは多くのものが連動するゲームであり、メタゲームは常に進化しており、見た目ほど単純なものでないことが常だ。このふざけたカードは禁止しなきゃいけないと思ったものが、結果的にちょうど良かった、という経験を何度したことだろうか? ほとんどの人が、一度はそういうことをこぼした経験があるだろう。
加えて、プレイヤーが「このフォーマットでこのカードは問題なかったのでは?」と常に疑問に思うことになる。カードを事前に禁止すると、プレイヤーは特に根拠もなくそのカードの復帰を求めるようになりやすい――《満潮》と違ってね。《頭蓋槌》が他にない例であることは言っておきたい。2枚の禁止カードと直接的に似たものであり、しかもそのうち1枚は最近禁止したものだ。それが強いかどうかについて、わからない部分は多くないだろう。
それから、発売前の禁止は危うい期待を抱かせることにもなる。今回このような措置を行ったことで、私たちは今後、発売前の禁止を求められるようになるだろう。私たちにそうするつもりはないし、みんなも期待しない方が良い。
以上を踏まえた上で、なぜ今、カードを発売前に禁止するのか?
通常であればこのまま世に出し、おそらく発売2週間後くらいにその実力が証明されたら再びチェックするだろう。しかしながら今回は、『モダンホライゾン3』の発売直後にパウパーの大型イベントが控えているのだ。
まずは6月15日に、「Magic Online Creator Showdown」がパウパーで行われる。これは5,000ドルの賞金が懸かったトーナメントであり、『モダンホライゾン3』導入後の新たなパウパー環境を披露する場となる。パウパーが注目を浴びる本当に素晴らしい機会なのだが、もし《頭蓋槌》をこのまま出したら、このカードが入った「グリクシス親和」に支配されてしまう可能性が高いだろう。
その1週間後には、世界中でパウパーのイベントが開催される。中でも注目すべき大型イベントが、イタリアのピサで行われる「Paupergeddon」だ。このイタリアの大型パウパー・トーナメントは、過去に800人ほどの参加者を集めるほどの大規模なイベントであり、テーブルトップのパウパーの大会では世界最大のものだ。パウパー・コミュニティにとって特別なイベントだろう。
もし《頭蓋槌》を使用可能にしたら、このトーナメントを席巻するのはほぼ間違いない。『モダンホライゾン3』の新カードの数々がダイナミックな環境をさらに輝かせるのではなく、《頭蓋槌》を中心にした歪んだものになってしまうだろう。しかもそのカードは翌週には禁止される可能性が高く、大会のデッキリストも使用できないものになってしまう。
プレイヤーのみんなは《頭蓋槌》と戦うためにデッキを順応させられるだろうか? もちろんできると私は信じている。みんな《火の中へ投げ捨てる》や《水流破》やその他のアーティファクト除去を、メインデッキから採用し始めることになるだろう。特定の方針でデッキを組めば、「親和」デッキを打ち倒す方法はある。歴史的に見ても、特定の何かにメタゲーム全体で対抗すれば、その問題あるデッキを抑え込む助けになるのだ。
でもそれって楽しいかい? 《頭蓋槌》と戦うことが軸になってデッキを歪めなければならない状態は、みんなが楽しめることだろうか? 違うよね。それは、不健全なフォーマットのお手本みたいな状態だ。
多くの議論を重ねたすえに、私たちは通常ではあり得ない決断を下し、《頭蓋槌》を早期に禁止することにした。あくまで基本理念を遵守して、直近のイベントを歪めることもできたのは事実だ。でもそれで得する者がいるだろうか? 《頭蓋槌》は過去に禁止した2枚のカードと類似したものであり、禁止されることはほぼ確定しているようなものだ。その上、楽しいプレイ・パターンを生み出すわけでもない。重要なイベントに先がけて環境から取り除くだけの理由は、もう揃っているのだ。
ここでもう一度、強調しておきたい。何度も言うのは、本当に大事なことだからだ。今回の措置は前例のないことであり、パウパーにおいてすぐに再び行われることはない。今後どのカードに対して私たちに発売前の禁止を求めても、何も起きない可能性が高い。そして他のフォーマットにおいても、発売前の禁止を期待しない方が良い。
加えて、パウパー・フォーマット委員会は統率者戦のようにウィザーズ外部のグループであるため、通常とは少々異なるプロセスを踏むことになる。私たちは可能な限り通常の禁止制限告知に合わせてパウパーの更新を行おうとしているが、必要とあればスケジュールから離れて変則的な措置をとることもできる。ウィザーズ・オブ・ザ・コーストが管理を一手に担っているフォーマットについては、これまでのプロセスから変更はない。
今回の措置はまさにその「必要なとき」のものであり、2枚の禁止カードに直接的に類似していることと2つのイベントを控えていることを理由とした特例だ。理由となっている要素のいずれかが違っていたら、現時点では起こらなかっただろう。今の時点では、もっと多くの議論が必要とされたと思う。今回の措置は決して軽い気持ちでやったのではないことは、いくら言っても足りない。たとえ短い期間でも《頭蓋槌》をプレイするのを楽しみにしていた人がいることは知っている。その人たちには、この壊れカードと過ごす輝かしい日々を迎えられなくなったことを、お詫び申し上げる。事前に環境から削除することもやむを得ない理由が多すぎたのだ。
さて、今回の話を終える前に、もういくつか話すべきことを話しておこう。
まず、私のもとに、そもそもなぜこのカードをコモンで作ったのか?という質問が来ている。強いことはわかっていたはずではないか?と。
これについては前回の記事でも触れたが、改めてお伝えしておこう。セットはそれぞれ、そのセットのために正しいことをするべきであり、私たちはそれに対応していく。これがエターナル・フォーマットの本質であり、パウパーも例外ではない。
セットはパウパーのメタゲームへの影響を回避しようとするべきではなく、『モダンホライゾン3』のリード・デザイナーが《頭蓋槌》をモダンに存在させるべきだと考え、リミテッドではコモンだと考えたのであれば、まったくもってそれで良いのだ。パウパーは、必要とあればカードを禁止にできる。パウパーのプレイヤー層は熱烈な愛を持っているけれど、他のフォーマットと比較して規模が小さいのは否めない。私たちを中心に据えてデザインするべきではないのだ。
私たちが焦点を当てているのは、カードの創造を邪魔することではなく、有害なカードを長く留まらせないように行動を起こすことだ。『統率者レジェンズ』に必要だから《失墜》が印刷されたこと自体に、問題はまったくなかった。それが2か月近くパウパーで使用可能だったことが問題なのだ。そして私たちは今、その事態を防ごうとしている。
それから、「親和」とアーティファクト土地についても全般的に話をしておきたい。これらのカードが数々の問題を引き起こし、多くの禁止カードを生み出してきたことは、私たちも認識している。私たちは「橋」を禁止して《頭蓋槌》を残すことも検討した。その世界でデッキを組んでみると、結局のところアーティファクト土地のサイクルが残っている限り《頭蓋槌》は問題になることがわかった。「橋」が登場するずっと前に《頭蓋囲い》が禁止に値するカードであったことを考えれば、それも納得だ。「ラクドス親和」(「橋」を禁止した後を引き継ぐと私たちが考えたデッキ)は、「橋」がなくても驚くほど強力に見えた。加えて、今後予定されている2つの大型イベントを念頭に置いて環境を調整するとなると、「橋」の削除はあまりに劇的な変化で、それらのイベントの直前に行うわけにはいかなかった。まずはそれらのイベントの結果を見て、それらの情報をもとに環境の状況を把握した上で、禁止が必要かどうか判断することにしよう。
『モダンホライゾン3』にはもう1枚、《刷新された使い魔》という「親和」でも非常に強力だと思われるカードがある。(しかも《頭蓋槌》と一緒に使うと強い。それもまた、《頭蓋槌》禁止の一因だ!)現在の「親和」デッキに入れても、《きらめく鷹》のようなカードと合わせてもかなり強そうなので、私たちはそちらにも目を配っている。
最後に、私たちはアーティファクト土地に加えて、赤単についても手を加える必要があるかどうか見極めている。しかし『モダンホライゾン3』が与えるであろう巨大な影響を鑑みて、セット発売後の盛り上がりが落ち着くのを待ちたい。
何か環境を圧倒的に支配したり完全に壊れていたりするものが現れた場合は、数週間以内に対応する。そうでない場合はもう少し様子を見て、メタゲームが自然に進化するのに任せることになるだろう。私たちがメタゲームに介入することと、メタゲームが解決策を見出すのを待つことのバランスを適切に取っていきたい。
この記事が、今回の決断とその理由を理解する一助になれば幸いだ。『モダンホライゾン3』がこのフォーマットにどんな影響を与えるのか見るのを楽しみにしている――そこにいないのは、《頭蓋槌》だけだ。
何かご意見があったら、どうかパウパー・フォーマット委員会まで直接知らせてほしい。そういうわけで、パウパー・フォーマット委員会を代表して、ガヴィン・ヴァーヘイよりお伝えさせていただいた。『モダンホライゾン3』とパウパーを楽しんでくれ!
Alex Ullman – @nerdtothecore
Alexandre Weber – @Webermtg
Emma Partlow – @Emmadpartlow
Gavin Verhey – @GavinVerhey
Mirco Ciavatta – @Heisen011
Paige Smith – @TheMaverickGal
Ryuji Saito – @Saito_o3
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