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Play Design -プレイ・デザイン-
プレイ・デザインQ&A
2019年6月14日
皆さんこんにちは、そしてわたくしめによって書かれたレアな(神話レアかも?)記事へようこそ。ご存知の方もいると思いますが、一時期わたしは毎週「Play Design -プレイ・デザイン-」記事をここDailyMTGで書いていましたが、その記事の大部分はわたしとポール・チェオン/Paul CheonがMTGアリーナをプレイして、そして皆さんのデザインに関する質問に答える週刊の動画配信に置き換わりました。
動画配信を行うにつれて、視聴者が同じ質問を違う回でもしているように思われました。今回の記事ではそれらの質問に回答します。文章でこれらの質問に対する回答を書いておけば視聴者が動画を見張る必要はなく、リンクや検索がより簡単になります。毎週太平洋時間で月曜午後2時に twitch.tv/magic をぜひ見てください!(訳注:配信動画は英語です)
どのぐらい先の仕事をしてるの?
これに関する質問は多く寄せられていて、基本的には「[カードA]は[カードB]を考慮して作っているの?」といった形で聞かれるので、多くのプレイヤーがわたしたちのスケジュールやどれぐらい先の仕事をしているのかご存じないのは明らかです。プレイ・デザインはおおむね、発売1年前のセットの仕事をしています。2019年5月の時点で、わたしたちがスタンダードのプレイテストをしている最新のセットは2020年の春のセットでした。わたしたちは最新セットとその1つ前のセットに変更を加えることが可能です。これはつまり、わたしたちが『灯争大戦』スタンダードの結果を見て新しいカードを作りたいと思った場合、そのカードは2020年の冬まで印刷されないということです。
とは言っても、プレイ・デザイン・チームは以前のデベロップ・チームとは大きく異なるスケジュールで仕事をしています。わたしたちはセットが発売されるまでのもっと早い段階で仕事をしているので、現実世界の問題を受けて、より影響のある変更を起こすことができます。わたしたちは展望デザインやセットデザイン中のセットにも影響力を持っていて、そしてどんなものがやってくるかを知っているので、将来のセットが成功を収められるように適切にカードをデザインすることができます。
どうやって楽しさを定義してるの?
マジックのセットをデザインすることには、バランスや多様性などの数多くの大事な柱が存在します。しかし最も重要なのは楽しさです。楽しさはわたしたちがフォーマットをデザインする上での第一目標です。
楽しさは人によって違うので定義するのは難しいです。その人がどのようにマジックを楽しんでいるかによって変わります。ある人は攻撃することが好きで、別の人は対戦相手のリソースを否定することが好きで、また別の人は創造性の高いデッキを構築することや特定のメタゲームで勝つためにデッキを調整することが好きです。数多くのプレイスタイルを内包する網を投げるのは難しいですが、プレイ・デザインは楽しいマジックのゲームを作るためのの理念を作り出しました。
わたしたちはマジックのゲームのほとんどのところでやり取りをするようにしたいと考えました。プレイヤーに降りかかるさまざまなな状況に対処するための手段を、彼らが持っていると感じるようにすることは重要です。わたしたちはすべての色に幅広い脅威への対策を持たせようとします。わたしたちはこれらの対策を多くのデッキが扱えるように、マナ・カーブのあらゆるところに散らそうと試みています。
また、わたしたちはゲームを、プレイヤーの行なった決定に基いて異なる結果になるダイナミックなものにしようと努めています。わたしたちは基本的に、これを多彩なプレイ・パターンを持つカードやデッキを作ることで行っています。例えば、わたしたちがプレインズウォーカーをテストしていて、それが1つの能力だけを使っているのが常に正解であることが判明したとしましょう。わたしたちはさまざまな能力が数々の状況で選ばれるようにするために、数字の組み合わせやその能力を変更します。また、わたしたちはゲームのあらゆる局面に影響を与えるクリーチャーを作ります。その良い例が《茨の副官》です。序盤においてこれはそこそこのサイズのクリーチャーですが、ゲームが進んでいくとその起動型能力で大型クリーチャーと戦うことができます。
楽しさというものはとても主観的ですが、プレイヤーは有意義なプレイをしているときや行動が重要であると感じるときに楽しくなる傾向にあります。ゲームのあらゆる局面において、さまざまな脅威と対策を提供することは、わたしたちがそれを達成する方法の1つです。
カードパワーのインフレをどうやって防いでるの?
わたしたちは各セットがさまざまなフォーマットに影響を与えてほしいと考えています。スタンダードは最も普及したマジックのフォーマットであり、最も新規プレイヤーが参入しやすいために最も重要です。また、わたしたちはセットがモダンや統率者戦、そしてレガシーのようなより大きなカードプールを用いるフォーマットにも影響を与えることを望んでいます。ですが、とても長い年数の引き出しを持つフォーマットに影響を与えることは難しいです。わたしたちがこれらのフォーマットに大きな影響を与えようとすれば、カードパワーのインフレは高い確率で発生します。
『灯争大戦』が最初に公開されたとき、この質問が出始めました。どうすれば大量のプレインズウォーカーを入れてセットのバランスを取り、パワーのインフレを防ぐことができるでしょうか? ほとんどのスタンダードには、15枚ぐらいのプレインズウォーカーがあります。『灯争大戦』スタンダードでは、37枚が追加されました! プレインズウォーカーがスタンダードで最強のカードのカード・タイプであることがよくあることを踏まえると、わたしたちはとても気をつけなければいけませんでした。わたしたちは通常のプレインズウォーカーの構造に沿うことはできませんでした。そうしていたなら、バランスをとるのがとても難しくなり、多くの強力なプレインズウォーカーと、いくつかのとても弱そうなものを作らざるを得なくなっていたでしょう。
わたしたちの『灯争大戦』への、そしてスタンダード以外のカードパワーのインフレへの取り組み方は、各カードにたとえそれがとても狭くてもある種の役割を持たせるようにすることでした。各カードに役割があるなら、そのフォーマットがどんな形になろうと関係なく、何が出てこようと対抗手段と対策があります。
例えば、わたしたちは《ハイドロイド混成体》がスタンダードでとても強力になる可能性があることを知っていました。これの誘発型能力は打ち消せないので、わたしたちはこれを自然に止める効果を求めました。わたしたちはその効果を《覆いを割く者、ナーセット》につけました。ナーセットは基本的に用途の狭いカードですが、これの常在型能力は適したメタゲームではとても強力です。そのメタゲームは現在のスタンダードで発生していて、ナーセットはメインデッキでプレイされています。もし「グルール」や「白ウィニー」が優勢になれば、ナーセットはサイドボードに移るかもしれません。キャントリップやドロー効果が飛び交う古いフォーマットではナーセットはもっと大きな役割を担います。わたしたちはナーセットのようなニッチな効果を、メタゲームがそれらの効果を必要とした時に影響力を持つようになるという期待を込めてたくさん作ろうとしています。
[カード名]がモダン/レガシーで強いことは分かってたの?
前の質問と同じように、わたしたちはモダンを含む全ての異なるフォーマット向けのカードを作るように努めています。モダンは16年以上におよぶ範囲のフォーマットです。セットがどんどん出るにつれて、それらがモダン(およびレガシーやヴィンテージ)に影響を与える可能性がどんどん少なくなります。フォーマットに影響を与えるためにわたしたちがしていることの1つは、独特な効果を対処しにくいパーマネントにつけることです。例えば、《覆いを割く者、ナーセット》についているこの効果ははあまり見かけませんが、1マナキャントリップのあるフォーマットではかなり強力です。こういうテキストはすでに存在しましたが、普通は(《トレストの使者、レオヴォルド》のような)唱えにくいクリーチャーか(《概念泥棒》のような)タフネスが低いクリーチャーについていました。忠誠値5のプレインズウォーカーに対処するのは小型クリーチャーに対処するよりもずっと大変です。見て分かるように、プレインズウォーカーへの対策があまりプレイされていない古いフォーマットに影響を与えるために、わたしたちはこれらの独特な能力を『灯争大戦』のプレインズウォーカーに常在型能力としてつけました。こうすることで環境が大きく変化しました。プレイヤーはプレインズウォーカーを攻撃するためにデッキのクリーチャーを増やしたり、別の除去をプレイしたり、これらの能力で対策されるカードのプレイを避けたりするかもしれません。
ローテーションしないフォーマットに影響を与えるもう1つの方法が、低いマナ・コストでスタンダードよりもモダンやレガシーで強い干渉をする呪文を作ることです。その一例が《致命的な一押し》です。スタンダードでは紛争を達成するのはかなり大変ですが、マナ基盤にフェッチランドが含まれるモダンやレガシーではほぼ毎ターン達成可能です。スタンダードよりも古いフォーマットのほうが自然と強くなるメカニズムはたくさんあり、墓地メカニズムやコスト軽減メカニズムなどがその例です。それらは、わたしたちがモダンやレガシーに向けにしようと狙っているものです。
これをデザインしたときに[強力な相互作用]のことは知ってたの?
スタンダードのコンボの数が、ちょっと前のセットよりも増えていることに気づいている方もおられると思います。もちろん意図的なものです。わたしたちはスタンダードに主要な大きい分類のアーキタイプ(アグロ、コンボ、ミッドレンジ、コントロール)がすべて存在している時は健全だと信じています。スタンダードのコンボはしばらくの間、特に我々の望んだよりもコンボが強かった『カラデシュ』の後は不遇の時を過ごしていました。わたしたちのチームは過去の過ちから学習し、コンボ・デッキを作る手法の中でより緻密に計算するようになりました。わたしたちがスタンダードでコンボを作るときに探している事柄をいくつか紹介します。
- コンボをするためにカードが何枚必要か? 2枚コンボとはつまりコンボをするのに必要なパーツが少ないということであり、問題を起こしかねません。
- そのコンボには安定性があるか? 《欠片の双子》コンボは各コンボパーツごとに2種類のカードがあり(パーツその1は《やっかい児》と《詐欺師の総督》、その2は《欠片の双子》と《鏡割りのキキジキ》)、このデッキに大きな安定性をもたらしています。わたしたちはゲームがもっとダイナミックになるように、コンボの安定性を減らすように努めています。
- 干渉できるポイントは何か? 準備に必要なターンはいくつか? そのコンボはみんなが普通にプレイしている(クリーチャー除去のような)カードで干渉できるか? 干渉できるポイントがたくさんある限り、そのコンボは普通は健全です。
- そのデッキ構築の対価は何? そのデッキを大量の何もしないカードで埋めないといけないか? 例えば、《欠片の双子》のデッキ構築の対価はとても低いです。大量にキャントリップの入ったコントロール・デッキをプレイでき、そのコンボに大量のスロットを費やす必要はありません。逆に、「モダン・チーリオス(純鋼ストーム)」のデッキ構築の対価はとても高いです。このデッキの大部分はコンボパーツで、コンボを安定して決めたいのであれば干渉手段をあまり多くプレイすることはできません。
わたしたちは《嵐の伝導者、ラル》と《発展 // 発破》コンボや、《ボーラスの城塞》あるいは《戦慄衆の侵略》を基柱としたデッキのような健全なコンボ・デッキをスタンダードに積極的に入れようとしています。このような相互作用に遭遇したとき、わたしたちはそれらがスタンダードで確実に楽しいものになるように、それらのカードの性能を試します。
なぜコントロールには早い勝ち手段がないの?
コントロール・デッキは降りかかるすべての脅威に対して対処しようとし、ドロー呪文をプレイしてさらに対策手段を得て、完全にコントロールするとゲームに勝利します。ですが、時々スタンダードにある勝ち手段が十分に強くないことがあります。それが起こると、『灯争大戦』前の「エスパー・コントロール」のような、《ドミナリアの英雄、テフェリー》を何度もライブラリーに「押し込んで」、ライブラリーが切れないようにすることだけが勝ち手段の、1つだけしか勝ち手段のないデッキが現れます。このデッキが完全にコントロールすると、実際に勝つまでにとても多くのターンがかかり、対戦相手はなす術もなく負けるまでずっと座っていなければいけません。わたしたちはこのプレイパターンを楽しいものとはみなしていません。これはわたしたちがコントロール・デッキに求めていない類の勝ち手段です。このカードが主な勝ち手段である理由は、他の選択肢が十分に強くないからです。わたしたちはコントロール・デッキが完全にコントロールしたらゲームに勝つための強くて楽しいフィニッシャーを持つように努めています。
強力な勝ち手段を持ったコントロールの例に、主に《龍王オジュタイ》で勝つ「エスパー・ドラゴン・コントロール」や《真珠湖の古きもの》で勝つ「青黒コントロール」があります。現実世界のスタンダードでは、《変遷の龍、クロミウム》が使えますが、このカードはわたしたちの予想よりも弱いことが判明しました。わたしたちは『灯争大戦』が発売されると、コントロール・デッキは勝ち手段としてプレインズウォーカー、特にいったん危機を脱すると素早くクロックを供給して勝ちに行けるものになっていくと予想しました。
プレイ・デザインは、コントロールのフィニッシャーは最もデザインするのが難しいカードであることを発見しました。除去耐性のあるカード1枚に負けるのは最も楽しいことではないことがあるので、十分な強さと楽しさの間でバランスをとるのは大変です――そしてフィニッシャーが十分に強くないと、プレイヤーは勝ち手段をプレイしなくなります。(イヴァン・フロック/Ivan Flochのプロツアー『マジック2015』のデッキを見てみてください:彼の唯一の勝ち手段は1枚だけの《不死の霊薬》で、使った呪文をライブラリーに何度も入れ直して最終的に相手のライブラリーが切れます。)わたしたちは現実世界でのクロミウムを見ることで価値ある教訓を得て、それらを将来のコントロールのフィニッシャーのデザインに活かします。
プレイ・デザインは禁止に影響力を持ってるの?
もしくは:[カード名]をいつ禁止するの? あるいは:どうして[カード名]を禁止したの?
プレイ・デザインは禁止に確かな影響力を持っています。わたしたちは毎回禁止制限告知の前に各フォーマットの状態について議論して、データを見て、何か禁止に値するほど問題があるかどうか決定をするために会議をします。
カードが禁止されるときには、以下のような考えるべきたくさんの要素があります。
- パワー・レベル:そのデッキは高い使用率を持っているか? そのデッキもしくはカードの強さがそのフォーマットの周囲のあらゆるものよりも特に強力か?
- それはメタゲームで大きな割合を占めているか? 時々デッキのパワー・レベルが妥当なものでも、他のものよりもプレイされていることがあります。これは、『カラデシュ』スタンダードで勝率は妥当だけれども他のすべてよりもずっと多くプレイされたエネルギー・デッキが当てはまっていました。
- そのデッキは相手にしていて楽しいか? それへの対策は十分にあるか? これは直近のモダンの《クラーク族の鉄工所》禁止が当てはまります。このカードは他の多くの基準も満たしていましたが、相手していてとても楽しくなく、また干渉するのも大変でした。
- コミュニティの反応はどうか? プレイヤーは積極的にそのカードもしくはデッキを嫌っているか? プレイヤーはもうそのフォーマットをプレイしなくなったか?
配信をしていて頻繁に聞かれた質問の1つが、《運命のきずな》のスタンダードでの禁止をするつもりがあるかどうかについてです。わたしたちはこのカードが1本先取のスタンダードでとても対策しにくいことを発見しました(MTGアリーナではこれは禁止されました)が、BO3(2本先取)スタンダードでの勝率は高すぎるわけではなく、わたしたちはそれがプレミアBO3スタンダードで対応されているのを見ました。今のところ、《運命のきずな》は禁止要件を満たしていませんが、わたしたちは常にそのメタゲームを監視し続け、そして問題のあるカードに関するコミュニティの反応を聞いています。
どのように1本先取向けのデザインをしているの?
MTGアリーナのBO1(1本先取)フォーマットはわたしたちにとってかなり新しいものです。わたしたちは『ラヴニカのギルド』をデザインするときにはこれが存在するようになることを知っていて、それを意識して何枚かのカードをデザインしましたが、それを中心にしてフォーマット全体をデザインはしませんでした。現在、MTGアリーナでのBO1は一般的なフォーマットで、わたしたちはこれ向けのカードのデザイン方法をより意識しています。以下はわたしたちがやり始めたことの一部です。
- モードや用途の狭い効果を持った、柔軟性があってメインデッキに入れられるカードをデザインする:これの例は、優秀なクリーチャーですが飛行に対する素晴らしい対策にもなる《クロールの銛撃ち》や、必要なときに有効でそうでないときは4/3の《秋の騎士》などです。
- 多すぎる1マナ域や、それを強化するカードが多すぎないように意識する:超アグロデッキはマナ・カーブに沿った動きが強力で対戦相手の多くが適切な対策を持たないBO1で輝きます。わたしたちは、超アグレッシブなデッキと、後手よりも先手のほうがずっと強くなるカードにもっと注意するよう努めています。《敬慕されるロクソドン》と《遁走する蒸気族》は1マナ域のクリーチャーとシナジーのあるカードの例で、そしてこれらのカードはBO1でわたしたちが好むよりも多くの有利を押しています。
- カード選別を増やす:自分の手札がクリーチャー除去満載で、相手がクリーチャーが入っていないデッキの場合、楽しくはありません。ですが、超アグロデッキを倒したい場合、BO1でこれらの対策をプレイする必要があります。 わたしたちは手札で死に札が減るように、カード選別効果をこの環境に増やそうと努めています。これには占術、ルーティング、(再活のためにカードを捨てるなどの)いらないカードを他の効果のために使うことが含まれます。
BO1スタンダードは新しいフォーマットなので、わたしたちはまだ動向や成功を収めているカードの学習と監視をしています。これは段階的な過程で、時間が経てばこのフォーマットを意識して作られたカードが多く見かけられるようになるでしょう。
まとめ
今日いろんなことを話しました! この記事で、あなたが抱いているプレイ・デザインの理念に関する疑問が明らかになれば幸いです。そしてTwitterやReddit、次回の配信での補足の質問も歓迎です。わたしたちは常に自分たちの過程の改善に目を向け、コミュニティの反応に耳を傾けています。読んでくださってありがとう!
メリッサ・デトラ (@MelissaDeTora)
(Tr. Takuya MASUYAMA / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru)
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