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カウンター・プレイ:適正な対策を見つけ出す
カウンター・プレイ:適正な対策を見つけ出す
Melissa DeTora / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2017年9月15日
こんにちは、そして「Play Design -プレイ・デザイン-」にようこそ。今回はあなたに対策を教えようと思います! ええ、わたしは全ての対策を教えるわけではありませんが、スタンダードでの脅威に対する対策の背後にある、わたしたちの理念についてお話しします。
マジックのスタンダードの理念は年月とともに多くの変更がなされ、わたしはそれをプレイヤーとして大量に経験しました。気に入ったときも気に入らなかったときもありましたが、今回は歴史からの例をいくつか示して、そしてプレイ・デザイン・チームがスタンダードで取り上げている方向性の考えをお伝えします。
フェアリー問題
何年か前、スタンダードは現在どのようなカードが印刷されるかという観点から見て、その一線を越えたカードで構成されていました。わたしが取り上げたい例の1つは『モーニングタイド』の《目覚ましヒバリ》です。
このクリーチャーは素晴らしい比率を持っていただけでなく、柔軟性にも富んでいました。あなたはこれを素出しして、対戦相手に対処しなければならない大きな飛行クリーチャーを突きつけることができます。もし相手がこれを対処したなら、あなたが受ける恩恵は対戦相手が挽回するのが非常に難しいほどのものです。
またこれを想起して即座に恩恵を受けることもできます。このフォーマットには《熟考漂い》、《包囲攻撃の司令官》、《大爆発の魔道士》のようなカードがありました。《目覚ましヒバリ》と何枚かの《大爆発の魔道士》によって何度も連続で《石の雨》されているところを思い浮かべてみてください。個人的な経験から、わたしはそれが楽しい時間ではなかったことをあなたにお伝えできます。
これほどの強さにも関わらず、これのようなカードを抑制する対策はたくさんありました。《思考囲い》や《謎めいた命令》は強力で重いクリーチャーをプレイしたくならないものにした例の一部です。加えて、フェアリーのアーキタイプ全体がそのフォーマットを支配していました。
《霧縛りの徒党》によって土地が全部タップされるか、《謎めいた命令》に呪文を打ち消されて実質的に対戦相手が《Time Walk》するかだけの素敵な5ターン目を思い浮かべてみてください。フェアリーはそのスタンダード・フォーマットにおける「敵」であり、フェアリー・デッキの相互作用が他のほとんどの戦略が行うことよりもはるかに強力だったので、多くのデッキがその環境から押し出されていました。
《思考囲い》はこのフォーマットで重く強力なカードを抑制する重要な役割を演じていた別のカードです。《思考囲い》はわずか1マナで多くの仕事をしました。たとえば、
- これは完全情報をもたらします。対戦相手がこのゲームの次の数ターンで行うプランを見ることができます。
- 対戦相手のプレイのペースを決定できます。たとえば、相手の手札から唯一の脅威を抜いて除去でいっぱいの手札にした場合、相手は受け身のゲームを強いられることになり、あなたはそれを利用することができます。
- マナ・カーブを崩します。対戦相手の3マナ域を3ターン目に抜いた場合、相手をそのターンに何もプレイできないようにしてテンポ・アドバンテージを得ることができます。
- 対戦相手の手札の一番良いカードを落とすことができます。対戦相手がコンボ・デッキやシナジーを重視したデッキの場合、これは大変なことになり得ます。
- これは前もって動くカードです。自分の脅威に対する対策を取り除き、アドバンテージを拡大することができます。
このカードの柔軟性は、これをものすごく強力なものにしました。黒いデッキではこれを4枚プレイするのが正解であることがしばしば起こり、その結果重い呪文やシナジー重視のデッキは選択肢になりえませんでした。
これらの軽い干渉呪文はマジックのゲームをとても楽しい方向には向かわせず、開発部は再び4~5マナの呪文をプレイして楽しいものにするために、妨害するカードの規模を縮小しました。脅威はより強力になり、妨害呪文の効率は悪くなりました。これにより多くの戦略が行えるようになったので、スタンダードは多様性が富んだものになりました。わたしたちがこの理念を繰り返し続けていったことにより、それはわたしがこの後お話しするようなそれ自身の問題をもたらすことになりました。
《破滅の刃》問題
わたしたちはよく、なぜスタンダードに《破滅の刃》を印刷しないのかと聞かれます。《破滅の刃》は表面上は何も問題を起こしませんが、多くのプレイヤーには見えない細かな問題を引き起こします。
《破滅の刃》は『基本セット2010』の発売から『基本セット2014』のローテーションまでの約5年間スタンダードに存在しました。《破滅の刃》はプレイヤーがデッキに黒を入れている場合に使う主要な除去呪文でした。しかしながら、その問題点はこれがプレイヤーの使う唯一の除去呪文であるということでした。これはその時のまさに最強の選択肢だったのです(《喉首狙い》があった時期は例外ですが、《喉首狙い》は1つの種類を除いてなんでも除去できるという意味で《破滅の刃》とものすごくよく似ていました)。《破滅の刃》が単純に最強の除去呪文だったので、それがあるときはプレイヤーに他の種類の除去呪文を使う理由が本当にありませんでした。
《破滅の刃》はプレイヤーに与える選択肢を狭めるだけでなく、黒いクリーチャーをよりプレイしたくさせると同時に、大型クリーチャーをその環境から追い出してしまいます。わたしたちはそれでも《悪斬の天使》をプレイしましたが、《破滅の刃》が存在する場合、5マナ以上のクリーチャーをデッキに入れるためには、それがゲームに勝てるものでなければならないのが一般的でした。
特定の環境では除去が脅威よりも軽いことがしばしばあり、マジックにおける一種の「逆転」メカニズムのように機能します。適正な脅威に対して適正な除去を適切に順序付けて並べることでテンポを稼ぎ、不利な場合は追いつくことができます。
しかしながら、その除去が脅威よりも軽すぎるとゲームは振れ幅が大きくなり、誰が1ターンの間に軽い除去と脅威の組み合わせを引いたかで決まるようになります。もし除去が脅威と比べて弱すぎると、ゲームは雪だるま式になり、不利な状況のプレイヤーはしばしば無力さを感じ、追いつくことができななります。
以下の2つのシナリオを見てみましょう。
シナリオ1:除去が強すぎると
このシナリオでは、プレイヤー2がどうやってゲーム中に大きなアドバンテージをを得ているかが分かります。プレイヤー2は毎ターン大きなテンポを稼ぎ、プレイヤー1はどんどん不利になります。
シナリオ2:除去が弱すぎると
- プレイヤー1がクリーチャー1体をプレイ。
- プレイヤー2は何もプレイしない。
- プレイヤー1がクリーチャー1体をプレイ。
- プレイヤー2が除去をプレイ。
- プレイヤー1がクリーチャー1体をプレイ。
- プレイヤー2が除去をプレイ。
このシナリオでは、プレイヤー2は毎ターン対戦相手の脅威に1対1で対応していかなければなりません。ゲームが進むに連れてプレイヤー2はどんどん不利になります。このプレイヤーが相手の脅威に対する対策で丸々1ターンを費やしている場合、追いつくことはまずできないでしょう。
目的は除去がそのフォーマットの脅威に対してバランスの取れている世界に到達することです。最近の除去呪文は《破滅の刃》ほど柔軟ではなく、正直に言うとここ数年の除去は少し範囲が狭すぎました。その結果わたしたちは強力なクリーチャー(とプレインズウォーカー)がスタンダードを支配して相手にするのが腹立たしくなるようなところまで上がってくるのを見てきました。
《約束された終末、エムラクール》はフレーバーのためにわたしたちが意図的にとても強くしたクリーチャーの一例です。このクリーチャーは一線を越えていて、そしてそのフォーマットの対策がこれにかみ合わなかったことが、これのスタンダードでの禁止をもたらしました。
《守護フェリダー》も同じような問題を抱えていました。環境の除去のほとんどはソーサリー速度かタフネス3までのクリーチャーしか対応できませんでした。わたしたちはこのフェリダー・コンボに対して十分な対策を持たなかったので、このカードも同様に禁止されました。スタンダードでの禁止以降、わたしたちは強力な脅威と効果的な対策の適正なバランスの発見に取り組んできました。
今後の展望
理想的なスタンダード・フォーマットは、最も強力な脅威への適切な対策を持ちながら(《破滅の刃》問題を避けて)プレイヤーにデッキ構築での十分な選択肢を与えます。わたしたちは対策が自動的にデッキに入るほど強くなって、そのフォーマットがその除去の存在によって歪められることを望んではいません。対策は簡潔で単純で、ほとんどのメタゲームにおいてメインデッキでプレイアブルなものであるべきです。また、わたしたちはメタゲームが必要としたときに切り替えられる選択肢を提供したいと考えています。
《ヴラスカの侮辱》はスタンダードのほとんどの脅威に対する簡潔な対策として加えられた除去呪文の1つです。これはとても柔軟性があり、4マナはコントロールやミッドレンジにとって素晴らしく、同時によりアグレッシブなデッキのマナ・カーブの上のほうとしても十分です。
また、わたしたちは黒にクリーチャー以外に対する簡潔で軽い対策として《強迫》を与えました。《強迫》はメインデッキに入れられますが、このフォーマットが過剰にアグレッシブな場合、アグロ対策を優先してこれらのカードをサイドボードに移す選択肢があります。
時には、あなたがただプレインズウォーカーやアーティファクトの起動型能力を止めたいと考えても、あなたのプレイしている色ではあなたのやりたいことができない場合があります。《魔術遠眼鏡》を入れてください。これはどんなデッキにも入れることができて、あなたが止める必要のあるものをシャットダウンします。これはプレインズウォーカーや新しい両面土地がわたしたちの予想よりも強かった場合の素晴らしい安全装置です。
わたしたちは《稲妻の一撃》も『イクサラン』に加えました。赤にはすでに《削剥》や《蓄霊稲妻》などの、3点を与える除去呪文がこのフォーマットにあります。《稲妻の一撃》は赤のプレイヤーに選択肢を与えるために加えられました。あなたはエネルギーをプレイしたくないかもしれませんし、アーティファクトがメタゲームからいなくなるかもしれません。もしかしたら、あなたが相手の本体に火力呪文を打ちたいだけかもしれません。《稲妻の一撃》が加えられたことの根底にあるアイデアは、プレイヤーにデッキ構築においてのさらなる選択肢を与え、メタゲームがそれを必要としたときにプレイヤーが使うことができるカードがあることを保証することでした。
プレイ・デザイン・チームはまだ周囲のフォーマットの対策の形を整えている最中で、そして将来のセットでその結果がわかりますが、『イクサラン』は対策がわたしたちが望むものになることに向けてよいスタートを切ったと言えます。
今週のプレイ・デザイン・チーム
先週、プレイ・デザイン・チームは最も新しいメンバーであるアレン・ウー/Allen Wuを迎えました。プレイ・デザインに入る契約を結ぶ以前、アレンは主に「Magic Online」でカジュアルにプレイしていましたが、過去2年間に6回のプロツアーに出場しています。プロツアー『イクサラン』が7回目になるでしょう。彼は出場した全てのプロツアーで2日目に進出し、その半分で賞金を獲得しました。彼のマジックにおける最大の実績は、彼が出場した最初の3回のプロツアーの権利を「Magic Online」のPTQ(プロツアー予選)を突破して獲得したことです。
彼は小学2年生(『インベイジョン』ブロックあたり)でプレイし始め、好きなフォーマットはオンラインの1対1の統率者戦で、好きなカードは《ヴェンディリオン三人衆》で、好きなデッキは親和とレガシーの「デス・アンド・タックス」です。
アレンは来年開発部に加わるためにスタンフォード大学の経営統計学の修士課程を休学していて、独自の視点をプレイ・デザインにもたらすことを望んでいます。
『イクサラン』のカードイメージギャラリーは全て埋まったので、スタンダードのメタゲームが新たな脅威と対策でどのように変化するかを見るために、カードを必ずチェックしてください!
メリッサ・デトラ (@MelissaDeTora)
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