READING

開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

昏明の時

Mark Rosewater
authorpic_markrosewater.jpg

2026年1月5日

 

 『ローウィンの昏明』プレビューが始まる! 今回は、このセットのデザインについて語り、デザイン・チームを紹介し、そしてクールなプレビュー・カードをお見せする。楽しんでいただければ幸いだ。

ローウィンに染まったチーム

 デザイン・ストーリーを語り始める前に、『ローウィンの昏明』の展望デザイン・チーム、セット・デザイン・チーム、そして統率者デザイン・チームのメンバーを紹介する。展望デザインとセット・デザインのメンバーの紹介はマーク・ゴットリーブ/Mark Gottliebが行ってくれる。マークは展望デザイン・チームをフルタイムでリードし、またセット・デザイン・チームを3ヶ月間リードした後、マイケル・メジャース/Michael Majorsに引き継いだ。ではゴッドリーブ、君の出番だ。

▼クリックして展望デザイン・チームとセット・デザイン・チームを表示

 次はエリー・ライス/Ellie Riceが統率者デザイン・チームを紹介してくれる。エリー、代わってくれるかな。

▼クリックして統率者デザイン・チームを表示

『シャドウムーア』について少し知りたい?

 休暇に入る前、私は2部構成の記事(『ローウィン』をプレイするその1その2)を書き、オリジナルの『ローウィン』ブロックと『シャドウムーア』ブロックの歴史を振り返った。この記事で私が書けなかったこととして、セットが発売された後に何が起きたかがある。プレイヤーは、我々が期待したほどにはセットを受け入れなかった。2部構成の記事で説明したとおり、当時我々(その多くは私)が下したデザイン上の判断には、結果的に誤りだったものが数多くある。そういう経緯もあって、私はローウィン=シャドウムーアに再訪することは二度とないと思っていた。

 だがその後、我々は『神河:輝ける世界』を作った。神河もまた、発売直後のプレイヤーの反応を踏まえると、私は再訪にかなり懐疑的だった次元である。しかし私のブログでは神河に再訪してほしいという意見が広く集まり、機会が訪れたとき、我々は再び取り組むことにした。そして『神河:輝ける世界』は大ヒットし、『マジック』史上最も売れたセットの1つになった。これによって、当時は成功しなかった過去のデザインを、改めて見直すことを考えるようになったのである。

 一方、神河へ再訪したことで、私のブログの読者は「次に再訪したい次元」へと関心を移した。それがローウィン=シャドウムーアであった。十分な量の好意的反応が集まったため、我々は市場調査アンケートの1つに「プレイヤーが再訪したい次元はどこか?」という質問を追加した。ローウィン=シャドウムーアは回答者の上位選択肢の1つであった。そして、話が動き始めた。

 私は個人的にも、ローウィン=シャドウムーアへの再訪を考えていた。しかし、最大の課題があった。これを2つの別々のセットとして提案しても、ゴーサインが出ないと思っていたのだ。理由はいくつかある。第一に、同じ次元を2セット連続で扱うためのハードルは、かなり高くなっていた。第二に、我々はローウィンのような次元も、シャドウムーアのような次元も作ってきた。だがこの次元を定義しているのは二面性であり、光と闇が結び付いている点にある。第三に、『ローウィン』&『シャドウムーア』ブロックの物語の終焉で「大オーロラ」は消滅し、世界を変化させ続けていた要因がなくなっているのである。

 これらすべての問題に対する私の解決策は、次のようなアイデアであった。「大オーロラの終焉は、次元をどちらか一方の状態に固定してしまったのではない」としたら? 「それらを融合させた」としたら? ローウィンとシャドウムーアが、もはや2つの別々の世界ではないとしたら? 2つが1つに混ざり合ってしまったとしたら? クリエイティブ・チームのあるメンバーは、マーブルケーキのマーブル模様は境目が分からず、どこまでもマーブルで混ざり続けている、と例えてくれた。

 私が最も惹かれたのは、次元の住人が今なお変化しうるが、その変化が地理によって決まる(しかもその地理は時間とともに移り変わる)というアイデアである。次元の中のシャドウムーアの影響下にある地域へ行けば、あなたはシャドウムーア版の自分になる。ローウィンとシャドウムーアは、これまで互いに影響を与えあうことはなかった。だが今や与えあうことができる。これは面白い設定であり、1つのセットで実現できることだと思えた。


ふたつをひとつに

 我々は次元を再訪する際にいつも行うのと同じように、同様の手順でデザイン・プロセスを始めた。まず、昔に行ったことをすべて洗い出した。以下は『ローウィン』ブロックと『シャドウムーア』ブロックのメカニズムと、メカニズム的テーマの一覧である。

  • アンタップ・シンボル
  • 萎縮
  • 色が重要
  • 回顧
  • 頑強
  • 共謀
  • 激突
  • 混成マナ
  • 彩色
  • 想起
  • 族系
  • タイプ的
  • 多相
  • ツーブリッド・マナ
  • 徘徊
  • 覇権
  • 秘匿
  • 補強
  • -1/-1カウンター

 我々はこれらを3つのカテゴリーに分類した。

  1. 取り組む必要があると感じたもの
  2. 取り組むか検討すべきだと感じたもの
  3. 取り組むべきではないと感じたもの


 各カテゴリーに分類した結果は、以下の通りだ。


#1:取り組むべきこと
  • 色が重要
  • 混成マナ
  • タイプ的
  • 多相

 我々はこのセットが『ローウィン』と『シャドウムーア』の両方を捉えている必要があると分かっていた。『ローウィン』を定義するものはタイプ的テーマ以上にないため、自動的に採用となった。また、我々は多相がタイプ的テーマの非常に効果的な「接着剤」だと感じていた。つまり、さまざまなタイプ的テーマをまとめる助けになるということである。我々はタイプ的テーマを扱うたびに多相の採用を必ず検討しているのだから、その起源を再訪しておきながら、使わないなんてことがあるだろうか? 色が重要は『シャドウムーア』においては、『ローウィン』におけるタイプ的のように重要であり、混成マナは『シャドウムーア』が「色が重要」テーマを用いるうえで根本を成す要素であった。我々はこの4要素が必要だと分かっていた。

#2:検討すべきこと
  • 萎縮
  • 頑強
  • 想起
  • ツーブリッド・マナ
  • 覇権
  • 秘匿
  • 補強
  • -1/-1カウンター

 これらは、オリジナルのブロックに存在したメカニズムのうち、プレイヤーがある程度エキサイティングだと感じていたものである。開発部は-1/-1カウンターを中心に据えた環境に対しては否定的になっていたため、ここでそれを再現するなら越えるべきハードルがあった。頑強と萎縮は、-1/-1カウンター環境下でしか成立しない。ツーブリッド・マナは『タルキール:龍嵐録』で使ったばかりであったため、これほど早く再登場させてよいかどうか疑問視されていた。覇権は解決すべき実装上の問題があり、秘匿はデザイン空間が限られており、補強はカード個別で出来がよくなかったと感じていた。これらのメカニズムの中で、最も復活させたいという気持ちが強かったのは想起であったが、これにも取り組むべきデザイン上の問題があった(そして我々は、このメカニズムの実装は『ローウィン』のほうが『モーニングタイド』版より遥かに優れていると感じていた)。


#3:取り組むべきでないこと
  • アンタップ・シンボル
  • 回顧
  • 共謀
  • 激突
  • 彩色
  • 族系
  • 徘徊

 彩色は、後に「信心」として作り直したことでかなり人気のあるメカニズムになったものの、最初の試みとしては出来が悪かった。我々はこのセットに信心を入れることも話し合ったが、フレイバー面からすると奇妙な採用になりそうだと感じた。激突と族系は評判が悪く、共謀と徘徊は印象が薄く、回顧はプレイの反復に関する問題があり、アンタップ・シンボルは2つの面で問題があることが分かっていた。タップ・シンボルと混同するプレイヤーが多すぎたこと、そして直感的に理解することが難しかったことである。

 だからといって、これらのメカニズムをカメオとして入れたり、参照したりできないというわけではない。だが、我々が重視すべき要素の優先順位としては、かなり下のほうに位置していた。

 我々がセットのデザインを始めた時点での当初のアイデアは、セットの中核となる対立を「ローウィン対シャドウムーア」にすることだった。次元のどの部分から影響を受けているかによって、対立の片方に属することもあれば、もう片方に属することもある、というアイデアが気に入っていた。この枠組みから出発したため、セット構造の最初の試みは、セットの半分がもう半分と戦っている『ミラディン包囲戦』に似たものになった。さらに我々は、このセットにならって、プレリリースでプレイヤーに陣営を選ばせることまで検討した。

 そこで我々は、作ろうとしているセットを「二つのものが半分ずつ合体したもの」として考え始める必要があった。


ローウィン

 我々は、『ローウィン』で焦点を当てた8つのクリーチャー・タイプに結び付くタイプ的テーマを採用したいと分かっていたが、同時に、長年のタイプ的デザインで得た数多くの教訓を適用したかった。最良の実装は、プレイヤーは同じタイプを持っているクリーチャーでデッキを組み立てる必要があるが、デッキがうまく機能する理由は、そのクリーチャー・タイプをメカニズム上参照するからではなく、戦略面でそれらのクリーチャー同士の噛み合わせが良いからである。そうした(タイプをメカニズム上参照する)カードは構築向けに高レアリティで存在してよいし、そうあるべきだが、リミテッドのゲームプレイにおけるセットの中核にすべきではない。我々は多相を持つクリーチャーを入れるつもりであり、想起と覇権(あるいは少なくとも覇権を感じさせる何か)を入れられるかどうかにも関心があった。

 ここで、今日のカード・プレビューの話になる。覇権の最大の問題の1つは、覇権を持つカードをプレイする前に、適切なクリーチャー・タイプのクリーチャーが戦場にいることを要求する点にあった。そうでなければ、そのカードは手札の中で死んでしまう。覇権を再現しつつ、そのフレイバーを保つ方法はあるのか? 結論から言えば、あった。

 まずは私のプレビュー・カードを2枚お見せし、その後、我々が見つけた解決策について語っていこう。

▼クリックして2枚の闘士クリーチャーを表示

 最後に、我々はローウィン側として+1/+1カウンターを加えた。舞台の二面性を押し出したかったため、ローウィンが+1/+1カウンター、シャドウムーアが-1/-1カウンターを持つことは、それぞれのテーマに沿っており、互いが鏡写しであることを表していると感じたためだ。通常、1つのセットにおける基本のカウンターの種類は1種類(多くの場合+1/+1カウンター)だけなので、そこから逸脱するのは大きな決断であった。我々の案は、プレイ・ブースターにパンチアウト・カウンターを入れて供給することであり、カウンターが混在すること自体がセットの複雑さを一定量高める、と予想していた。


『シャドウムーア』

 我々が「色が重要」テーマを扱うことは分かっており、混成マナがそれを支える役割を果たすことになった(ただし『シャドウムーア』と比べれば開封比はかなり低い)。我々は『シャドウムーア』および『イーブンタイド』におけるこのテーマのさまざまな実装から、どれを取り入れるべきかを長い時間をかけて検討した。もう1つ、我々が採用すると決めたテーマは-1/-1カウンター・テーマである。これは『シャドウムーア』ミニブロックの最も象徴的な要素の1つだと感じており、しばらく-1/-1カウンターを使っていなかったため、このカウンターに関係するテーマを再登場させる頃合いだと感じた。

 我々は『シャドウムーア』のメカニズムをいくつも試した。そのうちのいくつか、たとえば頑強、萎縮、共謀は、セット内に僅かな枚数が登場する。だが全体としては、我々はいくつかの新しいメカニズムを探ることになった。我々がデザインした-1/-1カウンター向けのものの中では、「枯朽」が特にお気に入りだ。これは追加コストとして、あなたがコントロールするクリーチャーに、ある個数の-1/-1カウンターを置く。最初のバージョンでは、あなたが枯朽させたクリーチャーのタフネスが、置いたカウンターの個数以上である必要があったが、カードを簡素化するためにこの制限は取り除かれた。

 もう1つ気に入ったメカニズムがある。これは「虹/rainbow」と呼ばれていた。完成したセットでは、これは能力語「色彩/vivid」になった。これは何年も前から議論されていたメカニズムだったが、投入先となる「色が重要」セットがなかった。「虹」は、あなたが戦場に置いているパーマネントの中から色の数を数え、それを効果の可変値として用いるものだった。これは元々『インベイジョン』の版図メカニズムに着想を得ていた。展望デザイン中に使用していたバージョンは、『ゼンディカーの夜明け』のパーティー・メカニズムのように機能し、どのカードも1つの数にしか数えられないものだった。たとえば、青単色のパーマネントと5色のパーマネントをコントロールしている場合、あなたの「虹」(または色彩)カウントは2であった。青のカードは青として数え、5色のカードは任意の色として数えられるが、持つ色のうち1色としてしか数えられない。枯朽と同様、色彩はのちに複雑さを下げるために簡素化された。


異なるアプローチ

 「半分ローウィン、半分シャドウムーア」というアプローチでは、我々は友好色5組のアーキタイプをローウィンのフレイバーにし、対抗色5組のアーキタイプはシャドウムーアのフレイバーにしていた。コンセプトとしては素晴らしいアイデアに思えた。そう、実際にこれを形にしようとするまでは。最初の難題はタイプ的テーマであった。まず、ローウィンに忠実でありたいと考えた。では、マーフォークは白青、フェアリーは青黒、ゴブリンは黒赤、キスキンは緑白。ここまではすべて良い。では赤緑は? これはエレメンタルでなければならない。特に炎族は赤にしかいないが、他の色にもそれぞれのエレメンタルがいる。だがこうすると、人気の高いクリーチャー・タイプであるエルフが入らなくなってしまう。エルフは『シャドウムーア』では緑白だったが、『ローウィン』のエルフは黒緑であることが知られている。

 シャドウムーア側では、「虹」メカニズムに問題があることが分かった。メカニズムとしてのプレイ感は気に入っていたが、シャドウムーアの「色が重要」テーマには合致していた一方で、感情的にはローウィンのメカニズムのように感じられた。色が鮮やかかつ豊かであることは、より明るく、楽観的な印象を与えるからである。

 さらに追加の問題もあった。あらゆる要素をローウィン側かシャドウムーア側かに切り分けてしまうと、両者の要素を混ぜ合わせる空間で遊べなくなってしまう。次元への再訪の一部には、新しいデザイン空間で遊ぶことが求められる。ローウィンとシャドウムーアが共存していることこそが、テーマ面で相互作用させるべき新要素であった。

 その結果、我々はファイルに大きな変更を加えることになった。もしローウィンとシャドウムーアが対立している舞台ではなく、両者が混ざり合っている舞台だとしたらどうだろうか? もちろん両者の間にはいくつかの対立が残っているだろうが、セットの構造を均等に二分する必要はない。ローウィンの要素、シャドウムーアの要素、そして両方の側面が混ざり合った要素を持つことができる。クリエイティブ・チームは両陣営の中間にある中立地域を作っていたため、ローウィンのメカニズムがシャドウムーアのメカニズムと相互作用する理由付けも成立していた。

 これにより、構造面でいくつか大きな変更が生じた。第一に、セットは半々である必要がなくなった。各要素は必要なだけ枠を取れる。これについては後で詳しく述べる。第二に、友好色をローウィン、対抗色をシャドウムーアに結び付ける必要がなくなった。これにより、我々が望むクリーチャー・タイプのテーマをより適切に反映できるようになった。

  • 白青:マーフォーク
  • 黒赤:ゴブリン
  • 緑白:キスキン
  • 青赤:エレメンタル
  • 黒緑:エルフ

 この転換により、我々はエルフを、ローウィン次元で人々が連想する2色で描けるようになった。エレメンタルもまた、青赤のほうがよりしっくりきた。というのも、この2色は通常、四大元素を表す色だからである。後で説明しているとおり、フェアリーもテーマとして依然利用可能だが、タイプ的アーキタイプとしての焦点は薄くなっている。

 半々アプローチにおけるもう1つの問題は、新しいメカニズムがシャドウムーア側に偏りがちだったことだが、我々はローウィンにより大きな存在感を持たせたかったことだ(何せセット名は『ローウィンの昏明』だ)。この変更によって、5つのタイプ的アーキタイプがファイル内で占める枠を少し増やせるようになった。たとえば、10のアーキタイプすべてにアンコモンの混成カードがある一方で、多色の指標カードを持っているのは5つのタイプ的テーマだけである。

 半々アプローチから離れるにつれて生じた次の変更は、鏡写しにする必要性が薄れたことである。+1/+1カウンターと-1/-1カウンターを混在させるのは紛らわしかった。カウンターが載ったクリーチャーを見ても、そのサイズが分からなかったのだ。我々が通常、カウンターを混在させないのには理由があり、このセットのプレイテストはその理由を思い出させてくれた。最終的にセット・デザイン・チームは、-1/-1カウンターのほうがセット構造にとって重要だと判断した。彼らは枯朽のプレイ感を気に入っており、頑強と萎縮のカメオ出演も容易になった。『シャドウムーア』はまた、-1/-1カウンターを軸に作られた最初のリミテッド環境としても有名である一方、+1/+1カウンターは基本のカウンターであり、ほとんどのセットに登場している。

 セット・デザイン・チームは枯朽と色彩も簡素化することになる。枯朽は任意のクリーチャーにできるようになった。枯朽されるクリーチャーのタフネスに制限はない。1/1クリーチャーに枯朽3をしたいなら、それでもよい。色彩は、各パーマネントがどの色を代表しているかを選択するのではなく、単に色の数を数えるだけになった。

 残りの5つのアーキタイプはいずれも、セットのメカニズム要素を中心に据えたテーマを持っている。赤緑と緑青は色彩を押し出しており、赤緑はミッドレンジ戦略である。クリーチャーの波状攻撃に焦点を当て、色彩効果を用いてクリーチャーを強化し、勝利への最後のひと押しをする。対照的に、緑青はランプ戦略であり、強力な色彩の見返りと高コスト呪文を終盤に用いる。

 白黒と赤白は枯朽を押し出している。白黒は-1/-1カウンターをリソースとして用い、アドバンテージを生み出すよく練られた機械のようなデッキを作る。あなたは自分のクリーチャーに-1/-1カウンターを置き、それらを取り除いてアドバンテージを獲得していく。赤白は、-1/-1カウンター複数個が乗って戦場に出る大型クリーチャーをプレイ後、カウンターを取り除いてそれを巨大な脅威へと変え、攻撃の道を切り開く。

 青黒はトリック性と、対戦相手のターンにカードをプレイすることをテーマにしている。主にフェアリーなどの瞬速クリーチャーとインスタントを活用する。フェアリーのファンは多いと分かっていたため、フェアリーが重要な役割を担うアーキタイプを作りたかった。


カードには2つの面がある

 『ローウィンの昏明』セットに関して最後に話したい要素は、両面カードについてだ。私がローウィン=シャドウムーアへの再訪というアイデアを最初にアーク・プランニング・チームへ提案したとき、同時にこの次元には両面カード(DFC)が理想的だと述べた。元の『ローウィン』&『シャドウムーア』ブロックに両面カードが存在しなかったのは、当時の『マジック』にはまだ両面カードがなかったからである(数年後『イニストラード』で生まれる)。しかし、「変化」という二面性を扱う『マジック』の舞台があるとすれば、それはローウィン=シャドウムーアで間違いないだろう。

 最初の発想は、一方の面がそのクリーチャーのローウィン版を表し、もう一方の面がそのクリーチャーのシャドウムーア側を表す、というアイデアであった。上で説明したとおり、次元の各地へ移動するクリーチャーは、ローウィンやシャドウムーアの影響下にある地域へ入ることで変化するのだから、フレイバーにぴったりである。

 私がこのセットについて最初に考えていたとき、両面カードは最大何枚まで入れられるのか、ふと疑問に思った。もしすべてのカードが両面カードだったらどうだろうか? いや、これは私たちが狙っている雰囲気と矛盾する。世界は常にどちらか一方、というわけではない。また、盤面にある両面カードを1枚か2枚追跡するだけでも注意力を要する。盤面全体を追跡する? これは狂気の沙汰に感じた。テーマのやり過ぎは『ローウィン』&『シャドウムーア』ブロックの特徴でもあったが、これは我々が復活させる必要があると感じるものではなかった。そこで我々は『イニストラード』が最終的にたどり着いた地点、すなわちブースター1パックにつき両面カード1枚(つまり開封比1)から始めてみた。

 我々はすぐに、もう1つ解決すべき問題があると気づいた。両面カードの一方の面がもう一方より強くなることを避けたくなったのだ。『イニストラード』の変身の多くは、弱い人間が強力な怪物へと変わるものだった。ゲーム的に、変身後のほうがただ単に強いカードになっていたのである。モードを持つ両面カードは、このセットにはそぐわない。というのも、行ったり来たり戻れること自体が、この舞台のコンセプトの中核だからである。つまり、両方の面が概ね同等の価値を持つデザインが必要だった。

 我々はいくつかも異なるデザインを試した。私が最も興味深いと思ったのは、『ミラージュ』のフェイジング・メカニズムのように機能するカードで、クリーチャーが毎ターンただ表裏を行き来する、というものだった。奇数ターンではカードはローウィン側で、偶数ターンではシャドウムーア側になる。このデザイン形式は、物事を簡素化するうえで大いに役立った。カードが自動で変身するため、いつ切り替えるべきかを考えるために脳のリソースを使わずに済む。だが、そこには主体性の感覚がまったく欠けていた。ローウィン=シャドウムーアの住人は、自分がどちらの側で存在したいのかについて、決定権を持っているべきだ。

 最終的に、我々は現在のデザインへと至った。すなわち、クリーチャーがコストを支払って自身を行き来させられる、というものだ。これを促すために、多くのカードは変身したときに誘発する能力を持つ。こうしたデザイン上の制約に加え、両面カードを用いたプレイテスト経験の結果、我々は開封比を大きく下げることになった。最終的に、両面カードは7枚になった。レアのサイクルと神話レア2枚(各面がエレメンタルの神である1枚と、両面プレインズウォーカーのオーコ)である。派手な演出として少数が登場するが、リミテッド・プレイの決定的要素ではなくなった。


ローウィンらしい融合

 以上で、『ローウィンの昏明』のデザイン・ストーリーは終わりとなる。いつもの通り、この記事や紹介した内容、『ローウィンの昏明』に関するフィードバックを、メールやソーシャル・メディア(XTumblrInstagramBlueskyTikTok)を通じて(英語で)送ってもらえると幸いだ。

 来週は、『ローウィンの昏明』展望デザイン提出文書をお見せする予定だ。

 その日まで、あなたが『ローウィンの昏明』を、我々と同じくらい楽しんでくれることを願っている。


(Tr. Ryuki Matsushita)

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER

サイト内検索