- HOME
- >
- READING
- >
- Making Magic -マジック開発秘話-
- >
- 『ローウィン』をプレイする その2
READING
Making Magic -マジック開発秘話-

『ローウィン』をプレイする その2
2025年12月15日
先週、『ローウィン』ブロックのデザイン・ストーリーについて語り始めた。『ローウィン』の9つのクリーチャー・タイプをチームが最終決定したところまで話をした。今回はその続きからだ。
我々が多くの時間を費やしたことの一つは、『ローウィン』を『シャドウムーア』よりも「優しい」雰囲気に感じさせることであった。『ローウィン』に、より破壊的でない効果を多く入れられないか検討したが、それでは脅威への回答が減り、ゲームプレイの質が悪くなる。クリーチャーを殺すのではなく「痛めつける」フレイバーとして-1/-1カウンターを使うことも試したが、-1/-1カウンターは通常のクリーチャー除去よりも、より凶悪に感じられることが分かった。最終的に、-1/-1カウンターは『シャドウムーア』に導入された(我々が作った頑強メカニズムもだ。これについては後述する)。
アーロンは土地に載る宝物テーマのメカニズムを作った。土地でカードを追放し、クリーチャーをタップしてそれらを「掘り起こす」ことができる、というものだ。これはゲームを面白くない形に歪めてしまった。このメカニズムは最終的に秘匿となり、レア土地のサイクルとして収録した。結局、雰囲気を再現する解決策は、メカニズムよりも創作面で表現することであった。『マジック』のゲームプレイは楽しいので、そこをいじるために何かをすると、セットのプレイ感はただ悪くなるだけだった。
先週は多相の戦士について語り、今、秘匿についても取り上げた。このブロックの残りのメカニズムを見ていこう。
覇権
このメカニズムは、マット・プレイス/Matt Placeがビル・ローズ/Bill Roseと「マジックが進化テーマのメカニズムを一度もやっていないのは奇妙だ」という会話をしたことから生まれた。多くの他のカードゲームでは、クリーチャーをより大きく、より強いものへとアップグレードできる。なぜ『マジック』ではそれをやっていないのか? ビルは私のところに来て、「いつか進化テーマのメカニズムをやるべきだ」と言った。ローウィンがその日になった。
我々は、1対1対応の変身(クリーチャーAが必ずクリーチャーBに変身する)にはしたくなかった。ゲームプレイ上の制約が強すぎるからだ。それでもフレイバーは感じさせたかったので、何らかの制限は必要だった。クリーチャー・タイプに焦点を当てるのがちょうどよい落としどころに思えた。だからこそ『ローウィン』はこのメカニズムを採用するのに適切な場所だったのである。内在するカード不利を相殺するため、我々は「進化」した側、元のクリーチャーを追放することにした。そして、その能力(覇権)を持つクリーチャーが戦場を離れたなら、追放されていたクリーチャーは戻ることにした。我々は主要なクリーチャー・タイプすべてに対してレアのサイクル(加えて青にもう1枚)で作り、リミテッドでよく機能させるため、アンコモンには多相を持つ多相の戦士を3枚用意した。
激突
私は、このメカニズムも「必ずしも戦闘ではない形で対立を表す方法」を探っていた結果の一つだと考えている。興味深いことに、このメカニズムはティミー/タミー向けとしてデザインされた。小さな不確定要素の表出で効果の結果が左右されるからである。しかし実際には、スパイクにより受け入れられた。デッキをスムーズにするのに役立ったからだ。メカニズムとしては立派な試みではあったと思うが、今になって振り返れば、物足りなく感じる。
想起
これは、おそらく『ローウィン』の新規メカニズムの中で最も成功したものだろう。私が最初に作った想起のデザインは、インスタントやソーサリーで、あるコストを支払うとクリーチャーに変わる、というものだった。しかし、呪文が戦場にあるというルール処理がうまく機能しなかったため、変える必要があった。幸い、戦場に出たときの効果を持つクリーチャーにすることで、私が求めていた「呪文かクリーチャーか」メカニズムの大部分を捉えることができた。『モーニングタイド』では、戦場に出たときではなく死亡誘発を持つバージョンを試したが、今にして思えばこれは誤りだった。プレイ体験があまり良くなかったためである。
同族カード(旧名:部族)
これは厳密には新しいメカニズムではなく新しいカード・タイプであったが、デザイン上もっとも革新的な要素のひとつであった。発端はデザインチームが『フォールン・エンパイア』のカード《ゴブリンの手投げ弾》について話していたときだ。
なぜ《ゴブリンの手投げ弾》はゴブリン・カードではないのだろうか? フレイバー的には非常にゴブリンらしさがある。では、呪文にクリーチャー・タイプを与えればよいのか? それはできない。サブタイプは特定のカード・タイプに紐づいている(例外はインスタントとソーサリーで、これらはサブタイプを共有する)ため、ルールが(またしても)我々の邪魔をしたのだ。とはいえデザイン・チームは強硬であり、当時ルール・マネージャーだったマーク・ゴットリーブ/Mark Gottliebが成立させる方法を考え出した。彼は新しいカード・タイプ、同族(当時は部族)を作ったのである。この新しいカード・タイプにより、カードがこの新カード・タイプも持っていれば、クリーチャーでないカードにもクリーチャー・タイプを載せられるようになった。
後から考えてみると、このカード・タイプは最小限のメリットしか生まない割に、カード上の語数を大きく増やすことが分かった(例えば、ある呪文が参照するのが「クリーチャー」であって「そのサブタイプを持つあらゆる呪文」ではない、と明記せざるを得なくなる等)。そのため、我々はこのカード・タイプを使用するのをほぼ止めた。『モダンホライゾン3』には数枚の同族カードが収録されており、『ローウィンの昏明』にも数枚入る予定である。
プレインズウォーカー・カード
これもまた新しいカード・タイプであった。プレインズウォーカーは『未来予知』で初登場するはずだったが、十分に気に入るデザインが仕上がらなかったため、『ローウィン』へと先送りされた。このセットで導入された5人のプレインズウォーカー(しばしばローウィン・ファイブと呼ばれる)は《黄金のたてがみのアジャニ》、《ジェイス・ベレレン》、《リリアナ・ヴェス》、《チャンドラ・ナラー》 、《野生語りのガラク》である。これらのキャラクターは『ローウィン』ブロックのストーリーとは結び付いていなかった。
テーマとしてのタイプ的
『ローウィン』がタイプ的テーマにもたらした最大の革新は、すべてを第2色にまで広げたこと以上に、プレイ・パターンを中心に構築させた点にあった。各クリーチャー・タイプのクリーチャーは特定のプレイスタイルの一部となり、ゲームプレイそのものにフレイバーを付与したのである。これはタイプ的テーマをデザインする際の定番の手法になった。
『モーニングタイド』の頂
私が主席デザイナーになったとき、目標のひとつはブロックのプランニングであった。すなわち、ブロック内の各セットに明確な役割を持たせたい、ということだ。『ローウィン』と『モーニングタイド』を分ける私のアイデアは、『オンスロート』ではやる機会がなかったことに取り組むものだった。
『マジック』初期の頃、クリーチャー・カードが持つクリーチャー・タイプは多くの場合1つだけであった。やがてクリエイティブ・チームが「ほとんどのクリーチャーは少なくとも2つのクリーチャー・タイプを持つ」というアイデアを提案した。1つは種族を表し、もう1つは社会における役割や職業を表す(例えばエルフ・ドルイドやゴブリン・戦士)。新しいこの方式は、『オンスロート』の次のブロックであるオリジナルの『ミラディン』ブロックで初めて採用された。
私のアイデアでは、『ローウィン』は種族のタイプ的に焦点を当て、『モーニングタイド』は職業のタイプ的に焦点を当てることになっていた。我々は5つのクラス――兵士、ウィザード、ならず者、戦士、シャーマン――を選んだ。ほとんどのクリーチャー・カードは2つのクリーチャー・タイプを持つのだから、プレイヤーはデッキ内で複数のクリーチャー・タイプを選び、取捨選択しながら軸にできる環境を作れる、という発想である。これによりデッキ構築の選択肢は大幅に増える、と我々は想定した。ゴブリンならず者デッキは、ゴブリン戦士デッキとは異なる動きをするはずだ、と。
自分の誤りに気づくのに、そう時間はかからなかった。『モーニングタイド』の社内プレリリースで、私は社員たちが1マッチ遊んだ後に止めてしまう様子を見た。相互作用が多すぎたのだ。種族と職業のクリーチャー・タイプが交差して網目のように絡み合い、突破不能な複雑性の蜘蛛の巣となって、多くのプレイヤーを遠ざけた。あまりにひどかったので、マット・プレイス/Matt Placeと私がそのことを話し合った際、それが「新世界秩序」という思想の着想を与えた。これは、経験の浅いプレイヤー向けに複雑性を抑えるため、コモンを簡素化するという哲学であり、我々が採用したものである。私はこの新世界秩序の取り組みをこの記事で取り上げた。
『モーニングタイド』のメカニズムで、特別に記憶に残るものは結局ほとんどなかった。
族系
族系はライブラリーの一番上のカードを見て、それが一致するタイプのクリーチャー・カードかどうかを確認させるものであった。激突の後継を狙ったが、激突よりもさらに人気が出なかった。激突自体も大ヒットというわけではなかったのだが。背景にある狙いは、適切なクリーチャー・タイプのクリーチャーを多く採用すれば分散を減らせる、というものだった。しかし実際には、ただランダムすぎると感じられるだけであった。
徘徊
徘徊は、あなたが戦闘ダメージを与えていることを前提とする代替コストでプレイするメカニズムであった。これはならず者にしか載らなかった。何故、焦点にしている5つの職業のクリーチャー・タイプのうち、1つだけに向けたメカニズムを作ると決めたのか、私にもよく分からない。後になって、制約が強すぎたこと、そして「どのタイプでもよいのでクリーチャーが戦闘ダメージを与えている」ことだけを参照するので十分だったことが示される。
補強
私は補強をサイクリングの変種としてデザインした。サイクリングと同じく捨てることができるが、新しいカードを得る代わりに、一定数の+1/+1カウンターを得るのである。これはブロック内の多くのメカニズムに共通して見られる状態がある。中核となるアイデア自体は悪くないが、実装がアイデアに追いついていなかった、ということだ。結局のところ、カード1枚を+1/+1カウンターに替えるより、別のカードに替えたい場面の方が多いのである。
『シャドウムーア』への疑念を超えて
我々は『シャドウムーア』のミニ・ブロックを『マジック』の色をテーマにしたく、また混成マナが大きな機能的役割を果たすようにしたいと考えていた。この2つの決定が、セットのデザインの大部分を導いた。『シャドウムーア』は友好色の混成マナを用い、『イーブンタイド』は対抗色の混成マナを用いる、ということは初期の段階で決まった。私はデザイン工程を「このセットに入れられる混成マナ・カードの最大枚数は何枚か?」という問いから始めた。私は答えを50%だと判断した。この答えは結局間違っていたのだが、それについては後ほど述べる。
その数値を決めた後、私は普段はなかなかできないことをやれる好機があると気づいた。主要な5つのドラフト・アーキタイプが単色であるドラフト環境を作れるのだ。通常のドラフトでは、カードは約20%ずつそれぞれの色に割り当てられる。つまり単色デッキをドラフトしようとすると、使えるカードはごく一部に限られる。シールドでは通常、それは不可能に近い。だが『シャドウムーア』では、カード10%ずつがそれぞれの色に割り当てられ、さらにがカードの10%ずつがそれぞれの友好色ペアに割り当てられた。つまり任意の1色について、その色の単色デッキでプレイ可能なカードは全体の30%に達するのである。通常のドラフトより50%多いのである。『シャドウムーア』について突っ込める点はいろいろあるが、『シャドウムーア』―『シャドウムーア』―『シャドウムーア』のドラフトは、個人的にもっとも好きなドラフト環境のひとつである。そう、私は単色デッキをドラフトするのが大好きなのだ。
振り返ると、混成カードがセットの50%を占めるのは良い考えではなかった。主に、混成カードのデザインが私の想定よりも少し制約的だったからである。数を満たすために、我々は本来は伝統的な多色カードであるべきカードを何枚もデザインすることになった。実際に「破り」と言えるものは人々が思うほど多くはなかった(1桁台)が、混成カードのデザインの意図を巡って多くの混乱を生んだ。
残念ながら、私は『ローウィン』から『シャドウムーア』への変化を強調するため、クリーチャー・タイプの色割り当ても変更してしまった。意図は純粋であった。次元の各バージョンがどう異なるかを示したかったのだ。だが、もうひとつの目標は2つのミニ・ブロックが互いにうまく噛み合って遊べるようにすることであり、どのクリーチャー・タイプがどの色にいるかを変えることは、その計画を台無しにした。今になって振り返れば、私はクリーチャー・タイプを『ローウィン』と同じ色に残し、混成呪文には3色目を足すのが良かっただろう。
では、『シャドウムーア』のメカニズムを見ていこう。
ツーブリッドの混成マナ・シンボル
混成マナがセットの大テーマであったため、我々はそれで何か新しいことができないか実験した。混成への新しいひねりとして我々が「ツーブリッド」と呼んだものがあり、そこでは特定の色マナ1つを支払うか、無色2マナを支払うかを選べる。『シャドウムーア』にはツーブリッド・マナを持つアンコモンのサイクルと、レアのカード1枚が存在した。ツーブリッド・マナは興味深いツールであることが分かったが、再訪するまでには少し時間がかかったツールでもある。
-1/-1カウンター
前述したとおり、我々は当初『ローウィン』で-1/-1カウンターを使う予定だった。クリーチャーが殺されるのではなく負傷している、という初期アイデアだったのだが、結果としてより意地悪に感じられたため、『シャドウムーア』へと移した。我々は『ローウィン』と『シャドウムーア』の二面性を強調するのが大好きだったので、『ローウィン』が+1/+1カウンターを使い、『シャドウムーア』が-1/-1カウンターを使う、というのは素晴らしいフレイバーに思えた。我々は-1/-1カウンターをセットの中核カウンターとして使ったことがなかったので、それについて深く掘り下げを行った。私は概ね満足していたが、-1/-1カウンターには根本的な問題がひとつあることも分かった。
私が好きなゲームデザインの金言のひとつに、「ゲームは終わりへ向かわせる慣性が必要だ」というものがある。『マジック』では、+1/+1カウンターがその役割を果たす。クリーチャーを強くし、攻撃的になることを促す。時間の経過とともに戦場のパワーが増大していくのだ。だが-1/-1カウンターはその逆である。戦場を縮め、しばしばクリーチャーを殺し、ゲームを終わらせにくくする。これにより、-1/-1カウンターを標準のカウンターとして環境を作ることは、追加の難題となる。複雑性を抑え、プレイヤーが盤面を読みやすくするため、我々の標準方針は「セットの基本となるカウンターの種類を1つだけにする」であり、通常それは+1/+1カウンターである。
頑強
頑強は、-1/-1カウンターが『ローウィン』に存在していた短い期間に作られた。-1/-1カウンターを『シャドウムーア』に移したとき、頑強も移した。私は概ね、頑強のプレイ感触が好きであった。『シャドウムーア』では重要であった攻撃性を促したからだ。構築フォーマットにおける+1/+1カウンターと-1/-1カウンターの相互作用を簡素化するため、我々は「両者は互いを打ち消す(各1個ずつあるなら両方取り除く)」というルールを作った。これは頑強に関する追加のコンボをいくつか生む結果になった。私は後に、『闇の隆盛』で不死メカニズムとして、+1/+1カウンターを用いる形で頑強を作り直すことになる。
萎縮
萎縮は、-1/-1カウンターを用いた新しいメカニズム空間を試していたことから生まれた。ずっと以前、我々は「クリーチャーに与えられたダメージがすべて永続化する」メカニズムをいじってみたことがあったが、追跡が難しすぎたためうまくいかなかった。セットに-1/-1カウンターを入れることで、その問題は解決した。私はフレイバー(後に萎縮と毒カウンターを組み合わせて感染を作ることになる)を楽しんだ一方で、萎縮は、先に説明した「ゲームを終わらせる慣性を遅くしてしまう」という問題を助長する側面もあった。
アンタップ・シンボル
アンタップ・シンボルもまた、二面性というテーマに寄与するものだった。マーク・ゴットリーブ/Mark Gottliebが提案し、テーマ面では完璧な採用に感じられた。だが残念ながら、アンタップ・シンボルには2つの問題があった。第一に、アンタップ・シンボルはタップ・シンボルを色反転(黒い矢印を白い矢印にする)させ、さらに上下逆さまにしたものなのだが、注意して見ないとタップ・シンボルに見えすぎた。第二に、そのターンそのカードを使ったことを示すためにカードをタップするのは非常に直感的である。だからこそリチャード・ガーフィールド/Richard Garfieldはゲームを作ったときにこれを入れた。だが「アンタップすることをリソースにする」のはまったく直感的ではなく、どう使えばよいかを理解するのが難しかった。加えて、プレイヤーはタップ状態のクリーチャーがいる相手に向かって攻撃し続けた。タップ状態のクリーチャーが自分自身をアンタップしてブロックできる能力を持っていることを、忘れてしまうのである。私は、アンタップ・シンボルが今後再び広く使われることには懐疑的である。
テーマとしての色
私は昔から「色が重要」というテーマの大ファンであったが、『マジック』が進化するにつれ、色は中核的な常盤木メカニズムの一部でなくなりつつある。主な理由は、色を参照することは振れ幅が大きすぎるからだ。あるデッキに対しては壊滅的な効果を発揮し、別のデッキに対しては無意味であったりする。だからこそ、我々は畏怖や威嚇のようなものから離れ、代わりに威迫へと移っていった。シャドウムーアは「色が重要」を大きく用いた最後のセットであった。私はこのテーマを復活させられる場所を探してきたが、実現は難しい。
共謀
共謀は開発中に追加された。セットには呪文に影響するカードが少なく、これにより「色が重要」テーマを呪文側へつなげようとしたのである。呪文と同じ色で、かつアンタップ状態のクリーチャーを2体戦場に用意し、そのどちらもタップできる、という条件は少々重く、このメカニズムはあまりプレイされなかった。
『イーブンタイド』の話をしよう
『イーブンタイド』の主な狙いは、対抗色混成呪文バージョンの『シャドウムーア』になることであった。私は混成のデザイン空間には上限がある(私はその上限を過大評価していたが、上限があること自体は分かっていた)と分かっていたので、リソースという観点から対抗色カードへ移るのは理にかなっていた。問題は、2つのセットを一緒にドラフトしなければならず、そこに強い「色が重要」テーマがあったため、両者が組み合わさったときに継ぎ目なく機能しなかったことだ。確かに単色デッキはドラフトできるが、デッキ内のカードは残り4色を参照してしまい、そこでバランスを取るのが難しいことが分かった。
対抗色ペアに焦点を当てることのもう一つの問題は、それが我々のクリーチャー・タイプと噛み合わなかったことである。そのためクリエイティブ・チームは、ケルト神話を土台にした新しいクリーチャー・タイプをいくつか作らざるを得なかった。ノッグルのようなクリーチャー・タイプがセットに存在する理由がこれである。クリエイティブ面では楽しかったが、『シャドウムーア』ミニ・ブロックが、『ローウィン』ミニ・ブロックのタイプ的テーマと、うまく噛み合っていないことを意味した。
『イーブンタイド』には2つの新メカニズムを導入した。
回顧
回顧は、手札の土地を、墓地にある回顧付き呪文のコピーへと実質的に変換できるようにするものであった。実用的なメカニズムではあるが、我々が「プレイの繰り返し」問題と呼ぶものを抱えていた。リチャードがデッキをシャッフルさせたのは、ゲームが異なる展開になることが重要だからである。同じことが起き続けると、ゲームは楽しくなくなる。回顧呪文を唱えることは、その時点以降、その効果を何度も何度も目にすることを意味する。
彩色
このメカニズムは、『フィフス・ドーン』のデザイン中にアーロン・フォーサイス/Aaron Forsytheが単独で提出したカード案から始まった。私はそれがあまりに気に入ったので、彼に「これはメカニズムにすべきだ。温存する必要がある」と伝えた。我々は『未来予知』で、ミライシフト枠のカード(《燐光の饗宴》)として逆再録させ、ついに『イーブンタイド』で登場させた。彩色は、「概念は素晴らしいのに実装が悪かったメカニズム」の例である。味気ない名前を付け、複数の領域を参照させて散らしすぎ、他の彩色カードと並べてもうまくプレイできず、どの彩色カードのパワーレベルも本気で押し上げることもできなかった。セット発売時、彩色は失敗していた。何年も後、我々はこれをやり直すことになる。フレイバーのある名前を与え、参照先を戦場に限定し、デザインを押し上げた。このメカニズムは最終的に信心となり、これは非常に人気の高いメカニズムとなった。
総じて言えば、『イーブンタイド』はかなりの混乱であった。本稿執筆時点で、私は発売済みセット41個のデザインをリード、または共同リードしてきたが、『イーブンタイド』は明確にワースト5に入る。
振り返って
『マジック』をデザインする喜びの一つは、デザインを絶えず反復し、改善できることにある。その一方で、過去を振り返ると、学びと改善に繋がったあらゆる誤りばかりが目に付くことにもなる。『ローウィン』ブロック全体における最大の誤りは、テーマを攻めすぎたことだ。主席デザイナーとして、その責は完全に私にある。ローウィンはタイプ的が多すぎ、『シャドウムーア』は混成マナが多すぎた。私は各テーマの上限を見つけようとしていたのだと思う。どちらもやりすぎた。歴史的にはそれが重要で、これらのテーマの上限がどこにあるのかを学ぶ助けになったのだが、それでも振り返って「自分は何を考えていたんだ?」と言わずにいられないのは辛い。
良い面としては、このブロックは多くの革新を行った。後のセットに不可欠となるものを生み出したのである。おそらく最大のものは、秋以外の時期にも大型の基本でないセットを成立させられると証明したことだ。より多くの大型セットへと移行し、小型セットをやめていく流れは、ここから始まった。『ローウィン』はまた、タイプ的テーマを単に『マジック』の色で構築するのではなく、メカニズム上の機能で構築するというアイデアも我々に与えてくれた。これは、後のタイプ的セットをどう作るか、また非タイプ的セットにおけるドラフト・アーキタイプをどう組み立てるかを形作るうえで、重要な役割を果たした。ブロックには駄作もあるが、良いメカニズム(彩色の場合は少なくとも良いメカニズムの殻)がいくつもあり、我々はそれらを再訪し、改善することになる。
『ローウィン』ブロックが成し遂げた最後の大きなことは、『マジック』がトーン面でもさらに踏み込めることを示した点である。多くの意味で『ローウィン』ブロックが苦しんだ理由の一端は、それが時代を少し先取りしすぎていたことにある。まだ皆が完全には準備できていない時期に『マジック』の未来を示したのだが、いずれ皆は準備できるようになる。私は『ローウィン』を作ったことが、その到達を早めたのだと信じている。
昏明がやってくる
この振り返りが、次にやって来る『ローウィンの昏明』への備えになってくれれば幸いである。私は冬休みで2週間休む予定だが、1月に戻ったら、ローウィン=シャドウムーアへの帰還に向けたプレビューを開始する。私はこの2部構成の連載を、18年前に何が起きたかを理解してもらうために書いた。なぜなら、それが『ローウィンの昏明』のデザインにおいて非常に重要な役割を果たしたからである。
いつもの通り、この記事や紹介した内容、または『ローウィン』ブロックに関するフィードバックを、メールやソーシャル・メディア(X、Tumblr、Instagram、Bluesky、TikTok)を通じて(英語で)送ってもらえると幸いだ。
3週間後、『ローウィンの昏明』プレビュー開始時にまた会おう。
その日まで、あなたが『ローウィン』ブロックを振り返り、再び見たいと最も強く思う部分を見つけられますように。
(Tr. Ryuki Matsushita)
RANKING ランキング
-
重要『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』統率者デッキ追加生産時期の変更と増産につきまして|重要なお知らせ
-
広報室ファミリーマートで『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』ベーシック・ブースターを買って特製プラトークンをゲットしよう!|こちらマジック広報室!!
-
読み物第4話 その花を取ってこい|ローウィンの昏明
-
開発秘話『ローウィン』をプレイする その1|Making Magic -マジック開発秘話-
-
戦略記事第20回:『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』と世界選手権を経て|原根健太の徹底解説!スタンダード・アナライズ
NEWEST 最新の読み物
-
2025.12.19開発秘話
『ローウィン』をプレイする その2|Making Magic -マジック開発秘話-
-
2025.12.19戦略記事
今週のCool Deck:ばあばここでも活躍、5色人間(パイオニア)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2025.12.19広報室
2025年12月19日号|週刊マジックニュース
-
2025.12.18読み物
第6話 嫌な幻想をたっぷり|ローウィンの昏明
-
2025.12.18戦略記事
とことん!スタンダー道!切削の果てに……ゴルガリ・シーズン(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2025.12.17戦略記事
ティムール・カワウソ:予想外の大躍進(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
CATEGORY 読み物カテゴリー
戦略記事
コラム
読み物
BACK NUMBER 連載終了
- Beyond the Basics -上級者への道-
- Latest Developments -デベロップ最先端-
- ReConstructed -デッキ再構築-
- Daily Deck -今日のデッキ-
- Savor the Flavor
- 射場本正巳の「ブロールのススメ」
- 津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
- 浅原晃の「プレミアイベント三大チェックポイント!」
- ガフ提督の「ためになる」今日の1枚
- 射場本正巳の「統率者(2017年版)のススメ」
- かねこの!プロツアー食べ歩き!
- ロン・フォスターの統率者日記
- 射場本正巳の「統率者(2016年版)のススメ」
- マアヤのマジックほのぼの日記
- 金子と塚本の「勝てる!マジック」
- 射場本正巳の「統率者(2015年版)のススメ」
- 週刊連載インタビュー「あなたにとってマジックとは?」
- なかしゅー世界一周
- 中村修平の「デイリー・デッキ」
- 射場本正巳の「統率者(2014年版)のススメ」
- 中村修平の「ドラフトの定石!」
- 浅原晃の「プロツアー観戦ガイド」
- 鍛冶友浩の「プロツアー観戦ガイド」
- ウィザーズプレイネットワーク通信
- Formal Magic Quiz
- 週刊デッキ構築劇場
- 木曜マジック・バラエティ
- 鍛冶友浩の「デジタル・マジック通信」
- 鍛冶友浩の「今週のリプレイ!」
- 渡辺雄也の「リミテッドのススメ」
- 「明日から使える!」渡辺リミテッド・コンボ術
- 高橋優太の「このフォーマットを極めろ!」
- 高橋優太の「このデッキを使え!」
- 黒田正城の「エターナルへの招待」
- 三田村リミテッド研究室
- 新セットめった切り!
- シングルカードストラテジー
- プレインズウォーカーレビュー
- メカニズムレビュー
- その他記事





































