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Making Magic -マジック開発秘話-

デザインファイル:『オデッセイ』その4
2025年10月13日
ここ3週間にわたり、何十年前にデザインからデベロップへと引き継がれた『オデッセイ』のカード達について、シリーズ(その1、その2、その3)で記事を書いてきた。前回は、私が引継ぎを行ったカードのうち、印刷はされなかった(少なくとも『オデッセイ』では)カードについて紹介を始めた。青のカードまで紹介したので、黒から再開する。
CB02_XR
〈呪われた催眠術師〉
{2}{B}
クリーチャー ― ミニオン
1/2
{B}, {T}, あなたのライブラリーの上からカード5枚をあなたの墓地に置く:対象のプレイヤー1人は、自分の手札を1枚捨てる。この能力はあなたがソーサリーを唱えられるときのみ起動できる。
青だけがコストとして切削を扱っていたわけではなかった。このカードは、対戦相手としてはひどくプレイしづらくなるカードのように見える。こうしたカードを見るのは、何十年も前の自分の初期デザインを振り返るうえで楽しい部分である。
CB03_XR
〈絞殺の悪鬼〉
{4}{B}
クリーチャー ― インプ
2/2
飛行
[カード名]が戦場に出たとき、対象の対戦相手1人は2点のライフを失う。
[カード名]が戦場を離れたとき、対象の対戦相手1人は2点のライフを得る。
CB11_XR
〈絞め殺すグール〉
{5}{B}
クリーチャー ― ゾンビ
3/3
[カード名]が戦場に出たとき、対象の対戦相手1人は3点のライフを失う。
[カード名]が戦場を離れたとき、対象の対戦相手1人は3点のライフを得る。
UB06_XR
〈ゾンビの剣士〉
{5}{B}
クリーチャー ― ゾンビ・兵士
4/2
先制攻撃
[カード名]が戦場に出たとき、対象の対戦相手1人は4点のライフを失う。
[カード名]が戦場を離れたとき、対象の対戦相手1人は4点のライフを得る。
RB07_XR
〈狂乱の悪魔〉
{5}{B}{B}{B}
クリーチャー ― ホラー
8/8
トランプル
あなたのアップキープの開始時、あなたの墓地からカード4枚を追放するか、[カード名]を生け贄に捧げる。
[カード名]が戦場に出たとき、対象の対戦相手1人は8点のライフを失う。
[カード名]が戦場を離れたとき、対象の対戦相手1人は8点のライフを得る。
これはコモンを1枚含む垂直サイクルであり、リチャード・ガーフィールド/Richard Garfieldがデザインしたものだと私は考えている。彼は『オデッセイ』のデザイン・チームの一員だった。最終的にこの効果は『トーメント』へと移され、ライフを失うだけでなくさまざまな効果を持つよう拡張され、ナイトメア・クリーチャーに割り当てられた。
CB04_XR
〈ゾンビの殺し屋〉
{1}{B}{B}
クリーチャー ― ゾンビ・暗殺者
2/1
{B}, [カード名]を生け贄に捧げ、あなたの墓地からカード4枚を追放する:黒でないクリーチャー1体を対象とし、それを破壊する。
CB08_XR
〈生きる屍の象〉
{3}{B}
クリーチャー ― ゾンビ・象
2/2
{3}{B}, [カード名]を生け贄に捧げる:プレイヤー1人と、そのプレイヤーの墓地にあるカード最大4枚を対象として、後者を追放する。
CB10_XR
〈脳外科医〉
{2}{B}{B}
クリーチャー ― ミニオン
1/1
{3}{B}, 土地2枚を生け贄に捧げる:プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは自分のライブラリーの一番上のカード2枚を公開する。あなたはそのうち1枚を追放する。(残りはそのプレイヤーのライブラリーの一番上に戻す。)
〈疫病の前兆者〉
{1}{B}
クリーチャー ― ミニオン
1/1
{T}, あなたのライブラリーの一番上からカード6枚をあなたの墓地に置く:対象のクリーチャー1体は、ターン終了時まで -1/-1 の修整を受ける。
黒のテーマの1つとして、自分の墓地にあるカードをコストとして追放するという一連のカードが存在していたが、(ほとんどが)印刷に至らなかった。これはスレッショルドメカニズムと強く衝突してしまうためである。ただし、対戦相手の墓地のカードを追放する効果を持つカード何枚かは、残すことが許された。
CB20_XR
〈夜の儀式〉
{B}
インスタント
{B}
あなたのマナ・プールに{B}{B}{B}を加える。このマナはクリーチャー・呪文を唱えるためにしか使用できない。
《暗黒の儀式》が強すぎることは理解していたが、どれほど強すぎるのかまでは把握しきれていなかった。現在、黒のマナを生み出す「儀式」カードは赤にその役割を移している。
UB11_XR
〈深淵のスペクトファージ〉
{2}{B}{B}
クリーチャー ― スペクター
3/1
飛行
[カード名]がプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび、そのプレイヤーはカードを1枚引き、その後自分の手札を2枚捨てる。
これはなかなか面白い《催眠の悪鬼》系のバリエーションである。ときどき相手を助けてしまうリスクを伴う点が気に入っている。当時、我々は「捨てさせる」代わりに、こうした手札交換を行わせるタイプのデザインをいくつか試していたが、結局それほど価値がないと判断した。
RB15_XR
〈ゾンビの横行〉
{3}{B}{B}{B}
ソーサリー
各プレイヤーは自分の手札を公開し、黒の2/2のゾンビ・クリーチャー・トークンをX体戦場に出す。Xはそれぞれの手札にあるカードのマナ総量の合計に等しい。
このカード名がとても気に入っていたので、最終的に『オデッセイ』の別のカードでも同じ名前を使ったのだと思う。「引き継ぎ版の〈ゾンビの横行〉」も「実際に印刷された《ゾンビの横行》」もどちらも2/2の黒のゾンビ・トークンを生成するが、印刷された方は手札をコストとして使うというよりも、「手札は生成を制限する要素として扱う」デザインになっている。最大の問題は、このカードは6マナもかかることだった。その段階では手札があまり残っていないのが普通である。
CR01_XR
〈修正版イーカンドゥー・サイクロプス〉
{3}{R}
クリーチャー ― 巨人
3/4
戦闘終了時、もし[カード名]が攻撃しておらず、かつこのターンに他のクリーチャーが攻撃していたなら、[カード名]を生け贄に捧げる。
《イーカンドゥー・サイクロプス》は『ミラージュ』に存在したコモンのクリーチャーである。テキスト自体はシンプルなコンセプトで、「このサイクロプスは攻撃が好きなので、自分のクリーチャーのうち誰かが攻撃したなら、これも攻撃する」というものだった。フレイバー的にもコモンとしてもちょうどよいデザインだったが、問題があった。プレイヤーが《イーカンドゥー・サイクロプス》で攻撃し忘れるのである。なぜか? プレイヤーは通常「攻撃しているクリーチャー」に意識を向けるため、「攻撃していないクリーチャーのテキスト」を確認し忘れるからだ。攻撃することは強制行動だったが、普通、戦闘のやり直しは極力避けたいために大会で無数の混乱を招いた。
そこで私が考えたのがこの修正版である。カードのコンセプトはそのままに、ほんの少しだけ仕組みを変えた。攻撃は任意になったが、もし攻撃しなかった場合には戦闘終了時に生け贄に捧げる必要がある。これにより、プレイヤーはテキストを意識する動機が生まれ、仮に忘れても結果が明確になり(ジャッジ泣かせでなくなる)一応の解決を見た。だが、最終的に〈修正版イーカンドゥー・サイクロプス〉は不要だという結論になった。私は「うまい修正を思いついた!」と興奮していたのだが、デベロップ・チームは私に「よくやった」と言って、そのままカードを削除した。
UR04_XR
〈ドワーフの機関銃〉
{1}{R}
クリーチャー ― ドワーフ
1/1
[カード名]はあなたのアンタップ・ステップにアンタップしない。
クリーチャー1体が戦場から墓地に置かれるたび、[カード名]をアンタップする。
{T}:クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。[カード名]はそれに1点のダメージを与える。
このカードはリチャード・ガーフィールドによってデザインされ、彼は非常に気に入っていた。なぜカットされたのかは覚えていない。気に入られなかったわけではなく、単にセットに必要な枠を空けるために外されたのだ。その埋め合わせとして、1年後の『オンスロート』でこのカードはゴブリンになり《ゴブリンの名手》として収録された。ただし、コストは{1}追加されている。
RR01_XR
〈鞭使い〉
{2}{R}{R}
クリーチャー ― ドワーフ
1/1
{T}:クリーチャー1体を対象とする。[カード名]はそれに、このターンにすでにそれに与えられたダメージに等しい点数のダメージを与える。
このカードは魅力的な発想ではあったが、ひとつ大きな欠点があった。記憶の問題だ。あなたは各ターンのあらゆる時点で、自分のクリーチャーにどれだけのダメージが与えられているかを正確に覚えていられるだろうか? 一見単純そうに見えるが、実際にプレイしてみると想像以上に難しい。 特に攻撃を考えるときには、すべてのダメージのパターンを計算しなければならず、非常に複雑になる。
RR06_XR
〈炎のヘリオン〉
{3}{R}{R}
クリーチャー ― ファイアビースト
0/0
トランプル
[カード名]は+1/+1カウンター7個が置かれた状態で戦場に出る。
あなたがコントロールする土地1枚がタップされるたび、[カード名]から+1/+1カウンターを1個取り除く。
このカードでは、当時としては破格の{5}で7/7を得ることができた。デメリットはやや過剰ではあるが、この大胆なデザインそのものは評価している。
RR08_XR
〈無学の暴徒〉
{4}{R}
クリーチャー ― バーバリアン
4/2
あなたがカードを引けなかったとしても、あなたはそれでゲームに敗北しない。
このセットは引き継ぎ時点で切削テーマが強かったため、ライブラリー切れで負けないクリーチャーを作ってみた。当初はこのカードに「あなたはカードを引かないことを選んでもよい」というテキストを加える案も検討したが、切削関連のカードが多数削除されたため、このカードも同時に削除された。
RR13_XR
〈どんな犠牲を払ってでも〉
{2}{R}
エンチャント
プレイヤーが他のプレイヤーのターン中にマナを引き出す目的で土地をタップするたび、その土地を破壊する。
一般的に、相互作用を促すカードを作りたいものだ。このカードを見れば、いかにこの時代が昔だったかがわかる。当時は土地破壊に対して非常に寛容だったのだ。
UG06_XR
〈突進するマンモス〉
{5}{G}
クリーチャー ― 象
3/4
あなたの墓地にあるクリーチャー・カード1枚につき、[カード名]を唱えるためのコストは{1}少なくなる。
このカードは『オデッセイ』では印刷されなかったが、やがてこのアイデアは実際に採用されて印刷された。『闇の隆盛』の《グール樹》や『テーロス』の《定命の者の宿敵》は、同様の能力を持つ緑単色のクリーチャーである。
UG17_XR
〈ルアゴイフの鎧〉
{G}
エンチャント(クリーチャー)
エンチャントされているクリーチャーは、そのコントローラーの墓地にあるクリーチャー・カード1枚につき+1/+1の修整を受ける。
『オデッセイ』で印刷はされなかったが、ブロックの後半で収録されたカードもある。このカードは『ジャッジメント』で《外骨格の鎧》のとして登場した。テンプレートは若干変更され、コストが{1}重くなり、カード名も新しいものに変わった。ちなみに「ルアゴイフの鎧」という名前は、正式ではなく仮で与えられたカード名であっただろう。
RG16_XR
〈黄昏の新たな芽吹き〉
{2}{G}{G}
ソーサリー
回収{5}{G}{G}(このカードがあなたの墓地にある場合、あなたはこれをあなたの手札にあるかのようにプレイしてもよい。そうしたなら、これのマナ・コストは{5}{G}{G}であり、呪文の効果の一部として、これを追放する。)
あなたの墓地にあるカード1枚を対象とし、それをあなたの手札に戻す。その後、あなたの墓地にあり、そのカードと同じカード・タイプを持つすべてのカードを追放する。
これはフラッシュバック付きの《新たな芽吹き》を作ろうとした試みである。再利用可能な《新たな芽吹き》系呪文の最大の課題は、同じカードを何度も回収してしまい、ゲームが単調になる点にある。このデザインでは同じタイプの他のカードをすべて追放し、そのタイプのカードを1枚だけ回収できる状態を作り、その問題を解決しようとした。最終的にこの呪文は手間のわりに見合わず採用されなかったが、こうした試みそのものは興味深く、楽しい。
UA09_XR
〈巨大豆発射機〉
{5}
アーティファクト
{3}, {T}:プレイヤー1人を対象とする。[カード名]はそれに2点のダメージを与える。
スレッショルド ― あなたの墓地にカードが10枚以上あるかぎり、[カード名]は「{3}, {T}:クリーチャー1体を対象とする。[カード名]はそれに2点のダメージを与える。」を持つ。
印刷版『オデッセイ』では、スレッショルドを持つアーティファクトは《オタリアの巨大戦車》1枚だけだったが、実際にはこのような他の試作品も存在した。〈巨大豆発射機〉は、スレッショルドを達成しても効果自体は変わらず、対象に取れるものが変わる点が面白い。通常はプレイヤーにダメージを与え、スレッショルドを達成すると今度はクリーチャーにも与えることができる。プレイ体験が十分に良くなかったためカットされたが、スレッショルドの活用方法を実験しているのを眺めるのは楽しい。
UA10_XR
〈水晶のプリズム〉
{2}
アーティファクト
{T}:あなたのマナ・プールに{1}を加える。
スレッショルド ― あなたの墓地にカードが10枚以上あるかぎり、[カード名]は「{T}:あなたのマナ・プールに好きな色1色のマナ1点を加える。」を持つ。
これも試作されたスレッショルド・アーティファクトの1枚である。当時は2マナのアーティファクトで、タップするとマナを出すカードを多くデザインしていた時期だった。このカードの最大の問題は、スレッショルドを達成する頃には好きな色のマナを出せることにあまり意味がなくなる点だった。中盤から終盤では、色マナよりもカードアドバンテージや直接的な影響力が重要になるため、ボーナスが退屈に感じられた。
UA15_XR
〈オルゴール〉
{1}
アーティファクト
{3}:[カード名]の上に成長カウンター1個を置く。
{3}, [カード名]を生け贄に捧げる:[カード名]の上に置かれた成長カウンター1個につき、1/1のノーム・アーティファクト・クリーチャー・トークン1体を生成する。
このデザインがなぜここにあるのかは正直わからない。とはいえ、機械仕掛けのノームたちが踊り出すオルゴールという発想は気に入っている。どうやら大量の1/1トークンを簡単に出せてしまうことを恐れ、非常に慎重な調整がされていたようだ。
RA04_XR
〈曖昧の宝珠〉
{4}
アーティファクト
プレイヤーは各ターンに、土地でないパーマネントの起動型能力を1つしか起動できず、その能力もそのターン中に1回しか起動できない。
この引継ぎファイルには、起動型能力を制限したり封じたりするカードが非常に多く見られる。しかし、魔法のオーブが干渉して混乱をもたらすというテーマが一貫して継続されているのは評価したい。
RA05_XR
〈デッキはまだ尽きていない〉
{1}
アーティファクト
{T}:あなたがコントロールするパーマネント1つか、あなたの手札にあるカード1枚をあなたのライブラリーの一番下に置く。
このカードは、山札切れによる敗北を防ぐための2つ目の手段である。こちらの方がより独創的だと思う。もし自分の墓地を空にできるなら、このカードではちょっとしたコンボめいた悪さもできる。おそらくこのカードは私が作ったもので、『アライアンス』の《Soldevi Digger》が大好きだったことが、このデザインに影響を与えていたのだろう。
RA09_XR
〈安寧の護符〉
{3}
アーティファクト
あなたの墓地にあるカードの起動コストは{1}少なくなる。
他のプレイヤーの墓地にあるカードの起動コストは{1}多くなる。
これは「自分の墓地にあるカードの起動型能力」に対して適用されるマナ軽減能力を試したものだ。ただし、相手を妨害する部分は必要なかったと思う。
RA11_XR
〈埃まみれの書物〉
{4}
アーティファクト
{3}, {T}:プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは自分のライブラリーの一番上にあるカード3枚を公開し、そのうち1枚を選ぶ。そのプレイヤーの対戦相手1人が別の1枚を選ぶ。そのプレイヤーは選ばれた2枚を自分の墓地に置き、残りのカードを自分の手札に加える。
『テンペスト』で、私は《直観》というカードをデザインした。
《直観》が初めて私に対してプレイテストで使われたとき、対戦相手は同じカードを3枚選んできた。私は「それは想定外だ。3種類の異なるカードを選ぶカードのはずだった」と言った。だが相手は「同じカードを3枚選べるのはクールだ、デザインの意図通りに変更するのではなく、現在のテキストの仕様にすべきだ」と主張した。デザイン・チームで議論を重ねた結果、最終的にこの仕様のまま残すことにした。〈埃まみれの書物〉は、私が当初意図していた《直観》の形を再現しようとしたものである。結局これは印刷はされなかったが、のちに『神河物語』の《けちな贈り物》で実現した。ようやく私が本来作りたかったカードを印刷することができた。
RA13_XR
〈がらくた細工〉
{5}
アーティファクト
{5}, [カード名]を追放する:あなたの墓地から、カード・タイプがそれぞれ異なるようにカード最大4枚までを対象とし、それらをあなたの手札に戻す。
これもまた《新たな芽吹き》系の派生カードである。複数枚のカードを手札に戻せるが、それぞれ異なるカード・タイプを選ばなければならないという制約のアイデアが気に入っている。
RL01_XR
〈モウの地〉
土地
(カード・タイプ:土地)
{C}{W}{G}{R}{B}{U}
[カード名]が戦場に出るに際し、あなたは2点のライフを失い、色1色を選ぶ。
{T}:あなたのマナ・プールに、選ばれた色のマナ1点を加える。
リチャード・ガーフィールドは『アラビアンナイト』で《真鍮の都》というカードをデザインしていた。
これは好きな色のマナを出せる土地であったが、タップするたびに1点のダメージを受けるという性質を持っていた。私は能力を使うためにライフを支払う必要がある発想は気に入っていたが、毎回ライフ損失を記録するのが面倒だとも感じていた。そこで考えたのが、最初にライフを支払う方式である。最初に一定のライフを払えば、以降は選んだ色のマナを出せるようにする、というデザインだ。この土地は最終的に『オデッセイ』のファイルに残らなかったが、「ライフの先支払い」というアイデア自体は私の中に残った。そして『ラヴニカ:ギルドの都』でショックランドをデザインした際に、この考えを再び用いた。その頃には土地がダメージを与えるのではなく、ライフを支払う形にした方が処理が簡潔だと気づいていたのだ。
RL03_XR
〈物語の祭殿〉
伝説の土地
{T}, あなたの墓地にあるクリーチャー・カード1枚を追放する:[カード名]の上に墓標カウンター1個を置く。
{T}:あなたのマナ・プールに、[カード名]の上に置かれた墓標カウンター1個につき{C}を加える。
この土地は、墓地をリソースとして利用し、追加のマナを得るというアイデアを試したものである。しかしこのカードには2つの問題があった。1つ目は、あまりにも素早く大量のマナを生み出せてしまうこと。2つ目は、セットの主要テーマであるスレッショルドと矛盾が生じることであり、これは避けたいことだった。
RL04_XR
〈真理の図書館〉
土地
{T}:あなたのマナ・プールに{C}を加える。
{3}, {T}:あなたのライブラリーの一番上のカードを見る。あなたはそのカードをライブラリーの一番下に置いてもよい。
この土地は占術メカニズムが登場するよりも何年も前に、「占術的な挙動」を持たせていた試作カードである。アーロン・フォーサイス/Aaron Forsytheが『フィフス・ドーン』のデザイン中に占術を作り出したが、彼がこのカードの存在を知っていたとは考えにくい。
RL05_XR
〈ペットの墓地〉
土地
{T}:あなたのマナ・プールに{C}を加える。
{4}, {T}, 土地2つを生け贄に捧げる:あなたの墓地にあるクリーチャー・カード1枚を対象とし、それをあなたの手札に戻す。
何年も後、私たちはこの種のメカニズムを持つ土地を実際に印刷することになった。たとえば、『闇の隆盛』の《憑依された沼墓》、『ドミナリア』の《愚蒙の記念像》、『ブルームバロウ』の《泥干潟村》などだ。ただし、印刷されたこれらのカードはいずれも繰り返し使用できるものではなかった。どのカードも、能力の起動にはその土地自身を生け贄に捧げる必要があるようにデザインされている。
墓地を締めくくって
4回に分けて語ることになったが、遂に終わりを迎えた。『オデッセイ』がデザイン提出後に移り変わっていく様子を振り返ってみたが、楽しんでもらえたなら幸いだ。約30年前の自分が手掛けた仕事を見返すのは、私もとても楽しかった。いつもの通り、この記事、あるいは『オデッセイ』や今回取り上げた個々のカードについての感想やフィードバックをメールやソーシャル・メディア(X、Tumblr、Instagram、Bluesky、TikTok)を通じて(英語で)送ってもらえると幸いだ。
来週は「マイワード」の続きで赤が語ってくれる予定だ。
その日まで、あなたが昔のことを振り返るのを楽しめますように。
(Tr. Ryuki Matsushita)
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