- HOME
- >
- READING
- >
- Making Magic -マジック開発秘話-
- >
- デザインファイル:『オデッセイ』その3
READING
Making Magic -マジック開発秘話-

デザインファイル:『オデッセイ』その3
2025年10月6日
過去2週間(その1とその2)に渡って、『オデッセイ』引継ぎ文書から最終的に印刷されたセットへ採用されたカードについて話してきた。今回は、引継ぎ文書にはあったものの、採用されなかったカードについて語っていく。それらの中には後に別のセットで印刷されたカードもあれば、(少なくとも今のところは)印刷されていないカードもある。さっそく、デザインしたが採用されなかったカードを見ていこう。
RW18_XR
〈神聖な啓示〉
{2}{W}{W}
エンチャント
[カード名]は予言カウンターが3個置かれた状態で戦場に出る。
あなたのアップキープの開始時に、予言カウンター1個を取り除く。[カード名]に予言カウンターが1個もない場合、他の各プレイヤーよりもライフが5点以上多いプレイヤーは、ゲームに勝利する。
RU18_XR
〈神秘の啓示〉
{2}{U}{U}
エンチャント
[カード名]は予言カウンターが3個置かれた状態で戦場に出る。
あなたのアップキープの開始時に、予言カウンター1個を取り除く。[カード名]に予言カウンターが1個もない場合、他の各プレイヤーよりも手札が5枚以上多いプレイヤーは、ゲームに勝利する。
RB18_XR
〈闇の啓示〉
{2}{B}{B}
エンチャント
[カード名]は予言カウンターが3個置かれた状態で戦場に出る。
あなたのアップキープの開始時に、予言カウンター1個を取り除く。[カード名]に予言カウンターが1個もない場合、他の各プレイヤーよりも自分の墓地にあるクリーチャー・カードの枚数が5点以上少ないプレイヤーは、ゲームに勝利する。
RR18_XR
〈混沌の啓示〉
{2}{R}{R}
エンチャント
[カード名]は予言カウンターが3個置かれた状態で戦場に出る。
あなたのアップキープの開始時に、予言カウンター1個を取り除く。[カード名]に予言カウンターが1個もない場合、他の各プレイヤーよりもコントロールする土地の枚数が5枚以上多いプレイヤーは、ゲームに勝利する。
RG18_XR
〈新緑の啓示〉
{2}{G}{G}
エンチャント
[カード名]は予言カウンターが3個置かれた状態で戦場に出る。
あなたのアップキープの開始時に、予言カウンター1個を取り除く。[カード名]に予言カウンターが1個もない場合、他の各プレイヤーよりもコントロールするクリーチャーの数が5体以上多いプレイヤーは、ゲームに勝利する。
このサイクルを最初に取り上げた理由は2つある。1つは、これがひとつの完全なサイクルであるため。もうひとつは、このサイクルはそのままの形でこそ印刷されなかったものの、『オデッセイ』ブロックに収録されたあるサイクルに影響を与えたからである。私は代替勝利条件が大好きであり、それがこのサイクルを作るきっかけとなった。キャリアの初期の頃、私はよくライブラリー破壊デッキをプレイしていた(このテーマは後ほど語る)。なぜなら、対戦相手のライフを0にする以外の方法で勝つのが好きだったからだ。
ウィザーズに入社してから、私は代替勝利条件をサポートするカードのデザイン案を提出し始めた。『インベイジョン』では《合同勝利》を実現させ、『Unglued』では《The Cheese Stands Alone》を収録することができた。そして『オデッセイ』は私が担当するセットだったので、私はこれまでにやったことのない試みに挑戦することにした。代替勝利条件を持つカードのサイクルを作ることだ。この「啓示/Revelations」と呼ばれるカードは、いずれも予言カウンターが3個置かれた状態で戦場に出て、自身の各アップキープの開始時にカウンターを1個取り除く。各カードは、「あるプレイヤーが各対戦相手より特定の要素を5つ以上多く持っているなら、そのプレイヤーはゲームに勝利する」という勝利条件を持っていた。その「特定の要素」は、各色の強みと対応していた。つまり、白はライフ、青は手札の枚数、黒は墓地のクリーチャー数、赤は戦場の土地の数、緑は戦場のクリーチャーの数、という具合である。カウンターを用いたのは、勝利条件が達成されるまでに対戦相手に対応する時間を与えるためだった。つまりエンチャント自体を除去するか、あるいは勝利条件を満たさないように阻止する猶予を持たせたのである。
しかしデベロップメントはこの「啓示」サイクルに3つの大きな問題を見出した。第一に、ひとつのセットに5枚もの代替勝利条件カードを入れるのは多すぎるという点。第二に、サイクルとして構造が厳密すぎるため、全体のバランス調整が非常に難しいという点。第三に、カウンターの扱いが煩雑すぎるという点である。それぞれの問題には、以下のように対応することにした。
まず第一に、サイクルをブロック全体に分散させることにした。結果として、『オデッセイ』に2枚、『トーメント』に1枚、『ジャッジメント』に2枚という構成になった。『トーメント』と『ジャッジメント』は特定の色に焦点を当てたセットだった(前者は黒が多く、後者は緑と白が多かった)ため、それぞれのセットに対応する色の勝利条件カードを収録した。
第二に、サイクルの厳密さを大幅に緩めた。すべてのカードを「あなたのアップキープの開始時に、[特定の条件]を満たすなら、あなたはゲームに勝利する」という形に統一し、条件自体はデッキ構築のテーマとして最もクールなものへ制限なしで変更した。もはや互いに似通っている必要はなかった。代替勝利条件という一点だけで十分にまとまりを持てたからだ。私はこれらのカード名とコンセプトにも共通性を持たせた(当時、私は『オデッセイ』のカード名も担当していた)。すべてのカードは「二者の戦い」をテーマにしていた。
最後に、デベロップメントは対戦相手に与える猶予は1ターンだけで十分と判断した。そのため、これらのエンチャントはすべて「あなたのアップキープの開始時」に誘発する形になった。そして、これが実際に『オデッセイ』ブロックで登場したサイクルである。
白、黒、緑のカードは、「啓示」版と同じ要素を参照していたが、対戦相手より何かを多く持つ必要はなく、ゲームとしてバランスが取れると思われる具体的な数値を設定する形に変更された。青は引き続きカードを参照するが、「手札の枚数」ではなく「ライブラリーの枚数」を参照するようになった。私たちは、このカードが巨大なデッキを構築することを促すというアイデアを非常に気に入っていた。赤のカードは大幅に方向転換し、「コイン投げ」というランダム性を扱うものになった。これらのカードはいずれもある程度プレイされたが、その中でも《機知の戦い》はこのサイクルのスター的存在となり、ハイレベルなトーナメントでもプレイされた。
RW03_XR
〈ルーンの祖母〉
{W}
クリーチャー ― クレリック
1/1
{1}{W}, {T}:対象のパーマネント1つは、ターン終了時までプロテクション(インスタントとソーサリー)を得る。
『ウルザズ・レガシー』のために、私は《ルーンの母》というカードをデザインした。このカードは非常によく使われた。その派生として作ったのが〈ルーンの祖母〉である。これは、特定の色からクリーチャーを守る代わりに、特定のカード・タイプ、具体的にはインスタントとソーサリーから守るというものだった。起動にコストを設定している点から察するに、私たちは《ルーンの母》をやや強すぎると感じていたのだろう。このカードが最終的に削除されたのは、メカニズム的にもクリエイティブ的にも、セットのテーマと結びついていなかったためだと思われる。興味深いことに、私たちはこれまでにも《ルーンの母》の亜種をいくつか作ってきたが、特定のカード・タイプからのプロテクションを与えるタイプのものは、いまだに実現していない。
RW14_XR
〈もう血は流さない〉
{2}{W}
エンチャント
プレイヤーは、コストとして生け贄を要求する呪文や能力をプレイできない。
スレッショルドをサポートするために墓地を増やすカードが必要だった。そのため、このセットでは通常よりも生け贄に捧げる効果が多く採用されていた。そこで私たちは、それを直接的に阻止するカードを作った。しかし、このカードがセットから外された主な理由は二つあったと思う。1つは、このカードの効果が非常に狭い用途しか持たないという点だ。新しいカードを追加しようとするとき、こうしたニッチなカードはどうしても採用の優先度が下がってしまう。もうひとつ、より根本的な問題は、この効果をルール的に整合性のある形でテンプレート化するのが難しいという点だった。
たとえば「生け贄を要求する」とは正確にはどういう意味なのか? 何らかの追加コストとしてパーマネントを生け贄に捧げることを指すのか? それは強制的な生け贄なのか? それとも任意で生け贄に捧げることを選べるカードも含まれるのか? マナ・コストの生け贄だけを指すのか? それとも起動型能力のコストに含まれる生け贄も対象なのか? あるいは、コストではなく効果として生け贄に捧げる場合も含むのか? このように、このカードは多くの疑問を生むが、明快な答えを出すのが難しいタイプのデザインだった。私たちは通常、こうしたルール的に扱いが難しいカードは印刷しないようにしている。
さて、以前にも述べたように、私はライブラリー破壊が大好きである。そして今回は墓地テーマのセットである。これほど切削カードを作るのにふさわしい環境もないと思い、私とデザインチームは大量の切削カードを作った。いや、大量という言葉でも足りないかもしれない。とにかく本当にたくさん作った。なぜこれほど多く残したままセットを引き渡したのか、今となっては自分でもよく覚えていない。しかし最終的に印刷されたセットでは、対戦相手のデッキを切削することを主目的としたカードはわずか1枚《心の傷跡》だけになった。 なぜそうなったのか?
それは、切削がスレッショルドと強く衝突するメカニズムだったからである。対戦相手のライブラリーを少しだけ削ると、それはむしろ相手の墓地を肥やし、スレッショルド達成を助けることになってしまう。したがって、切削が有効なのは相手のライブラリーをすべて削り切れる場合に限られたが、実際にそうなる展開はほとんどなかった。とはいえ、私たちは本当にたくさんの切削カードをデザインしたので、ここではその一部を紹介していこうと思う。
CU07_XR
〈瞑想する魔術師〉
{4}{U}
クリーチャー ― ウィザード
1/4
[カード名]がダメージを受けるたび、対象のプレイヤー1人は自分のライブラリーの一番上からカードをX枚自分の墓地に置く。Xは受けたダメージの点数に等しい。
このカードは、ダメージを通して切削する形でライブラリー破壊を扱っていた。パワーが1しかないため、(防御側のプレイヤーが自分の墓地を肥やしたくない限りは)多くのプレイヤーは実質的にブロック不可能なクリーチャーとして扱っていたようだ。このカードが削除されたのは、おそらくプレイヤー同士のやり取りを阻害してしまうためだと思われる。
CU10_XR
〈禅の魔術師〉
{U}
クリーチャー ― ウィザード
1/1
[カード名]がプレイヤーにダメージを与えたとき、そのプレイヤーは自分のライブラリーの一番上からカードを4枚自分の墓地に置く。
これは、いわゆるサボタージュ型の切削クリーチャーである。1/1というサイズではダメージを通すのが難しいため、我々は〈禅の魔術師〉は4枚切削することにした。今日紹介している他のカードでも見られるように、当時の我々は「1枚のカードが何枚切削すべきか」という点について、数値設定がかなりばらついていた。
CU11_XR
〈放蕩魔道士〉
{2}{U}
クリーチャー ― ウィザード
1/1
{T}:[カード名]は対象のクリーチャー1体に1点のダメージを与える。
{T}:対象のプレイヤー1人は、自分のライブラリーの一番上からカードを2枚自分の墓地に置く。
当時は、青のカードでも直接ダメージを与えることができた時代だった。とはいえ、それは1/1のクリーチャーがタップ能力で1点を与える、という程度に限られていた。興味深いことに、このカードは《放蕩魔術師》に無料の《石臼》能力を足したようなものであり、しかもコモンであった。このカードのプレイパターンは、あまり面白いものではなかった。私は〈放蕩の魔道士〉をアンタップ状態のまま脅威として残しておき、対戦相手のターン終了時に、ダメージを与える必要がなければ相手のデッキを2枚切削するという動きをしていた。
CU13_XR
〈記憶喪失の壁〉
{2}{U}
クリーチャー ― 壁
0/4
(壁は攻撃できない。)
各プレイヤーのアップキープの開始時に、そのプレイヤーは自分のライブラリーの一番上のカードを1枚、自分の墓地に置く。
《石臼》のように切削できて、しかもブロックもでき、マナを必要としない、そんなカードを作ってみた。だが、こうしたカードはゲームの進行を遅くしてしまうタイプのカードだった。
UU01_XR
〈魔術師の砲撃〉
{1}{U}{U}
エンチャント
クリーチャーを1体生け贄に捧げる:対象のプレイヤー1人は、自分のライブラリーの一番上のカードを3枚自分の墓地に置く。
このカードは、セットの生け贄テーマと切削テーマを組み合わせたものである。当時はまだ、大量のクリーチャー・トークンを生成するのが難しかった時代だった。今になって振り返ると、この生け贄能力にマナ・コストが設定されていない理由が理解できない。書かれているとおりだと、ほとんどの場合、死にかけているクリーチャーを生け贄にして、相手のデッキを3枚切削するという運用になってしまうだろう。
UU03_XR
〈巻き波の壁〉
{1}{U}{U}
クリーチャー ― 壁
1/4
{T}, 土地を1つ生け贄に捧げる:対象のプレイヤー1人は、自分のライブラリーの一番上からカードを4枚、自分の墓地に置く。 スレッショルド ― あなたの墓地にカードが10枚以上あるかぎり、[カード名]は飛行を持ち、あなたのアンタップ・ステップにアンタップされない。
このデザインが何を狙っていたのか、正直よくわからない。土地を生け贄にして切削する、というのは土地の使い道としてあまり良くない。最終的には「飛行を持つ壁」になったものの、今度は相手を切削したくないカードになってしまった。このカードをファイルに残していたことが、ちょっと恥ずかしいくらいだ。
UU04_XR
〈虚空のマーフォーク〉
{2}{U}
クリーチャー ― マーフォーク
1/1
飛行
[カード名]がプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび、そのプレイヤーは自分の墓地にあるカード1枚を追放する。追放できない場合、そのプレイヤーは自分のライブラリーの一番上からカード7枚を追放する。
このカードには面白い上限がある。最初は相手の墓地を追放してスレッショルドを妨害するように働くが、成功すると今度は相手のライブラリーを大きく追放し始める。ただし、このデザインには大きな問題があった。当時すでに《トーモッドの墓所》のようにたった{0}で相手の墓地をすべて追放できるカードが存在しており、そうしたカードはこのデザインよりはるかに効率的だったのだ。このカードがデザインされた時点で、《トーモッドの墓所》は登場からすでに8年が経っていた。
UU05_XR
〈催眠術師〉
{3}{U}
クリーチャー ― ウィザード
1/2
{2}{U}, {T}, カードを1枚捨てる:対象のプレイヤー1人は、捨てられたカードのマナ総量に等しい枚数のカードを自分のライブラリーの一番上から自分の墓地に置く。
このセットでは生け贄と同様、スレッショルド達成を助けるために捨てるコストを持つカードが多く存在した。このカードが面白いのは、効果の規模が捨てたカードのマナ総量に結びついている点だ(当時の用語は「点数で見たマナ・コスト」)。多くの捨てる効果は高コストのカードを忌避させるが、このカードはむしろ高コストのカードを捨てたくなるように設計されている点が興味深い。
UU08_XR
〈元気な魔道士〉
{1}{U}
クリーチャー ― ウィザード
1/2
{3}{U}{U}, {T}:呪文1つを対象とする。その呪文のコントローラーは、自分のライブラリーの一番上から、その呪文のマナ総量に等しい枚数のカードを自分の墓地に置く。
これは〈催眠術師〉の派生形であり、今度は対戦相手が唱えた呪文のマナ総量に基づいて切削するようになっている。ただし、{3}{U}{U}も支払っておきながら呪文を打ち消すことすらできないため、その効果に対してコストがあまりにも重すぎるカードであった。
UU10_XR
〈神秘の潮干狩り〉
{3}{U}
インスタント
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは自分のライブラリーの一番上からカードを3枚自分の墓地に置く。これにより置かれた3枚のうち少なくとも2枚が同じ色を持っている場合、この手順を繰り返す。
ここでは、より変動性のある切削効果を作ろうとしていた。私はこの予測不能さをとても気に入っていた。あまりに気に入ったので、後に『テンペスト』で《丸砥石》というアーティファクトに同様の効果を採用することになる(ただし《丸砥石》は1回に2枚しか切削しない)。
UU14_XR
〈汚された祝福〉
{3}{U}
エンチャント(クリーチャー)
エンチャントしているクリーチャーのコントローラーのアップキープの開始時、そのプレイヤーは自分のライブラリーの一番上から、エンチャントしているクリーチャーのパワーに等しい枚数のカードを自分の墓地に置く。
これもまた興味深い切削の派生形である。エンチャントしているクリーチャーのパワーを参照して切削するオーラなのだ。この形のカードはこれまで一度も印刷されていないのが不思議なくらいだ。うーん……。
RU02_XR
〈幻惑の魔道士〉
{U}
クリーチャー ― ウィザード
1/1
{1}{U}, {T}:クリーチャー1体を対象とする。ターン終了時まで、そのクリーチャーは「このクリーチャーがダメージを受けるたび、対象のプレイヤー1人は自分のライブラリーの一番上から、そのダメージの2倍の枚数のカードを自分の墓地に置く。」を得る。
これは、クリーチャーへのダメージを切削に変換するタイプの、先ほどとは別の効果だ。私はこの種のデザインがあまり好きではない。なぜこれを含むカードを複数枚、引継ぎファイルに入れていたのか、今では自分でもよくわからない。
RU04_XR
〈催眠のフェアリー〉
{2}{U}
クリーチャー ― フェアリー
1/2
飛行
{U}:このターン、[カード名]が対象のプレイヤー1人に次にダメージを与えたとき、そのプレイヤーは自分のライブラリーの一番上からカードを3枚自分の墓地に置く。
これはより優れた切削サボタージュだ。自前で回避能力も持っている。ただし、この切削効果にマナ・コストが必要だったかどうかは疑問だ。印刷されたカードの中では、『闇の隆盛』の《叫び霊》がこのカードに最も近い。
RA08_XR
〈時代の丸砥石〉
{4}
アーティファクト
{8}, {T}:対象のプレイヤー1人は自分のライブラリーの一番上からカードを8枚自分の墓地に置く。
ここでいったん青から離れて、アーティファクトの切削版《石臼》を紹介する。しかしこのカードの能力に{8}ものコストは必要なかったと思う。
次の2枚は、「切削をコストとして利用する」カードだ。もちろん、セット内にスレッショルドが存在することを踏まえ、ときにそれがメリットになることを狙っていた。
CU03_XR
〈消えない幻影〉
{2}{U}
クリーチャー ― イリュージョン
2/2
{1}{U}, {T}, あなたのライブラリーの一番上からカードを2枚あなたの墓地に置く:対象のクリーチャー1体はこのターン、ブロックされない。
これは、繰り返し起動できるタップ能力で切削をコストに使うデザインである。この能力は実質的に相手にダメージを通す手段となるため、自分を切削する危険性はあまり問題にならない。理想的には、自分がライブラリー切れになる前にダメージで勝利する想定だ。
CU15_XR
〈注意力散漫〉
{2}{U}
インスタント
この呪文を唱えるに際し、あなたは自分のライブラリーの一番上から最大4枚のカードを自分の墓地に置いてもよい。 呪文1つを対象とする。これによりで置いたカード1枚につき{1}を支払わないかぎり、それを打ち消す。
このカードの良いところは、切削できる枚数に自由度と上限の両方を持たせている点だ。
最終的に、このセットでは自己切削をコストとして扱うカードを少枚数だけ採用した。《魔力を持つペンダント》と《ミリキン人形》はどちらもマナを供給するカードで、前者は切削したカードの質に依存するデザインだった。《凍血鬼》はデメリットとして切削を強制したが、そのおかげでスレッショルドを達成しやすくなっていた。ただし、ゲームが長引くと、このカードはむしろプレイヤー自身を脅かす存在になっていった。
CU18_XR
〈蓄積した知識〉
{1}{U}
インスタント
対象のプレイヤー1人はカードを1枚引き、その後、すべての墓地にある[カード名]1枚につき、さらにカードを1枚引く。
このカードは、同名・同コスト・ほぼ同一のルール・テキスト(「対象を取る」点だけが異なる)で、『ネメシス』でそのまま印刷された。もともとはセット内の《焚きつけ》テーマの一部として始まったが、なぜか後のセットに回された。おそらく、パワーレベルの懸念が理由だと思う。最終的に、《蓄積した知識》はトップクラスの競技的カードとして知られるようになった。
UU09_XR
〈予言〉
{2}{U}
エンチャント
あなた以外の各プレイヤーは、自分のライブラリーの一番上のカードを公開してプレイする。
{1}:あなたのライブラリーの一番上のカードを見る。
これはフレイバー的には魅力的だったが、まったく楽しくないカードだった。マジックにおいて、隠された情報こそがゲームの緊張感を生む大きな要素であり、それを取り除くことは問題を引き起こす。このカード名は後に『基本セット2010』で、シンプルなドロー呪文の名前として再利用されることになる。
UU16_XR
〈いないいないばあ〉
{2}{U}
エンチャント
あなたのアップキープの開始時、あなたは自分のライブラリーの一番上のカードを見てもよい。そのカードを自分の墓地に置いてもよい。(そうしない場合、そのカードをライブラリーの一番上に戻す。)
この記事を書く楽しみの一つは、自分でも覚えていなかった過去のデザインを掘り起こせることだ。どうやら我々は、実際に「諜報」が登場するよりも何年も前に、すでにその原型を作っていたようだ。しかも、これは占術メカニズムが作られるよりも前の時代である。ただし、当時の私たちはこれを毎ターン繰り返し使える能力にしてしまった。おそらくそのせいで印刷には至らなかったのだろう。本当に惜しかった。
UU17_XR
〈無効化の呪い〉
{1}{U}
エンチャント(パーマネント)
[カード名]は土地でないパーマネントにのみエンチャントできる。
エンチャントされているパーマネントの起動型能力は起動できない。
[カード名]が戦場に出たとき、カードを1枚引く。
これは、《真髄の針》が印刷される何年も前に存在していた針の原型である。ただし、このバージョンははるかに弱い。1枚のカードにしか作用せず、それがすでに戦場に出ている必要がある。さらに、オーラであることによる脆弱性も抱えていた。正直に言うと、私自身も《真髄の針》を作るより前にこのカードをデザインしていたことは、すっかり忘れていた。
RU09_XR
〈時間の伸長〉
{5}{U}{U}
ソーサリー
回収{8}{U}{U}{U}(このカードがあなたの墓地にある場合、あなたはこれをあなたの手札にあるかのようにプレイしてもよい。そうしたなら、これのマナ・コストは{8}{U}{U}{U}であり、呪文の効果の一部として、これを追放する。)対象のプレイヤー1人は、このターンの後に追加の1ターンを得る。
私は昔から《Time Walk》系統の効果に特別な愛着を持っている。そう、これはフラッシュバック付き《Time Walk》としてデザインしたものだった。デベロップメントに渡した直後、最初に削除されたカードのひとつだったかもしれない。当時のコメントを覚えている。「こんな《Time Walk》を何度も唱えられるカードなんて、絶対に作るわけがない!」私は頑張ってみたが駄目だった。
RU16_XR
〈街の知恵〉
{2}{U}
エンチャント
あなたのライブラリーから土地カードが墓地に置かれるたび、カードを1枚引く。
このカードはチープだが、そのぶんとても綺麗なデザインで私は気に入っている。
墓地への配慮
今日はここまでだ。今回は青までしか扱えなかったので、このシリーズをもう1回延長して続けることにする。いつもの通り、この記事、あるいは『オデッセイ』や今回取り上げた個々のカードについての感想やフィードバックをメールやソーシャル・メディア(X、Tumblr、Instagram、Bluesky、TikTok)を通じて(英語で)送ってもらえると幸いだ。
次回はデザインファイル:『オデッセイ』最終回の第4回目をお届けする。
その日まで、あなたが印刷されなかったカードを楽しんでくれますように。
(Tr. Ryuki Matsushita)
RANKING ランキング
-
広報室ファミリーマートで『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』ベーシック・ブースターを買って特製プラトークンをゲットしよう!|こちらマジック広報室!!
-
戦略記事今週のCool Deck:前評判以上?土の技とマーベリック(レガシー)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
広報室12月5~11日は『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』ホリデー・コマンダー・ボックス・リーグで遊ぼう!社員による体験レポートも|こちらマジック広報室!!
-
開発秘話心理的反応|Making Magic -マジック開発秘話-
-
読み物『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』をコレクションする:物語は続く|翻訳記事その他
NEWEST 最新の読み物
-
2025.12.4戦略記事
とことん!スタンダー道!進化したシミック・ウロボロイド(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2025.12.3戦略記事
のらりくらり、気が付けば勝ってるイゼットはいかが?(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2025.12.2戦略記事
ディミーア・セルフバウンス:使いこなせ、ブーメラン!(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2025.12.2お知らせ
MTGアリーナニュース(2025年12月1日)|お知らせ
-
2025.12.1開発秘話
心理的反応|Making Magic -マジック開発秘話-
-
2025.12.1戦略記事
グルール昂揚:新環境最速の覇者!(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
CATEGORY 読み物カテゴリー
戦略記事
コラム
読み物
BACK NUMBER 連載終了
- Beyond the Basics -上級者への道-
- Latest Developments -デベロップ最先端-
- ReConstructed -デッキ再構築-
- Daily Deck -今日のデッキ-
- Savor the Flavor
- 射場本正巳の「ブロールのススメ」
- 津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
- 浅原晃の「プレミアイベント三大チェックポイント!」
- ガフ提督の「ためになる」今日の1枚
- 射場本正巳の「統率者(2017年版)のススメ」
- かねこの!プロツアー食べ歩き!
- ロン・フォスターの統率者日記
- 射場本正巳の「統率者(2016年版)のススメ」
- マアヤのマジックほのぼの日記
- 金子と塚本の「勝てる!マジック」
- 射場本正巳の「統率者(2015年版)のススメ」
- 週刊連載インタビュー「あなたにとってマジックとは?」
- なかしゅー世界一周
- 中村修平の「デイリー・デッキ」
- 射場本正巳の「統率者(2014年版)のススメ」
- 中村修平の「ドラフトの定石!」
- 浅原晃の「プロツアー観戦ガイド」
- 鍛冶友浩の「プロツアー観戦ガイド」
- ウィザーズプレイネットワーク通信
- Formal Magic Quiz
- 週刊デッキ構築劇場
- 木曜マジック・バラエティ
- 鍛冶友浩の「デジタル・マジック通信」
- 鍛冶友浩の「今週のリプレイ!」
- 渡辺雄也の「リミテッドのススメ」
- 「明日から使える!」渡辺リミテッド・コンボ術
- 高橋優太の「このフォーマットを極めろ!」
- 高橋優太の「このデッキを使え!」
- 黒田正城の「エターナルへの招待」
- 三田村リミテッド研究室
- 新セットめった切り!
- シングルカードストラテジー
- プレインズウォーカーレビュー
- メカニズムレビュー
- その他記事

































