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Making Magic -マジック開発秘話-

デザインファイル:『オデッセイ』その2
2025年9月29日
先週、デザインファイルシリーズの新しい回を始めた。このシリーズでは、私がリードを務めたセット(今回の場合は『オデッセイ』)のカードを、デザイン終了時点でどのような形で引き継いだのかを振り返っている。最初のセクションではデザイン引継ぎ時の姿から多少の変更を経たものの、印刷まで至ったカードについて取り上げており、今回も続きをお届けする。
RU03_XR
〈マーフォークの皇帝〉
{3}{U}{U}
クリーチャー ― マーフォーク・ウィザード・レジェンド
1/1
{3}{U}{U}:対象のアーティファクト1つかクリーチャー1体か土地1つをタップする。
アボシャンはストーリーにおける悪役の1人だ。彼は海底王国の支配者である。もともとはサブタイプをマーフォークにする予定だったが、当時あまり使われていなかったクリーチャー・タイプを活用したかったため、マーフォークからセファリッド(我々が創ったタコに似た種族)へと変更された。彼は人々を操る存在であったことから、「さまざまな対象をタップできる」というアイデアが気に入られた。デザイン部から引き継いだ段階では、エンチャントを除いたあらゆるパーマネントをタップできた。
『オデッセイ』には、高レアリティのタイプ的カードというテーマが存在した。これは、セットに収録されている特定のクリーチャー・タイプに焦点を当てたカードである。そのうちの3枚は、「特定のクリーチャー・タイプを持つアンタップ状態のクリーチャーをタップして効果を発揮する」という能力を持っていた。《熟練の薬剤師》はクレリックをタップすることでダメージを軽減することができる。《守護ウィザード》はウィザードをタップすることで呪文を打ち消すことができる。《クローサの庇護者シートン》はドルイドをタップすることで{G}を生み出せる。開発部はアボシャンもこのシリーズの1枚となるよう調整し、「セファリッドをタップしてパーマネントをタップする」能力にした。さらに起動型能力は、水中というテーマを表現するために範囲を拡大し、「飛行を持たないすべてのクリーチャーをタップする」能力へと変更された。飛行クリーチャーは水面の上にいるため、その影響を受けないというわけである。
RU15_XR
〈催眠〉
{X}{U}
ソーサリー
対象のプレイヤー1人は、自分のライブラリーのカードを上からX枚、自分の墓地に置く。
デザイン引継ぎ時点で、『オデッセイ』は切削(デッキ破壊)を大きなテーマとしていた。このことは、後ほど紹介する「印刷には至らなかったカード」のセクションでもより明確に見えてくるだろう。ここで取り上げる呪文は、もともと「大規模な切削呪文」としてデザインされたものだったが、最初の形はやや地味な仕上がりだった。このデザインの着想元は『アルファ版』の《Braingeyser》にある。《Braingeyser》は対戦相手にデッキの残り枚数より多くのカードを引かせることで、ライブラリーアウトによる敗北を狙う「勝ち筋」カードとしても使える点が面白かった。私はそこから切削効果だけを取り出したカードとして、これをデザインした。
しかし、デベロップメントから「期待にそぐわない」との指摘を受け、よりエキサイティングなバージョンを考案することになった。最初に試したのは「対戦相手のライブラリーをすべて切削する」呪文だったが、これは単なる「勝利効果」であり、「巨大な切削呪文」というコンセプトとは違っていた。そこで発想を転換し、「相手のライブラリーの半分を切削する」という形にしたところ、壮大で印象的な効果になった。当初は強すぎるのではないかと懸念されたが、この呪文の効果はライブラリーが減るほど効果的でなくなるため、そのまま印刷できることがわかった。結果として、このカードは今でも人気の高い切削カードの1枚として知られている。
RB01_XR
〈黒の陰謀団の魔術師〉
{3}{B}{B}
クリーチャー ― ウィザード・レジェンド
3/3
{B}, クリーチャーを1体生け贄に捧げる:対象のクリーチャー1体は、ターン終了時まで-2/-2の修正を受ける。
{B}, あなたの墓地にあるクリーチャー・カードを1枚追放する:対象のクリーチャー1体は、ターン終了時まで-1/-1の修正を受ける。
《陰謀団の総帥》は、ストーリにおけるもう1人の悪役だ。デベロップメントはデザインから引き継いだ形を気に入っていたが、カードとしてもう少し脅威的にした方がよいと判断した。その結果、彼のパワー/タフネスは4/4から5/5へと強化され、起動型能力もそれまでのクリーチャー1体に-1/-1修整から-2/-2修整へと上方修正された。これに伴い、マナ・コストは{3}{B}{B}から{3}{B}{B}{B}へ、起動コストも{B}から{2}{B}へと引き上げられている。こうした調整によってカードの迫力は増し、完成版の《陰謀団の総帥》は高い人気を博し、当時多くのデッキで採用される結果となった。
RB14_XR
〈ハイランダーの呪い〉
{4}{B}{B}
ソーサリー
対象のプレイヤー1人は、自分のライブラリーを公開し、自分の墓地とライブラリーの両方に存在するカードがあれば、自分のライブラリーと自分の墓地から、それと同じカードをすべて追放する。その後、そのプレイヤーは自分のライブラリーを切り直す。
このセットのテーマの1つには、「同じカードを4枚投入することへのペナルティを与える」という発想があった。このデザインの狙いはこうだ。もしプレイヤーが特定のカードを4枚採用しているなら、ゲームが進むにつれて、そのうちの何枚かは墓地に、残りはライブラリーにある可能性が高い。そこで墓地とライブラリーを比較し、重複するカードを追放するという仕組みを考案したのである。しかし、実際にやってみるとこれは想像以上に扱いが難しかった。例えば、プレイヤーの墓地を見ただけではライブラリーの中身は当然わからない。つまり、両方の内容を記憶して比較しなければならず、現実的な運用が困難だったのだ。
このカードはレア枠だったため、プレイテスト中に目にする機会が少なかった。加えて、リミテッド環境では同じカードを複数枚入れることが稀であるため、リミテッドでこのカードがテストされることもほとんどなかった。デベロップメントが構築戦のプレイテストで実際に使用してみたところ、その使いにくさが明らかになった。その結果、デベロップメントはデザインを次のように改良した。まずプレイヤーの墓地をすべて追放し、その後にライブラリーを確認して、追放されたカードと同名のカードを探す、という手順に変更したのである。この変更によって、たとえライブラリーから多くのカードを追放できなかったとしても、「墓地を追放する」という行為自体に意味が生まれた。特に『オデッセイ』のようにスレッショルドを目指すデッキが多い環境では、この副次的効果は非常に有用だった。さらに、このカードは当初の想定よりも強力ではないと判断され、マナ・コストも引き下げられた。
CR03_XR
〈バルデュヴィアのミノタウルス〉
{3}{R}
クリーチャー ― ミノタウルス
2/3
速攻
CG03_XR
〈ドルイドの殉教者〉
{G}
クリーチャー ― ドルイド
1/1
{1}{G}, [カード名]を生け贄に捧げる:あなたのライブラリーから基本土地カードを1枚選んで、そのカードをタップ状態で戦場に出す。その後、あなたのライブラリーを切り直す。
『テンペスト』のデザイン中、私は《疫病ネズミ》のような、枚数が増えるほど強力になる直接ダメージを与える呪文を作れないかと考えていた。つまり、デッキに同名カードを多く入れれば入れるほど威力が上がるカードだ。最終的にたどり着いたのが、「墓地にある同名カードの枚数に応じたダメージを与える」呪文であり、それが《焚きつけ》)である。
《焚きつけ》は人気カードとなったため、墓地をテーマとするセット『オデッセイ』を作る際、私はこのカードを再録しようと決めた。しかしそこで「せっかくなら、《焚きつけ》のようなカードを各色に作ってサイクルにしてみてはどうか」と思いつき、実際に作ることにした。
こうして生まれたのが噴出サイクルである。私はさらに発想を広げ、《焚きつけ》カードでなくても、《焚きつけ》枚数としてカウントされるカードを作れないかと考えた。デザインをデベロップメントに引き継いだ後、そのアイデアを実際に試すことになり、結果として上記の2枚について、その色の《焚きつけ》カードとして数えられるようにする効果を追加した。何故この2色かというと、単純にカード枠の都合上、スペースが取れたのが赤と緑だけだったのだろう。
UR03_XR
{1}{R}
クリーチャー ― ドワーフ
1/1
[カード名]が戦場に出たとき、あなたのライブラリーからドワーフ・カードを好きな枚数探し、それらを公開する。あなたのライブラリーを切り直し、それらのカードをあなたのライブラリーの上に好きな順番で置く。
『ヴィジョンズ』では《ゴブリン徴募兵》というカードが登場した。これは上記のカードとほぼ同じ能力を持っていたが、探す先がゴブリンという違いがある。『オデッセイ』では赤の主軸となるクリーチャー・タイプを少し変化させたいと考えていたため、従来の「赤=ゴブリン」という構図を外し、赤の主要なクリーチャー・タイプをドワーフに置き換えることにした。デベロップメントもこのカードのデザイン自体は気に入っていたが、セット全体のマナ・カーブを調整する必要があり、もともと2マナであった赤のクリーチャーの一部を3マナに変更することになった。その際《ドワーフ徴募兵》を《ゴブリン徴募兵》とまったく同じにする必要はないと判断されたため、{1}{R}1/1から{2}{R}2/2へと変更されたのである。
UR05_XR
〈狂乱のオーガ〉
{3}{R}{R}
クリーチャー ― オーガ
2/3
カードを1枚捨てる:ターン終了時まで[カード名]は+2/+0の修正を受ける。
『オデッセイ』ではスレッショルドをサポートするため、多くのカードが「カードを捨てる」起動型能力を持っていた。その中でデベロップメントは、赤の捨てる効果はすべてランダムであるべきだと考えた。その方が赤の「混沌」という性質をより的確に表現できると判断したのである。よって《熱狂のオーガ》のマナ・コストは{3}{R}{R}から{4}{R}へと引き下げられ、能力も+3/+0を得るよう強化された。
しかし、ランダムにカードを捨てるという行為は通常の「選んで捨てる」効果よりもはるかに扱いづらく、その結果、赤のカードは《熱狂のオーガ》を含め、ほとんどプレイされなかった。この経験やその他のデザイン上の反省から、我々は「赤の混沌らしさ」を表現するうえで、単なるランダム性に頼る以外の方法を見つける必要があることを学んだのである。
+スタートカード
RR03_XR
{4}{R}{R}
クリーチャー ― 英雄・レジェンド
3/3
激情4(このクリーチャーが攻撃してブロックされないたび、ターン終了時までこれは+4/+0の修正を受ける。) クリーチャー1体がこれをブロックするたび、[カード名]はそれに3点のダメージを与える。
カマールは『オデッセイ』ブロックのストーリーにおける主人公である。我々は彼のカードを、物語中でのピット・ファイターとしての激しい戦いぶりを体現する、エキサイティングなデザインにしたかった。ストーリー上では、彼は有名なピット・ファイターだ。デザイン引継ぎ時点では3つ目のキーワード能力「激情/Frenzy」を持っていた。狂乱は、これを持つクリーチャーは、ブロックされなかった場合にパワーが上昇する能力だ。
このキーワード能力に見覚えがある人もいるだろう。後に『未来予知』で登場したミライシフト・カード《激情スリヴァー》で使われたメカニズムだ。私はこの「激情」というメカニズムが好きで、いつか正式に採用できる場所を見つけたいと思っていた。
しかし『オデッセイ』の時点では、セット内に激情を持つカードが多すぎたため、このメカニズムは最終的に削除されることになった。引継ぎ時点のカマールはブロックしたクリーチャーに3点ダメージを与える能力とブロックされなければ激情4によって+4/+0を得る能力を持ち、非常に機能しているカードだった。激情が削除された後、開発部はこのダメージを与える能力をタップを必要とする起動型能力に変更し、そしてカマールの攻撃的な一面を表現するために6/1速攻に変更した。
私はその後も何度か「激情」をセットに登場させようと試みたが、プレイデザイン・チームはこのメカニズムを好まなかったため、おそらく大々的な復活はないだろう。それでも、どこかのカードでカメオ出演のように再登場する可能性は残されている。
RR12_XR
〈苦痛の反射〉
{R}{R}
インスタント
対象のインスタント呪文1つかソーサリー呪文1つを、それのコントローラーがライフを5点支払わないかぎり、打ち消す。
この赤の混沌を表現する実験は、ランダムに捨てさせる試みよりはうまくいった。このカードは私たちが「懲罰者カード/punisher card」と呼んでいるものである。赤の懲罰者カードでは、対戦相手は2つの選択肢のうちどちらかを選ぶ。1つ目の効果は、場合によってはカラー・パイから外れた効果でも構わない。そしてもう1つの効果は、必ず「直接ダメージ」である。つまり、相手は最初の効果を選ぶか、さもなくば顔面に火力を食らうか、というわけだ。この効果を持つ他の2枚(コモンの《炎の斉射》とアンコモンの《溶岩のあぶく》)は、どちらも赤が通常行える効果だった。しかし、このレアのカードは赤では珍しい効果である呪文を打ち消す行為を行えるものだった。デザインが作成した時点では《対抗呪文》の{U}{U}に合わせてコストを{R}{R}に設定していたが、デベロップメントはこのコストが使いづらいと判断して{1}{R}に変更し、代わりに与えるダメージを5点から4点へと調整した。
〈獣群の呼び声〉
{G}
ソーサリー
回収{1}{G}(このカードがあなたの墓地にある場合、あなたはこれをあなたの手札にあるかのようにプレイしてもよい。そうしたなら、これのマナ・コストは{1}{G}であり、呪文の効果の一部として、これを追放する。) 1/1の緑の[名前]・クリーチャー・トークン1体を戦場に出す。
『オデッセイ』で登場した新しい名前付きメカニズムの1つがフラッシュバックであった。ただし、フラッシュバックはインスタントとソーサリーにしか使えなかった。一方で、緑はクリーチャー中心の色(のちに白もこの位置付けになる)だったため、 クリーチャー・トークンを生成するフラッシュバック呪文を作ることにした。そのために緑ためのトークンをいくつか用意した――1/1のリス、3/3の象、4/4のビースト、そして6/6のワームである。《獣群の呼び声》は元々、3/3のクリーチャー・トークンを生成するカードだった。しかしフラッシュバック呪文全体のコストを下げたかったため、1/1トークンを生成する形に変更された。最終的にデベロップメントは元の3/3版に戻したが、この1/1版のデザインも気に入り、別のカードとして印刷することにした。それが《リスのお喋り》である。
RG05_XR
〈石舌のバジリスク〉
{4}{G}{G}
クリーチャー ― バジリスク
5/5
[カード名]がクリーチャーにダメージを与えるたび、戦闘終了時にそのクリーチャーを破壊する。
私が初めて『マジック』を遊んだとき、最初に組んだデッキは緑単だった。というのも、最初のスターターデッキに《大喰らいのワーム》が入っていたからだ。こんなカードを見たら、誰だって使いたくなるだろう。『ベータ版』が発売されたとき、私はボックスを何箱も買い、1日に1パックずつ開封して楽しんでいた。ある日《茂みのバジリスク》を引き当てたときのことを今でも覚えている。「このクリーチャーは、ほとんど何でも倒せるのか!(ただし壁を除く)」と驚いたものだ。さらに後日、《寄せ餌》(エンチャントされているクリーチャーを、すべてのクリーチャーで防御しなければいけなくなるオーラ)を見て、すぐにピンと来た。この2枚でコンボになる、と。
それから何年も経ち、『オデッセイ』のデザインを担当していたとき、私はスレッショルド能力を持つバジリスクを作った。スレッショルドを達成すると、そのバジリスクは《寄せ餌》のような能力(すべてのクリーチャーにブロックを強制させる)を得る、というデザインだった。しかしこのデザインは多くの議論を呼んだ。「簡単すぎる」と言う意見も多く、最終的にステータスは2/5から5/5に引き上げられ、《寄せ餌》能力は削除された状態でデベロップメントに引き渡された。
だが、私はこの案をあきらめなかった。《寄せ餌》能力を持たせることで、プレイヤーはスレッショルドを目指そうというモチベーションを持つはずだ。それは楽しいし、達成感があると主張し続けた。最終的に、私の説得が功を奏したのか、あるいは単にデベロップメントが根負けしたのかは定かでないが、バジリスクはスレッショルドによる《寄せ餌》能力を取り戻した。結果的に、私は正しかった。このカードは大ヒットしたのだ。
UA11_XR
〈墓堀のスコップ〉
{3}
アーティファクト
{3}, {T}:対象のプレイヤー1人は、自分の墓地のカードを1枚追放する。
{3}, [カード名]を生け贄に捧げる:墓地にあるカード1枚を対象とし、それを追放する。
印刷されたカードは、引継ぎ時点のものとほぼ同じだった。しかし、私が本当に語りたいのはそのことではない。以前も触れたように、私は『オデッセイ』のカード名とフレイバー・テキストを担当していたが、アートの監修は担当していなかった。このカードは「シャベル」をコンセプトにしたため、〈墓堀のスコップ〉という名前をつけた。ところが、アートが上がってきてみると、なんと、描かれていたのは掘削機械だった。以下は、当時のアート・ディレクターとの会話である(多少脚色あり)。
私:これは何ですか?
ディレクター:何のこと?
私:このアートの中に描かれている物体です。
ディレクター:蒸気式クローだよ。
私:〈墓堀のスコップ〉っていう名前なんですよ? 墓地を掘り起こすカードなんです。スコップのはずじゃ?
ディレクター:ああ、それは無理だったんだ。
私:どうして?
ディレクター:オタリア(このセットの舞台となるドミナリアの大陸)にはスコップが存在しないんだ。
私:えっ? じゃあ、どうやって穴を掘るんです?
ディレクター:手で掘ってるよ。
私:でも、彼らは掘削機は発明してるじゃないですか。棒の先に金属を付けるって発想はなかったんですか?
ディレクター:世界観の整合性を守らないといけないんだ。
私:「スコップが存在しない世界観」という設定に、いったいどんな意味があるんですか?
アート・ディレクターは肩をすくめた。
数週間後、私は話を再開した。
私:ところで、アート・ディスクリプション(依頼するアートの説明)は全部あなたが書いたんですよね?
ディレクター:そうだよ。
私:アートの承認も?
ディレクター:もちろん。
私:スケッチをすべて見て、世界観のルールに従っているか確認したんですね?
ディレクター:その通り。
私は『オデッセイ』の別のカード、《生き埋め》のアートを渡した。
私:このアート、あなたが承認したんですよね?
ディレクター:うん、そうだよ。
私:スコップが描かれてますよね。つまり、オタリアにはスコップが存在しますね。
ディレクター:うーん、たしかにそうかもしれない。
この一件があったからこそ、数年後に私は『イニストラード』でこのカードを作ったのだ。
だから、もし誰かが「多元宇宙でスコップを一番愛しているのは誰?」と聞いてきたら――答えは私だ。
RA15_XR
〈欲望の鏡〉
{7}
伝説のアーティファクト
あなたがインスタント呪文かソーサリー呪文をプレイするたび、それのコピーをスタックに追加する。あなたは、そのコピーの新しい対象を選んでもよい。
『オデッセイ』をデザインしていた当時、私はどのセットでも「看板カード/marquee card」という概念を重視していた。看板カードはどのデッキにも入れられる無色カード(当時はアーティファクトか土地)であり、独創的で派手な効果を持つべきだと考えていた。『オデッセイ』における私の看板カードが《ミラーリ》である。私の大好きな「呪文のコピー」を行うアーティファクトだった。最初の名称は「魔法のフォーク/Magical Fork」であったと思う。しかしデベロップメントでテストを重ねるうちに、「強すぎる」と判断され、能力にコストを追加することになった。つまり、コピーを作るために{3}マナを支払わなければならなくなったのだ。その代わり、本体のマナ・コストは{5}に引き下げられた。最終的に《ミラーリ》は大人気カードとなり、後に物語上でも重要な役割を担うことになった。
過去を振り返って
印刷に至ったカードの話はこれで終わりとなる。次回は『オデッセイ』には印刷されなかったカード(中には後のセットで印刷されたカードもあるが)を見ていく。いつもの通り、この記事、あるいは『オデッセイ』や今回取り上げた個々のカードについての感想やフィードバックをメールやソーシャル・メディア(X、Tumblr、Instagram、Bluesky、TikTok)を通じて(英語で)送ってもらえると幸いだ。
来週はその3をお届けする。
その日まで、自身の過去を振り返るのを楽しんでくれ。
(Tr. Ryuki Matsushita)
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