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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

こぼれ話2024 その1

Mark Rosewater
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2024年9月30日

 

 1年に一度、私はその年の本流のセットに関するマジック・ファン諸君からの質問に答える一問一答記事を書いている。今回取り挙げるのは、『カルロフ邸殺人事件』、『サンダー・ジャンクションの無法者』、『ブルームバロウ』、『ダスクモーン:戦慄の館』についてである。

 私の投稿はこうだった。

現在、2024年の本流のセット(#MTGKarlov、#MTGThunder、#MTGBloomburrow、#MTGDuskmourn)についての一問一答記事を書いている。今年の各セットに関する質問があれば、1問1ツイートで送ってくれたまえ。#WotCStaff

 いつもの通り、可能な限り多くの質問に答えようと思うが、以下のような理由によって答えられないこともある。

  • 文章量の都合で、答えられる質問の数には限界がある。
  • すでに同じ質問に答えている場合がある。最初に来た質問に答えるのが通例である。
  • 私が答えを知らない質問もあるし、正しく答える資格がないと思われる質問もある。その場合は可能な限り、答えを知っている人物のもとへ行っている。
  • 将来のセットのプレビューになるなど、様々な理由で回答できない話題もある。

 それでは、質問に入るとしよう。


Q:最もデザインの変更が少なかったカードはどれですか? 「おお、このまま出荷できるな」という風になったものは?

 開発部では、初期デザインがそのまま印刷へ至ったカードのことを「脳みそから印刷へ行った」と表現する。2024年の主な製品における「脳みそから印刷へ行った」カードは以下の通りである。


Q:『ダスクモーン:戦慄の館』でも印刷できないほど恐ろしいコンセプトのカードはありましたか?

 これについては、『ダスクモーン:戦慄の館』でアート・ディレクターを務めたオヴィディオ・カルタヘナ/Ovidio Cartagenaに聞いた。彼の言を以下に引用する。

「アートの視点で言うと、私たちはホラーのイメージを楽しめるようにしましたが、個人的にはゴア表現や一方的な戦いが好みでなかったため、トーンを下げたり採用できなかったりしたアイデアは間違いなくありました。世界構築リードのエミリー・テン/Emily Tengと私は、恐怖に対する感覚やラインを越えるものに対する感覚が似ていたため、それほど苦労せず楽しくできましたよ! 最終的に、私たちは露骨なものよりもウィットに富んだ恐怖のアイデアをたくさん生み出すことができました」


Q:あなたも「新製品疲れ」について聞いたことがあると思います。最近マジック製品の発売間隔が短すぎ、多くのプレイヤーが精神的にも金銭的にも負担が大きいと感じています。「ビッグスコア」が『サンダー・ジャンクションの無法者』に組み込まれたのは、この問題に対して功を奏したかと思います。他に、この問題への対策はありますか?

 10月の「MagicCon: Las Vegas」にて「The Foundations of Magic's Next Era」と題したパネルディスカッションが行われるのだが、我々はそこでこの問題について触れるつもりだ。パネルディスカッションの様子はのちほど動画(英語)で公開される予定なので、当日現地にいない諸君にもご覧いただきたい。


Q:今年も面白い次元がたくさん登場しましたが、複数セットのブロック構造やもっと多くの再訪は考えましたか? 『ブルームバロウ』はここしばらくの中でも特に気に入りました。面白いキャラクターや楽しいメカニズムが詰まった素晴らしいセットでした。こんなに早くお別れするなんて悲しいです。

 我々はプレイヤーからのデータ収集にかなりの労力を割いており、集めたデータが語る内容は非常に明白だ。プレイヤーたちは複数セットにまたがり1つの次元を舞台とするよりも、さまざまな次元を体験する方を好んでいる。ブロック構造への回帰を望む声を上げるプレイヤーが多くいることは把握しているが、データによる裏付けはまったくない。販売データは、セットごとに異なる次元を訪れてほしいと望むプレイヤーをより強力に後押ししているのである。何か強力な理由があれば複数セットにまたがり同じ次元に留まるのもやぶさかでないが、そのハードルは高くなっている。

 とはいえ我々の次元の再訪意欲は高まっている。今後の例は以下の通りだ。

 『Tennis』――デス・レースをテーマにしたセット。3つの次元を舞台とし、そのうち2つは過去に本流のセットの舞台となった次元である。もう1つは、カードで言及があったものの主な舞台として訪問したことはない次元である。

 『Ultimate』――このセットではタルキール次元に再訪する。

 『Wrestling』――このセットではローウィン次元に再訪する。

 『Yachting』――このセットではアルケヴィオス次元に再訪する。『ストリクスヘイヴン:魔法学院』の舞台となった次元である。

 『Amsterdam』~『Dublin』――我々が最近取り組んでいるセットである。本流のセットの新たなコードネームには、世界中の都市をアルファベット順に割り当てている。まだどのセットがどこを舞台にするのかは話せないが、『Tennis』~『Ziplining』では訪れない次元への再訪も予定されている。

 ある舞台にプレイヤーたちが強い親近感を示せば、我々はそこを再訪する。我々はそこからデータを集め、他の次元へ移ってはできないことをできるなら、同じ次元で2つ目のエキスパンションを制作することを選ぶ。それから、1つの次元の滞在時間が短くなったことを受けて、新しい次元と再訪次元の間隔を再評価している。例えばエルドレイン次元は、過去の多くの次元よりも早い間隔で再訪した。


Q:ストーリーに関する質問です。ブルームバロウ次元とダスクモーン次元は、ファイレクシアンによる侵攻からどのように身を守ったのでしょう?

 これについては、マジックのストーリー・リードを務めるロイ・グラハム/Roy Grahamに聞いた。彼の言を以下に引用する。

 「これについては教典となる物語はありませんが、私たちの知る限りのことをお話しします。ブルームバロウ次元は、ファイレクシアンによる侵攻を受けなかった数少ない次元でした。この小動物の世界は、少なくとも今のところは多元宇宙の災厄から逃れられています。ダスクモーン次元は、ファイレクシアンによる侵攻を知るよしもありませんでした。ファイレクシアンはこの館の恐怖に混じり、生存者たちはそれが次元を越えた侵略者であると認識していなかったのです。1つ確かなのは、ファイレクシアンがダスクモーンへやってきても、彼らが館を侵略する前に館が彼らを取り込んでしまうのは間違いありません」


Q:かつては単純に悪いカード、つまりニッチな需要を満たすカードではなくただ弱いだけのカードが印刷されており、あなたはそれらがなぜ必要なのかについての記事も書いていました。現在は、どのカードも最低限の使い道があります。悪いカードの必要性に関する理念は変わったのでしょうか?

 指摘の通り、悪いカードについての開発部の理念は変わってきており、その要因は多岐にわたる。1つ目は、我々がより幅広いフォーマット向けにカードを作るようになったため必ずどこかに受け入れられること。ここで言う悪いカードは誰のデッキにも入らないため、セットから取り除いてもプレイヤーへの影響はないのだ。2つ目は、プレイ・ブースターの世界においてはリミテッドで悪いカードを収録する余地がないこと。特に低レアリティでは、すべてのカード枠が複数の役割を果たせるようにしなければならない。3つ目は、我々の悪いカードに対する考え方はこのゲームを紹介する手法に依存していたこと。プレイヤーを惹きつけるカードとは、理解しやすいシンプルなカードではなく、知りたい、プレイしたいという感覚を呼び起こすエキサイティングなものであるということに、我々は気づいたのだ。


Q:(『神河:輝ける世界』や『ニューカペナの街角』で見受けられた流れを続けて)サンダー・ジャンクションやダスクモーンのような「現代的」な世界に舞台を移した背景は? 私の記憶が正しければ、あなたは以前マジックの舞台としてはイニストラードが「現代的」だと言っていたと思います。

 マジックの重要な特性の1つが、常に成長を続け、状況に適応することである。我々が訪れる世界ではイニストラードが現代的な舞台だと考えていたこともあったが、それは誤りだったわけだ。『神河:輝ける世界』の成功は、ダスクモーンのようなより「現代的」な舞台を探検する大きな後押しになった。もう1つ大きな影響を与えたのが、「ユニバースビヨンド」製品の人気である。マジックのカード上で現代的なものが表現されることを受け入れられるプレイヤーが増えていくにつれて、我々もそういった舞台を探検することに抵抗がなくなっていったのだ。


Q:『ダスクモーン:戦慄の館』のファーストルックを『ブルームバロウ』のプレビューが始まる前に公開したのはなぜですか?

 世界中で同じ日に発売される製品には、多くの不確定要素がある。その1つが、問屋に製品を発注してもらう必要があることである。問屋は、マジックの製造元である我々と販売店の間に立つ役割を持つ企業だ。問屋は適切な数量の製品を発注できるよう、我々の定めた期限よりも早く販売店へ発注を求める。

 そして販売店は必要な数量を見極めるために、プレイヤーと話をして関心の度合いを推し量る。店舗がそうできるように、我々はセットの情報をいくらか公開する必要があるのだ。『ダスクモーン:戦慄の館』は特に扱いが難しかった。このセットでは新たな領域を押し広げ、新たな次元を舞台とし、これまでやってきたよりも現代的な要素を持たせたため、普段より少々多くの情報を公開して、プレイヤーがどのようなセットなのか理解できるようにする必要があったのだった。

 そしてこのセットの発注受付期間が、『ブルームバロウ』の発売直前であることが判明した。以上が、我々が『ダスクモーン:戦慄の館』のファーストルックを『ブルームバロウ』のプレビュー前に公開した理由である。マジックのセットのファーストルックはすべて、同様の時期に公開されている。『ダスクモーン:戦慄の館』での違いは、普段よりも早いタイミングで「プレインズウォーカーのための『ダスクモーン:戦慄の館』案内」記事を公開したことだ。通常のファーストルックでは、いくつかのカードを公開してメカニズム的テーマを語ることが多い。


Q:今年作成した中で、特に取り扱いが難しかったメカニズムはどれですか?

 まずは参考までに、2024年の本流のセットに収録されたメカニズムの一覧は以下の通りである。

  • 事件
  • 証拠収集
  • 悪事
  • 昂揚
  • 砂漠
  • 変装/偽装
  • 違和感
  • 積算
  • 給餌
  • 贈呈
  • 戦慄予示
  • 傭兵・トークン
  • 兆候
  • 調査
  • 新生
  • 無法者
  • 計画
  • 部屋
  • 騎乗/乗騎
  • 放題
  • 生存
  • 容疑
  • スレッショルド
  • 雄姿

 この中で特にバランスを取るのが難しかったのは、『サンダー・ジャンクションの無法者』の「計画」と『ダスクモーン:戦慄の館』の「戦慄予示」だと私は思う。計画は新たなデザイン領域にあり、そこに関する体系的な知識が少なかった。また計画は公開情報(他のプレイヤーがまだプレイしていないカードをこちらが知っている状態)を扱うため、バランス取りはさらに難しくなった。戦慄予示はデッキ内のどのクリーチャーにもなる可能性があるため、バランスを取る上で不確定要素が多かった。


Q:プレイ・ブースターがデザインやプレイヤー層に与えた影響についてもっと聞きたいです。プレイ・ブースターはどのように受け止められ、今後どのように進化を続けるのでしょう?

Q:リミテッドの速度について、どのセットも高速環境であることに懸念はありますか?

 これらの質問は、首席プレイ・デザイナーであるアンドリュー・ブラウン/Andrew Brownへ投げかけた。彼は以下のように両方の質問に答えてくれた。

「デザインする側から見ると、プレイ・ブースターがリミテッドに与えた影響には全体的に満足している。この新たな世界でリミテッドのデザイン手法における経験則や理念を築くために、私たちは力を尽くした。このブースターがドラフトに与えた影響については、シールドに与えた影響よりも満足している」

「この1年半におけるリミテッドの全体的な速度には少々不満もある。私たちはさまざまな速度の幅広い環境を楽しんでもらうことを目指しているが、決着が1~2ターン早い環境が多すぎると感じている。その点については今後のセットの多くで調整を加えており、ゲームの速度や長さが私たちの理想に近づくようにした」


Q:〈ヴァルガヴォスの棲み処〉が「棲み家」のサブタイプを持たなかったことに驚きました。あるカードがスタンダードにないアーキタイプの必須パーツになるかならないかを決める要素は何ですか?

 カード名は我々がそのセットのメカニズムを確定させた後に決められるため、このカードをデザインしていた時点では名前に「棲み処」が含まれていなかった可能性が高い。我々は、カード名にサブタイプ名が含まれるカードはすべてそのサブタイプを持つというルールにはしていない。そうするとカードの名付けに大きな制限がかかるからだ。カードにスタンダード以外のフォーマットにのみ関連するサブタイプを持たせるかどうかは、セット・デザインやプレイ・デザインが個別のケースに応じて決めている。決め手となるのはまず、そのタイプを持つことでデザイン上の問題は生じないか。それから、そのタイプを持つことでプレイヤーにとってより良いカードになるか、である。


Q:もし過去に戻れて2024年発売の製品について1つだけ変更できるとしたら、どうしますか?

 『ブルームバロウ』と『ダスクモーン:戦慄の館』の発売日を交換すると思う。そうすれば『ブルームバロウ』に日が当たる時間がもう少し多くなり、雰囲気が『ダスクモーン:戦慄の館』より『ブルームバロウ』に近い『ファウンデーションズ』へとつなぐことができた。また、『ブルームバロウ』シーズンに「MagicCon」を開催できただろう。


Q:-1/-1カウンターを扱うジャンドの統率者が出てこないのはなぜですか?

 ここで論点となるのは、プレイヤーにはそれぞれ心待ちにしているカードがあることである。我々がセットを作るたびに、プレイヤーは何年も、あるいは何十年も心待ちにしているカードが収録されている願いを込めて、カードリストに目を通していく。我々は、誰かが心待ちにしているカードを作る絶好のチャンスを得られるように、セットを作っている。そしてついにそのチャンスを迎えたとき……そこにそのカードはない。一体どういうことか? 完璧な機会を得たというのに、なぜ我々はそれを活かせなかったのか?

 マジックは何百万人ものプレイヤーを抱えている。そしてそれぞれに、作ってほしいと思うカードがある。重複を考えても、何百、何千というカードが心待ちにされているのだ。我々はプレイヤーが求めるカードを記録しており、どのセットでもそれらを(特に多くのプレイヤーが望むテーマは)収録できる機会を伺っている。しかしセットにはそれぞれ、そのセット自体に求められることが多くあり、そこへ収められるデザインの量には限りがあるのだ。

 私はよく、マジックを飢えた怪物であると表現している。我々はこれからもカードを作り続けるため、いつの日かあなたが望むカードを作ることになるだろう。しかしだからこそ、あなたが個人的に何年も心待ちにしているカードが世に出ていないのかもしれない。特に-1/-1カウンターを扱うジャンドの統率者は、近年我々は-1/-1カウンターが関わるカードをあまり多く作っていないこともあり、なかなか難しいだろう。とはいえ、いつかは作れる日が来ると私は固く信じている。


Q:今年の本流のセットのメカニズムで最も成功したものはどれですか?

 開発部は「Magic Design Pit」と呼ばれるチャンネルを開いており、そこでは開発部メンバーが誰でも質問できる。そこで私は、この質問を投げかけてみた。数々の回答が集まった中で一番多かったのは、『サンダー・ジャンクションの無法者』の「計画」メカニズムだった。計画は今年のメカニズムの中でも特に革新的なものであり、さまざまなフォーマットで姿を見せている。また『ブルームバロウ』の「新生」を挙げる声もあった。こちらは恐らくネット上で最も愛されてるメカニズムであろう。他には『カルロフ邸殺人事件』の諜報土地を推す者もいた。『Fallout』の「RADカウンター」を挙げる者もいたが、本流のセットではないため厳密に言えば適切な回答ではないだろう。それから市場調査のデータ(現時点では『カルロフ邸殺人事件』と『サンダー・ジャンクションの無法者』のみ)を見てみると、『サンダー・ジャンクションの無法者』の「放題」が一番人気だった。最近では『ダスクモーン:戦慄の館』の「部屋」もネット上の話題を独占している。


Q:今年は共鳴に力を入れたセットが多いですが、時を重ねるにつれて「ボトムアップ」デザインのセットは自然と減っていると感じますか? セットの中核となるテーマは、メカニズム的テーマよりも共鳴テーマの方が多いのでしょうか。

 トップダウンとボトムアップは、セットのデザインのスタート地点や構造の核となる部分を決める非常に専門的な話である。トップダウンはフレイバーからデザインを始め、ボトムアップはメカニズムからデザインを始める。現在マジックのセットのデザイン手法は大きく変わったため、これらのコンセプトは外から見えにくくなっている。それはなぜか? 近年のセットはすべて共鳴を起こす核となる部分を持っており、デザインと並行して世界構築も行われるため、両者が織り交ぜられているように感じられるからである。我々の仕事がうまくいっていれば、プレイヤーはトップダウン・セットとボトムアップ・セットを見分けられないはずだ。

 『ブルームバロウ』を例に挙げよう。このセットの舞台は、擬人化動物のジャンルを中心に据えて築かれた。どこから見てもトップダウン・デザインのセットに見えるかもしれないが、実は違うのだ。我々が展望デザインに取りかかったとき、このセットの核となる部分にはさまざまな動物に割り当てられる2色のアーキタイプが求められた。確かにどの動物をどのアーキタイプに割り当てるかにはフレイバー的な要素もあったが、デザイン構造の核となる課題は非常にメカニズム的で、隣の色と重なるアーキタイプのプレイ上のテーマをうまく混ぜ合わせる方法を見つけ出すことだった。もちろん個別のカードにはトップダウン・デザインのものも多くあるが、このセット全体を分類するのであれば、私はボトムアップの方に入れるだろう。

 ここで私が言いたいのは、我々はトップダウンとボトムアップを織り交ぜてデザインしているものの、現在の手法はそのことがわかりやすいとは言えない、ということである。指摘の通り、我々はセットのメカニズム面ではなくフレイバー面を売り込む傾向にあるため、どのセットもトップダウン・デザインに見えるというのが大きな要因だと考えている。


Q:「共闘」メカニズムの新バージョンが共闘でない理由はありますか? ほとんどが昔のカードの劣化版に見えます。共闘を好まない人もいますが、その大きな理由は統一感がないからだと私は思います。共闘持ちのカードを増やして選択肢を広げれば、その問題は解消できると思います。

 「共闘」メカニズムは、我々が「組み合わせ上の問題」と呼ぶ問題を抱えている。それは、新しいものを印刷するたびに既存のものがすべて強化され、パワーレベルが上がっていく問題である。基本的に、我々が同じものを多く作りすぎるとすべてが壊れてしまい、それがもともと壊れていたと考える人も現れる。そのため我々は、《永久忠義の義丸》や《鸚鵡の匪賊、フランシスコ》のような例外を除いて、他の共闘を持つカードすべてと共闘できるカードをこれ以上作らないことにしたのだった。

 その代わりに、我々は「共闘」の亜種を作るようになった。そちらはそのグループ内でのみ共闘するようにカードを作ることができ、問題を起こさない数に留めることができる。バランス上の問題を起こさずに共闘関係を築けるのだ。


Q:〈重傷〉は呪い・エンチャントのように感じます。呪いを持たせるか検討した上で否決されたのでしょう。その理由は?

 何が起きたのか説明しよう。展望デザインにおいて、我々は「怪我/injury」と呼ばれるメカニズムを作成した(最近公開した「『ダスクモーン:戦慄の館』展望デザイン提出文書」でも言及されている)。それはモダンホラーの物語で怪物に追われている中で負う怪我を表現したメカニズムだった。《重傷》はもともと怪我メカニズムのカードであり、アート上でもそのコンセプトが表現された。このカードが考えられた時期や怪我メカニズムが取り除かれたタイミングは定かではないが、セット・デザイン・チームはこのカードをアートに合わせてデザインし直した。メカニズム的には「呪い」を感じられるが、呪いとして作られたカードではなく、クリエイティブ面も呪いのようなものではなかった。そのためセット・デザインは、これを呪いにしなかったのだ。


Q:エピローグ・セットは終了ですか?

 その通りである。エピローグ・セットは終了した。市場調査において我々がやっていることの1つは、プレイヤーに製品を五段階で評価してもらうことである。その後我々は、その製品を高く評価したプレイヤーの割合を見る。そしてその数字は、製品の人気を測る一般的な指標となる。80%以上の高評価を受けた製品は大成功と認識される。60~80%の高評価を受けた製品は、下の方ではあるものの肯定的である。高評価の割合が30~40%に入り始めると、うまくいかなかったと認識され、何か違う道を模索する必要が出てくる。『機械兵団の進軍:決戦の後に』の高評価の割合は、5%だった。この数字は、我々がこれまで見た中で最も低かったものを15%近く下回った。「プレイヤーに嫌われた」という言葉でも、恐らく控えめな表現だろう。そのため、これ以上エピローグ・セットを制作する計画はない。


お便り記念日

 本日はこれで以上だ。いつもの通り、私や私の同僚たちの回答に関する意見を、メール、各ソーシャルメディア(X(旧Twitter)TumblrInstagramTikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、一問一答記事のその2でお会いしよう。

 その日まで、あなたが質問を続けますように。


(Tr. Tetsuya Yabuki)

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