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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

『ダスクモーン:戦慄の館』展望デザイン提出文書 その2

Mark Rosewater, Annie Sardelis
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2024年9月23日

 

 先週、『ダスクモーン:戦慄の館』の展望デザイン提出文書の公開を始めた。文書にはセットのメカニズムやテーマ、構造について書かれており、展望デザイン・チームが行った仕事をセット・デザイン・チームへ伝えるものになっている。本日のコラムは「その2」であり、今回の文書の最後の回となる。先週同様、これからお見せする内容のほとんどは実際の文書である。解説や文脈を添える私の注釈は、文章の横の枠の中に記している。


明かり・クリーチャー・トークン/Light Creature Tokens

 このセットのテーマをエンチャントに定めた我々は、クリーチャー・エンチャントが必要であることを把握していた。「カード・タイプ重視」のテーマでは特定のタイプに一定の開封比が必要となるのだが、クリーチャーを巻き込まずにそれを達成する現実的な方法はない。幸運にも、『テーロス』が我々にクリーチャー・エンチャントの加え方を示してくれていた。それから、シンプルな解決策はもう1つあった。クリーチャー・エンチャント・トークンを作成することだ。それにより、エンチャントでないカードもエンチャントの数を揃える助けになるものにできるのである。

 初期段階で我々が気に入ったアイデアは、光を表現したクリーチャー・トークンだった。ホラー・ジャンルの大部分は暗闇に覆われている。闇は怪物が姿を隠す恐ろしい場所である。そして光は通常、希望や闇との対決を表現する。マジックにおける光は、フレイバー的に白に属することが多い。小型のクリーチャー・トークンを作成する上で難しいことの1つは、それらが攻撃的よりも防御的に使う方が強いことが多い点である。そこで我々は、攻撃誘発の能力を持たせることにした。

 クリエイティブ・チームは希望を表現するというアイデアを気に入ったものの、「明かり」は少々直接的すぎると感じた。彼らは「光霊」という用語を思いつき、そこからさまざまな設定を作り上げていった。ダスクモーン館にはあまたの脅威が存在する。生存者を助けるものを表現したカードがいくらかあるのは、感触が良かった。

 『ダスクモーン:戦慄の館』に「昂揚」が加わり墓地に目が向けられるようになると、セット・デザインは占術を諜報に変更した。白は諜報が得意な色ではないため、攻撃誘発の能力は取り除かれ、このセットのトークンはシンプルなものになった。

 最終的に突き詰められなかったものの、展望デザインは明かり・トークンに弱い怪物もいるというアイデアも探究した。例えば〈ベッド下の怪物〉は実質的に{2}{B}で3/3だが、7/7にもなり得る面白いカードだった。明かり・トークンをすべて破壊するというチャレンジが課されるのである。この手のアイデアが突き詰められなかったの理由の大部分は、複雑さだった。このセットには他にも多くの要素があり、クリーチャー・エンチャント・トークンはただ存在するだけで目的の大部分を果たしていた。そのためセット・デザイン・チームは、その複雑さを他の部分で使うことを選んだのだった。

〈信頼できる懐中電灯〉

{3}
アーティファクト - 装備品
装備しているクリーチャーは+1/+1の修整を受け警戒を持つ。
装備しているクリーチャーが攻撃するたび、「このクリーチャーが攻撃したとき、占術1を行う。」を持つ白の1/1の明かり・クリーチャー・トークン1体を生成する。
装備{2}

〈火に入る蛾〉

{2}{W}
インスタント
「このクリーチャーが攻撃したとき、占術1を行う。」を持つ白の1/1の明かり・クリーチャー・トークン2体を生成する。

〈ベッド下の怪物〉

{2}{B}
クリーチャー - ナイトメア
[カード名]が戦場に出たとき、対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーは、「このクリーチャーが攻撃したとき、占術1を行う。」を持つ白の1/1の明かり・クリーチャー・トークン2体を生成する。
プレイヤーが明かりをコントロールしているなら、[カード名]は-4/-4の修整を受ける。

 

怪我/Injures

 この文書に出てくるメカニズムのほとんどは何らかの形で印刷に至ったが、「怪我」はそうではなかった。このメカニズムは、他のメカニズムと同じくホラージャンルのよくあることを捉えようとするところから始めた。怪我の場合は、怪物から逃げようとする中で受ける負傷だ。我々は、ホラージャンルの物語における怪我を表現するメカニズムにしたかった。怪我を負った者の動きを鈍らせ、死へとつながるものである。

 アニーが述べている通り、我々はかつてデザインしたセットにおいて印刷まで至らなかったメカニズムを使うことにした。「負債」は、プレイヤーに負債カウンター1個を与えるメカニズムだった。基本的には対戦相手に置かれるが、自分に置かれる場合もあった。負債カウンターを持つプレイヤーが負債を支払わないと、ライフを失うことになった。我々は負債の挙動を大いに気にいったが、それはラヴニカを舞台にするセットを築くためのギルドのメカニズムとしてはうまく機能しなかった。ラヴニカを舞台とするセットでは、色を共有するギルド同士でメカニズム的に重なる部分が多く必要となる。負債はその点に適していなかったのだ。

 「怪我」のアイデアが挙がったとき、私が「負債」メカニズムを提案した。展望デザイン・チームはそれを気に入り、ファイルに入れることにした。怪我は楽しくフレイバーに富んだメカニズムであったが、しかしまたしても他のメカニズムとうまく混ざらなかった。すでに多くの複雑さを抱えたセットへこのメカニズムを入れるのは、複雑になり過ぎるのだ。セット・デザインがこれを取り除いたことに、私は驚いていない。いつの日かこのメカニズムの亜種が印刷に至ると確信している。

怪我(エンチャント(プレイヤー)と「怪我を負うプレイヤーのターン終了時に、そのプレイヤーは望む数だけ{2}を支払い怪我を取り除いてもよい。その後、そのプレイヤーがまだ怪我を負っているなら、1点のライフを失う。」を持つ怪我・エンチャント・トークン1つを生成する。)

〈血が滴る頭の傷〉

{1}{B}
ソーサリー
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは怪我を負い、カード1枚を捨てる。

〈腐敗屋敷を耕すもの〉

{4}{B}
クリーチャー - ファンガス・犬
3/5
[カード名]が対戦相手1人に戦闘ダメージを与えるたび、そのプレイヤーは怪我を負う。あなたがコントロールしている怪我は治療できない。

〈サディストの双子〉

{3}{R}
クリーチャー - 人間・暗殺者
4/2
[カード名]戦場に出たとき、プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは2回怪我を負う。

 「怪我」はスラッシャー映画における悪役と不幸な犠牲者のフレイバーを捉える、赤と黒に集中したメカニズムである。怪我の治療に時間がかかるのは、サバイバル要素があるホラーゲームではよくあることだ。より有形でファンタジー要素の少ないエンチャントを探求することは、『Swimming』によく合っているように思えた。怪我の数がいくつでも失うライフは1点だが、それを取り除くには労力がかかる。どこかで見覚えがあると感じたかもしれないが、これは『ラヴニカの献身』で印刷に至らなかったオルゾフのメカニズム「負債/debt」をもとにしている。怪我メカニズムは新たにファイルへ加えられたため、フレイバー重視のテキストになっている。

 

恐れ/Afraid

 「恐れ」は、我々が「接着剤メカニズム」と呼ぶものである。接着剤メカニズムは、セットに散らばるパーツを取り挙げてそれらをまとめ上げる。恐れでは、包括の手法を用いることにした。恐れでは特に、エンチャントを参照する点が重要だった。問題はそれと何をつなげるかだ。手に取りやすかったのは、恐るべきクリーチャー・タイプだった。その点ホラーやナイトメアはうってつけに見えた。どちらもこのセットの他の場所で使われていたからだ。

 恐れが戦場に出たときと攻撃したときに機能するのは、我々がこのセットにアグロの要素を加えようとしていたからである。エンチャントで攻撃するのが奇妙に感じられないかという点については議論が起きたが、クリーチャー・エンチャントがいるのだから問題ないだろうと感じられた。セット・デザイン・チームは最終的に、もっと誘発条件が少なくともクールなカードが作れると判断した。また、このセットのホラーとナイトメアは元からクリーチャー・エンチャントであることが求められていたため、それらを改めて表記するのは重複になった。のちにホラーやナイトメアのシナジーが取り除かれると、「星座」と同じようなものだと感じられないよう、「部屋」の開放が誘発条件に加わった。

 「恐れ」にはもう1つ、興味深い要素があった。恐れを使用しているプレイヤーではなく、対戦相手の方に付与される状態であることだ。あなたがこのメカニズムに要求されたことを成し遂げても、あなたが恩恵を得るわけではない。代わりに、対戦相手にネガティブな状態を付与するのである。これは我々が今までやったことのないものであり、背景にあるフレイバーも実にクールだった。このアイデアでは対戦相手が恐れを抱いている場合に強くなるカードをデザインでき、それはテキストを理解しやすくプレイ感も良かった。しかしセット・デザインは、このセットから複雑さを削るためにこのメカニズムにも手をつけたのだった。とはいえコンセプトはクールなので、将来使えるように後ろのポケットに入れておくことにしている。

恐れ(このターン、あなたがコントロールしているエンチャントやホラーやナイトメアが戦場に出るか攻撃したなら、すべての対戦相手は恐れを抱く。)

〈下水道の道化師〉

{B}
クリーチャー - 道化師
3/3
[カード名]が戦場に出たとき、対戦相手1人が恐れを抱いていない限り、クリーチャー1体を生け贄に捧げる。(このターン、あなたがコントロールしているエンチャントやホラーやナイトメアが戦場に出るか攻撃したなら、すべての対戦相手は恐れを抱く。)

〈超巨大サメ〉

{5}{U}
クリーチャー - サメ
5/6
[カード名]は恐れを抱いているプレイヤーによってはブロックされない。(このターン、あなたがコントロールしているエンチャントやホラーやナイトメアが戦場に出るか攻撃したなら、すべての対戦相手は恐れを抱く。)

〈明かり消し〉

{B}
インスタント
クリーチャー1体を対象とする。ターン終了時まで、それは-1/-1の修整を受ける。
対戦相手1人が恐れを抱いているなら、代わりにそれは-4/-4の修整を受ける。(このターン、あなたがコントロールしているエンチャントやホラーやナイトメアが戦場に出るか攻撃したなら、すべての対戦相手は恐れを抱く。)

 「恐れ」は、このセットのすべての要素をまとめ上げ、他では味わえない恐怖を演出するものである。呪われた館の部屋はエンチャントで表現され、「憑霊」クリーチャーはクリーチャー・エンチャントであり、「邪悪予示」されたクリーチャーはホラーであり、恐ろしいナイトメアもいる。始まりは、「恐れを抱く」状態になるというアイデアだった。あなたが恐れを抱いたとき、何が起こるだろうか? 怪物はさらに恐ろしいものになり、危険度が増し、あるいはアドレナリンの放出によりこれまでにない力を発揮するかもしれない。私たちは、それらすべてを「恐れ」メカニズムで表現しようと試みた。恐れは、マナを支払うことなく機能した場合に最高の効果を発揮する。あなたのクリーチャーが死亡した場合に恐れが機能するバージョンも実験した。

 

部屋/Rooms

 興味深いことに、「部屋」の形は少々変わったものの、最終版もこれらの条件をすべて満たしている。この文書における重要な部分は、我々が特定のことについてなぜそうしたのかを明記していることにある。セット・デザイン・チームが何かを変更する際は、より大きな構造の中でさまざまなメカニズムが果たす役割を念頭に置く必要があるからだ。

 「部屋」は、エンチャントのサブタイプである。私たちはこのメカニズムで多くの実験を行った。これらのエンチャントは、呪われた館のさまざまな部分を表現している。部屋の鍵となる要素は以下の通りである。

  • 場所を感じられること。部屋は一定期間戦場に留まるか、戦場にある間に発揮される効果を持つ。部屋に「入る」感覚である。とはいえ盤面が複雑化するため、常在型能力に囚われないようにしたい。
  • 他のカード・タイプの役割を果たせること。このセットで取り扱えるエンチャントの数には限りがあるため、インスタントやソーサリーのような効果を持つものやクリーチャーを生み出すものが欠かせない。
  • 移動の感覚を捉えること。部屋から部屋へと移ることで呪われた館を探検するという要素に、私たちは強く興味を引かれている。

 

 以下は、ドア・カウンターを用いて探索済みの部屋を示すアイデアの例である。

 このバージョンは、印刷版と大きく離れてはいなかった。最も大きな違いは、はじめに開放する部屋が決まっていることだ。最終版は、このセットを巨大な館を感じられるものにする仕事をずっと良く果たしたと私は確信している。展望デザインが求めた「移動する感覚」も加えられており、さらにカード名とアートが増えることでさらなるフレイバーも加わったのだった。

 ドア・カウンターを閉鎖されている部屋に変えた理由は2つある。1つは、ドア・カウンターはそのカードのもう1つの部分へ行けるということを十分に示していなかったこと。「閉鎖」されているということは、そこへは立ち入ることができず、開放する手段があることを強く示唆するのだ。そして2つ目は、カウンターを用いることでテキストが多くなること。我々は部屋の注釈文をなんとかして2行に収める必要があった。メカニズムにカウンターを含めて知らせなくとも、ゲーム外のプレイ用品で部屋が閉鎖されていることを示せると我々は知っていたのだ。

〈サマー・キャンプ〉

{2}{G}
エンチャント - 部屋
この部屋はドア・カウンター1個が置かれた状態で戦場に出る。
[カード名]が戦場に出たとき、あなたのライブラリーから基本土地カード1枚を探し、それをタップ状態で戦場に出す。その後ライブラリーを切り直す。
{5}, [カード名]からドア・カウンター1個を取り除く:邪悪予示を行い、それに+1/+1カウンター2個を置く。(あなたのライブラリーの一番上にあるカード3枚を見る。それらのうち1枚を2/2のホラー・クリーチャーとして裏向きで戦場に出し、残りをあなたのライブラリーの一番下に置く。それがクリーチャー・カードなら、そのマナ・コストで、いつでも表向きにしてよい。)

〈死の霊廟〉

{B}
エンチャント - 部屋
この部屋はドア・カウンター1個が置かれた状態で戦場に出る。
[カード名]が戦場に出たとき、あなたがコントロールしているクリーチャー1体を生け贄に捧げてもよい。そうしたとき、あなたがコントロールしていないクリーチャー1体を対象とする。それを破壊する。
{4}{B}, [カード名]からドア・カウンター1個を取り除く:あなたの墓地からクリーチャー・カード2枚を対象とする。それらをあなたの手札に戻す。

 

 予示と両面カードの問題もあるが、当時の我々はダスクモーンをイニストラードと異なる感覚を味わえるようにするべく力を尽くしており、両面カードほどイニストラードと結びついたメカニズムもなかった。第2面がクリーチャーである両面カードはフレイバーに富んだものではあったが、このセットの中核であるエンチャント・テーマに寄与することはほとんどなかった。また「部屋」の存在により、我々は「違和感」を1枚のカードで2回誘発させられるように調整できた。

 私たちはまた、片面がエンチャントでもう片面がクリーチャーである両面カードのバージョンも試した。それは部屋から飛び出す怪物のフレイバーを捉え、固定語を用いることでより広い部屋や部屋の中での行動などを表現することもできるだろう。問題点としては、「コスト対効果」が高く見えすぎる点が挙げられる。これらは1枚のカードで多くのバリューを生み出すため、起動コストは通常より高くなりがちになるだろう。プレイ・デザインも、このバージョンのコスト対効果を高く見積もる傾向が見受けられた。また、同じセットに裏向きのカードを用いるメカニズムがあるため、両面カードの使用は避けたいと考えている。

〈保有の水槽〉

{U}
エンチャント - 部屋
各能力はソーサリーとしてのみ起動でき、1回しか起動できない。各能力を起動したら、[カード名]を追放し、変身させる。
観察室 - {1}{U}:カード1枚を引く。
射光室 - {2}:「これが攻撃したとき、占術1を行う。」を持つ白の1/1の明かり・トークン1体を生成する。
//

〈解き放たれた実験体〉

クリーチャー・エンチャント - ミュータント
2/3
護法{2}

〈ヘルコースター・パーク〉

{R}

エンチャント - 部屋
各能力はソーサリーとしてのみ起動でき、1回しか起動できない。各能力を起動したら、[カード名]を追放し、変身させる。
ローラーコースター - {R}:あなたがコントロールしているクリーチャー1体を対象とする。ターン終了時まで、それは速攻を得る。
大サーカス - {2}{R}:赤の1/1の道化師・クリーチャー・トークン2体を生成する。
//

〈ファンハウスの悪鬼〉

クリーチャー・エンチャント - 道化師・暗殺者
2/2
威迫
あなたがコントロールしている他の道化師は威迫を持つ。

 

 展望デザインでセットを制作する際には通常、デザインの核心となるものが1つある。『ダスクモーン:戦慄の館』では、「部屋」がそれだった。部屋はメカニズムの中核でありながらフレイバーの中心でもあったため、このセットの目玉とするべく多くの時間が費やされたのだった。その仕上がりを、私は心から気に入っている。

 「部屋」メカニズムを適切な形にできるかどうかが、呪われた館という舞台を実現させる鍵を握るだろう。私たちはここに挙げたアイデアをどちらも気に入っているが、セット・デザインでさらに探究する余地は十分にあると思われる。

 

ドラフト・アーキタイプ

 以前も説明したが、通常展望デザインがセット・デザインへファイルを提出する数週間前に、我々は「展望デザイン・サミット」と呼ばれる会議を行っている。そこでは多くの目でセットのデザインを見て、フィードバックを集める。今回は展望デザイン・サミット後に多くのメモを受け取り、我々は新たなチームメンバーを加えた上で、メモをもとにたくさんの変更を行っていった。

 展望デザイン・サミット後はメカニズムに集中して多くの時間を費やしたため、今回のドラフト・アーキタイプは少々緩いものになっている。

 

 白青は、「恐れ」を調整した「違和感」に注目したアーキタイプである。恐れと異なり、違和感はエンチャントにのみ集中している。最終的には、我々が提出したものよりテンポ寄りになった。

{W}{U}白青――エンチャントを唱えることに注目し、「恐れ」を活用する。

 

 青黒も「恐れ」から「違和感」に移ったが、このアーキタイプはクリーチャーの方に焦点が寄っていたため、違和感アーキタイプになる際に多くの変更を受け、もとの要素はほとんどなくなった。最終的には、コントロール・デッキ寄りになった。

{U}{B}青黒――ナイトメアやホラーで攻撃することに注目し、「恐れ」を活用する。

 

 「怪我」がファイルから取り除かれたため、このアーキタイプは大きく変更された。最終的には、ライフを支払うことよりも生け贄に寄りになった。

{B}{R}黒赤――「怪我」とライフと引き換えの恩恵を活用する。

 

 赤緑のアーキタイプは最終的に、展望デザインからの提出段階ではファイルになかった「昂揚」になった。また、ミッドレンジ寄りではなくアグロ寄りになった。

{R}{G}赤緑――大量のマナを(「部屋」などの)盤面に注ぎ込むランプ戦略。

 

 緑白のアーキタイプは最終的に、「生存」を中心にしたものになった。これも提出段階ではファイルになかったメカニズムである。横並べの要素は残ったが、少し遅めのアーキタイプになった。

{G}{W}緑白――さまざまなエンチャントを横に並べ、エンチャントの数で恩恵を得る。

 

 このアーキタイプは2つの大きな変更を受けた。1つは「憑霊」メカニズムが取り除かれ、死亡するとクリーチャーでないエンチャントになるクリーチャー・エンチャントに変更されたこと。もう1つは、セット・デザインにおいて墓地の要素が加わったことである。このアーキタイプは重めの方へ寄っていった。

{W}{B}白黒――「憑霊」メカニズムを活かし、クリーチャーを強化する。

 

 青赤のアーキタイプは、最も変更が少ないものの1つだった。最終版も「部屋」に焦点を当てた遅めのコントロールになっている。

{U}{R}青赤――青赤が好む非クリーチャー呪文の役割を担う「部屋」が、最も多く使われる。

 

 「邪悪予示」はのちに「戦慄予示」としてファイルに残ったものの、黒緑のアーキタイプからは外された。黒緑は最終的に、「昂揚」に注目した消耗戦のアーキタイプになった。繰り返しになるが、展望デザインからの提出段階で昂揚はなかった。

{B}{G}黒緑――死亡時誘発。「邪悪予示」したクリーチャーを表向きにして交換を取るのと相性が良い。

 

 赤白のアーキタイプは、この色の組み合わせお決まりのアグロ戦略が最後まで残ったが、パワー2以下のクリーチャーとのシナジーが加えられた。のちに「光霊」となる明かり・クリーチャー・エンチャント・トークンとの相性が良かった。

{R}{W}赤白――明かり・トークンを用いる「生存者アグロ」。

 

 緑青も、提出したものから大きく変わらなかった。最終版も「戦慄予示」に注目したものになっている。

{G}{U}緑青――「邪悪予示」で裏向きのカードを戦力とする。

 


 最後に、この文書の公開を許可してくれたアニーに感謝を伝えたい。そしてこの文書へ至るまでのメカニズムやカードの作成に尽力した先行デザイン・チームおよび展望デザイン・チームの面々に、心から感謝する。

 『Swimming』の制作は最高に楽しく、この仕事に先行デザイン・チーム、展望デザイン・チーム、世界構築チームとともに取り組めたことを心から嬉しく思う。このセットのために私は数多くのホラー映画を映画館で鑑賞し、また今ではお気に入りの映画にもなった古典作品にも触れることができた。この文書について質問等ある場合は、私まで連絡を。

 ――アニー・サルデリス/Annie Sardelis

「もう死んでると思う。」

 以上、今回の展望デザイン提出文書をお届けした。私はこの文書を公開するのをいつも楽しんでいる。いつもの通り、この文書や私のコメント、『ダスクモーン:戦慄の館』に関する意見を、メール、各ソーシャルメディア(X(旧Twitter)TumblrInstagramTikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、2024年の一問一答記事のその1でお会いしよう。

 その日まで、移動を続けたまえ。


(Tr. Tetsuya Yabuki)

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