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Making Magic -マジック開発秘話-
『ブルームバロウ』展望デザイン提出文書 その3
2024年8月5日
この2週間にわたって(その1、その2)、ダグ・ベイヤー/Doug Beyerによる『Rugby』展望デザイン提出文書を公開してきた。本日が「その3」であり、最後の回となる。
他の展望デザイン提出文書の記事同様、これからお見せする内容のほとんどは実際の文書である。解説や文脈を添える私の注釈は、文章の下の枠の中に記している。
捕食者
この基準化の考えに、我々は心を躍らせた。そのためこの文書内で何度も触れられている。
「捕食者」は巨大な知性なき動物であり、この世界の擬人化動物のキャラクターが避けては通れない「怪物」である。それらは巨大なフクロウやタカ、オオカミ、クマ、ヤマネコ、ヘラジカ、カミツキガメ、カニ、ウナギ、肉食魚などの姿で描かれるだろう。この舞台ではハツカネズミが普通の人間と同等の存在として基準になるため、比較してクマは恐ろしい怪物となるだろう。
捕食者に対する最大の懸念は、この恐るべき脅威をアニマルフォークが撃退するという物語を捉えることだった。アニマルフォークの方が捕食者よりサイズがずっと小さいため、それが難しかったのだ。アニマルフォークが対抗でき、勝てる可能性もある捕食者を作ろうとした我々の実験が、以下に語られる。
捕食者のメカニズム的特徴。私たちは、小さくとも勇敢なアニマルフォークと対峙する捕食者が巨大で目を引く存在であることを感じられる方法を求めた。ほとんどのアニマルフォークはパワーとタフネスが小さく、普通なら大型クリーチャーをブロックするのは難しい。そこで私たちは、強い印象を与えながらも対処可能な大型クリーチャーを実現する方法を探った。
セット・デザインは最終的にこれらの感覚は重要でないと判断し、捕食者がこの方針でデザインされることはなかった。それからバトルのファンの諸君に、我々はバトルを使う場所を探しているということを伝えておきたい。『ブルームバロウ』では、適切な場所を見つけるに至らなかったのだった。
私たちが思いついたアイデアの中には、戦いの中で消耗する捕食者がある。
〈恐るべき熊〉
{4}{G}
クリーチャー — 熊
[カード名]がダメージを受けるたび、その点数に等しい数の傷カウンターをその上に置く。[カード名]は、それの上に置かれた傷カウンター1個につき-1/-1の修整を受ける。
10/10
また、捕食者を複数体のクリーチャーでブロックさせるデザインも試した。
〈消耗するヘラジカ〉
{5}{G}{G}
クリーチャー — 大鹿
トランプル
[カード名]が死亡したとき、それが攻撃していたなら、防御側プレイヤーは[カード名]をブロックしたクリーチャー1体につき1つの食物トークンを生成する。
7/7
複数のクリーチャーでブロックしやすいような欠点を持った捕食者もいる。
〈一心不乱の熊〉
{4}{G}{G}
クリーチャー — 熊
あなたは戦闘中に呪文を唱えることができない。
7/6
戦場に出たときに強力な効果を発揮し、死亡したときは対戦相手に利益が与えられるものもある。これにより、サイズ差のバランスを取る助けになる。
〈巨大地虫〉
{4}{W}
クリーチャー — 昆虫
[カード名]が戦場に出たとき、あなたは5点のライフを得る。
[カード名]が死亡したとき、各対戦相手は5点のライフを得る。
5/5
捕食者との戦いを感じられる表現も試した。
〈恐れさせるヘラジカ〉
{4}{G}{G}
クリーチャー — 大鹿
ターンの終了時に、そのターンあなたが4点以上の戦闘ダメージを受けていたなら、[カード名]をあなたのライブラリーに戻し切り直す。
8/8
「包囲戦」以外のバトルも試してみた。それは攻撃対象にできるエンチャントとして機能する。
〈ヤマネコとの戦い〉
{4}{W}
バトル
守備値 — 5
あなたの終了ステップの開始時に、クリーチャー1体を対象とする。それを[カード名]が戦場から離れるまで追放する。
特に気に入ったものをファイルへ入れる時間は足りなかったが、セット・デザイン・チームには捕食者の楽しさや恐ろしさ、フレーバーをさらに探検してほしい。デッキにぜひ入れたくなり、戦場に出れば恐ろしく、そしてドラマティックに倒される余地があるものが、捕食者の目指すところである。
この問題を解決するためには、捕食者の数を減らす必要があった。アニマルフォークの方がずっと多くデッキに入っているため、勝利する日が多くなるのだ。
捕食者側はどれくらい勝つべきか? 展望デザイン・サミットで私たちが議題としたことの1つは、捕食者はゲームを終わらせる力を持ち、多くのゲームでアニマルフォークを圧倒することだった。このセットの物語では、捕食者は危険な存在で捕食者側が勝つ日もあるが、アニマルフォーク側が勝利を収める日が多いというのが理想である。
非クリーチャーのメカニズム:贈呈、クラス、祭日、偉業
展望デザインは、セット・デザインが最善だと思うものを自由に使えるように、このセットに必要なものをより多く渡したいと考えている。そのため、展望デザイン提出文書では使われる可能性があるさまざまなメカニズムが取り挙げられているのだ。
『Rugby』はクリーチャーに強く焦点を当てたセットであるため、私たちはスペルに関連するメカニズムや、その他クリーチャーでないカードで共鳴を起こすデザインを見つけたかった。
クリーチャーでないものは、その次元のクリーチャーではなくフレイバーを表現する。このセットのスペルやエンチャントは、『Rugby』の擬人化動物の世界を感じられるデザインにしたかった。そこで私たちはまず、このセットの動物テーマに合うデザインのスペルを色々と試してみた。動物をタップすると「フラッシュバック」するスペルはどうか? 異なる3つのクリーチャー・タイプをコントロールしていると強化されるスペルはどうか? という風に。
最終的に、私たちはクリーチャーや動物に直接言及せず、しかし可愛らしい動物の世界のフレイバーを思わせるメカニズムを求めるに至った。その結果が、「贈呈/gift」メカニズム、クラス・エンチャント、「祭日/Holiday」サイクル、「偉業/epic feats」サイクルである。
贈呈
セット・デザインで赤に「宝物1つを贈呈する」が加えられたが、展望デザインから提出した3つの贈り物はそのまま残った。私が贈呈で特に気に入っている点は、動物テーマとの関連性がなくてもこの次元の雰囲気をカードに加えてくれるところである。舞台となる世界を掘り下げるためのさまざまな手段を見つけることもまた、セットを組み上げる仕事の一部なのだ。
「贈呈」はインスタントやソーサリーが持つメカニズムであり、対戦相手に食物・トークンや1/1のクリーチャーやカードといったリソースを与えて「キッカー」できる。フレイバー面では村の動物たちの贈り物を交換する習慣を表現したメカニズムであり、機能面では尖った選択も可能な楽しいメカニズムである!
提出ファイルには5色すべてに贈呈が用意されているが、スペルの色である青と赤に集中させるのも良いかもしれない。
以下に、贈呈メカニズムを持つさまざまなカードの例を挙げる。
〈活力与えの捧げ物〉(コモン)
{1}{B}
ソーサリー
贈呈 — 食物トークン1つ。(あなたは、「対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーは食物・トークン1つを生成する。」を選んでもよい。)
あなたの墓地からクリーチャー・カード1枚を対象とする。それをあなたの手札に戻す。その後、贈呈をしていたなら、あなたの墓地から他のクリーチャー・カード1枚を対象とする。それをあなたの手札に戻す。
〈小石の雨〉(アンコモン)
{1}{R}
ソーサリー
贈呈 — カード1枚。(あなたは、「対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーはカード1枚を引く。」を選んでもよい。)
1つを対象とする。[カード名]はそれに3点のダメージを与える。その後、贈呈をしていたなら、他の1つを対象とする。[カード名]はそれに2点のダメージを与える。
興味深いことに、セット・デザインは贈呈するものに変更を加えなかった。
現時点ではまだ「もの」が中心になっている。提出ファイルにある贈呈のデザインの多くは、食物や1/1の魚・トークンを生成する。展望デザイン・サミットにて、私たちはこのセットが非常に戦場に注目したものであり、スペルのメカニズムである「贈呈」でさえも戦場にパーマネントを加えるものが多いという指摘が挙がった。他に贈るものを用意することで、改善されるかもしれない。
贈呈はほとんどがインスタントやソーサリーに使われることになったが、このセットには贈呈を持つクリーチャーとアーティファクトが1枚ずつある。また、贈呈は5色すべてに残ることになった。
贈呈をパーマネントに持たせるか? 贈呈は機能的に「キッカー・コスト」であるため、何にでも持たせられるはずである。今回はスペルに持たせる必要があったため、他ではあまり使っていない。レアのアーティファクトに贈呈を持たせる実験をしてみたが、やや奇妙なデザインになった。
クラス
このデザインは、牧歌的な職人を捉えるためのアイデアとして始まった。我々はすぐに『フォーゴトン・レルム探訪』のクラス・エンチャントにたどり着き、あとは振り返らなかった。才能の名前には変更が入った(すべてのカードが職人を表現するものではなくなった)ものの、我々が提出したものはほとんどが残った。
提出ファイルに入っている「クラス」エンチャントは、機能的には『フォーゴトン・レルム探訪』のものと同一である。しかし今回は「ダンジョンズ&ドラゴンズ」の職業ではなく、漁師や商人、パン職人、鍛冶屋といった牧歌的な職人を表現するために使っている。リミテッドに深みを加え、構築に挑戦をもたらすこれらのフレイバー豊かなトップダウン・デザインを、私たちは大いに楽しんだ。今回のクラス・エンチャントはこのセットに多くの魅力を加え、農耕社会の専門的技術を持つアニマルフォークの住民である感覚に浸れるだろう。また、クリーチャーやクリーチャー・タイプ以外にも目を向けるきっかけになるだろう。
〈漁師クラス〉
{2}{U}
エンチャント — クラス
あなたのアップキープの開始時に、諜報1を行う。
//
レベル2 — {1}{U}
このクラスがレベル2になったとき、あなたの墓地からインスタントやソーサリーや魚であるカード1枚を対象とする。それをあなたの手札に戻す。
//
レベル3 — {3}{U}{U}
あなたのライブラリーの一番上にあるカード1枚をいつ見てもよい。
あなたのライブラリーの一番上からインスタントやソーサリーや魚である呪文を唱えてもよい。
祭日
「祭日」は印刷に至らなかった。祭日が他の祭日を持ってくるため、複数ターンにまたがって呪文を連鎖できるというのが基本的なアイデアだった。カードを持ってくる効果によりライブラリーを切り直すことが多くなりすぎることと、バランスを取るのが難しいことが印刷に至らなかった理由だと私は考えている。
「祭日」もまた、このセットにさらなる魅力と質感を加えるトップダウン・デザインである。祭日を持つ呪文を唱えると、他の祭日を持つカードを「教示者」のように持ってくることができる。これは『神河』の「祭殿」サイクルのように、ドラフトでかき集める戦略が取れる小型サイクルを形成する。フレイバー面では、この次元の年中行事のお祝いやお祭りを表現している。
〈マス豊漁の日〉
{3}{W}
ソーサリー — 祭日
青の1/1の魚・クリーチャー・トークン2体を生成する。あなたのライブラリーから[カード名]という名前でない祭日であるカード1枚を探し、公開し、あなたの手札に加える。その後ライブラリーを切り直す。
〈花冠の日〉
{3}{G}
ソーサリー — 祭日
あなたがコントロールしているクリーチャー1体を対象とする。それに+1/+1カウンター3個を置く。あなたのライブラリーから[カード名]という名前でない祭日であるカード1枚を探し、公開し、あなたの手札に加える。その後ライブラリーを切り直す。
偉業
これも印刷には至らなかったアイデアの1つだ。このセットでエンチャントに割り当てられる枠は限られており、「クラス」の方がより多くの支持を得たのだった。
世界構築チームは、アニマルフォークたちが「渓間で最も高いマツの木のてっぺんに羽を届けた」というような祖先の偉業を語る姿に興味を示した。そのフレイバーを表現するための手段として、私たちは『カルドハイム』の《世界樹への道》に注目した。
「偉業」は、戦場に出たときに小さな効果を発揮し、ゲーム後半には大きな効果を発揮できる可能性があるエンチャント群である。それらには、小さな動物にとっては非常に恐ろしいことを勇気をもって成し遂げるというフレイバーが込められている。機能面で目新しいことはなく、またセット内の他の要素にも絡まない。クリーチャーでないものを使ってこの世界のフレイバーを表現する手段の1つである。
〈かつて死の沼を越えたことがある〉
{2}{B}
エンチャント
[カード名]が戦場に出たとき、対戦相手がコントロールしているクリーチャー1体を対象とする。ターン終了時まで、それは-4/-4の修整を受ける。
{5}{B}{B}, [カード名]を生け贄に捧げる:あなたの墓地からクリーチャー・カード2枚を対象とする。それらをあなたの手札に戻す。
食物
このセットにおける食物は、適切な使われ方に収まった。「贈呈」で使われ、リスのアーキタイプの中核にもなった。またリスのアーキタイプでは「給餌」と呼ばれるメカニズムでも使われた。
『Rugby』には食物の小テーマが設定されている。食物を生成する面白いデザインが多数あり、それらはこの舞台にフィットしているため、私たちは食物をこのセットの主要な非クリーチャー・トークンに据えた。提出ファイルは全体的に食物関連のものが多すぎるように思われるが、デザイン・ツールとしては白黒緑の楔3色においてうまく機能した。「黒緑リス」は食物・トークンを溜め込んだり生け贄に捧げたりして活用し、「緑白兎」はトークンの生成を活かし、「白黒コウモリ」はライフゲインに関連している。食物はまた、「贈呈」メカニズムで贈呈するものとしてもフレイバー豊かで素敵だ。
リミテッド・アーキタイプ
展望デザインは通常ドラフト・アーキタイプの担当はしないが、デザインの中核が陣営である場合、展望デザインがそこに多くの時間を割くことがよくある。
今回の10のリミテッド・アーキタイプは、動物のタイプをテーマにしている。私たちは各アーキタイプを、その色の組み合わせを感じられる楽しいゲーム体験にしつつ、できる限りその動物の特徴や個性を表現できるようにデザインした。
この時点でのリミテッド・アーキタイプは、「同朋」メカニズムがあるためタイプ的テーマがより大きな役割を持つと見られていた。同朋が取り除かれたことはリミテッド・アーキタイプに大きな影響を与えることになった。アーキタイプを考える際に、我々はアーキタイプを速さで3つのカテゴリーに分けてその間でバランスを取ることを好んでやっている。
すべてを「横に並べてロードを出す」にしないこと。プレイ・デザインが目指す大きな目標の1つは、動物のアーキタイプそれぞれで異なるプレイ体験を味わえるようにすることだった。どの動物のアーキタイプもクリーチャーを中心にしたものになるが、それぞれ異なるプレイ感を推し進めたため、すべてが「小型クリーチャーをプレイしてロードで強化し攻撃する」というプレイ・パターンにはなっていない。スペルを駆使する遅いデッキもあれば、墓地利用に注目したデッキもあれば、ライフゲインに注目したデッキもある。
10の主要なアーキタイプの詳細
色 | 動物 | アーキタイプ | 速さ |
---|---|---|---|
白青 | 鳥 | 飛行、自軍強化 | 中速 |
青黒 | ネズミ | サボタージュ | 高速 |
黒赤 | トカゲ | 狂喜、絢爛 | 高速 |
赤緑 | アライグマ | マナ加速、2つ目の呪文 | 低速 |
緑白 | 兎 | 横並べトークン | 中速 |
白黒 | コウモリ | 飛行、ライフ変化 | 中速 |
青赤 | カワウソ | スペル、果敢 | 中速 |
黒緑 | リス | 墓地 | 中速 |
赤白 | ハツカネズミ | 英雄的 | 高速 |
緑青 | カエル | クリーチャー上陸 | 低速 |
白青鳥
セット・デザインは、このアーキタイプが飛行クリーチャーを含まないときの方が気に入ったため、鳥と飛行を持たないクリーチャーを織り交ぜることを推奨するカードを数多く追加した。
鳥は、陽気で頼りになる仲間である。鳥はもともと飛行を持っているため、飛行は「白青鳥」の小テーマになっている。飛行を除いて特に共通して見受けられるテキストはないが、他を助けるアーキタイプとして他のクリーチャーを強化したり守ったりできる。「白青鳥」は「同朋」の仲間に飛行やその他能力を与え、スタッツを強化し、ダメージを通す助けになる。鳥は1/1~3/3の小~中型のサイズに集中している。提出ファイルでは鳥クリーチャーの開封比が他の動物と比較してわずかに少なくなっており、このセットに飛行が多くなり過ぎないようにしている。
青黒ネズミ
セット・デザインはこのアーキタイプに「スレッショルド」を加え、ゲーム後半の戦略の組み立てを助けた。対戦相手の動きを阻害しながら、墓地を肥やしていくのである。
ネズミは狡猾なならず者であり、策略家である。「青黒ネズミ」はサボタージュ能力のアーキタイプであり、多くのネズミが対戦相手に戦闘ダメージを与えると誘発する能力や攻撃を通す助けになる能力を持っている。ネズミは「同朋」の仲間に攻撃誘発の能力やサボタージュ能力、回避能力、その他隠密行動に役立つ能力をもたらす。ネズミは1/1~3/2くらいの小型サイズに集中している。
黒赤トカゲ
セット・デザインはこのアーキタイプをもう少し攻撃的にし、攻撃で恩恵を得られるようにした。
トカゲは、常にイライラしていて誰彼かまわず噛みつくような冷血な変わり者である。「黒赤トカゲ」は「対戦相手がダメージを受ける」ことを重視するアーキタイプであるため、あなたのターン中に対戦相手がライフを失っていたら強化される「狂喜」や「絢爛」に似たクリーチャーやスペルを擁する。「黒赤トカゲ」は同朋の仲間にピンガー能力や除去手段、軽い回避能力、その他対戦相手にダメージを与える攻撃的な能力をもたらす。トカゲは1/1~3/3の小~中型サイズに集中している。
赤緑アライグマ
この時点で名前がついていなかったメカニズムには、のちに「積算」という名前がつけられた。セット・デザインはアライグマの墓地との相互作用を減らしていき、墓地利用はリスの方に寄せられた。
アライグマは、機略に優れたゴミ山を漁る悪党であり、擬人化動物の中で最も大きな存在である。「赤緑アライグマ」は、マナ加速から呪文を連打したり高マナ域の呪文を放ったりする。「このターン、あなたがマナ総量が4以上の呪文を唱えていた場合、[効果]」というテキストが頻出する。また「トラッシュ・パンダ」の要素も小テーマになっており、墓地から土地を出すことができる。「赤緑アライグマ」は、「同朋」の仲間にマナ加速やパワーとタフネスの強化、その他ミッドレンジ向けの大きな効果をもたらす。このアーキタイプはカエルやカワウソともうまく機能する。アライグマは2/2~4/4の中~大型サイズに集中している。アニマルフォークで最大の種族である。
緑白兎
兎はそのままトークン横並べのアーキタイプが残ったが、食物を扱う要素が少々減り、それはリスの方へ寄せられた。
兎は大家族で、繁殖が早く、野菜をたくさん食べる。「緑白兎」は「トークン横並べ」のアーキタイプであり、食物・トークンの生成も小さなサブテーマになっている。兎は「同朋」の仲間にクリーチャーの数をもたらし、大軍勢での攻撃やクリーチャーが戦場に出たときの誘発型能力を支える。兎は1/1~3/2の小~中型サイズに集中している。
白黒コウモリ
「ライフ重視」のテーマは残ったものの、セット・デザインは自分だけでなく全員のライフ総量の変化を参照するように変更した。とはいえ、こちらのターン中にライフが変化した場合のみ誘発する能力が大半である。
コウモリは動物の血を吸う翼を持った狩人である。「白黒コウモリ」は飛行を持つことに加えて「ライフ変化」のアーキタイプでもあり、あなたのライフ総量の増減でさまざまな能力が誘発する。「白黒コウモリ」は、「同朋」の仲間に飛行クリーチャーや絆魂、ライフ支払いによる効果をもたらす。コウモリは兎やリスが生成する食物・トークンとの相性も良い。コウモリは1/1~2/3の小型サイズに集中している。提出ファイルではコウモリ・クリーチャーの開封比が他の動物と比較してわずかに少なくなっており、このセットに飛行が多くなり過ぎないようにしている。
青赤カワウソ
カワウソは非クリーチャー呪文に注目した動物のアーキタイプとして残った。
カワウソは、いたずらばかりしている賢く遊び心にあふれたトリックスターである。「青赤カワウソ」は非クリーチャー呪文を唱えることを重視し、果敢やキャントリップ、コンバット・トリック、除去呪文、墓地からインスタントやソーサリーを再利用する効果などを多く擁している。カワウソは「同朋」の仲間にカードの濾過手段や勝ち手段、コントロールの要素をもたらす。カワウソは2/2~4/4の中~大型サイズに集中している。
黒緑リス
リスが持つこの能力には「給餌」という名前が与えられ、墓地から追放するカードの枚数が2枚から3枚に変更された。
リスはどんぐりを埋めてあとで掘り起こす、貯め込み屋である。「黒緑リス」は食物をサブテーマにしている墓地利用のアーキタイプであり、「あなたの墓地にあるカード2枚を追放するか食物1つを生け贄に捧げる:[効果]」というテキストが頻出する。リスは「同朋」の仲間に墓地肥やしや切削、カードの濾過手段、食物の生成手段をもたらす。リスは1/1~2/3くらいの小型サイズに集中している。
赤白ハツカネズミ
「英雄的」能力は最終的に「雄姿」となった。ハツカネズミがアグロ・デッキであることは残された。
ハツカネズミは持ち前の勇気でコミュニティを守る小さく勇敢な英雄である。「赤白ハツカネズミ」は横並べと「英雄的」のアーキタイプであり、コンバット・トリックの対象になると恩恵を受けられる小型クリーチャーを多く擁する。提出ファイルにあるように、多くのハツカネズミは呪文「と能力」の対象になると恩恵を得られるようになっている。これによりハツカネズミは、「同朋」の仲間から受ける強化効果でも能力を誘発させることができる。その柔軟性が高すぎるものかどうかは結論に至っていない。このテンプレート上の差異により、『テーロス』の「英雄的」能力の上位互換になると私たちは見ている。「赤白ハツカネズミ」は、同朋の仲間に速度やコンバット・トリック、攻撃志向をもたらす。ハツカネズミは1/1~2/2の小型サイズに集中している。アニマルフォークで最小の種族である。
緑青カエル
この「跳ねるような」プレイ体験は残った。我々がそこまでやり切れなかったアーキタイプの調整にセット・デザインが多くの時間を割いたことを、私は知っている。
カエルは、生涯を通して進化を続け、飛び跳ねて虫を捕らえる両生類である。「緑青カエル」は「クリーチャー上陸」のアーキタイプであり、クリーチャーが戦場に出たときの誘発型能力や自身のクリーチャーを明滅させたり手札に戻したりすることで恩恵を得られる手段を多く擁する。それだけではカエルのフレイバーを捉えるのにやや物足りないため、カエルらしさを感じられる要素を確保することにした。+1/+1カウンター(オタマジャクシからカエルへの成長)や一時的な飛行付与(飛び跳ねる)、到達の付与(虫を捕食する)がその要素である。「緑青カエル」は、「同朋」の仲間に戦場に出たときの能力の再利用やクリーチャー中心のエンジン組み立て、+1/+1カウンターをもたらす。カエルは1/1~3/3の小~中型サイズに集中している。
3色の戦略
ダニエル・スーは、今回の展望デザイン・チームの一員だ。彼は、ドラフトにさらなる深みを出すためにこのセットには3色の組み合わせが必要だと強く感じた。彼は多くの時間をかけて、アーキタイプが重なる3色の組み合わせを実現するために能力の調整に尽力したのだった。
私たちは3色の戦略にも目を向け、各色の組み合わせが隣接する色や色の組み合わせ同士で重ねて楽しめるようにした。以下の表の作成に多大な貢献を果たしたダニエル・スー/Daniel Xuに、この場を借りて感謝を伝えたい(コメントは彼からもらったものを微調整したものである)。
3色の組み合わせ | 動物 | 絡まない動物 | テーマ | 速度 | 解説 |
---|---|---|---|---|---|
白青黒 | 鳥、コウモリ、ネズミ | アライグマ | 回避能力、サボタージュ | 高中中 | 鳥とコウモリが強化と回避能力を与え、ネズミのサボタージュ能力を支援する。ネズミはお礼にカード・アドバンテージをもたらす。この3色は雪だるま式にゲームを進めることを狙い、ブロックや不利状況からの立て直しは苦手とする。 |
青赤白 | 鳥、ハツカネズミ、カワウソ | リス | 英雄的、スペル | 高中中 | カワウソがスペルの使用を促し、ハツカネズミはスペルの対象にすることを促し、鳥はハツカネズミを「英雄的」にする。カワウソやハツカネズミを強化することに注目した攻撃的な3色の組み合わせである。いくらかの準備が必要で、除去は非常に少なく、不利状況は苦手とする。 |
緑白青 | 鳥、カエル、兎 | トカゲ | 横並び | 中中低 | 兎が序盤にトークンを供給し、鳥とカエルがそれを強化する。強化されたトークンは大挙して戦場を駆け、強化された飛行戦力とともに攻撃に向かう。鳥が絡む3色で最も遅い戦略。 |
赤白黒 | コウモリ、トカゲ、ハツカネズミ | カエル | アグロ | 高高中 | コウモリがダメージを与える手段を複数用意し、トカゲの「絢爛」が機能する。同時にハツカネズミは素早く力強い戦闘を進める。序盤から対戦相手に攻め込み、強化されたトカゲと直接ダメージで勝負を決める。 |
白黒緑 | コウモリ、兎、リス | カワウソ | 食物 | 中中中 | 兎とリスが群れをなし、食物を消費してコウモリの能力がライフ変化によって誘発する。盤面を膠着させ、アドバンテージ差をつけてじっくりと勝利をたぐり寄せていく。 |
赤緑白 | ハツカネズミ、アライグマ、兎 | ネズミ | ミッドレンジ | 高中低 | 盤面で戦うシンプルな3色。クリーチャーのサイズが比較的大きいため、ゲーム中盤の盤面を支配し、アライグマでゲームを締められる。 |
青黒赤 | ネズミ、トカゲ、カワウソ | 兎 | スペル、サボタージュ能力 | 高高中 | ネズミとトカゲは攻撃を通したいアーキタイプだ。この3色なら強力な除去やテンポを取る呪文でそれを可能にし、サボタージュ能力や「絢爛」、果敢を機能させる。クリーチャーが比較的弱いため、呪文重視の形になるだろう、 |
黒緑青 | ネズミ、リス、カエル | ハツカネズミ | グッドスタッフ | 高中低 | 私としてはグッドスタッフだと思う。カエルが盤面を繰り返し強化し、ネズミがカード・アドバンテージをもたらし、リスが墓地を活かし、という風にあらゆる領域が有用になる。カエルはリスやネズミの再利用の要素で能力を誘発させる。ただしバリューを得られるのが遅いため、特にネズミは合わないかもしれない。 |
緑青赤 | カワウソ、カエル、アライグマ | コウモリ | ランプ | 中低低 | 最も遅い3色の組み合わせ。序盤をカワウソの除去で乗り切りながらマナを加速し、アライグマやカエルで重量級の盤面を築き上げる。 |
黒赤緑 | トカゲ、アライグマ、リス | 鳥 | 墓地、グッドスタッフ | 高中低 | バリュー重視の3色。トカゲがアライグマやリスとの相性が悪いのは、黒緑青と同じだ。リスはアライグマを再利用、あるいはリアニメイトでき、その点は素晴らしい。 |
おわりに
今回の展望デザインが求めた最も大きな目標は、擬人化動物ジャンルをテーマにしたマジックの舞台をできる限りプレイヤーに楽しんでもらうことだった。今回はタイプ的テーマを新たな形で考える素晴らしい機会となり、メカニズムのデザインにおいても可愛らしさや明るさを優先するというこれまでにない機会となり、人々の動物愛に寄り添ってセットを作る機会となった。革新的なアイデアを生み出す頭脳と目覚ましい仕事ぶりを見せてくれた展望デザイン・チームと、感動するほど創造的な仕事とセットの変更に合わせる柔軟性を見せてくれた世界構築チーム、ルールに関する意見をくれたジェス・ダンクス/Jess Dunks、そして初めて展望デザイン・リードを務めた私に指導と助言をくれたマーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterに、この場をお借りして心から感謝の念を伝えたい。
2022年6月
ダグ・ベイヤー/Doug Beyer
3週にわたることになったが、これにて『ブルームバロウ』展望デザイン提出文書をすべて公開した。ご覧の通り、最終的に印刷に至ったアイデアの影には印刷に至らなかったものもたくさんあった。それらの物語も楽しんでいただけたなら幸いである。いつもの通り、この記事や取り挙げられたメカニズム、その他『ブルームバロウ』全般に関する意見を、メール、各ソーシャルメディア(X(旧Twitter)、Tumblr、Instagram、TikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、デザインの段階について語る日にお会いしよう。
その日まで、あなたが『ブルームバロウ』を余すところなく楽しめますように。
(Tr. Tetsuya Yabuki)
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