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Making Magic -マジック開発秘話-
『殺人事件』を作る その2
2024年2月5日
先週、『カルロフ邸殺人事件』のカード個別のデザインについての話を始めた。取り挙げるカードは私のブログ「Blogatog」で読者諸君に選んでもらった。今日はより多くのカードを取り挙げ、それぞれの物語を伝えよう。どうか楽しんでいってくれ。
《犯罪小説家》
このカードは当初、シンプルな目的で始まった。アーティファクトとのシナジーを持つ赤の小型クリーチャーがセットに欲しかったのだ。このセットにはアーティファクトである手掛かり・トークンを生成する調査があり、アーティファクトを生け贄に捧げるなら赤が第1位であるため、このカードはそういうテーマに沿った1枚だった。
〈ゴブリンの消防事務員〉(Ver.1)
{2}{R}
クリーチャー ― ゴブリン・アドバイザー
1/1
{T}, カード1枚を捨てるか手掛かり1つを生け贄に捧げる:カード1枚を引く。
まずはコモンで、ゴブリンであることから始めた。多くの赤の小型クリーチャーは赤の特徴的な種族であるゴブリンで始まり、ラヴニカにもゴブリンがいるのだ。能力は基本的にかき回し効果(カードを捨ててから引く効果)で、手掛かりを生け贄に捧げるという選択肢を持たせたものだった。起動コストにマナがかからずタップだけというのは望ましくなかったため、{2}{R}で1/1にする必要があった。
〈ゴブリンの消防事務員〉(Ver.2)
{2}{R}
クリーチャー ― ゴブリン・アドバイザー
1/1
速攻
{T}, カード1枚を捨てるかアーティファクト1つを生け贄に捧げる:カード1枚を引く。
このバージョンで変更が加えられたのは2つの点だけだった。1つは速攻を与えたことで、このカードにはもう少し強くする余地があり、1/1に速攻を持たせるのはそれほどの負担ではないため付け加えられた。2つ目は、生け贄の制限を少し緩和して、手掛かりだけでなくアーティファクト全般を生け贄に捧げられるようになったことだ。我々は、可能なときはシナジーを高めるためにカードの汎用性を少し上げることをよくやっている。
〈ゴブリンの消防事務員〉(Ver.3)
{2}{R}
クリーチャー ― ゴブリン・アドバイザー
2/2
{T}, アーティファクト1つを生け贄に捧げる:{R}{R}を加える。
あなたがアーティファクト1つを生け贄に捧げるたび、[カード名]の上に+1/+1カウンター1個を置く。
このカードを少し異なる形にしたかったため、再び変更が行われた。我々は手掛かりに別の使い道を持たせるのではなく、手掛かりを使うことに報酬を与えるカードにしたかった。そのために、アーティファクト1つを生け贄に捧げたときに誘発する誘発型能力にし、効果はそのクリーチャーを+1/+1カウンターを使う形で大きくするものを選んだ。我々はその後、2つ目の能力(カードでは1つ目に書かれている能力)を加え、このカード単体で機能するようにした。シナジーの構成要素を作る際は、そのカードが機能するために2枚目のカードを必要としないことは有用だ(あるカードがAを提供し、2枚目のカードがBを提供するものを我々は「A/Bテーマ」と呼んでいる)。1つ目の能力は必要なら手掛かりを生け贄に捧げても使える上、カードを引くために手掛かりを使ってもこのカードの全体的なシナジーは残るため、感触が良かった。
〈ゴブリンの消防事務員〉(Ver.4)
{1}{R}
クリーチャー ― ゴブリン・アドバイザー
1/3
あなたがアーティファクト1つを生け贄に捧げるたび、[カード名]は各対戦相手にそれぞれ1点のダメージを与える。
我々は先ほどのバージョンを気に入ったが、コモンに入れるには少し能力を持ちすぎている気がしたので、生け贄に捧げる能力を削除し、誘発型能力もゲームの勝利にもう少し直接的に寄与できるものにした。
〈ゴブリンの消防事務員〉(Ver.5)
{2}{R}
クリーチャー ― ゴブリン・アドバイザー
2/2
{T}, アーティファクト1つを生け贄に捧げる:{R}{R}を加える。
あなたがアーティファクト1つを生け贄に捧げるたび、[カード名]の上に+1/+1カウンター1個を置く。
そして我々はその選択が間違いだったと気づいた。我々が気に入ったカードをコモンにするために調整するよりも、デザインをそのままに(以前のバージョンのままに)アンコモンに移動すれば残せるのだ。
〈ゴブリンの消防事務員〉(Ver.6)
{2}{R}
クリーチャー ― ゴブリン!・アドバイザー
2/2
トランプル
あなたがアーティファクト1つを生け贄に捧げるたび、[カード名]の上に+1/+1カウンター1個を置き、{R}を加える。ターン終了時まで、このマナはステップやフェイズの終了に際して無くならない。この能力は1ターンに1回しか誘発しない。
その後我々は、このカードをより魅力的にしてデッキの中核になるようにしようとした。そこでマナを生み出す効果と+1/+1カウンターを置く効果を1つの誘発型能力にまとめた。我々はさらに生み出したマナが残る能力も付け加えたが、それは見返りが少ないわりに冗長になるという理由で、印刷に回される前に削除された。それから、印刷されたバージョンは1/3に戻ったため、トランプルも削除した。タイプ行のゴブリンの後についた「!」はデザイン・チームからクリエイティブ・チームへ残したメモで、このカードはメカニズム的にゴブリンのままで残す必要があると伝えている。クリエイティブ・チームは、このカードが犯罪小説家であるというアイデアを思いついた。多くのフレイバーを加えてくれる素晴らしいアイデアであり、おそらく私のブログ読者諸君がこのカードについて語ってほしいとリクエストしたのも、それが理由だろう。
最後に、このカードのアート指示をお見せしよう。
舞台:『Polo』のラヴニカ
色:赤のマナに関わるクリーチャー
場所:書斎。「一般的なラヴニカの環境」17~20ページおよび150~151ページを参考に、この場所のデザインは自由に描いていただいて構わない。ラヴニカは中世プラハの建築から着想を得ている。部屋を飾る背景には、犯罪に魅入られた者を表現した飾りが見える。ガラスケースに入れられた頭蓋骨、凶器のナイフ、壁に留められた新聞などだ。
行動:56ページを参考に、犯罪小説のベストセラー作家である女性のゴブリンを描いていただきたい。彼女は次回作の巧みな構想を嬉々として書いている。手にしたペンは、走らせた跡に鮮やかな赤を残すのだ。
焦点:ゴブリンの犯罪小説家
雰囲気:「ああ、この展開、読者は絶対に気づかないでしょうね!」
注意:ゴブリンの造形については77~78ページ、服装についてのヒントは74~76ページ参照のこと。
《説き伏せる尋問者》
このカードは、私が『カルロフ邸殺人事件』のティーザーをまとめているときに最も驚いた1枚だった。私は主要セットの展望デザインには常に関わっているが、次のチームへ引き渡した後は別のセットに取りかかっている。ときどき顔を出すことはあるものの、ファイルに加えられたカードを常にすべて把握しているわけではないのだ。だから想像できるだろうか。ファイルを眺めていたら、毒カウンターを与えるカードが見つかったときの私の驚きを。いったいどういう経緯でこのカードがこのセットに入り、そのまま残ったのか? まずは展望デザイン当時のものから見ていこう。
〈雇われた掃除人〉(Ver.1)
{4}{B}
クリーチャー ― オーガ・暗殺者
4/4
対戦相手の終了ステップ中に、あなたはこの呪文を、瞬速を持っているかのように唱えてもよい。
[カード名]が戦場に出たとき、対戦相手がコントロールしていてこのターンにダメージを受けた、クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体を対象とする。それを破壊する。
特定の役割を持って始まり、ファイルでの人生でそれを全うするカードもあれば、その道のりの中で調整や変更が行われるカードもある。このカードは、後者の例だった。始まりは、黒単色のアンコモンの暗殺者だった。今回は殺人ミステリーのセットだ。誰か殺人を行う者が必要であり、黒単色は暗殺者に最適な枠だった。1つ目の能力は、制限つきの瞬速だ。制限をかけたのはたしか、突然現れるブロッカーになってほしくはなかった、というのが理由だったと思う。それでもこのカードにかなりの力が加わり、我々はコストを上げるかサイズを下げるかのどちらかを迫られることになった。
2つ目の能力は、我々がときどき黒の呪文につけるものだ。黒の殺害効果は幅広く存在するが、「ダメージを受けているものを殺す」は弱い側の先端に位置する。この効果はトップダウン・デザインであり、そのカードを強くしすぎることなく暗殺者らしさを感じさせてくれる。そこへ制限つきの瞬速を加えたことで、あるクリーチャーをより小さなクリーチャーでブロックした後に、それを突然の死に追いやることができるのだ。しかし結局、5マナという重さから殺害が遂行されるのは稀であった。
〈サイ探偵〉(Ver.2)
{4}{B}
クリーチャー ― サイ・探偵
4/5
威迫
[カード名]が攻撃するたび、あなたは証拠収集を行ってもよい。そうしたなら、他の攻撃クリーチャー1体を対象とする。ターン終了時まで、それは+2/+0の修整を受け、威迫を得る。(証拠収集を行うとは、あなたの墓地にあるカードを、マナ総量の合計が6以上になるように選んで追放することである。)
2つ目のバージョンで、このカードは5マナでパワー4のクリーチャーであることを除きすべてが変更された。これは、デザイン・チームがまだこの枠で何をするのか決めかねていたことの表れだ。プレイテストを経て、このカードには変えたい部分についてのメモが大量に書き込まれた。このカードは本来の役割を十分に果たせていなかったため、チームは他の用途を考えることにしたのだった。当時、黒は証拠収集の色だった。墓地との強いシナジーを持ち、墓地を肥やすのも得意だからだ。このカードが持っている証拠収集は初期のもので、調整可能な数字ではなく6で固定されていた。暗殺者ではなく探偵(とサイ)になったことで、持っている能力も誰かを傷つけるものでなく助けるものになった。
〈オーガ探偵〉(Ver.3)
{4}{B}
クリーチャー ― オーガ・探偵
4/4
[カード名]が攻撃するたび、あなたは証拠収集4を行ってもよい。そうしたとき、防御側プレイヤーがコントロールしているクリーチャー1体を対象とする。ターン終了時まで、それは-2/-2の修整を受ける。(証拠収集4を行うとは、あなたの墓地にあるカードを、マナ総量の合計が4以上になるように選んで追放することである。)
このバージョンでオーガに戻り、探偵は残った。私の推測だが、チームはネガティブな証拠収集の効果を求めたが、証拠収集は探偵のものにしたかったため、サイより少し非道そうなオーガに戻したのだろう。ご覧の通り、証拠収集に数字がついた。このカードは4に減らされている。これで殺害を繰り返すことができるようになり、より有用になった。
〈図々しい私立探偵〉(Ver.4)
{4}{B}
クリーチャー ― オーガ・探偵
5/4
あなたは、手掛かり・装備品・呪文のマナ・コストを支払うのではなく{1}とライフ1点を支払うことで唱えてもよい。装備品1つがいずこかからあなたの墓地に置かれるたび、各対戦相手はそれぞれ2点のライフを失う。
黒が証拠収集を行うことが少なくなり始めたため、セット・デザイン・チームはこのカードを、装備品を意識した他のテーマと結びつけることにした。このカードは手掛かり・装備品を意識したものになった。手掛かり・装備品・カードは、「クルード」に登場する凶器をもとにしたアンコモンの装備品サイクルで、装備品に手掛かりが加えられたカードだ。1つ目の能力はまさにその手掛かり・装備品に言及したもので、一緒に使うことを促されているが、2つ目の能力はより全般的でどの装備品とも機能し、このカードをより大きなテーマ内でプレイしやすくしている。
〈器用な探偵〉(Ver.5)
{3}{B}{B}
クリーチャー ― オーガ・探偵・暗殺者
3/5
[カード名]が戦場に出たとき、調査を行う。
あなたが手掛かり1つを生け贄に捧げるたび、プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは毒カウンター1個を得る。
このカードは再びテーマを変え、手掛かりとのシナジーを生むことに注力し始めた。通常、セットには10通りの2色の組み合わせにドラフト・アーキタイプが設定され、単色のカードは4つのテーマから入れるところを選べる。ほとんどのカードは基本的に、少なくとも2つのテーマでうまく機能するメカニズムを持つことになる(ドラフトごとに分散性が出るように、異なるテーマをドラフトしているプレイヤーが同じカードを取り合うようにしたいのだ)。プレイテストを行うたびに、デザイン・チームはそれぞれのテーマが十分なサポートを受けられるよう、カードを再調整していく。このカードが変更を続けているのは、チームがこれをどうするか100%の確信を得ていないからであり、だからテーマごと変わり続けているのだ。調査はあなたの引きを「円滑に」してくれる(必要とされる特定のカードを引く助けになる)優れたメカニズムであり、大抵のデッキでうまく機能するものだ。
このカードはアンコモンであるため、2つ目の能力はこれをドラフトする者に小さな仕事を与えることが多いだろう。このカードの場合は、「手掛かりを生み出すカードをたくさんドラフトせよ」だ。黒(と赤)はアーティファクトを生け贄に捧げることに長けているため、手掛かり1つを生け贄に捧げるたびに誘発するという入力を与えるのはしっくりくる。また、それは調査があるセットでしかできないテーマであるため、通常は手を出せないデザイン領域を掘ることになる。出力側には通常、勝ち手段となるものが望ましい。つまりゲームに勝つ直接的な手段や、あなたがゲームに勝つのを助けるものだ。それを中心にドラフトすることを、プレイヤーに推奨するようなものが良いのだ。
出力が毒になったきっかけは、私には定かでない。一般的に、我々が毒を使うのはそれがテーマになっているセットで、というのが基本だが、カード1枚でゲーム中に毒カウンターを10個与えることができるなら、そのデザインは自己完結している。このカードは暗殺者であり、殺人ミステリーのセットにおける毒というフレイバーも最高だった。私の勘だが、これはまずフレイバーから始まって、その後のクエストを完遂してファイルに残り続けたのだろう。リミテッドのゲームでこの能力を10回誘発させれば勝利だ。それは簡単なことではないため、ドラフトで注力すべき場所を与えてくれる――「調査を行うカードをたくさん取れ」と。余談だが、入力側は「あなたが各ターン内のあなたの2枚目のカードを引くとき」に一度変更されたものの、うまく機能しなかったため、元に戻された。
5つ目のバージョンから印刷されたバージョンの間に行われた最大の変更は、5マナ3/5で毒カウンター1個だったのが6マナ5/6で毒カウンター2個になったことだ。毒カウンター1個では、完遂があまりに難しかった。リミテッドのゲームでは一度も実現しなかったのだ。毒カウンターを2個にしたことで困難ながらも手が届く目標になり、この手のカードを中心にドラフトを組み立てるのに絶好の場となった。問題は、統率者戦に影響を与える可能性があることだった。そこでカジュアルプレイ・デザイン・チームに一度見てもらう必要があった。
統率者戦の初期ライフは40点だが、毒カウンターによる勝利に必要な個数は10個のままだ。過去に統率者ルール委員会で勝利に必要な毒カウンターの個数の変更が議論されたが、毒が問題を起こさないため否決された、ということは知っている。プレイテストでも、このカードが6マナであり、ゲーム中にプレイヤー1人は毒でノックアウトできる可能性はあるものの、1人目を倒した時点で残りのプレイヤーから狙われるようになり、複数人を倒し切るのは非常に困難であることが示された。また、一度に全員倒せるほどの手掛かりを生み出すのは大変な仕事ではあるが、プレイヤーたちは挑戦を楽しむかもしれないと我々は考えた。カジュアルプレイ・デザイン・チームは6マナのバージョンにゴーサインを出し、それは印刷に至った。最後にクリエイティブ・チームが、このカードをゴルゴンの探偵にして毒との結びつきを後押しした。それは、クリーチャー・タイプから暗殺者を削除できると感じられるほど良い変更だった。
最後に、このカードのアート指示をお見せしよう。
舞台:『Polo』のラヴニカ
色:黒のマナに関わるクリーチャー
場所:破滅小径(145~148ページを参照のこと)
行動:筋骨たくましいゴルゴンのペアを描いていただきたい。それらは非道で無慈悲な、黒に関連する探偵である(ゴルゴンの造形については添付の資料を、服装については30ページを参照のこと。ただし参照先の服装とまったく同じにならないよう調整すること)。ゴルゴンたちは意味ありげに探偵社のバッジを割り開け、密かに仕込んでいた緑色の致死性の毒を見せる。背景には、心配そうに見ている人間の盗賊がいるかもしれない。ゴルゴンの探偵は、真実を引き出すために手段を問わないだろう。
焦点:ゴルゴンの探偵
雰囲気:真実を得るためなら、彼らが越えない一線などない。
《赤ニシン》
このカードは、初日から自分の役割を把握していた。殺人ミステリーのセットには「燻製ニシン/red herrings」(正しい方向に導いてくれそうに見えるが、追っていくとどこか別の場所に連れていかれる手掛かり)が必要だ。それをカードにしないことなどできるだろうか?
カード・デザインの話を始める前に、触れにくい話題に触れておこう。実はマジック(っぽいもの)の中にはすでに、「Red Herring」と呼ばれるカードが存在する。『Mystery Booster』収録のプレイテスト・カードの1つだ。
《Red Herring》(『Mystery Booster』収録)
英語版のカード名はすべて、それが唯一のものでなければならないというルールがある。つまりあるカードが[カード名]という名前であるなら、[カード名]と呼ばれるカードは1つしか存在できないのだ。プレイテスト・カードは、微妙な立ち位置にある。それらはほとんどのカードと異なり公式なものではなく、その多くは読んで楽しいジョークに寄せたデザインになっている。何度も繰り返しプレイするには厳しく、おそらく一度遊ぶだけになるだろう。だからそれらにカード名をつけるときに、我々は決断を迫られた。通常のカードと同じように名前をつけるか(つまり名前の領域が削られることに慎重にならざるを得ない)、それとも「これは公式なカードじゃないから、名前を取ることにはならないよ。お好きにどうぞ」とするか。
《Red Herring》をはじめ多くのカードはその核心となる名前をつけられていたため、そこを変えるのは難しかった。しかしそもそも、プレイテスト・カードだけの使い切りというなら我々が許可を出すような名前ではなく、それらは名前の領域を削るものではないという決断に至った。将来のカードでその名前を使うことができるようにしたのだ。それは「Red Herring」と「Pick Your Poison」にとって朗報であり、それらは『カルロフ邸殺人事件』収録のカードに採用されることになったのだった。
さて我々が《赤ニシン》のデザインに取りかかったとき、我々は以下のことを意識した。
「Red Herring」というカード名であること――名前からのトップダウン・デザインを行う場合、名前を残すことが大切だ。
クリーチャー・タイプは魚であること――ニシンは魚だ。魚はクリーチャー・タイプなので、このカードはクリーチャーである必要があった。
手掛かりであること――「Red Herring」は手掛かりだ。手掛かりはアーティファクトのサブタイプなので、このカードはアーティファクト・クリーチャーである必要があった。
赤/Redであること――名前に入ったマジックの5色に対応する言葉とカードの色が異なる場合、我々はその言葉を名前に入れるのを避ける傾向にある。例外はある(特にユニバースビヨンドは例外となる)ものの、このカードの場合は名前と色が一致しているという期待に応えたいタイプに見えた。
「Red Herring」のコンセプトを表現するものであること――「Red Herring」は、探偵を迷わせる偽の手掛かりだ。我々は、そのフレイバーを感じさせるデザインを望んだ。例えばプレイテスト・カードの《Red Herring》の基幹となる発想は、このフレイバーに合っていた。完遂できる確信はなかったが、挑戦したいと思っていたカードだった。
難しかったのは、レアリティを決めることだった。これからお見せするが、我々はこのカードをさまざまなレアリティで試したのだ。
〈赤ニシン〉(Ver.1)
{1}{R}
アーティファクト・クリーチャー ― 魚・手掛かり
1/1
[カード名]が戦場に出たとき、対戦相手1人はこれのコントロールを得る。それは容疑者になる。(容疑者は攻撃したりブロックしたりできない。それのコントローラーは、カード1枚を捨てるか手掛かり1つを生け贄に捧げることで、容疑を晴らしてもよい。これはソーサリーとして行う。)
あなたがアンタップ状態のパーマネントをコントロールしている限り、あなたは起動型能力を起動できない。
{2}, [カード名]を生け贄に捧げる:カード1枚を引く。
このカードはアンコモンのデザインから始まった。このデザインの裏にあるアイデアは、まさに「Red Herring」と同じく問題を起こすことだった。問題の種を対戦相手に与え、それを取り除くまで能力の起動に制限がかかるのだ。この制限が選ばれたのは、これを手掛かりとして使いにくくしたかったからだ。そうしなければ、ただ対戦相手に他のカードに変えられるチャンプ・ブロッカーを与えることになってしまう。
〈物静かな赤ニシン〉(Ver.2)
{1}{R}
アーティファクト・クリーチャー ― 魚・手掛かり
2/2
[カード名]があなたの墓地にある間に対戦相手1人が調査を行うなら、代わりにそのプレイヤーは[カード名]をそのプレイヤーのコントロール下で戦場に出す。あなたの終了ステップの開始時に、[カード名]のオーナーはそれのコントロールを得る。
{2}, [カード名]を生け贄に捧げる:カード1枚を引く。
プレイテストによって、最初のバージョンは特に楽しいものでないことが示された。設けられた制限は回避が簡単すぎるかほぼ不可能かの間で揺れ動く傾向を見せたため、デザイン・チームは他の形を試すことにした。今度はレアだ。この新たなバージョンも、対戦相手を困らせる「Red Herring」のフレイバーを継承した。しかし今回は、この制限を回避しなかった(調査をしたそのターンに手掛かりを使える状態でなかった)場合、こちらがカードを得る形になっている。
〈撹乱する赤ニシン〉(Ver.3)
{R}
アーティファクト・クリーチャー ― 魚・手掛かり
1/1
速攻
[カード名]は、可能ならブロックされなければならない。
{2}, [カード名]を生け贄に捧げる:カード1枚を引く。[カード名]はあなたに2点のダメージを与える。
経験則として、そのセットの主要メカニズムを使うことを妨げるカードを作るのは、良くない考えである。プレイテストがこれを証明した。次のアイデアはよりシンプルで、レアリティもコモンになった。トップダウンの名前をつけることの楽しさは、多くの人に見てもらえるという部分もあるだろう。ここで初めて、赤1マナで1/1の速攻クリーチャーを試した。「ブロックされなければならない」はフレイバーのためだ。1/1なら、ほぼいつでも可能ならブロックされるだろう。
〈撹乱する赤ニシン〉(Ver.4)
{1}{R}
アーティファクト・クリーチャー ― 魚・手掛かり
2/1
[カード名]は、可能なら探偵にブロックされなければならない。
{2}, [カード名]を生け贄に捧げる:カード1枚を引く。
このバージョンはかなり良かった。赤1マナで1/1の速攻クリーチャーにはもう少し何かを足してやる余地はあったが、カードを引くのはやりすぎだった。そこでデザイン・チームはマナ・コストを2マナに上げ、1/1から2/1にして、さらに制限もフレイバーを加えつつ「ブロックされなければならない」の効果を弱めた。パワーが2になったことが大いに活きる形だ。
〈撹乱する赤ニシン〉(Ver.5)
{1}{R}
アーティファクト・クリーチャー ― 魚・手掛かり
2/1
[カード名]が攻撃するたび、あなたがコントロールしていない探偵1体を対象とする。このターン、それではブロックできない。
{2}, [カード名]を生け贄に捧げる:カード1枚を引く。
「ブロックされなければならない」では重みを引き出せなかったため、チームはフレイバーに満ちた別の能力を試した。このバージョンでは、フレイバー的に「Red Herring」に最も影響を受ける探偵に対して効果を発揮する、攻撃時の誘発型能力を持つようになった。デザイン・チームは最終的に、問題を起こす「Red Herring」というフレイバーは、それに見合うだけのゲームプレイ上の価値をもたらさないと判断した。彼らは攻撃強制の制限を加え、それにより2/1から2/2に変更できた。よく整理されシンプルなデザインにすることで、最終的により良いものになると、彼らは判断したのだ。
最後に、このカードのアート指示をお見せしよう。
舞台:『Polo』のラヴニカ
色:赤のマナに関わるアーティファクト・クリーチャー
場所:イゼットの領域内にある滝(174~182ページ参照のこと)
行動:赤みを帯びた金属で作られた、イゼット製の機械仕掛けの魚を描いていただきたい。それは激しい滝の流れに逆らって水から飛び上がっている。もしかしたらこの魚の一部のパーツが露出し、内部の機械仕掛けが見えるかもしれない。
焦点:機械仕掛けの魚
雰囲気:イゼットの熟練発明家によって作られた魚
罪は時に報われる
本日はこれで以上だ。『カルロフ邸殺人事件』のカード個別のデザインについての話を、諸君らに楽しんでもらえたなら幸いだ。この記事やここで取り挙げられたカード、それから『カルロフ邸殺人事件』に関する意見は、メール、各ソーシャルメディア(X(旧Twitter)、Tumblr、Instagram、TikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、混成マナの歴史を探検するときにお会いしよう。
その日まで、あなたが『カルロフ邸殺人事件』のゲームに隠された謎を解明しますように。
(Tr. Tetsuya Yabuki)
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