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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

こぼれ話2023 その1

Mark Rosewater
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2023年11月20日

 

 「こぼれ話」は、最新のセットに関するプレイヤーの質問に答える私の一問一答記事だ。私は最近、1年間このコラムを書いていないことに気づいたので、2本のコラムを書いて(今週と来週)この1年のすべてのプレミア・セット(『ファイレクシア:完全なる統一』、『機械兵団の進軍』、『エルドレインの森』、『イクサラン:失われし洞窟』)についての質問に答えることにした。

 私の投稿はこうだった。

 現在、2023年の本流のセット(#MTGONE, #MTGMOM, #MTGWOE & #MTGLCI)についての一問一答記事を書いている。今年の各セットに関する質問があれば、1問1ツイートで送ってくれたまえ。#WotCStaff

 いつもの通り、可能な限り多くの質問に答えようと思うが、以下のような理由によって答えられないこともある。

  • 文章量の都合で、答えられる質問の数には限界がある。
  • すでに同じ質問に答えている場合がある。最初に来た質問に答えるのが通例である。
  • 私が答えを知らない質問もあるし、正しく答える資格がないと思われる質問もある。
  • 将来のセットのプレビューになるなど、様々な理由で回答できない話題もある。

 それでは、質問に入るとしよう。

Q: 今後のセットでバトルは出てきますか?

Q: あなたとそのチームは、バトルについてどう考えていますか? これまで『機械兵団の進軍』でしか見ていませんが、最初はどういう意図でしたか?

 新しいカード・タイプを追加するのは大きな一歩なので、バトルには慎重になりたかった。計画では、『機械兵団の進軍』で初登場させ、他の製品に登場させる前にその評判を見ることにしていた。プレイヤーたちから大好評で、今後のセットで使用する許可が下りたことをうれしく思っている。いつどこで見ることができるかは言えないが、将来的にはもっと多くのバトルが印刷されることを期待している。

Q: バトルは『機械兵団の進軍』以前のセットで検討されたりデザインされたりしたことがありますか、それとも『機械兵団の進軍』のためにデザインされたものですか?

 バトルは『機械兵団の進軍』のために特別にデザインされたものだった。展望デザインでは、物語上で攻撃される馴染みのある次元をそれぞれ表すカードが欲しいと思っていたし、必要なら新しいカード・タイプを作ることも厭わなかった。ご存知のように、バトルはセットデザイン中にデザインされ、素晴らしいものになった。

Q: 私は、バトル(少なくとも包囲戦)が、DFCと非伝統的なレイアウトを必ず必要とするわけではないと思います。今後のバトルがどのようなものになると予想すべきか、教えてください。

 バトルのサブタイプである包囲戦は両面カード(DFC)を必要とするが、バトル自体はDFCでなくとも可能である。我々は、効果を持ち、対戦相手が攻撃することで破壊される片面カードのバトルをデザインできる。常在型、誘発型、起動型の能力のみを持ち、忠誠度能力を持たないプレインズウォーカーのようなものだと考えてもいいだろう。バトルのレイアウトに関する変更の予定は知らない。

Q: こんにちは、マーク。統率者デッキの新カード枠でプレインズウォーカーやバトルを作ることはできますか、それともそれ以外のカード・タイプに制限されていますか?

 我々がこれまで作ってきた唯一のタイプのバトルである包囲戦は、両面カード(DFC)を必要とする。予算と製造上の問題が重なるため、伝統的に統率者デッキではDFCを使っていない。だからといって、絶対にできないわけではないし、統率者デッキに入るような片面カードのバトルを作ってはならないわけでもない。その可能性は低いが、機会は常にある、ということだ。

Q: バトル(カード・タイプ)は、たまに採用することはあっても、頻繁に採用することはないように思えます。バトルを入れる候補となるセットには何が必要ですか?魔法使いが戦うゲームなんだから、物語的にはどんなセットでも正当化できますよね。バトルはメカニズム的にセットで何をしますか?

 バトルに適したセットを見つける鍵は2つある。1つは、セットのフレーバーに合っていること。マジックは戦闘のゲームだから、それをクリアするのはそれほど高いハードルではない。単にゲームプレイがバトルというだけでなく、ストーリーにバトルが盛り込まれるようにするべきだと思っている。2つ目は、バトルがメカニズム的にセットに合っていることだ。繰り返すが、マジックは戦闘を前提にしているため、大きな要求ではない。より大きな問題は、包囲戦には両面カードが必要であり、それがすべてのセットに入っているわけではないということだ。なお、『機械兵団の進軍』では、通常のセットで必要とされるよりもはるかに高い開封比(ブースター1つにつき1枚)で使用されている。

 一般的に、最も可能性の高いパターンを見極めるため、私は英雄譚がどのように進化してきたかを見ている。数は少ないが、注目度が高く、非常にフレーバー豊かなものが出てくると思う。『機械兵団の進軍』のときと同じように大衆に受け入れられれば、もっと定期的に登場するようになり、必要なときにいつでも何度でも登場できる落葉樹の道具になるだろう。私の直感では、英雄譚よりも少し複雑なので、その展開はもう少し遅くなるだろうと思う。

Q: 大まかに言えば、今年のドラフトは素晴らしいものでした。そのような体験を生み出すために使用された数学/デザイン道具をもとに、プレイ・ブースターでも同じ成功をもたらすには、多くの作業を必要とするとお考えですか?

 主要な数学的道具は、プレイ・ブースターに転用できる。より大きな問題は、何がうまくいき、何がうまくいかないかについて、直感的な感覚を積み重ねていくことであり、機会があればいつでも再調整しなければならない。とはいえ、我々はプレイ・ブースターを正しくすることに多くのリソースを注いできた。来年はその違いを掘り下げた「基本根本」の記事を書くつもりだ。

Q: 本流のセットでは、当分の間ファイレクシアは登場しないんですか?

 当分の間は、というなら、答えは、はい、だ。他に重点を置くべき敵役はたくさんいる。

Q: 『ファイレクシア:完全なる統一』には、培養メカニズムで反転するとてもクールなトークンがありました。今後のセットでも、より多くの両面トークンが登場しますか?それとも、その次元や 世界の伝承の中で意味がある場合にのみ、控えめに使われることになりますか?

 培養トークンは『機械兵団の進軍』からのものである。それらはうまく働き、(市場調査によると)ユーザーからも好意的に受け入れられた。両面トークンにはいくらかの製造上の問題があるため、常に使うものとは考えていないが、必要であればセットが使用できるデザイン道具である。両面トークンは落葉樹だが、「より控えめに使う」方の極限にあるものだと考えてほしい。

Q: (主要な物語の流れと結びつけなければならなかった)最初の2つのセットと、(「このアイデアをセットに入れる必要がある」という観点では、もう少し柔軟でオープンかもしれない)『エルドレインの森』や『イクサラン:失われし洞窟』を比べた場合のデザイン工程の違いについて教えてください。

 この4つのセットはすべて、現在進行中の物語に関連している。『ファイレクシア:完全なる統一』と『機械兵団の進軍』は数年にわたる長編物語の終盤であったため、物語は少し色濃く示されていた。『機械兵団の進軍』はトップダウンで物語を語るデザインだったため、メカニズム的に最も影響を受けたデザインだった。我々は長い間マジックのセットを作ってきたので、メカニズムと物語を絡めることはかなり得意になっている。私は、この2つの組み合わせはデザインにとって強みであり、弱みではないと考えている。

Q: 護法の実装が増えることで、他のタイプのカードへの影響や、プレイヤーに護法を与える紋章やバトルが登場する可能性はありますか?(私たちにプレイヤー用の護法を与えよという不平が言いたいのではありません。絶対に。)

 護法は紋章や バトルでも使うことができる。我々がそれを必要とするデザインを作ればいいだけのことだ。我々は紋章に特化した除去を作っていないので、紋章に護法をもたせる必要性はあまり高くない。また、これまでのところ、バトルはあまり作っていないので、それに関しても護法の必要性はまだ出てきていない。

 プレイヤーに関しては、現在のルールでは技術的に認められていない。ルール上、護法は「このパーマネントが対戦相手がコントロールしている呪文や能力の対象になるたび、そのプレイヤーが[コスト]を支払わないかぎり、その呪文や能力を打ち消す。」を意味する。プレイヤーはパーマネントではないので、護法能力の適正な適用先にはならないのだ。とはいえ、マジックを作るということは、新たなデザイン空間に踏み込むということでもある。プレイヤーが護法を持っていてもそれほど混乱は生じない(つまり、プレイヤーは直感的に正しくプレイするだろう)ので、ルール・マネージャーに書き換えを依頼できる類のものである。

 より大きな問題は、ルールに変更を加えることではなく、それが護法に何をもたらし、相互作用にどのような変化をもたらすかを理解することだろう。カード上の護法が現在どのように使われているかをすべて調べ、この変更が偶発的に問題を引き起こす可能性がないかどうかも確認する必要がある。パーマネントであることが前提だったため、特定のデザインが作られ、特定のテンプレートが選ばれた可能性があるのだ。加えて、デジタルやトーナメントへの影響など、他の懸念材料もあり、これは大きな問題になるかもしれない。例えば、この変更によって発生源のない誘発型能力を作ることになるが、これはデジタルが対処しなければならないだろう。すべての変更は、既存のカードやゲームを作る工程のどの部分においても、問題を引き起こさないことを確認するための適切な調査とともに行われるものだ。

 そのコストのために、我々は、それを正当化するだけの重要なデザイン空間があるという確信がなければ、変更を求めないだろう。とはいえ、プレイヤーに、そしておそらく呪文にさえも護法を適用することは、適切なセットが登場したときに真剣に検討すべき追加要素のように私は信じている。

 これが私の長ったらしい言い方の「たぶん」だ。

Q: 『エルドレインの森』の役割の数を減らそうという考えはありましたか?紙のカードでは複雑性が高く、特定のトークンを必要とし、ドラフト・プレイヤーや新規プレイヤーには理解しにくいものです。

 実際、我々は役割を縮小した。展望デザインでは一時20種類もの役割があった。セットデザインへの提出の時点では10種類だった。そして、セットデザインはそれを6つに減らした。私が『エルドレインの森』から得た知見は、トークンを正しく実行できなかったということだ。両面のトークン、特に両面に役割があるトークンをもっと増やす必要があると思う。私は、(フレーバー豊かでゲームプレイに適した)十分な種類の役割を持つことが重要だと信じているため、私の対策は、プレイヤーが必要なプレイ補助具を確実に利用できるようにすることになる。

Q: 落魄のようなメカニズムを復活させる予定はありますか?私は、この能力は十分に活用されておらず、大きな可能性を秘めていると思います。

 この回答を書いている時点では、一般の人々はまだ『イクサラン:失われし洞窟』でプレイしていないので、(少なくとも観客の反応に基づいて)このメカニズムが復活するかどうかについてのデータはまだない。落魄は平均的なメカニズムよりも少し把握することが複雑なので、再録へのハードルは少し高い。私は「数値としての墓地」は、ゲームが進むにつれて面白く進化するクールなデザイン空間だと思うので、楽観視している。

Q: スタンダード・セットで毒カウンターを復活させるにあたって、デザイン上の制約や考慮すべき点は何でしたか?

 毒の最初の課題は、我々が「サイロ効果」と呼ぶものを生み出しかねないということだった。一度勝利条件として毒を気にすることを選んだら、それしか気にすることができなくなるのだ。これは『ミラディンの傷跡』ブロックで起こったことで、 ドラフト・プレイヤーはドラフトの早い段階でダメージで勝つか毒で勝つか選ばなければならず、その結果多くのカードがデッキで使えなくなった。プレイヤーに、対戦相手にダメージを与えるカードと一緒に対戦相手に毒を与えるカードをプレイできるようにする方法はなかったのか?セットへの堕落の追加は、この問題を解決する上で大きな役割を果たした。

 2つ目の課題は実際の実行に関するものだった。『ミラディンの傷跡』は感染を利用したが、これは賛否両論だった。感染は-1/-1カウンターを必要とし、プレイデザインのバランス調整に問題がある(毒がダメージと1対1でつながってしまうため)。有毒はほんの一握りのカードでしか使ったことがなく、我々が好むようなテンプレートにはなっていなかった。そのため、我々は毒性という新しいバージョンの有毒を作ることにしたのだ。

 3つ目の課題は、セットの他の部分をどのように相互作用させるかということだった。増殖を使いたい理由はたくさんあったが、そのメカニズムは(最も価値を内包しているカウンターである)+1/+1カウンターで問題を起こす傾向がある。その結果、我々は油カウンターを使うことになった。

 総じて、毒は扱いにくいメカニズムだ。多くのファンを持っており、ファイレクシア人と密接に結びついていたため、プレイヤーが期待していることは分かっていた。そこで我々は『ファイレクシア:完全なる統一』のデザインにおいて、それをどう実行するのが最善かを考えるために多くの時間を費やしたのだ。私は、この結果をとても誇りに思っている。

Q: 『エルドレインの森』をたくさんプレイしましたが、カードだけでは「森」の様相はよく分かりませんでした(物語を追っていませんでした)。それは私たちに多くのおとぎ話を見せてくれましたし、『エルドレインの王権』の「アーサー王伝説」の感じからは明らかに離れていましたが、私には「森」らしさは感じられませんでした。なぜ「エルドレインの伝承」ではなかったんですか?

 森――Wilds、すなわち僻境は「王宮でない」という意味である。それは、『エルドレインの王権』で重点を置いたエルドレインのより文明的な要素とは対照的だった。都市ではなく田舎という意味だ。そのコンセプトを伝えるのに、「wilds/森」よりももっといい言葉があったかもしれない。

Q: あなた(あるいはWotCの誰か)は再録したかったがセットには入らなかったメカニズムはありましたか?

 それぞれのセットで試したが、結局使わなかった再録メカニズムを紹介しよう。

『ファイレクシア:完全なる統一』 ― 感染

 展望デザインで最初に試みたのは、感染をうまく機能させられるかどうかということだった。しかし、それを取り巻くあらゆる問題(その多くは上記で話した通り)が克服するにはあまりに大きすぎることが判明したため、プレイテストは1回で終わった。

『機械兵団の進軍』 ― 増殖

 初期に話し合ったことの1つが、『ファイレクシア:完全なる統一』からファイレクシアのメカニズムを引き継ぎたいかどうかということだった。毒性、堕落、油カウンターはどれも構造的に大きな補助を必要とし、ミラディンのために!はミラディンから離れた場所では奇妙に感じたため、我々に残されたのは増殖だった。我々は、増殖がその生態系で異なる働きをするように、異なる種類の環境を作る方法について話し合ったが、最終的には、その利点に比べてあまりにも多くの追加の補助が必要だと判断した。

『エルドレインの森』 ― 先読英雄譚

 我々は英雄譚をやりたいことは分かっていた(元の『エルドレインの王権』でもやりたかったが、『テーロス還魂記』がそれを使えるようにするために断念した)ので、ここで意味のあるものがないか、さまざまな英雄譚メカニズムを探った。その中で、先読が最大の候補だった。最終的には、おとぎ話的な側面は新しいものとして十分にクールであり、シンプルな英雄譚で十分だと判断した。

『イクサラン:失われし洞窟』 ― 合体

 セットデザイン・チームが試みた作製の実装の1つは、合体の活用だった。2つの部品を組み合わせ、一体化したものを作るのだ。結局、彼らはもっと部品性が欲しいことに気づき、他を探すことにした。

Q: すべての部族カードは最終的に新しいカード・タイプで再版されますか?それを参照するカードはどうですか?(「タルモゴイフ」など)

 古いカードのアップデートを行うときはいつも、適切なテキストでカードを再版する機会を見つけたいと考えている。しかし、再版することに十分な興味をユーザーが持つカードでなければならない。つまり、我々は古い部族カード(またはそれを参照するカード)のいくつかを同族の文言で再版することになるが、全てが再販されるとは思えない。

Q: カード・タイプについて、単なる質問です。新しいイクサランのセットには「伝説のクリーチャー ― スケルトン・スピリット・海賊」がいますが、一般的に、はみ出さない範囲で最も長いカード・タイプ行は何ですか?何文字ぐらいまでですか?他の言語も考慮しなければならないのは分かっています。

 カード・タイプ行に何が収まるかを見るとき、単語が何文字あるかということよりも、具体的にどの文字があるかということが重要になる。例えば、小文字のm1つの幅に小文字のlが何個も入る。だから、カード・タイプ行が一番長くなるのは、細い文字がたくさんある長い単語の羅列になる。

Q: イクサランを(背景セットの前にラヴニカのセットが2つあった『灯争大戦』とは対照的に)初の単独背景セットとして使ってみて、何がわかりましたか?

 『イクサラン:失われし洞窟』は、『灯争大戦』のようにその直前に帰還セットがなかっただけでなく、以前に再訪したことのない次元を再訪していた。このため我々は、ラヴニカでやったことに比べるとイクサランのメカニズムをもう少し明確にする方向に進む必要があった。このセットのメカニズム的な中心はトップダウンの地底探検であったが、我々はそれをオリジナルの『イクサラン』ブロックから最高の、そして最も隣接したメカニズムで補完した。

Q: つまり、カード・タイプとして「部族」に取って代わった「同族」は、今後発売されるローウィンの本流のセットでカード・タイプとして登場する可能性が高いのか、それともまだその可能性はないんですか。

 カード・タイプを表す言葉を変えても、そのカード・タイプに対する思いは変わらない。大量に使いたいものではないが、私は名前を変えたことで、適切な製品で、以前はできなかったような単発のデザインを時折扱うことができるようになると思う。

「答えてくれ」

 本日はここまで。いつもの通り、この記事や私の回答に関する意見を、メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrInstagramTikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、その2でお会いしよう。

 その日まで、あなたが質問を続けられますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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