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Making Magic -マジック開発秘話-
『指輪』に踏み入る その2
2023年6月26日
先週、『指輪物語:中つ国の伝承』(LTR)のカード個別のデザインの話を始めた。今週の記事は、その続きであり、3部作の2本目となる。
《エルフの合唱》
私はよく、再利用されているメカニズムをその元までたどり、時とともにどう進化してきたかを見ることを楽しんでいる。《エルフの合唱》にはデザイン上の興味深い由来があるので、これを歴史的振り返りに選ぶことにした。これは最近良く使っている能力だが、それが常というわけではなかった。
昔は、この能力はカード1枚のデザインというようなものだった。いつ作られたのかと問われれば、1回したことを考えることになる。このカードのデザインを説明するため、この類のカードの歴史を見ていく必要がある。ここで、自分のライブラリーの一番上にあるカードを唱えることと、自分のライブラリーの一番上にあるカードを追放してそれを唱えてもいいという呪文は区分していると言っておくべきだろう。これらはよく似た性質を持っているが、ここでは「《未来予知》系」変種(自分のライブラリーの一番上にあるカードを見て、特定のサブタイプのものを唱える)を掘り下げる。何を含めて何を含めないかはやや主観的なことなのはわかっているので、私の判断になる。
この話は、『オンスロート』で始まった。我々は、物語のある要素を再現しようとしていた。そのセットの敵のイクシドールは、彼が想像できるあらゆるものを現実にできる能力を持つ。『ジャッジメント』で「願い」を使ったばかりなので、ゲーム外から持ってくるという選択肢はなかった。そこにないものを唱えるという雰囲気を再現するにはどうしたらいいか。そこで我々は、完璧な回答に気がついたのだ。自分のライブラリーの一番上にあるカードを唱えられるとしたらどうだろうか。我々が作ったカードは、《未来予知》と呼ばれるものだった。
《未来予知》は、1枚のカードを作ることが広大なデザイン空間の発見につながるという好例である。その時点で必ず気づくというわけではない。《未来予知》を作ってから、それが再利用されるメカニズムになるまで非常に大きな幅があるのだ。
この効果が2回目に登場したとき、完全な新カードと言うよりも元の《未来予知》を連想させるものだった。『時のらせん』ブロックでは、クリーチャーでない強力なカード(再録禁止リストに名を連ねているものが多かった)を表現してその効果を能力として持つクリーチャーの大魔術師サイクルを作った。そのブロックの第3セットには、エンチャントをもとにした大魔術師のサイクルがあった。そのセット名が『未来予知』で、《未来予知》は大人気のエンチャントだったので、当然選ばれることになったのだ。最初に印刷されてから、5年が経っていた。
さらに4年が経って、ついに我々は再びそのデザイン空間に踏み込んだ。ライブラリーの一番上にあるカードを唱えるのは非常に楽しく、他にもできるデザインがあるように思われたのだ。このメカニズムで様々なカードを作れるようにするためには、少し狭くする必要があると気がついた。このデザイン空間でデザインされる将来のカード(そのほとんど)で、唱えることができるカードに制限をつけることにした。
最初のデザインから9年が経っていたことを思い出してもらいたい。『ミラディン包囲戦』出身の《ガルヴァノス》は、このメカニズムの確たる印となる枠組み(自分のライブラリーの一番上にあるカードを見て、特定の種類のカードを唱える)すら使っていないが、これは過去の《未来予知》への初進出であって大魔術師なので、ここに加えた。
《ガルヴァノス》は、初めて赤になった変種である。誘発型で、ターンに1枚しか唱えられず、マナ・コストを支払うが、何度も自分のライブラリーの一番上にあるカードを唱えることができる新しいカードに踏み込んでいるのはわかるだろう。《ガルヴァノス》は、この効果を持つ初のクリーチャーでもある。
『基本セット2012』の《ガラクの大軍》は、《未来予知》の構造を繰り返した初のカードである。初の緑のカードで、このメカニズムで最も好評な制限になる、クリーチャー・カードに限るという制限があった。
『アヴァシンの帰還』の《末裔の道》が次になるが、《ガルヴァノス》同様、最終的に使うことになる構造とは違っていた。本質的には緑の《ガルヴァノス》たったが、その違いはインスタントやソーサリーではなくクリーチャーを参照する、クリーチャーでなくエンチャントだったということである。これをここに加えたのは、これが開発部がこのメカニズムの最高の実装方法を探していたことを示しているからである。
《ガルヴァノス》と《末裔の道》は1つの方向を、また《未来予知》と《ガラクの大軍》はまた別の方向を示している。《未来予知》の方向が最終的に採用されることになった。さて、ここから、《未来予知》と全く同じ方法を採用したカードだけを列記していこう。自分のライブラリーの一番上にあるカードを見て、あるいは公開して、そこから特定の条件を満たすカードを唱えることができるものだ。
《イゼットの模範、メーレク》は、青赤という多色の初のカードで、インスタントやソーサリーを唱えられる。これは、自分のライブラリーから適切な呪文を唱えた時に誘発する追加の能力を持つ初のカードである。
『アモンケット』の《生類の侍臣》も、自分のライブラリーの一番上からクリーチャーを唱えられるカードである。これは、ただで唱えるのではなく、その呪文を唱えやすくする能力(この場合、どの色のマナでも支払えるというもの)を与える初のカードだった。
『ドミナリア』の《前知の場》は《未来予知》と似ていて、エンチャントであり、インスタントやソーサリーだけを唱えられる。このカードの進化点は、唱える条件にあったカードを見つけるために自分のライブラリーの一番上にあるカードを取り除くことができるということだった。
『ラヴニカのギルド』の《実験の狂乱》は、《未来予知》以来初となる、自分のライブラリーの上にあるどのカードでも唱えられるものだが、制限として自分の手札からは唱えられなくなる。また、自ら破壊できる初のカードでもある。『灯争大戦』の《ボーラスの城塞》は、黒でのこの能力の初登場だった。また、どの呪文でも唱えることができたが、《実験の狂乱》同様に不利益(その呪文のマナ総量に等しい点数のライフを失う)があった。『基本セット2020』の《神秘の炉》は、この能力を持つ初のアーティファクトで、唱えることができる条件がアーティファクトであることも初だった。
『統率者(2019年版)』の《無限のエルシャ》は、この効果を持つ初の3色カードで、白になったのも初だった。条件はクリーチャーでも土地でもないことで、「インスタント速度」で唱えられるという追加の能力があった。『イコリア:巨獣の棲処』の《怪物の代言者、ビビアン》は、この能力を持つ初のプレインズウォーカーで、クリーチャーであることを条件とするのは3枚目になる。
我々がメカニズムをデザインして、充分な量だけ使うようになると、それのサブテーマをデザインし始めるのが見られるのは興味深い。『統率者2021』の《人目を引く詮索者》は、クリーチャーのサブタイプ、今回お場合はゴブリンであることを条件にしている初のカードである。このテーマは後に人気となる。また、そのクリーチャーに、自分のライブラリーの一番上にあるカードに基づく能力を与える。『カルドハイム』の《領界渡り》は、自分のライブラリーの一番上から唱えられるクリーチャー・タイプを選ぶことができる。
『フォーゴトン・レルム探訪』の《レンジャー・クラス》は、この能力の主な派生物としてライブラリーの一番上からクリーチャーを唱えるという緑の能力をさらに確立した。もう1枚『フォーゴトン・レルム探訪』の《ギルドの重鎮、ザナサー》は、対戦相手のライブラリーから呪文を唱えることができる初のカードである。『フォーゴトン・レルム探訪』統率者デッキの《希望の焚きつけ屋、ゲイリア》は、オーラや装備品であるカードを唱えることができる初のカードだ。同じ製品内の複数枚のカードでこの能力が登場したのはこれが初であった。
『イニストラード:真夜中の狩り』の《秋の占い師》は、土地をプレイできる初のカードであり、特定の条件下ではクリーチャー・カードを唱えられる緑のカードでもある。『イニストラード:真紅の契り』の《墓所の照光者》は、カードを追放してそれと共通のクリーチャー・タイプを持ちライブラリーの一番上にあるカードを唱えることができる。この分類の中で、何を唱えられるかの条件がゲームごとに異なるのは初めてである。『神河:輝ける世界』の《現実チップ》は、土地をプレイすることも呪文を唱えることもできる初のカードである。
『ニューカペナの街角』の《契約紡ぎ、ファルコ・スパーラ》は、どの呪文でも唱えられるが、追加コストがある(自分がコントロールしているパーマネントの上からカウンター1個を取り除く)。『統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い』の《鱗の歌姫、コーレッサ》はドラゴンを唱えることができ、関連する統率者デッキの《ナリア・デアルニス》はクレリック、ならず者、戦士、ウィザードを唱えるプレイできる。『団結のドミナリア』統率者デッキの《皇帝ミハイル二世》は、マーフォークをプレできる。
『Unfinity』の《Lila, Hospitality Hostess》は、このデザイン空間を扱った初のアン・カードである。これで唱えられる条件は、コモンであることである(通常のマジックのルールは、レアリティをメカニズム的に扱うことを認めていない)。メカニズムがアン・セットで登場する場合、そのメカニズムに一定の人気があると示していることが多い。『兄弟戦争』の《多元宇宙と共に》は、ターンに1枚はただでプレイできて、かつ土地をプレイすることも任意の呪文を唱えることもできる初のカードである。『ジャンプスタート2022』の《忌まわしきもの、アイスー》は、氷雪土地をプレイしたり氷雪呪文を唱えたりできる、特殊タイプを条件としている初のカードである。『機械兵団の進軍』の《エラントとジアーダ》は、瞬速や飛行を持つ呪文を唱えることができる。『機械兵団の進軍:決戦の後で』の《祝福の泉、シガルダ》は、天使や人間を唱えることができる。
そして今回の《エルフの合唱》に到る。このカードは、エルフが歌っていることを再現しようとしたものである。『ユニバースビヨンド』のデザイン(などのトップダウン・デザイン)によくあるとおり、デザイナーは必要な雰囲気を再現する既存のメカニズムを探すことになる。クリーチャーを扱う《未来予知》は、緑に存在していてまさにふさわしいものだった。味方のクリーチャーをタップしてマナを出せるようにするという、非常にエルフらしく感じさせる調整(マジックにはエルフはマナを生むという長い伝統がある)を経て、効率的に使うにはマナが必要なカードとのシナジーが生まれた。
《サウロンの破滅、フロド》
フロドは「指輪物語」の主人公なので、カード化されるのは必然だった。最終的に、彼のカードは(本体セットだけで)2枚作られた。ここで取り上げるのは、彼のレアのカードである。数多くの変更を経てきていて、それは人気のキャラクターのトップダウン・カードを作ることの難しさを示している。
〈物語語り、フロド(バージョン #1)〉
{1}{W}
伝説のクリーチャー —ホビット
2/2
これが戦場に出たとき、これはあなたの指輪所持者になる。(これは伝説であり、護法{2}を持つ。)
あなたの終了ステップの開始時に、あなたが指輪所持者をコントロールしていない場合、これを追放してもよい。そうしたなら、あなたのライブラリーから英雄譚・カード1枚を探し、戦場に出し、その後、ライブラリーを切り直す。
この枠の最初のバージョンは、初期セットデザイン中にデザインされた。展望デザイン中に、我々はすべてのキャラクターのカードを作ったが、セットデザインは特に人気のキャラクターについては複数のバージョンが必要だと判断したのだ(詳しくは次週)。この枠は、2枚目のフロドとなった。最終的に、既存の1枚をアンコモンにして(それもまた多くの変更を経ている)、この枠をレアにしたのだ。
当時は、指輪があなたを誘惑するメカニズムは指輪所持者と呼ばれていて、位相のように作用していた(伝説であることと護法{2}を与える)。第2バージョンを作っていたので、彼らはそれらを差別化する方法を見つけなければならなかった。わかりやすい選択肢として、物語上の別の瞬間を取り上げることで、物語の中でそのキャラクターがどう変化したかを示すことができる。このカードの最初のバージョンでは、物語の終わりに自身の冒険を語っているフロドを表している。
フロドは小さいので、このカードは小型で、{1}{W}で2/2である。指輪所持者であることが彼の鍵なので、彼の「入場」誘発で指輪所持者になる。2つ目の能力は、彼の指輪所持者としての時間が終わった後で、彼には伝えるべき壮大な話があるということを示そうとしたものである。メカニズム的に、英雄譚を物語を表すために使っているので、フロドを物語(英雄譚)と交換できるのだ。生け贄に捧げるのではなく追放するのは、フロドが死ぬわけではないからである。
〈物語語り、フロド(バージョン #2)〉
{1}{W}
伝説のクリーチャー —ホビット
2/2
これが戦場に出たとき、これはあなたの指輪所持者になる。(これは伝説であり、護法{2}を持つ。)
あなたのアップキープの開始時に、あなたが指輪所持者も英雄譚もコントロールしていない場合、あなたの墓地にある英雄譚・カード1枚をあなたの手札に戻してもよい。
最初のバージョンに関する冗談は、「物語語り。語れる物語は1つだけ。」というものだった。フロドと英雄譚を引き換えにするのは少しばかり厳しかったので、このバージョンでは他の手法を試みている。フロドを残しておいて、何度も、ただし時間をかけて、英雄譚を戻してくるのだ。時間をかけてというのは、1度に1枚ずつだからである。
〈ホビット庄の物語語り、フロド(バージョン #3)〉
{1}{W}
伝説のクリーチャー —ホビット
1/3
これが戦場に出たとき、あなたのライブラリーの一番上にあるカードX枚を裏向きで追放する。Xはあなたがコントロールしている伝説のクリーチャーの数に等しい。それらのカードが追放され続けているかぎり、それらのカードを見てもよく、各ターン、それらのうち1枚をプレイしてもよい。
結局、英雄譚を使うバージョンは、少しばかり狭すぎた。ドラフトでレアのフロドを引いたなら、それをプレイできるようにしたい。そのためには前のバージョンはあまりにも狭すぎたのだ。この時点で、セットデザインは「伝説関連」テーマをセットに加えたので、それをフロドのデザインに組み込もうと考えた。なぜ彼はそれほどいい物語語りなのか。彼が多くの興味深い人々と出会ってきたからである。この効果は、カードを引くがターンに1枚かぎりという、白版の衝動的ドローをしようという試みである。赤が通常使うものよりも長期戦向けのメカニズムであり、我々が白のドローの形にしようと思っている、何ターンもかけるというやり方にそぐうものだった。
〈サウロンの破滅、フロド(バージョン #4)〉
{2}{W}
伝説のクリーチャー —ハーフリング
2/2
これはパワーが3以上であるクリーチャーにはブロックされない。
これがプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび、これをあなたの指輪所持者でなくしてもよい。そうしたとき、そのプレイヤーがコントロールしていて土地でないパーマネント1つを対象とする。それを追放する。
カード・ドロー・エンジンにすることはあまりフロドらしく感じられず、まったく指輪を扱っていないこともフロドのカードには奇妙だったので、違う方向に向かうことにした。物語の最後のフロドではなく、少し戻って、破滅の山にいるフロドを描くことにしたのだ。サボタージュ能力(クリーチャーが戦闘ダメージを対戦相手に与えたときに効果を発生させる能力)は、彼が指輪を破壊することを描いている。対戦相手にダメージを与えたとき、そのプレイヤーの何かを壊すという利益が得られるのだ。大型クリーチャーにはブロックされないという回避能力は、彼の小ささとホビットの隠密性を扱っている。
〈サウロンの破滅、フロド(バージョン #5)〉
{1}{W}
伝説のクリーチャー —ハーフリング
1/2
これが戦場に出たとき、あなたがコントロールしているクリーチャー1体を対象とする。それはあなたの指輪所持者になる。(それは伝説であり、それより大きいパワーを持つクリーチャーにはブロックされない。)
各戦闘の開始時に、ああなたが先制攻撃を持つクリーチャーをコントロールしているなら、ターン終了時まで、あなたの指輪所持者は先制攻撃を得る。飛行、二段攻撃、速攻、呪禁、破壊不能、絆魂、威迫、到達、トランプル、警戒についても同じである。
このバージョンではフロドに指輪を与えるのではなく、他のカードで達成させている。このバージョンは、再びフロドに「入場」効果を持たせている。指輪の効果が、護法{2}から潜伏に変更になっていることに注意。このバージョンでは、自軍のクリーチャーが持つ常盤木キーワードに基づき、あなたの指輪所持者に多くの利益を与えている。このリストは何度も変更されたが、最終的に護法と防衛以外のすべての常盤木キーワードになった。(護法が除かれたのは呪禁があるからで、防衛は不利益になるからである。)
〈サウロンの破滅、フロド(バージョン #6)〉
{W}
伝説のクリーチャー —ハーフリング
1/1
これが戦場に出たとき、一つの指輪を獲得する。(それの次の能力を加え、その後、あなたがコントロールしているクリーチャー1体はあなたの伝説の指輪所持者になる。)
あなたの指輪所持者は、「このクリーチャーはあなたがコントロールしていてこれでないクリーチャー1体につき+0/+1の修整を受け、これのパワーではなくこれのタフネスに等しい点数の戦闘ダメージを割り振る。」を持つ。
このバージョンは、優れたマジックのカードだが、素晴らしいフロドとは言えなかった。指輪を扱っているのはいいのだが、フロドと飛行クリーチャーがいれば指輪所持者が飛ぶ、というのはフロドらしさはまったくなかった。このバージョンでは指輪所持者に、+0/+1強化に加えてタフネスに等しいダメージを与えさせるという特定の能力1つを与えている。
〈ありえない生存者、フロド(バージョン #7)〉
{W}
伝説のクリーチャー —ハーフリング・農民
1/1
{W}:これは基本のパワーとタフネスが2/3のハーフリング・スカウトになる。
{W}{W}{W}:これがスカウトなら、これは「これが攻撃するたび、一つの指輪を獲得する。」を持つハーフリング・ならず者になる。
これがならず者であり、このゲームであなたが4回以上一つの指輪を獲得しているなら、あなたのライフ総量は変化しない。
今回も、この効果は充分フロドらしいとは言えない。また、これは指輪を自軍の最大のクリーチャーにつけることを推奨しており、少し奇妙に思えた。セットデザイン・チームは、何年も前の人気のデザインを元にした、まったく違うやり方を試すことにした。
このデザインの逸品は、時とともにレベルアップするクリーチャーのトップダウン・デザインの試みとしてブライアン・ティンスマン/Brian Tinsmanが作ったものである。《運命の大立者》は非常に愛されたので、多くのカードや、『フォーゴトン・レルム探訪』のレベルとクラスのメカニズムの元になったのだ。
フロドのカードで、時とともに変わるフロドを表すのはどうだろうか。《運命の大立者》同様、クリーチャー・タイプによって起動できる能力が変わるのだ。フロドは1/1の農民から始まり、2/3のスカウトになり、その後、ならず者になって指輪を手にする。最後の進化に必要なのはマナではなく指輪だ。いくつもの関門を経なければならないので、セットデザイン・チームは心躍る最後の能力を探し、そして「あなたのライフ総量は変化しない。」に行き着いた。
〈ありえない生存者、フロド(バージョン #8)〉
{W}
伝説のクリーチャー —ハーフリング・農民
1/2
このゲームであなたが4回以上一つの指輪を獲得していたなら、あなたはライフ総量が0点以下であることによってはゲームに敗北しない。
{W}:これは絆魂を持ち基本のパワーとタフネスが2/3のハーフリング・スカウトになる。
{W}{W}{W}:これがスカウトなら、これは「あなたがライフを得るたび、一つの指輪を獲得する。」を持つハーフリング・ならず者になる。
このバージョンでは最初の強化に絆魂が加わり、2つ目の能力の指輪誘発は攻撃ではなくライフを得ることになった。これによって、主に絆魂のおかげで、攻撃することもできるが、同時に他の形で基柱にしたデッキにすることもできる。最後の能力は、おそらくテンプレート上の理由からカードの先頭に移動され、「ライフを失わない」から「ライフが0点であることによっては敗北しない」になっている。
〈ありえない英雄、フロド(バージョン #9)〉
{W}
伝説のクリーチャー —ハーフリング・農民
1/2
{W}:これは絆魂を持ち基本のパワーとタフネスが2/3のハーフリング・スカウトになる。
{B}{B}{B}:これがスカウトなら、これはハーフリング・ならず者になる。あなたがライフを得るたび、これがならず者である場合、一つの指輪を獲得する。その後、各対戦相手はその点数に等しい点数のライフを失う。
この第7、第8バージョンの最後の能力は、結局、楽しいというより苛立つものだった。これと対面した対戦相手は絶望することになる。対戦相手はほとんどの場合勝利できないのに、フロドのコントローラーはゲームを終わらせるために手数を重ねることになる。このバージョンで、我々は物語を伝えるために強化を最も効率的に使っているとは言えなかったことに気がついた。フロドが誘惑されたことをどうやって表すのか。起動コストを、白から黒に変えるのだ。最終版ではもう1歩進んでいて、マナ・コストは白で、1つ目の起動コストは白黒混成、最後の起動コストは黒になっている。
このバージョンの最後の効果はライフの喪失になっていて、これは勝利につながることが多いが心躍るものとは言えない。多くの関門をくぐり抜けたのなら、心躍る最終局面が必要だ。最終的に、セットデザイン・チームはこれを代替勝利条件にすることにした。フロドを最後まで強化できて指輪で誘惑できたなら、「指輪を処分するという彼の任務を終える」、つまりゲームに勝利する、ことができるのだ。これなら充分壮大だ。
こうして、フロドは物語を語るのではなくゲームに勝利するようになったのだった。
いい『指輪』がある
これでその2は終わりにしよう。いつもの通り、この記事や話題にしたカード、あるいは『指輪物語:中つ国の伝承』そのものについて、諸君からの感想を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(Twitter、Tumblr、Instagram、TikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、その3でお会いしよう。
その日まで、あなたが自身の旅の仲間を集めて『指輪物語:中つ国の伝承』をプレイしていますように。
(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)
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