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Making Magic -マジック開発秘話-
『団結のドミナリア』デザイン演説 その1
2022年8月22日
今週と今後2週で、『団結のドミナリア』のカード個別のデザインの話をしていく。今日の記事で取り上げる話は2つだけだが、それぞれに今まで起こりえなかった物語があるキャラクターたちが登場している。あってもおかしくなかった話について解説し、その後でそのキャラクターの『団結のドミナリア』でのカードを紹介しよう。
《復活したアーテイ》
マイケル・ライアン/Michael Ryanと私がウェザーライト・サーガを作った時、最初は3年間のアークとして計画していた。(キャラクターに伴う物語ももっと多くするつもりだったが、その中でもこれが最初の1つだった。)我々が提案したものを短くまとめるとこうなる。
1年目
シッセイ艦長がヴォルラスにさらわれ、ラースの次元に連れ去られる。ウェザーライト号の乗組員はシッセイを助けるためジェラードの(そしてミリー、アーテイ、クロウヴァクス、スタークの)助けを求める。乗組員はヴォルラスの要塞への道を切り開き、シッセイと(スタークの娘の)タカラと、カーンとターンガースを助け出す。アーテイは門に向かい、門を開いてウェザーライト号がラースから脱出できるようにする。計画通りにはいかず、門が閉じる前にウェザーライト号を通すためには(ウェザーライト号が高速で進めるようにする)ウィンドシェイパーという道具を使う必要があり、そのためにアーテイはラースに取り残されることになった。(ウェザーライト号が門を使う必要があったのは、ラースに到着したときにプレデターから攻撃されて次元転移エンジンが損傷し、次元跳躍能力を喪っていたからである。)
これは基本的に、実際のカード・セット(『テンペスト』ブロック)で起こったことであり、違いは、クロウヴァクスは悪堕ちもミリー殺害も離脱もしないという点だけだった。ミリーは怪我をするが生き抜く、というのが2年目の重要な点になる。マイケルと私は『ストロングホールド』の後にストーリーから離れるので、『エクソダス』でストーリーは我々の構想から乖離していくことになる。
2年目
ウェザーライト号は門の反対側、メルカディアという商業都市世界に墜落する。メルカディアの首長はウェザーライト号に魅了され、最終的にジェラードはミリーの生命を救うために必要な医薬品と引き換えに船を引き渡すことになる。一方、スタークが殺され、セットに組み込まれてユーザーが解明する、大殺人事件が起こる。(船内に、ターンガースに擬態したヴォルラスがいたのだ。)また、ハナが要塞で知ったファイレクシアの侵略についての情報を深く掘り下げていった結果、彼らはファイレクシア人がまもなくドミナリアへ侵攻しようとしていることを突き止める。彼らはドミナリアに警告を伝えるため、帰らなければならない。メルカディアの仲間の助けを得て、ジェラードは都市の条例にあるほとんど知られていない附則を使い、複雑な競技でメルカディアの首長らに挑戦することを認めさせる。彼らは何とか勝利して船を取り戻し、ドミナリアに戻ることができる門を見つける。2年目の終わりは、来たるべき侵略を伝えるためにウェザーライト号がドミナリアへの門をくぐるところになる。ドミナリアに着いた彼らは、門は空間だけでなく時間も渡るものだと気がつく。50年の時が過ぎており、すでにドミナリアはファイレクシア人の手に落ちていたのだ。
我々が考えていた物語と実際に作られたものの共通点はメルカディアという世界だけであり、それもマイケルや私が展望していたものとは大きく変わっていた。ヴォルラスがスタークを殺したのは同じだが、変身先はタカラでありターンガースではなかった。
3年目
ウェザーライト号の乗組員は、ドミナリアをもとに戻す方法を探すべく、ファイレクシア化されたドミナリアで生き残らなければならない。彼らを見つけたのはレジスタンスの指導者の年老いた魔術師だった。その老魔術師こそ、誰あろうアーテイだったのだ。ドミナリア再生の鍵となる砂時計の首飾りと呼ばれるアーティファクトは時とともに失われていたので、アーテイはウェザーライトの乗組員に出会ったことで興奮していた。最後にわかっていた持ち主は、ジェラードだったのだ。ジェラードはそれを友人に渡していたので、ウェザーライトの乗組員はその追跡調査をすることになった。
一方、いまだターンガースとして乗船しているヴォルラスは、ファイレクシア人に合流してウェザーライト号の帰還を伝える機会を伺っていた。ウェザーライト号の乗組員はペンダントを探し、ファイレクシア人に応戦し、ドラゴン形態のヴォルラスとも戦って冒険を重ねるが、最終的に、ファイレクシア人をドミナリアから追放し、ヴォルラスを倒すことができた。
この3年目の構想については、プレイヤーが知る機会はほとんどなかった。砂時計の首飾りについては物語の序盤で触れられていたが(参考:英語)、その伏線が回収されることはなかった。老アーテイに触れたカードは印刷されていたが、その言及においてもアーテイだと明示されることはなかった。『テンペスト』ブロックに関する短編集『Rath and Storm』の中で、締めくくりとなる話は少年と、「先生/the master」とだけ呼ばれる年老いた魔術師についてのものだった。この部分を書いたのはマイケル・ライアンであり、アーテイの物語のほのめかしだったのだ。
そして『団結のドミナリア』を作ることになる。イーサン・フライシャー/Ethan Fleischerは昔の物語すべてのファンで、「先生」がアーテイであると推測していた。そのため、アーテイが物語上で死んだ時、イーサンは驚いた。『Rath and Storm』で老人になる運命のアーテイが死ぬはずがない。イーサンはこの誤りを正そうと決めて、クリエイティブ・チームに『団結のドミナリア』でアーテイを蘇らせることについて相談した。彼らは同意した。イーサンがすべきことはアーテイのカードをデザインすることだけだった。
思い出してもらいたいのは、アーテイのカードは2枚存在しているということである。
《熟達の魔術師アーテイ》が、マイケルと私が作り出したバージョンのキャラクターだ。彼は強力な魔術師だが、若くて自信過剰なのだ。私は起動型の打ち消し呪文を持つクリーチャーをずっと作りたいと考えていて、アーテイはまさにふさわしい存在だった。アーテイが伝説のクリーチャーなので、(コピーして悪さをしなければ)戦場には1体しか出せない。そして1/1にしたので殺すのも簡単だ。
マイケルと私がストーリー・チームから離れたあと、アーテイは我々が考えていたのとは違う道をたどることになった。彼は囚われ、汚染され、最終的にはクロウヴァクスのしもべになった。《堕落した者アーテイ》はアーテイの2枚目のカードで、その失墜を描いたものである。青単色ではなく青黒になることでその堕落を示しており、呪文を打ち消すことは相変わらずできるがそのためにはクリーチャーやエンチャントを生け贄に捧げる必要があるようになった。
これが、我々のアーテイの最初のバージョンだ。
〈復活したエヴィンカー、アーテイ〉(バージョン #1)
{3}{U}{B}
伝説のクリーチャー ― ファイレクシアン・ウィザード
3/4
{1}{U}{B}, {T}:呪文1つを対象とする。それを打ち消す。あなたはそれのマナ総量に等しい点数のライフを失う。
{3}, 土地でないパーマネント1つを生け贄に捧げる:あなたは4点のライフを得る。
彼の以前のカードからそう遠くないものにした。アーテイは相変わらず青黒で、呪文を打ち消す起動型能力を持ち、パーマネントをリソースとして生け贄に捧げる。我々がよくやるように、2つ目の能力で1つ目の能力に必要なリソースを得られるようにすることで、それらの能力に関係性を持たせた。
〈復活したエヴィンカー、アーテイ〉(バージョン #2)
{3}{U}{U}
伝説のクリーチャー ― ファイレクシアン・ウィザード
3/4
{1}{U}{U}, {T}, カード1枚を捨てる:呪文1つを対象とする。それを打ち消す。
{3}, 土地でないパーマネント1つを生け贄に捧げる:カード1枚を引く。
ここでアーテイは青単色になった。ライフを得るのは筋が通らなくなったので、リソースをライフでなくカードにした。呪文を打ち消すためにカードを捨てる必要があるが、土地でないパーマネントを生け贄に捧げることでカードを取り戻せるようになったのだ。
〈復活したエヴィンカー、アーテイ〉(バージョン #3)
{1}{U}{U}
伝説のクリーチャー ― ファイレクシアン・ウィザード
2/1
キッカー{2}(あなたはこの呪文を唱えるに際し、追加で{2}を支払ってもよい。)
瞬速
[カード名]が戦場に出たとき、呪文1つを対象とする。それをオーナーの手札に戻す。[カード名]がキッカーされていたなら、代わりに、その呪文を打ち消す。
次のこのバージョンは、過去のアーテイのデザインからは大きく離れた。(プレイデザインは再利用可能な打ち消し呪文が気に入らなかったのだ。)そして、セットのメカニズムであるキッカーを組み込み始めた。起動して呪文を打ち消すのではなく、「戦場に出たとき」(ETB)効果で打ち消すようになったのだ。キッカーによって、呪文を一時的に止めるか永続的に止めるかを選ぶことができる。
〈復活したエヴィンカー、アーテイ〉(バージョン #4)
{2}{U}{U}
伝説のクリーチャー ― ファイレクシアン・ウィザード
2/2
瞬速
[カード名]が戦場に出たとき、対戦相手がコントロールしている呪文1つを対象とする。それを打ち消す。
壮大 ― {U}{U}, 「[カード名]」という名前でありこれでないカード1枚を捨てる:呪文1つを対象とする。それを打ち消す。
次のこのバージョンでは、セット内のメカニズム(だった)壮大を使っている。このバージョンのアーテイはETB効果で呪文を打ち消し、その後、他のアーテイを文字通り打ち消し呪文に変えることができるようになっている。
〈復活したエヴィンカー、アーテイ〉(バージョン #5)
{2}{W}{U}
伝説のクリーチャー ― ファイレクシアン・ウィザード
2/2
瞬速
[カード名]が戦場に出たとき、対戦相手がコントロールしている呪文1つを対象とする。それを打ち消す。あなたは、あなたがコントロールしているクリーチャーの数に等しい点数のライフを得る。
壮大 ― {W}{U}, 「[カード名]」という名前でありこれでないカード1枚を捨てる:呪文1つを対象とする。それを打ち消す。あなたは、あなたがコントロールしているクリーチャーの数に等しい点数のライフを得る。
何らかの理由で、おそらくはセットデザイン中に、アーテイを白青のカードにしようとしたようだ。ETBの打ち消し効果はそのままだが、ライフを得る効果がついているのはこのカードの白の部分を表そうとしたものだろう。壮大能力は今回も、2枚目以降のアーテイを捨ててETB効果と同じ効果を生み出すものになっている。
〈復活したエヴィンカー、アーテイ〉(バージョン #6)
{1}{W}{U}{U}
伝説のクリーチャー ― ファイレクシアン・ウィザード
2/2
瞬速
[カード名]が戦場に出たとき、対戦相手がコントロールしている呪文1つを対象とする。それを打ち消す。あなたは、あなたがコントロールしているクリーチャーの数に等しい点数のライフを得る。
ここで壮大がファイルから除かれ、このカードも壮大を失った。また、マナ・コストが変わって、唱えるために必要な青マナが増えている。
〈復活したエヴィンカー、アーテイ〉(バージョン #7)
{1}{U}{U}{B}
伝説のクリーチャー ― ファイレクシアン・ウィザード
3/2
瞬速
[カード名]が戦場に出たとき、対戦相手がコントロールしている呪文1つを対象とする。それを打ち消す。それのコントローラーは3点のライフを失う。
おそらくこの時点で、クリエイティブ・チームの誰かが「いったい何をやっているんですか。アーテイは青黒であって白青ではありません。」と言ったのだろう。このカードは青黒になり、追加の効果が白っぽいものから黒っぽいものに変更された。
〈復活したエヴィンカー、アーテイ〉(バージョン #8)
{U}{U}{B}
伝説のクリーチャー ― ファイレクシアン・ウィザード
2/3
瞬速
[カード名]は、このターンに唱えられてこれでない呪文1つにつき1個の+1/+1カウンターが置かれた状態で戦場に出る。
[カード名]が戦場に出たとき、呪文1つを対象とする。それのコントローラーが[カード名]のパワーに等しい点数のマナを支払わないかぎり、それを打ち消す。
このバージョンが何なのかはよくわからない。これは、アーテイの中で唯一呪文を打ち消さないものである。おそらく、青黒のアーキタイプで使うため、あるいはセット内の他のカードと組み合わせるためにデザインされ、アーテイらしさよりセットに合わせることを優先したのだろう。
訳注:原文のテキストはプレイテスト中のもので、正規のテンプレートになっていませんでした。そのため、「戦場に出たとき」の誘発型能力が文頭で改行されておらず、また英語では打ち消すと+1/+1などのカウンターが同じcounterという単語であることもあって、マーク・ローズウォーター氏は2つ目の能力を見落としたのだと思われます。
原文のテキストは以下のとおりです。
CARDNAME enters the battlefield with a +1/+1 counter for each spell that's been cast this turn. When CARDNAME enters the battlefield, counter unless its controller pays mana equal to CARDNAME's power.
〈復活したエヴィンカー、アーテイ〉(バージョン #9)
{U}{U}{B}
伝説のクリーチャー ― ファイレクシアン・ウィザード
2/3
瞬速
[カード名]が戦場に出たとき、クリーチャーでないすべての呪文を打ち消す。各プレイヤーはそれぞれ、自分がコントロールしていてこれにより打ち消された呪文1つにつき2点のライフを失う。
この最終直前版は再び打ち消し呪文に戻り、さらに複数の呪文を打ち消すという夢を見られるようになった。最終版では各色がそれぞれのモードを持つことになった。青は呪文だけでなく起動型能力や誘発型能力を打ち消すことができる。黒の能力はクリーチャーやプレインズウォーカーを殺すことができる。両方とも、対応して対戦相手がカードを引くことができるのは、脅威に対処はできてもカード・アドバンテージを得ることがないようにしているからである。プレイデザインは、どちらもかなりよくプレイされていて、アーテイにもっと強力な効果を持たせることができると判断した。
最後に、これが《復活したアーテイ》のアート指示である。
舞台:ドミナリア
色:青と黒のマナに関わる伝説のクリーチャー
場所:ラト=ナムのトレイリアのアカデミーの一室。
行動:フェイレクシアの闇の科学で蘇った魔術師のアーテイが、ラト=ナムのトレイリアのアカデミーの指揮責任者である。彼の周り中に、油にまみれた暗いケーブルや真鍮の輪や揺らめく魔法の投影といった、ファイレクシアとトレイリアの技術の奇妙な融合体がある。彼が尊大にギックスの侍祭にさまざまな科学的任務を命令したり、2組の腕の1組を使って闇の魔法とつながったりしているところが見かけられるかもしれない。
焦点:アーテイ
雰囲気:工業的な闇の科学
注:新しいアーテイのデザインについては 294 参照。ギックスの侍祭については 324 参照。
《黙示録、シェオルドレッド》
シェオルドレッドは黒のファイレクシアの法務官で、初登場は『新たなるファイレクシア』だった。
『ミラディンの傷跡』ブロックでは、ファイレクシアがミラディンを侵略し、ファイレクシアが戦争に勝利したという物語を語っている。そして、彼らはミラディンを新ファイレクシアに作り変えたのだ。この後、ファイレクシア人は内輪での戦いを始め、色ごとに別の法務官を戴くようになった。シェオルドレッドは黒の法務官で、他のクリーチャーを隷属させることに躍起になっていた。シェオルドレッドの起こらなかった物語の舞台は、『エルドレインの王権』である。少なくとも、舞台になる予定だったのは。
御存知の通り、その直前のセットは『灯争大戦』であり、ニコル・ボーラスに関する3年間のストーリー・アークが幕を閉じた。その次に語りたいと思っていた物語はファイレクシアだったので、我々はその物語をそれ以降のセットにどう切り分けるかを考えていた。我々が気に入ったアイデアが、まず何の説明もせずに法務官を出すというものだった。そのセットには他に何もそれに焦点を当てたものはないのだ。ヴォーソスが記録して気にし始める何か、というだけである。ヴォーソスでない諸君のために説明すると、ファイレクシアの話を終えた時点で、彼らはプレインズウォークする手段を持たず新ファイレクシアに閉じ込められていたのだ。つまり、既知のファイレクシア人(新ファイレクシアにいるとわかっている相手)を他の次元で見かけたということは、何かが非常に悪い状況になっている大きな兆しだったのである。
最初に登場させる法務官として選んだのは、実際に『カルドハイム』で最初に登場したヴォリンクレックスではなく、シェオルドレッドだった。計画はこうだった。『エルドレインの王権』はもともと1つではなく2つのセット(コードネームは『Archery』と『Baseball』)になる予定だった。1つ目のセットで世界と宮廷を紹介する。ローアンとウィルの双子(初登場は『バトルボンド』)に出会い、彼らの父親である国王がいなくなっていることを知る。2つ目のセットにはローアンとウィルが父を探して森に入り、さらった犯人に直面することになる。オーコではない。キャラクターとしてはまだ登場していない人物である。本来の悪役は、「囁く魔女」としてだけ言及されている人物になる予定だった。彼女についての情報は『Archery』で得られるが、カードとしては『Baseball』まで登場しない。そのカードは単に囁く魔女という名前だが、アートにはシェオルドレッドの姿があるのだ。我々は、ヴォーソスはそれで充分関心を向けるとわかっていた。
しかし、ここでいろいろなことが変わった。エルドレインをセット1つだけにすることが決まった。プレイヤーが、包括的な物語から少し離れたがっているという多くのフィードバックが届いたのだ。クリエイティブ・チームには、この物語を成立させるための他の興味深いアイデアがあった。ともあれ、落ち着いてみれば、シェオルドレッドは『エルドレインの王権』から取り除かれることになった。ヴォリンクレックスが最初の警告の兆しとなり、シェオルドレッドは物語の後半、我々がドミナリアを再訪するときに登場することになったので『団結のドミナリア』でデザインすることになったのだった。
〈囁く者、聞く者、シェオルドレッド〉(バージョン #1)
{4}{B}{B}
伝説のクリーチャー ― ファイレクシアン・法務官
6/6
威迫、接死
あなたの戦闘前メイン・フェイズの開始時に、各対戦相手はそれぞれカード1枚を捨てる。
あなたの各ターンに、あなたは各対戦相手の墓地にあるカードそれぞれ1枚をプレイしてもよい。そのために、あなたはマナを任意のタイプであるかのように支払ってもよい。
『新たなるファイレクシア』の法務官はサイクルとしてデザインされていた。それぞれは能力2つを持ち(そのほとんどは常盤木キーワード能力で)、1つは自分を助けるもの、1つは敵を傷つけるものだった。これらの2つの能力は、お互いに鏡像関係にあった。新しい法務官をデザインし始めたとき、我々はこの同じデザイン構造に従わなければならないかどうかについて激しい議論が交わされた。この最初のバージョンでは、以前の法務官のデザインを継承せず、ただし対戦相手にちょっかいを掛けるような妨害らしさを持つようにした場合のデザイン空間を掘り下げていた。
〈囁く者、聞く者、シェオルドレッド〉(バージョン #2)
{3}{B}{B}
伝説のクリーチャー ― ファイレクシアン・法務官
4/6
威迫、接死
対戦相手1人が1枚以上のカードを引くたび、そのプレイヤーは自分のライブラリーの一番上にあるそれと同じ枚数のカードを追放する。それらのカードが追放され続けているかぎりあなたはそれらのカードをプレイしてもよく、そのためにマナを任意の色のマナであるかのように支払ってもよい。
このバージョンでも対戦相手の呪文を唱えることができるが、カード・ディスアドバンテージの量は小さい。対戦相手がカードを失うのは、手札からではなくライブラリーからになっている。また、このバージョンではシェオルドレッドが追放したカードしかプレイできない。
〈囁く者、聞く者、シェオルドレッド〉(バージョン #3)
{3}{B}{B}
伝説のクリーチャー ― ファイレクシアン・法務官
4/4
威迫
[カード名]やあなたがコントロールしていてこれでないクリーチャー1体が死亡するたび、各対戦相手はそれぞれ、そのクリーチャーのパワーに等しい点数のライフを失う。
対戦相手がコントロールしているクリーチャー1体が死亡するたび、あなたはそれのパワーに等しい点数のライフを得る。
シェオルドレッドは現在の物語上4番目に再登場した法務官である。(ヴォリンクレックスは『カルドハイム』で、ジン=ギタクシアスは『神河:輝ける世界』で、ウラブラスクは『ニューカペナの街角』で登場している。)過去の3体の法務官は元の法務官サイクルと同じデザイン・テンプレートに則っているので、デザイン・チームは同じようにしなければならないと気がついた。これはその最初のバージョンである。味方のクリーチャーが死亡したら、相手はそのパワーに等しいライフを失う。相手のクリーチャーが死亡したら、自分はそのパワーに等しいライフを得る。接死も取り除かれ、戻されることはなかった。
〈囁く者、聞く者、シェオルドレッド〉(バージョン #4)
{5}{B}{B}
伝説のクリーチャー ― ファイレクシアン・法務官
7/7
威迫
対戦相手がクリーチャー・呪文を唱えるたび、そのプレイヤーはそのマナ総量に等しい点数のライフを失う。
あなたの各ターンの間に、あなたはクリーチャー・呪文1つを、それのマナ・コストではなくマナ総量に等しい点数のライフを支払うことで唱えてもよい。
次のこのデザインは、鏡像関係がやや緩くなっている。どちらもクリーチャーとライフの増減を含むが、それほど揃っているわけではない。
〈囁く者、聞く者、シェオルドレッド〉(バージョン #5)
{2}{B}{B}
伝説のクリーチャー ― ファイレクシアン・法務官
4/4
威迫
あなたが呪文を唱えるたび、あなたはその呪文のマナ・コストに含まれる黒マナ・シンボル1個につき1点のライフを得る。
対戦相手が呪文を唱えるたび、そのプレイヤーはその呪文のマナ・コストに含まれる色1色につき1点のライフを失う。
このバージョンでは鏡像関係はいくらか厳密になっているが、一方の効果は黒マナだけを見て、もう一方の効果はあらゆる色を見ている。最終的に、デザインはすでに法務官のデザインのいくつかでしているように、つまり一方の効果を色の中、もう一方の効果は少しばかり曲げの範疇にするようにした。対戦相手がカードを引いたとき、そのプレイヤーがライフを失うのは非常に黒らしい。自分の生み出した有益な効果でライフを得るのは、それほど黒らしくはない。これは折れというよりも曲げであり、うまく働いたので、シェオルドレッドの最終的なデザインがこうなったのだ。
最後に、これが彼女のアート指示である。
舞台:ドミナリア
色:黒のマナに関わる伝説のクリーチャー
場所:シヴの火山原のうち1か所。灰と硫黄が大気中で渦巻いている。
行動:ドミナリアにおけるファイレクシア人の恐ろしい指導者、シェオルドレッドの壮大な映画のポスター一枚絵。彼女の人間体の上半身(293 参照)が無数の足のあるドラゴン・エンジン(288 参照)の上にある、あるいはムカデのようにつながって頭のない複数のドラゴン・エンジンが彼女を引きずっている。硫黄の煙の中、非人間的なシルエットの群れが彼女の後ろに押し寄せており、彼女は恐ろしいファイレクシア人の軍団を率いている。
焦点:シェオルドレッド
雰囲気:力の絶頂にある怪物的な敵
ありえたこと
現実にならなかった物語の瞥見を楽しんでもらえたなら幸いである。いつもの通り、この記事や今回取り上げたカード、あるいは『団結のドミナリア』そのものについて、諸君からの感想を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(Twitter、Tumblr、Instagram、TikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、『団結のドミナリア』のさらなるカード個別のデザインの話をする日にお会いしよう。
その日まで、起こらなかった物語の夢があなたとともにありますように。
(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)
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