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Making Magic -マジック開発秘話-
『ニューカペナの街角』の言葉 その3
2022年5月2日
先週と先々週の2週にわたり(その1、その2)、『ニューカペナの街角』のカード個別のデザインの話をしてきたが、まだ話すべきことが多いので、今日はこのシリーズの最終回、その3をお送りしよう。
《絞殺》
カード個別のデザインの話の記事では、レアリティの高いカードやプレインズウォーカー、伝説のクリーチャーに焦点を当てることが多かった。しかしながら、低いレアリティのカードについての話を聞きたいというコメントをしてくれた諸君がいたので、クールな赤のコモン、《絞殺》の話をすることにした。これを掘り下げるにあたって準備していなかったのが、このカードのデザインがどれほど長くて入り組んだものだったかであった。この単純なコモンに、『ニューカペナの街角』の中で最も長いデザインの話があるとは誰が想像できただろうか。
〈暗黒街の一撃〉(バージョン#1)
{5}{R}
インスタント
クリーチャーやプレインズウォーカーのうち1体を対象とする。[カード名]はそれに5点のダメージを与える。それのコントローラーは土地1つを生け贄に捧げる。
このカードは最初、クリーチャーやプレインズウォーカーにダメージを与える(プレイヤーにはいかない)コモンの赤の直接ダメージ呪文だった。興味深いことに、最初は1マナではなく6マナだったのだ。誰も競技レベルの構築フォーマットで除去に6マナは支払わないので、明らかにこれはリミテッド専用にデザインされていた。ドラフトで初期に選ばれないような重いコモンの除去カードを入れて、除去がどうしてももう少し必要な人のために流れるようにすることはある。これが対象を取って破壊するのではなく生け贄を捧げることを強制するものになっているのは、3色環境であることと土地破壊には慎重であるべきだからだろう。生け贄強制は全体のマナを遅めるが、特定の「色対策」(特定の色を使えなくすること)にはならないのだ。
〈不法爆発〉(バージョン#2)
{4}{R}{R}
インスタント
密輸({3}, あなたの手札にあるこのカードを裏向きに追放する:宝物・トークン1つを生成する。それは「{T}, このアーティファクトを生け贄に捧げる:好きな色1色のマナ1点を加える。」を持つアーティファクトである。あなたは追放領域にあるこのカードをプレイしてもよい。)
クリーチャーやプレインズウォーカーのうち1体を対象とする。[カード名]はそれに5点のダメージを与える。宝物からのマナが[カード名]を唱えるために支払われていたなら、これはそのパーマネントのコントローラーに3点のダメージを与える。
次のこのバージョンでは、デザインの初期に存在した第6のメカニズムである密輸/smuggleが使われている。密輸のもとになったアイデアは、3色呪文をプレイできるようにするための色基盤を安定させる助けであった。『ニューカペナの街角』がモデルにしたセットである『タルキール覇王譚』には変異があり、プレイヤーが3色目を揃えるまでの間にも2/2クリーチャーを使うことができるようになっていた。展望デザイン・チームは陣営に依存しない、そして3色環境を成立させる助けになる、新しい第6のメカニズムを入れることを掘り下げていた。密輸メカニズムは不特定マナ3点を支払い、自分の手札にあるそのカードを追放することで宝物・アーティファクト・トークン1つを得られるというものだった。追放しているのは、宝物生成を1回しか使えないようにするためである。このカードは今回もクリーチャーやプレインズウォーカーに5点のダメージを与えるが、今回はこの呪文を唱えるのに宝物を使った場合のおまけがついていた。
〈不法爆発〉(バージョン#3)
{4}{R}{R}
インスタント
密輸(このターンに土地をプレイするのではなく、{2}を支払ってあなたの手札にあるこのカードを裏向きに追放して、宝物・トークン1個を生成してもよい。あなたは追放領域にあるこのカードをプレイしてもよい。)
クリーチャーやプレインズウォーカーのうち1体を対象とする。[カード名]はそれに5点のダメージを与える。宝物からのマナが[カード名]を唱えるために支払われていたなら、これはそのパーマネントのコントローラーに3点のダメージを与える。
次のこのバージョンでは1つだけ変更され、密輸のコストが不特定マナ3点から2点になっている。
〈不法爆発〉(バージョン#4)
{4}{R}{R}
インスタント
密輸({2}, あなたの手札にある[カード名]を公開し、あなたのライブラリーの一番上にあるカード3枚の下に置く:宝物・トークン1つを生成する。)クリーチャーやプレインズウォーカーのうち1体を対象とする。[カード名]はそれに5点のダメージを与える。[カード名]を唱えるために宝物からのマナが支払われていたなら、これはそのパーマネントのコントローラーに3点のダメージを与える。
次のこの呪文の反復工程でも、呪文の効果は同じで、密輸の処理だけが変わっている。今度の変更は多少大きい。呪文を追放するのではなく、ライブラリーの4枚目に置くのだ。これは、この能力を使う前に手札にあったカードを4ターン後に引くことになるので、カード1枚を失うことになる大きな弱点となるのだ。おそらくこの変更は、前のバージョンがあまりにも強かったことから施されたものだろう。
〈不法爆発〉(バージョン#5)
{4}{R}{R}
インスタント
クリーチャーやプレインズウォーカーのうち1体を対象とする。[カード名]はそれに5点のダメージ、それのコントローラーに2点のダメージを与える。
次のこのバージョンでは、密輸を取り除くことにしている。このセットにはすでに多くのものが入っていて、当時は色基盤も少し多かったのだ。この効果そのものはほぼそのままだが、対戦相手へのダメージは条件付きではなくなっている(そして3点から2点に減っている)。
〈不法爆発〉(バージョン#6)
{4}{R}{R}
インスタント
クリーチャーやプレインズウォーカーのうち1体を対象とする。[カード名]はそれに5点のダメージを与える。宝物からのマナが[カード名]を唱えるために支払われていたなら、これはそのパーマネントのコントローラーに3点のダメージを与える。
セットデザイン・チームはこの決定を再検討し、支払いのために宝物を使うことで利益を得られるバージョンに戻した。ただし、密輸はもうない。おそらく、赤緑のドラフト・アーキタイプの一部になった宝物テーマと関係づける必要があったからだろう。
〈有償の一撃〉(バージョン#7)
{3}{R}{R}
ソーサリー
クリーチャーやプレインズウォーカーのうち1体を対象とする。[カード名]はそれに4点のダメージを与える。この呪文を唱えるために宝物からのマナが支払われていたなら、代わりに、望む数のクリーチャーやプレインズウォーカーを対象とし、4点分をあなたの望むように割り振る。[カード名]はそれらにその割り振った点数のダメージを与える。
デザイン・チームはこのデザインの基本は採用したが、その数字や条件付き効果の調整を始めた。ダメージをそのパーマネントのコントローラーに与えるのではなく、ダメージを対象1つだけでなく任意の数の対象に分配できるようにした。この結果、ダメージは5点から4点に、マナ総量も1点減ることになった。
〈有償の一撃〉(バージョン#8)
{2}{R}
インスタント
クリーチャーやプレインズウォーカーやプレイヤーのうち1つを対象とする。[カード名]はそれに3点のダメージを与える。それがプレイヤーなら、宝物・トークン1つを生成する。(それは「{T}, このアーティファクトを生け贄に捧げる:好きな色1色のマナ1点を加える。」を持つアーティファクトである。)
これはこの呪文唯一の、何でも対象にできるバージョンである。また、宝物の報奨カード(宝物・トークンを使う助けになるカード)から宝物の前段カード(宝物・トークンを得る助けになるカード)に変わっている。
文章を見て、そこにデザイン記号が入っているところを見るに、これはデザインのかなり後期であり、おそらくはプレイデザインがリミテッド環境を調整する助けとして何か異なることを試していたのだろうと思われる。
〈黄金の絞殺紐〉(バージョン#9)
{R}
インスタント
クリーチャーやプレインズウォーカーのうち1体を対象とする。[カード名]はそれに4点のダメージを与える。それのコントローラーは宝物・トークン1つを生成する。(それは「{{T}, このアーティファクトを生け贄に捧げる:好きな色1色のマナ1点を加える。」を持つアーティファクトである。)
プレイデザインが調整を始め、リミテッド以上に構築を意識においたバージョンを作った。このバージョンは、赤1マナで4点というのは追加コスト、この場合は対戦相手に宝物・トークン1個を与えるというもの、があれば許容できるのかを試していた。これは少しばかり強すぎたのだろう、ダメージを3点に減らし、宝物のおまけをなくしている。
ここから得られたものは、コモンを作ることは神話レアを作るのと同じぐらい複雑であり、同じぐらい多くの調整が必要となることがあるのだ。
《産業のタイタン》
コモンの話をしたので、今度は神話レアの話をしよう。
〈勲章を得た役人〉(バージョン#1)
{2}{G}{G}
クリーチャー — 犬・兵士
5/1
[カード名]は、盾カウンター3個が置かれた状態で戦場に出る。
装甲{3}
毎ターン、[カード名]は可能なら攻撃する。
このカードは最初、非常に殺しにくい5/1だった。装甲は、護法の初期名である。我々は初期に、カード1枚に大量の盾カウンターを置くことはしないと決めていた。(印刷された製品では、複数の盾カウンターが置かれた状態で戦場に出るカードは1枚だけである。)そのため、3個置くということが神話レアである理由なのだ。
〈覚悟した工作員〉(バージョン#2)
{2}{G}{G}
クリーチャー — 猫・兵士
5/1
[カード名]は、盾カウンター3個が置かれた状態で戦場に出る。(対戦相手が盾カウンターが置かれているクリーチャーを対象にした時、または、これがダメージを受けたなら、代わりにこれから盾カウンター1個を取り除く。)
毎ターン、[カード名]は可能なら攻撃する。
{1}, [カード名]の上から盾カウンター1個を取り除く:アーティファクトやエンチャントのうち1つを対象とする。それを破壊する。
次のこのバージョンは、盾カウンターの2つ目の使い方が提供されている。盾カウンターを使って、アーティファクトやエンチャントを除去できるのだ。この能力を得るために、このカードは護法を諦める必要があった。この変更は、おそらく、盾カウンターの使い道を広げる試みからのものだろう。高いレアリティでは、新しいメカニズムの限界を広げることがよくあるのだ。
〈覚悟した工作員〉(バージョン#3)
{X}{G}{G}{G}{G}
クリーチャー — 猫・兵士
5/5
[カード名]は、盾カウンターX個が置かれた状態で戦場に出る。(盾が置かれているクリーチャーが破壊されるかダメージを受けるなら、代わりに、その上にある盾カウンター1個を取り除く。)[カード名]が戦場に出たとき、あなたはX点のライフを得る。
次のこのバージョンでは、派手さを増すことを試みている。盾カウンター3個の代わりにX個、5/1の代わりに5/5になった。そして、「攻撃強制」の欠点はなくなっている。また、カードがXを使うので、それの追加のボーナスとしてライフ獲得を与えた。ライフ獲得は漸進的報奨なので、持たせるのが簡単なのだ。
〈摩天楼の精霊〉(バージョン#4)
{7}{G}{G}{G}
クリーチャー ― エレメンタル
10/10
[カード名]は打ち消されない。
速攻
[カード名]は、盾カウンター2個が置かれた状態で戦場に出る。(盾が置かれているクリーチャーが破壊されるかダメージを受けるなら、代わりに、その上にある盾カウンター1個を取り除く。)
1体以上のクリーチャーがあなたを攻撃するたび、攻撃クリーチャー1体を対象とする。[カード名]はそれと格闘を行う。
おそらく、プレイテストの結果、大量の盾カウンターを持たせてもまったく面白くないとわかったのだろう。単純に対処できなくなるだけだったので、デザインは盾カウンターを2個に減らしたのだ。そうなると、このカードのそれ以外の部分をもっとエキサイティングにしなければならない。まず最初に、サイズを2倍にした。能力を追加した。(「打ち消されない」と速攻)そして最大の追加は、対戦相手が攻撃してきたら実質そのうち1体を殺せるという誘発型能力による格闘だった。当然、それら全てに見合うだけのコスト、{7}{G}{G}{G}になっている。また、エレメンタルになったのもこのバージョンだ。
〈摩天楼の精霊〉(バージョン#5)
{5}{G}{G}{G}
クリーチャー ― エレメンタル
9/9
あなたが[カード名]を唱えたとき、土地1つと、アーティファクトやエンチャントや土地のうち1つを対象とする。あなたは5点のライフを得、カード1枚を引き、その前者をアンタップし、これは速攻を持つ7/7のクリーチャーになり、その後者を破壊する。
トランプル、到達
攻撃のたびにクリーチャーを殺すのはあまりにも強く、相手をあまりにも苛つかせることがわかったので、デザイン・チームは新しいデザインを試すことにした。別の能力を持たせ、サイズをいくらか変え、大量の「戦場に出たとき」の効果を与えた。
〈摩天楼の精霊〉(バージョン#6)
{5}{G}{G}{G}
クリーチャー ― エレメンタル
8/8
あなたが[カード名]を唱えたとき、以下から2つを選ぶ。
・[カード名]は、盾カウンター1個が置かれた状態で戦場に出る。
・[カード名]が戦場に出たとき、クリーチャーやプレインズウォーカーのうち1体を対象とする。これはそれに自身のパワーに等しい点数のダメージを与える。
・各対戦相手はそれぞれ、アーティファクト1つとエンチャント1つと土地1つを生け贄に捧げる。
・あなたは8点のライフを得る。
トランプル、到達
1つ前のデザインは、少しばかり「ごった煮」(開発部語で、お互いに必然的なシナジーを持たせることではなくその量で印象付けようとするような大量の能力を単純に持たせたカードのこと)すぎるように見える。チームは次のこのバージョンを、生ける命令のようなクリーチャーにした。つまり、4つの「入場」効果のうち2つを選べるようにしたのだ。この4つの効果は、状況によって有用なものになっており、それは命令のモードを輝かせるための鍵でもある。興味深いことに、この4つのうち2つは最終的に、柔軟性の少ないバージョンになって印刷された製品でも使われている。印刷されたカードでは、盾カウンターを置く効果とライフ獲得には対象の選択が与えられている。(対象を取るライフ獲得は、多人数戦フォーマットでは政治の道具として使われうるので都合がいいのだ。)
〈摩天楼の精霊〉(バージョン#7)
{5}{G}{G}{G}
クリーチャー ― エレメンタル
8/8
トランプル、到達
あなたがこの呪文を唱えたとき、以下から2つを選ぶ。
・[カード名]は防御カウンター1個が置かれた状態で戦場に出る。
・トランプルを持つ4/4の緑のサイ・戦士・クリーチャー・トークン1体を生成する。
・アーティファクトやエンチャントや土地のうち1つを対象とする。それを破壊する。
・あなたは8点のライフを得る。
このバージョンは、印刷されたバージョンにかなり近づいている。4つのモードはどれも最終の効果を使っているが、その多くの実装は異なっている。マナ・コストやパワーとタフネスは、おそらくプレイデザインの調整によって減らされた。大量の調整を経たが、このカードは最終的にとてもクールなカード・デザインで仕上がっている。
《異端の法務官、ウラブラスク》
『カルドハイム』と『神河:輝ける世界』には、それぞれ法務官がいた。『ニューカペナの街角』にも当然いるに決まっている。ファイレクシアの法務官のデザインの例に倣い、単純なテンプレートに則っている。能力を2つ持ち、うち1つは自分が利益を得るもの、そしてもう1つはその鏡写しとなる対戦相手に不利益をもたらすものだ。すべてではないが多くは、クリーチャー・キーワードも1つ持っている。
〈反乱軍の法務官、ウラブラスク〉(バージョン#1)
{4}{R}{R}
伝説のクリーチャー ― ファイレクシアン・法務官
6/6
威迫
あなたのアップキープの開始時に、あなたのライブラリーの一番上にあるカード1枚を追放する。このターン、あなたはそのカードを唱えてもよい。
各対戦相手のアップキープの開始時に、そのプレイヤーは自分のライブラリーの一番上にあるカード1枚を追放する。[カード名]はそのプレイヤーに、そのカードのマナ総量に等しい点数のダメージを与える。
このデザインは、自分が有利になる能力を毎ターンの衝動的ドロー(開発部語で、自分のライブラリーの一番上にあるカードを追放し、そのターンの間それを唱えられるようにすること)にするというアイデアが元になっている。
大きな疑問となったのが、衝動的ドローの鏡写しは何なのか、ということだった。最初の試みは、対戦相手のカードを追放することで、これは、まず、それを引くことを防ぐ、そして、ウラブラスクが与えるダメージを決める、という2つの意味があった。ウラブラスクが威迫を持つのは、まあ、見た目が怖いからである。
〈反乱軍の法務官、ウラブラスク〉(バージョン#2)
{4}{R}{R}
伝説のクリーチャー ― ファイレクシアン・法務官
6/6
威迫
あなたのアップキープの開始時に、土地でないカード1枚が公開されるまで、あなたのライブラリーの一番上から1枚ずつ公開していく。このターン、あなたはそのカードを唱えてもよい。
各対戦相手のアップキープの開始時に、そのプレイヤーは土地でないカード1枚が公開されるまで、自分のライブラリーの一番上から1枚ずつ公開していく。[カード名]はそのプレイヤーに、そのカードのマナ総量に等しい点数のダメージを与える。
不利益な効果を強めるために、両方の能力が、土地でないカードを見つけるまで追放するものになった。マナ総量が6点なので、これは利益な効果を強めていると思う。
〈反乱軍の法務官、ウラブラスク〉(バージョン#3)
{R}{R}{R}{R}
伝説のクリーチャー ― ファイレクシアン・法務官
4/4
威迫
各ターン、あなたがあなたの1つ目の呪文を唱えるたび、これは各対戦相手にそれぞれそのマナ総量に等しい点数のダメージを与える。各ターン、対戦相手1人が自分の1つ目の呪文を唱えるたび、これはそのプレイヤーにそのマナ総量に等しい点数のダメージを与える。
次のこのバージョンは、全く違う能力を持っている。自軍は、毎ターン呪文を唱えることで、対戦相手にダメージを与えるという利益が得られる。そして、相手が毎ターン呪文を唱えることを罰しているのだ。このデザインは最終的に少しばかり「単なるダメージ」すぎたと思われる。
〈反乱軍の法務官、ウラブラスク〉(バージョン#4)
{1}{R}{R}{R}
伝説のクリーチャー ― ファイレクシアン・法務官
3/3
あなたのアップキープの開始時に、あなたのライブラリーの一番上にあるカード1枚を追放する。このターン、あなたはそのカードをプレイしてもよい。
各対戦相手のアップキープの開始時に、そのプレイヤーがそのターン次にカードを引くなら、代わりにそのプレイヤーはあなたのライブラリーの一番上にあるカード1枚を追放する。このターン、そのプレイヤーはそのカードをプレイしてもよい。
このバージョンでは、衝動的ドローに戻っているが、不利益なバージョンを作る良い方法を見つけている。自分は毎ターン1枚多く唱えられる可能性があるが、対戦相手は毎ターン引いたカードを唱えなければ失ってしまうのだ。鏡写しになっているこれらの能力は最終的に印刷されたカードに採用されているが、マナ総量やキーワード能力、パワー/タフネスは何度も変更されていった。
チームは何度も速攻や威迫を試し、最終的に速攻で行くことにした。さまざまなマナ総量やパワー/タフネスの組み合わせも実験したが、最終的に{3}{R}{R}で4/4に落ち着いたのだった。
《狩りに出るビビアン》
先週、エルズペスの話をした。オブ・ニクシリスには、話して面白いほどの変更はなかった。一方、ビビアンは、話したくなるような面白い起源があった。
〈ビビアン〉(バージョン#1)
{4}{G}{G}
伝説のプレインズウォーカー ― ビビアン
初期忠誠度 ― 5
+2:あなたのライブラリーの一番上にあるカード7枚を見る。あなたはその中からクリーチャー・カード1枚を公開してあなたの手札に加えてもよい。残りをあなたのライブラリーの一番下に無作為の順番で置く。
-3:あなたの手札にあるクリーチャー・カード1枚を公開してもよい。クリーチャーやプレインズウォーカーのうち1体を対象とする。[カード名]はそれに、そのカードやあなたがコントロールしているクリーチャーの中で最大のパワーの値に等しい点数のダメージを与える。
-8:あなたの手札にある望む枚数のクリーチャー・カードを戦場に出す。ターン終了時まで、あなたがコントロールしているすべてのクリーチャーは+3/+3の修整を受け、トランプルと速攻を得る。
ビビアンの能力一式はクリーチャーを軸としたものなので、最初の試みではクリーチャー関連の効果を含む伝統的デザイン(小プラス能力、小マイナス能力、大マイナスの奥義)だった。「クリーチャーを自分のライブラリーから手札に持ってくる」能力1つ、「自分の手札にあるクリーチャーを使う」能力1つ、「手札にあるクリーチャーを戦場に出」して「自軍のクリーチャーを強化する」能力1つである。どれもいかにもビビアンだ。
〈ビビアン〉(バージョン#2)
{4}{G}{G}
伝説のプレインズウォーカー ― ビビアン
初期忠誠度 ― 5
+2:あなたのライブラリーの一番上にあるカード5枚を公開する。これにより公開されたすべてのクリーチャー・カードをあなたの手札に、残りを無作為の順番であなたのライブラリーの一番下に置く。
-X:あなたの手札にありマナ総量がX以下であるクリーチャー・カード1枚を戦場に出す。そうしたとき、対戦相手がコントロールしているクリーチャー1体を対象とする。その戦場に出したクリーチャーは自身のパワーに等しい点数のダメージをその対象にしたクリーチャーに与える。
-8:あなたのライブラリーからクリーチャー・カード1枚を探し、+1/+1カウンター10個が置かれた状態で戦場に出す。その後、ライブラリーを切り直す。
ライブラリーの能力が、衝動(開発部語で自分のライブラリーの一番上にあるカードN枚を見て何かを取ること)から公開したクリーチャーすべてを取れる能力に変更されている。この2つ目の能力は、前のバージョンの2つ目と3つ目の能力を組み合わせたものである。奥義は新しい派手な能力で、ライブラリーからクリーチャー1体を出して巨大にするものだ。この一連の変更は、このカードを強力で読むだけですごいものにするための強化である。
〈ビビアン〉(バージョン#3)
{4}{G}{G}
伝説のプレインズウォーカー ― ビビアン
初期忠誠度 ― 5
+2:カード5枚を切削する。これにより切削された各クリーチャー・カードをあなたの手札に戻す。
+1:アーティファクトやエンチャントや墓地にあるカードのうち1つを対象とする。それのオーナーは、それの:マナ総量に等しい点数のライフを得る。その後、それを追放する。
-X:あなたの手札にありマナ総量がX以下であるクリーチャー・カード1枚を戦場に出してもよい。そのクリーチャーが戦場に出たとき、クリーチャーやプレインズウォーカーのうち対戦相手がコントロールしている1体を対象とする。これはそれに自身のパワーに等しい点数のダメージを与える。
このプラス能力は、まずカードを切削するようにしたことで単純化されている。セット内の墓地戦略を成立させる助けにする意図もあったかどうかはわからない。この奥義はある種の脅威を除去する助けとして使われる新しい小プラスの忠誠度能力に置き換えられた。クリーチャー相手に何もできないのは少しばかりビビアンらしくない。(ただし墓地にあるカードはクリーチャーであり得る。)
〈都市の追跡者、ビビアン〉(バージョン#4)
{4}{G}{G}
伝説のプレインズウォーカー ― ビビアン
初期忠誠度 ― 5
+2:あなたのライブラリーの一番上にあるカード5枚を公開する。その中にある好きな枚数のクリーチャー・カードをあなたの手札に、残りをあなたのライブラリーの一番下に無作為の順番で置く。
+1:あなたはクリーチャー1体を生け贄に捧げてもよい。そうしたなら、あなたのライブラリーからその生け贄に捧げたクリーチャーのマナ総量に1を足した値に等しいマナ総量を持つクリーチャー・カード1枚を探し、戦場に出し、その後、ライブラリーを切り直す。
-7:「あなたのターンの間、あなたがコントロールしているすべてのクリーチャーは警戒とトランプルと破壊不能と速攻を持つ。」という紋章を得る。
1つ目の能力は、1つ前のバージョンに戻されている、ただし興味深いことに、印刷されたバージョンでは前のものに戻っている。これは、このカードで『新たなるファイレクシア』にあったカード《出産の殻》に見られた「出産の殻」能力を取り上げた初めてのバージョンである。
さらに、派手な紋章の新しい奥義も与えられている。印刷されたバージョンでは、最初の2つの能力の忠誠度コストが入れ替わり、さらに奥義は4/4のサイ・戦士・クリーチャー・トークンを生成する小さな忠誠度能力に入れ替えられた。プレイデザインがプレインズウォーカーの作り方を大きく変えようとしていることを知っているので、奥義をなくすのはいい気分転換だろう。
こうして進んでいく
『ニューカペナの街角』のカードのデザインに関する話を楽しんでもらえたなら幸いである。いつもの通り、この記事や話題にしたカード、あるいは『ニューカペナの街角』全体について、諸君からの感想を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(Twitter、Tumblr、Instagram、TikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、一問一答記事で『ニューカペナの街角』に関する質問にお答えする日にお会いしよう。
その日まで、あなたがこのカードであなた自身の物語を生み出しますように。
(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)
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