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Making Magic -マジック開発秘話-
かなりの人物
2020年11月9日
私の最初の『統率者レジェンズ』プレビュー記事の中で、この製品の展望の1つとして、伝説のクリーチャー(やプレインズウォーカー)の選択において郷愁に基づいて多くの選択というものを挙げた。今日の記事では、それらの登場人物の中から何人かの歴史を見ていこう。
???
最初の登場人物を推測してもらうために、ちょっとしたクイズを出そう。3枚のカードのデザインの元になったフレイバー・テキストを持ち(そのうち1枚は『統率者レジェンズ』の伝説のクリーチャーだ)、そしてまた別のカードのフレイバー・テキストでも言及されているカードは何か。
クラーク
マジックのデザイナーとしての私の仕事の1つが、マジックをプレイしているさまざまなユーザーの動向を掴み続けることである。そのため、私はこれまでに受けた多くの要望のリストを作っている。何年も前に受けたそのような要望の1つが、コイン投げをするデッキを助けるカードである。『アラビアン・ナイト』(マジックの最初のエキスパンション)で、リチャード・ガーフィールド/Richard Garfieldはコイン投げをさせて効果を決めるカードを3枚作った。それ以来、開発部はときどきコイン投げカードを入れてきたが、赤とアーティファクトのカードに存在するということを除いては、メカニズム的にコイン投げのカードをメカニズム的につなぎ合わせるものはあまりなかったのだ。コイン投げのファンは、あらゆるコイン投げカードを1つのデッキに入れることを推奨するようなものが欲しいと訴えていた。そこで、初代『ミラディン』で、私は珍妙なアーティファクトのデザインを探していて、こんなカードを思いついたのだった。
〈幸運のコイン〉
{1}
アーティファクト
あなたがコイン投げをするたび、代わりにコインを2枚投げ、どちらを無視するかを選ぶ。
『ミラディン』のデベロップ中に、これには3つの変更が加えられた。
コストは{1}から{2}になり、テンプレートは整頓され、伝説のアーティファクトになった。3つ目の変更は、同時に複数枚戦場に並んでいると強すぎるということから、それを防ぐための簡単な方法として伝説のカードにしたものである。そのセットのリード・デベロッパーのランディ・ビューラー/Randy Buehlerは私のところを訪れてこの変更に問題はないかと聞いてきた。私は問題ないと答えた。このカードのフレイバー付けがなされたとき、このセットのゴブリンの氏族が名前のもとにした、クラークという名前のゴブリンに言及することになった。(そのゴブリンの氏族はクラーク族という。)そして、このカード名は思いつく限りでもっともバカバカしい、《クラークの親指》という名前になったのだ。このカードは特にカジュアルなユーザー層に向けてデザインされたものなので、名前はバカバカしければバカバカしいほどいいと考えたのである。
それから何年も経って、『Unstable』のデザインの時期になる。このセットではサイコロを振ることが重要な役割を果たしており、私はサイコロを振るカードを組み合わせてプレイすることを推奨するカードを探していた。そこで私は、コイン投げに使った同じデザインをサイコロにも使えるとひらめいた。単にそれを示すおかしい名前だと感じられたので、プレイテスト名を〈クラークのもう一本の親指〉にした。その名前は定着し、そのまま変更することはなかったのだ。(〈クラークのもう一本の親指〉がいかにしてバブロヴィアにたどり着いたのかはまたいつか話そう。)
『Unstable』が発売されてから、奈落/The Pitでは、親指なしのクラークというカードを作る必要がある、という冗談が飛び交うようになった。『統率者レジェンズ』向けの伝説のクリーチャーをデザインするにあたって、デザイン・チームは当然作ることを決定した。もちろん、これは彼の親指と相性がいいものでなければならない。サイコロを振るのは銀枠世界のものであり『統率者レジェンズ』は黒枠の製品なので、このカードはコイン投げに焦点を当てることになった。このセット内の他のテーマとうまく噛み合うようにするため、呪文を唱えることと関連付けたのだろう。このカードのフレイバー・テキストが、〈クラークのもう一本の親指〉のフレイバー・テキストへのオマージュになっていることも指摘しておきたい。
コイン投げファンの諸君、クラークを楽しんでくれたまえ。
ハラナとアレイナ
ハラナとアレイナは、イニストラード次元のウルヴェンワルドで暮らす狩人である。アレイナは初代『イニストラード』ブロックの第2セット『闇の隆盛』のフレイバー・テキストで登場している。しばしば、フレイバー・テキストの筆者は世界を見る視点を作るために人物を創作することがある。アレイナは、緑のカード用の現場の人物として作られたのだろう。
そのブロックの最終セットである『アヴァシンの帰還』で、アレイナにはハラナというパートナーがいるということが明らかになった。この2人は、新しく3枚のカードのフレイバーで登場していた。
この時点では、彼女たちはまだ無名の人物だった。そして当時は伝説のクリーチャーを作る数も少なかったので、彼女たちの中からカード化するということを真剣に検討することすらなかった。
そして、話は『イニストラードを覆う影』で次にイニストラードを訪れたときのことになる。キンバリー・クレインズ/Kinberly Kerinesが人狼についての小説を書くにあたり、ハラナとアレイナが物語(「銀の月の下で」)の素晴らしい主役になると気がついのだ。キンバリーはその後、別の物語(「エムラクール、来たる」)でも彼女たちを再登場させた。露出が増えるにつれて、彼女らのファンが増え始めた。マジックのファンは、自分が意識しているキャラクターがカードで登場するのを喜ぶものであり、特にそのキャラクターを描いた伝説のクリーチャー・カードであればなおさらである。問題は、それらの物語が書かれたのが工程のかなり後になってからであり、ハラナやアレイナのカードを『イニストラードを覆う影』や『異界月』で作ることができる時期は過ぎていたことだった。しかし、彼女らをカードとして作ることに大きな需要があることはわかった。
『統率者レジェンズ』には、彼女たち、そしてこの2人にテーマ的に最高にふさわしいメカニズムである共闘を収録することができる。この2枚のカードは、それぞれが違う形で大型クリーチャーを扱い、組み合わせて統率者として使う楽しいペアになるようにデザインされている。それが、ハラナやアレイナをカード化するのにこれほど長い時間がかかった理由である。
アクローマ、ジェスカ、カマール
(注:ヴォーソス諸君、この話はかなり省略したものである。)
『オデッセイ』ブロックの物語で、カマールという人物が初登場した。
カマールは、赤魔法を使うことで知られるピット・ファイターだった。(ピット・ファイターとは、観客の前で戦う人々のことである。)我々は彼を最終的に、タップすると《稲妻》が使える、6/1の速攻持ちクリーチャーにした。カマールにはジェスカという妹がいた。彼女は『ジャッジメント』で伝説のクリーチャー・カードとしてカード化されている。『オデッセイ』の物語上で、《ミラーリ》という強力なアーティファクトの影響下で、カマールはジェスカを自分の剣でひどく傷つけた。
カマールは『オンスロート』ブロックでも主役だったが、『オデッセイ』の物語の最後に抜本的な変化を経ることになった。彼はピット・ファイターを辞め、ドルイドになったのだ。
我々はこの変化を、赤ではなく緑の新しいカマールのカードを作ることで表現した。カマールが土地との絆を得たので、我々は彼に土地をクリーチャー化する能力と、クリーチャーを強化する能力を与えた。ちなみに、このカードの最初のバージョンは、「あなたがコントロールしているすべての土地・クリーチャーは+2/+2の修整を受ける」という能力を持ち、名前は〈土地の王、カマール〉だった。
『オンスロート』ブロックの物語では、カマールの新しい敵として、具現化の力を持つイクシドールという男が登場した。彼が具現化させたものの1つが、アクローマという名の強力で美しい天使だった。また、ジェスカは傷から回復したが、毒の手を持つ女性へと変貌してしまった。彼女は自らフェイジと名乗った。『オンスロート』ブロック第2セットの『レギオン』で、我々はアクローマとフェイジのそれぞれのカードを作った。
その数か月前、私は、ダメージを与えたプレイヤーを殺すクリーチャーをデザインしていた。そのデザインをどう使うべきかは決めていなかったので、使うべき時が来るまで脇に置いておいたのだ。最終的に、それはフェイジに最適だった。アクローマのデザインはそれよりもずっと論争を呼ぶものだった。クリエイティブ・チームと私は、物語に合ったカードをデザインしようとしていた。アクローマは理想なので、死なない。描くべきは、死の接触を持つ女性と、死ぬことがない女性との間の対立だった。私は、死亡するたびに戦場に戻るようなアクローマをデザインしたが、ビル・ローズ/Bill Roseは単純に非常に強く見えるクリーチャーのほうがずっといいと考えていた。最終的に、我々は開発部後で言う「流し台」デザイン、つまりただ大量のキーワードを持つクリーチャーを作ることにした。(アクローマの制作について詳しく知りたい諸君は、私がアクローマ特集の際に書いた「Angels Among Us」〈リンク先は英語)を参照のこと。特集についてはこのあと説明する。)アクローマとフェイジはどちらも大人気のカードとなった。
物語の最終章、『スカージ』で、アクローマとフェイジ、それに第3のキャラクターであるザゴルカ/Zaorkaと融合して新しいキャラクター、《邪神カローナ》になる。おそらく、このカードは斬新で奇妙なものを作ろうと考えてブライアン・ティンスマン/Brian Tinsmanがデザインしたものだろう。ただしそのカードは大人気とはならず、アクローマやフェイジの素晴らしい再来とはいかなかった。(いずれ、我々は必ずやもっと良いカローナのデザインを作るべきだ。)
そして数年後、『ラヴニカ』ブロックのデザインに到る。マジック公式ウェブサイトでは、隔週で特集週を設けていた。そして私はそこにユーザーを関与させたいと考えた。我々は最も人気があると思われる伝説のクリーチャー・カード64枚を選び、巨大な1対1人気投票で戦わせることにした。63日間に及ぶ投票戦を勝ち抜いたのは、アクローマだった。我々はこのイベントの勝者をテーマとした特集週を組むと約束していた。(これが、先ほど私が言ったアクローマの記事を書いた理由である。)
それと同時期に、我々はボーナス・シートが存在する『時のらせん』のデザインを手掛けていた。アクローマが勝者となったので、我々は彼女をボーナス・シートに入れることにした。そして、『次元の混乱』で、過去のキャラクターの別バージョンを作っていて、彼女の赤単色版を作ることにした。(〈怒りのアクローマ〉と命名された。)重要なのは白のアクローマとの差別化だったので、我々は赤のクリーチャーに速攻を持たせたくないというところに注目した。我々は、飛行とトランプル、それに2色へのプロテクションを持つことは維持すべきだと考えた。そして、彼女を赤らしくするために、火吐きと「打ち消されない」の能力を持たせた。さらに速攻を持たせない代わりとして、アクローマだと開示したターンに攻撃できるように変異を持たせた。
そして、アクローマのサイクルを『未来予知』で完結させることにしたが、未来らしい形でアクローマを作る方法はわからなかった。我々が選んだ解決策は、彼女がもういないけれども忘れられてはいないということを強調するため、記念碑という形にするというものだった。そのアーティファクトは、彼女のもとのデザインの持つ能力を自軍のすべてのクリーチャーに与えるのだ。
そして『統率者レジェンズ』に到る。我々は、この3人すべてを再登場させようと決めた。アクローマは、最初のカードをもとに、統率者として少しだけ強化する調整を加える。飛行、先制攻撃、警戒、トランプルはそのままに(速攻やプロテクションはなし)、自軍のクリーチャーをそれが持つ常盤木キーワード(と共闘)に応じて強化する。キーワードが多ければ、強化する幅も大きくなるのだ。
カマールは最後に印刷されたバージョンである《クローサの拳カマール》を微調整した。土地をクリーチャー化し、それだけでなく警戒と破壊不能と速攻を与える。警戒はマナとしても使えるようにするため、破壊不能は攻撃することをためらわなくてもよくするため、速攻はそのターンにどの土地をプレイしたかを覚えておかなくてもよくするためである。カマールは今回も自軍に+3/+3とトランプルを与えるが、起動型でなく誘発型の能力にした。全体として前回よりも少し強くなっていたので、まな・コストを{4}{G}{G}から{6}{G}{G}に上げた。
ジェスカはこれまでプレインズウォーカー・カードにはなっていななかった(ジェスカ自身として、フェイジとして、あるいは《邪神カローナ》の一部として、伝説のクリーチャーにはなっている)ので、もっとも込み入ったデザインだった。物語上、ジェスカはプレインズウォーカーになったので、彼女をこのセットの2人のプレインズウォーカーのうち1人にするというのはクールだと考えた。どちらも統率者として使えるようにする計画だったので、それが前提となった。カード名の《三度の再誕、ジェスカ》は、彼女が物語上で得た別名である。(彼女は死んでからフェイジになり、もう一度死んでからカローナになり、そしてまた死んでからジェスカとして、プレインズウォーカーとして蘇ったのだ。)彼女には、統率者をプレイすることに関連する常在型能力を与えた。彼女の忠誠度能力は2つともカード名にある「三度」に基づき、3という数字に関連する効果になっている。彼女は赤単色なので、どちらの効果もダメージに関連するものだ。
これらの、『オンスロート』の物語をもとにした3人を楽しんでもらえれば幸いである。
「皆は幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし」
本日はここまで。『統率者レジェンズ』で過去からのキャラクターを伝説のクリーチャー(やプレインズウォーカー)にしたという話を楽しんでもらえていれば幸いである。いつもの通り、今日の記事や話題にしたカード、あるいは『統率者レジェンズ』全体について感想があれば、メール、各ソーシャルメディア(Twitter、Tumblr、Instagram、TikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、カジュアルプレイ向けのデザインについて語る日にお会いしよう。
その日まで、作ったときの我々と同じようにあなたがキャラクターたちとのプレイを楽しめますように。
(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)
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