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Making Magic -マジック開発秘話-
ラバイア値 その2
2018年11月26日
先々週、私は諸君に、私が自分のブログで特定の次元にスタンダードで使えるセットで再訪する可能性を示す指標として使っているラバイア値を紹介した。次元が大量にあり、1回ですべてを説明することはできなかったため、今回がその記事の後半ということになる。最初の記事でラバイア値について、また評価基準について説明しているので、まだ読んでいない諸君はぜひ戻って読んできてくれたまえ。
メルカディア
《Cliffside Market》 アート:Matt Stewart |
過去の訪問:『メルカディアン・マスクス』
人気:不評
『メルカディアン・マスクス』当時はまだ市場調査で次元について調べていなかった。もし調べていたら、これがもっとも評価の低い世界になっていた可能性はある。当時不評だったし、私はうまく熟成されたとも考えていない。神河やローウィンについてはソーシャルメディア上でときどき質問されることがあるが、メルカディアへの再訪についてプレイヤーが尋ねているのはほとんど目にしないのだ。
メカニズム的特徴:貧弱
この世界とメカニズムとのつながりは非常に緩いものだった。世界にはレベルや傭兵がいて、それは可能な限り強固に繋がっていた。そのどちらのメカニズムも再録したいものではないので、再訪するとなるとメカニズム的には最初から作り直す必要がある。
クリエイティブ的特徴:貧弱
『メルカディアン・マスクス』の平地のイラストを紹介しよう。
《平地》 アート:Edward P. Beard, Jr. |
描かれている、竜巻のように見えるものを見てもらいたい。これは、上下逆さまの山なのだ。どうして山が上下逆さまになることができるのだろうか。それは「ここでは物事の働きが違う」からである。この世界では、あらゆるものが(ときどき文字通り)逆になっているのだ。ところでスクイーたちこの世界のゴブリンに関する話だが、この次元のゴブリンは賢いのだ。この世界はクリエイティブ的に乱雑で、再訪するには全ての筋を通すための大掛かりな作業が必要になるだろう。
拡張の余地:最小
我々は世界の多くを、その世界の未知の部分を匂わせながら構築している。しかし、メルカディアはそうではない。再訪したとして設定されている中のどの部分を使うことができるように温存されているのかもわからないし、どんな新しいものが追加できるのかもまったくわからない。
物語の継続性:小さな物語
ウェザーライト・サーガの終わりまでに、始められた物語のいくつかは終結を迎えており、この次元と現在のマジックの物語をつなぐものは何も存在しない。
ラバイア値:9
ラバイア以降で、一番再訪がありえないと思われる次元がこれである。
新ファイレクシア(旧名ミラディン)
《ノーンの領地》 アート:Igor Kieryluk |
過去の訪問:『ミラディン』『ダークスティール』『フィフス・ドーン』『ミラディンの傷跡』『ミラディン包囲戦』(以上ミラディン)、『新たなるファイレクシア』(新ファイレクシア)
人気:好評(ミラディンのほうが新ファイレクシアより少し上)
プレイヤーはミラディンも新ファイレクシアも好きだが、前者のほうが少しだけ後者よりも上である。我々のデータからまとめられたものは次の通り。ユーザーはファイレクシア人が好きだが(ただし、経験を積んだプレイヤーの方がその傾向が強い)、彼らが占領した後の世界よりも彼らが世界を占領することのほうが好きなのだ。単純に、彼らが最初の爪痕をある世界につけることのほうが、彼らが占領後に内輪で争うのを見るよりも楽しいということだろう。
メカニズム的特徴:強力
ミラディンはアーティファクトと強い関わりがあり、新ファイレクシアは(アーティファクトと関わりがある)ファイレクシア人と強い関わりがある。アーティファクトやファイレクシア人には様々なメカニズム的実装が存在しており、再訪する時に使えるデザインの道具が大量に存在する。それらの道具の多くは過去に問題を起こしているので(アーティファクト・セット、お前のことだ)、手がけるべきことは大量にあるけれども、その一部は危険な領域を侵しているということは明記しておこう。
クリエイティブ的特徴:強力
ファイレクシア人は、マジックの最古の敵である。(『アンティキティー』で登場している。)人気のある次元への彼らの侵略は、クリエイティブ・チームに多くのやるべきことを与える。最大の問題は、ファイレクシア人がビジュアル的にいくらか強烈であり、それに埋め尽くされた世界というのは実装するにあたっていくらかの小細工が必要になることである。
拡張の余地:中等
ファイレクシア人が他の世界を侵略するという意味での余地は大量にあるが、すでに制圧した世界への再訪の余地はそうでもない。上述の通り、再訪に関して最も求められているのは、ファイレクシアでないものをセットに入れる方法を見つけることである。
物語の継続性:重要な物語
ファイレクシア人や新ファイレクシアに関係がある多くの登場人物、多くのプレインズウォーカーが存在する。新ファイレクシアを再訪することになるだろうと考えている最大の理由の1つが、それと現在の物語が深く関わっていることである。
ラバイア値:5
新ファイレクシアは興味深い矛盾である。再訪は、メカニズム的、クリエイティブ的の両面で多くの問題に取り組む必要があるが、永遠に再訪しないとするにはあまりにも多くのプレインズウォーカーの物語にあまりにも深く関わってしまっているように思えるのだ。
ファイレクシア
《The Fourth Sphere》 アート:Dave Kendall |
過去の訪問:『アンティキティー』(ほのめかしのほうが多い)、『ウルザズ・サーガ』
人気:好評
プレイヤー、特に経験を積んだプレイヤーは、ファイレクシア人が好きだ。ファイレクシアはファイレクシア人の最初の故郷であり、また聞きで聞くには非常にクールである。ファイレクシアはマジックにおいて最もダンテの地獄に近いものなので(実際、この次元は文字通りダンテの地獄をモデルにしている)、おそらく、プレイヤーはファイレクシアを訪問することを実際よりも楽しいことだと思っているのだろう。
メカニズム的特徴:平均
ファイレクシア人には多くのメカニズム的つながりがあるが、ファイレクシアにはそれほど時間をかけておらず、メカニズム的つながりも多くない。最も大きいメカニズム的なハードルは、ほとんど黒とアーティファクトだけの世界であり、他の4色を登場させるのが難しいということであろう。
クリエイティブ的特徴:貧弱
ファイレクシアにはクリエイティブ的な大きな問題が2つある。1つ目に、単調な世界だということ。上述の通り、黒でないカードを一体どうやって出せば良いのかわからない。2つ目に、この次元はウェザーライト・サーガの最後に破壊されているということ。どちらも解決する必要がある、非常に大きな問題である。
拡張の余地:中等
ファイレクシアを舞台にしたカードは非常に少ないので、掘り下げていないものは大量に存在する。しかし、すべて黒とアーティファクトだけである。
物語の継続性:小さな物語
ファイレクシア人は現在の物語で大きな役割を果たしているが、ファイレクシアはそうではない。実際、現在のファイレクシア人たちはファイレクシア出身ですらなく、現在の物語とファイレクシアのつながりはほとんどない。そして、この次元はもう存在すらしていないのだ。
ラバイア値:9
ファイレクシアを再訪するには、過去に遡る必要がある。(過去に遡ったセットはいくつもあるので、それ自体は不可能ではない。)それ以外にも、メカニズム的、クリエイティブ的に解決すべき問題は大量に存在し、再訪は大博打になる。
ラバイア
《Sea of Sand》 アート:Jim Nelson |
過去の訪問:『アラビアン・ナイト』
人気:普通
当時、ラバイアのプレイヤー人気は高かったが、比較するものはそれほど存在しなかった。現在の世界と比べても同じだけの好評を得られるとは思わない。
メカニズム的特徴:貧弱
『アラビアン・ナイト』は最初のトップダウン・デザインであった。(すでに常磐木だったものを除き)名前のあるメカニズムすら存在していなかった。ほとんどはカード1枚単位でデザインされており、メカニズム的に基盤になるものはそれほど存在しなかった。
クリエイティブ的特徴:貧弱
そもそも、ラバイアは元ネタに触発されたマジックの世界ですらない。ラバイアは、既存の(ただし著作権の存在しない)知的財産のコピーであるマジックの世界である。リチャードがこのセットをデザインしたとき、彼は「千夜一夜物語」に生命を吹き込んだのだ。今日では、我々は我々のひねりを加えて世界を作る。ラバイアにはそういうひねりを加えていない。実際、リチャードは新しい世界を作ろうとすらしていなかった。それはすべて、後追いで作られた。「ラバイア」という名前は、このセットが「アラビアン・ナイト」と呼ばれることを説明するための取り澄ましたやり方に過ぎなかったのだ。
拡張の余地:最小
ラバイアには何も作られていないので、広げるものも存在しない。
物語の継続性:小さな物語
『アラビアン・ナイト』にはマジックの物語は存在せず、いかなる意味でも現在の物語とのつながりは存在しない。
ラバイア値:10
この世界が10の理由、そしてこの指標がラバイア値という名前になっている理由は、私がこの世界には二度と戻らないだろうと強く思っているからである。現在の世界の作り方とは違っていたのだ。現在は、いつか同じような元ネタに触発された新しい世界を作るかもしれないと思っているが、その場合にはひねりを加えることになり、ラバイアではなくなることだろう。
ラース
《Stronghold Furnace》 アート:Jim Pavelec |
過去の訪問:『テンペスト』『ストロングホールド』『エクソダス』『ネメシス』
人気:好評
このセットが作られたのは、世界に関する市場調査を始めるよりも前のことである。(カードに関する市場調査のほうが、世界に関する市場調査よりも先に始まったのだ。)ラースは、今日の世界構築のような考え方を最初に取り入れた世界だった。ユーザーはこの世界を楽しんだが、その興奮の大部分は新しい場所に行き、そして現在進行中の物語に組み入れられるということによるものだったと考えている。また、マジックが何年かぶりに、そしてメインの大型セットでは初めて、ドミナリアを離れたときでもあった。(確かに『レジェンド』の一部はドミナリアを舞台にはしていないが、それはほとんど後付けでそう決まったものだ。)
メカニズム的特徴:貧弱
ラースは、我々がメカニズム的テーマを中心に世界を作るようになる前の世界だ。我々は可能な限りはメカニズム的要素(シャドーやスリヴァーなど)を取り上げ、次元や物語に組み込もうと尽力はしたが、世界そのものは特定のメカニズム的予想に役立つものではなかった。
クリエイティブ的特徴:貧弱
上述の通り、ラースは我々が初めてアーティストとともに世界構築を行った世界である。それまでのやり方からは大きな進歩を遂げていたが、何年もかけて世界構築の能力を高めてきた現在から見るとやはり時代遅れに見える。ラースにはクールな外観や興味深い要素が大量に存在したが、それらには今日の多くの世界にあるような一体感のある世界を作るような結びつきはなかった。
拡張の余地:最小
再訪に向けての最大の問題は、ドミナリアへのファイレクシアの侵略の中で、ラースはドミナリアと重なり合い、今は実質的にドミナリアの一部になっているということである。
物語の継続性:最小/不存在
ラースの物語はあまりにも昔のものであり、ウェザーライト・サーガで大きく活用されており、続きを描けるような物語はあまり残っていない。もし続きを描くなら、それはドミナリアの物語の一部となり、ラースだけの物語にはならないだろう。
ラバイア値:9
9という値は、その次元がすでに存在せず、再訪するとしたら過去を舞台にしたエキスパンションでしか不可能であるときに与えることにしている。そうだとしても、ラースのセットを新しく作るとしたら、新しい視点からウェザーライト・サーガを描く場合に限られると思っている。
ラヴニカ
《セレズニアの屋根庭》 アート:Martina Pilcerova |
過去の訪問:『ラヴニカ:ギルドの都』『ギルドパクト』『ディセンション』『ラヴニカへの回帰』『ギルド門侵犯』『ドラゴンの迷路』『ラヴニカのギルド』
人気:大好評
その指標で見ても、ラヴニカは現在我々のプレイヤーの間で最も人気のある次元である。『ラヴニカのギルド』は3度目となる訪問で、どれも大好評を博している。ラヴニカは非常に人気があるため、我々が新しい世界を作るときの考え方のもととなっている。
メカニズム的特徴:強力
ラヴニカは、世界がメカニズム的要素に関わりうる限りでギルド(2色の陣営)と関わっている。それに加えて、混成マナや分割カードなど、プレイヤーがこの世界と関連付けている他のメカニズム要素も多く存在している。さらに、我々が再訪するたびに作ると予想しているサイクルも大量に存在している。
クリエイティブ的特徴:強力
ラヴニカは、メカニズム的特徴と同じように世界構築についても金字塔となっている。10個のギルドは愛されており、それぞれが強いフレイバーを持っている。
拡張の余地:広大
ラヴニカには、メカニズム的、クリエイティブ的に掘り下げるべきものが満ちあふれている。いつも問題になるのは、入れようと思うものすべてを入れられるようにすることであり、メカニズム空間を埋めるために広げることではない。
物語の継続性:重要な物語
ラヴニカが大好評なので、我々はその世界の登場人物を作り、それをマジックの主な物語と絡ませることにかなりの時間を割いている。ラヴニカで作り上げたものに基づいた、我々が語ることができる物語は大量に存在するのだ。
ラバイア値:1
ラヴニカはどの評価基準でも高い点数を得ている。ラバイアがこの指標の一方の果てなら、ラヴニカはもう一方の果てである。
レガーサ
《ケラル山》 アート:Franz Vohwinkel |
過去の訪問:『マジック・オリジン』
人気:普通
「レガーサ」という名前を読んだとき、諸君の多くは「レガーサって何だ?」と自問したことだろうと思う。この次元の最大の問題はそれである。ほとんどの人々は、そもそもそれが何なのか知らないのだ。この次元は小説「The Purifying Fire」(訳注:および、漫画「燃え尽きぬ炎」)の舞台であり、ヤヤとチャンドラが時間を過ごした僧院であるケラル砦がある。『マジック・オリジン』でチャンドラが初めて灯をともした世界である。レガーサを舞台としたセットを求めるファンはいるが、現在のところ少数派である。
メカニズム的特徴:貧弱
この世界が知られているのは、大抵がその火山の活動と火やマグマの呪文(多くはチャンドラ関連)によるものである。セット全体として訪問するとしたら、デザインはメカニズム的特徴を鍛造(わざとの掛詞だ)するのにかなりの尽力が必要になるだろう。
クリエイティブ的特徴:貧弱
マジックの世界には、5色全ての要素が必要である。レガーサに関して、赤の部分は簡単だが、他の4色についてはかなりの努力が必要になるだろう。レガーサは『マジック・オリジン』の10分の1で、その分を満たすだけの世界しか存在しないのだ。
拡張の余地:中等
この世界はまったく掘り下げられていないので、ある意味ではいろいろなことをできる可能性が大きいと言えるが、一方で、基盤にするようなことが充分になされていないという奇妙な分類になる。デザインとクリエイティブの面から見ると、この世界が何であるか定義するのに相当の労力がいるという意味で少し手強いものである。
物語の継続性:小さな物語
小説とエキスパンションの一部の舞台になっているので、関わりがあるものは少しだけ存在している。主な登場人物の1人であるチャンドラと関わりがあるという事実も助けになる。
ラバイア値:6
この世界は現在の物語と関わっており、プレイヤーに意識されうるだけの描写もされてきている。具体化するにはかなりの労力がいるが、私はいつか訪問する可能性があると思っている。
シャンダラー
《オナッケの地下墓地》 アート:Nic Klein |
過去の訪問:基本セットのいくつかと、マイクロプローズから1990年代後半に出たマジックのゲーム
人気:普通
シャンダラーはレガーサと同じ、我々のプレイヤーの大多数がその名前を知らないという分類に入る。シャンダラーが初めて取り上げられたのは、マジックの初期(1997年)のマイクロプローズ社によるビデオゲームでだった。この世界を再訪する最大の動機となりうるのは、そのビデオゲームを懐かしく思う人々がいることかもしれない。我々はこれを多くの基本セットで、一般的なファンタジー世界が必要となった時に使ってきた。
メカニズム的特徴:貧弱
あらゆる意味において、シャンダラーにはメカニズム的特徴が存在しない。セットで訪問するとしたら、最初から特徴を作る必要があるだろう。
クリエイティブ的特徴:貧弱
シャンダラーは基本的に、トップダウンでファンタジーを元ネタにしようとした基本セットのカードのための、一般的なファンタジー世界である。もし訪問するとしたら、デザインと同様クリエイティブも多くの作業を必要とするだろう。
拡張の余地:中等
レガーサについて答えたのと同じ答えを返すことになるだろう。この世界はほとんど定義されていないので、掘り下げる余地は大量に存在するが、その前提となる基盤がほとんど存在しないのだ。
物語の継続性:最小/不存在
レガーサとは異なり、シャンダラーは現在の物語とも主な登場人物とも関わりを持っていない。
ラバイア値:7
シャンダラーは基本的にレガーサと同じで、さらに物語や登場人物の関わりが少ない。マイクロプローズのゲームのおかげで知名度は多少あるが、スタンダードで使えるセットの舞台にするとしたならかなりの作業が必要となるだろう。
タルキール
《進化する未開地》 アート:Andreas Rocha |
過去の訪問:『タルキール覇王譚』『運命再編』『タルキール龍紀伝』
人気:好評(覇王譚)、平均(龍紀伝)
タルキールは奇妙な場所である。その次元を訪れたあと、過激に変化し、そしてユーザーはその変化の前の世界のほうが好きだったのだ。幸いにも、この場合に備えて我々はタルキールにいくつかの種を仕込んでおいた。
メカニズム的特徴:強力
タルキールと、その楔3色(1色とその敵対色2色)という特徴は強く結びついており、私は、タルキールに再訪する際にはそのセットには楔3色が存在するに違いないと強く思っている。(ただし、その3色にはプレイ・デザイン上の問題があることも指摘しておくべきだろう。)タルキールは龍とも結びついており、これも再訪時には存在することになるだろう。
クリエイティブ的特徴:強力
クリエイティブ・チームはかなりの時間と労力を費やしてタルキールの世界に素敵なクリエイティブ要素を詰め込んだ。1度しか訪れていない世界の中では、もっとも具体化している世界といえるかもしれない。
拡張の余地:広大
タルキールには大規模な世界構築があり、それぞれの氏族にそれぞれが輝くことができる地理的な場所が存在する。最初のブロックでは2つの時間軸と、2つの異なる時期という要素が存在していた。再訪する時に扱うことができる空間は、メカニズム的にもクリエイティブ的にも広いものだと確信している。
物語の継続性:小さな物語
物語上の時間渡航要素のために、クリエイティブ・チームはタルキールを現在の物語にあまり関わらせないように細心の注意を払ったが、物語で取り上げることができる伏線は大量に存在している。サルカン、ナーセットはタルキール出身であり、ウギンも長い間故郷にしているのだ。
ラバイア値:4
この世界には強いメカニズム的特徴、クリエイティブ的特徴があり、人気も高く、さまざまな形で現在の物語と結びついている。最大の問題は、過去の時間軸で起こったことを現在の時間軸でどう再現するかというところだが、その助けにするために大量の仕掛けが準備されているのだ。
テーロス
《啓蒙の神殿》 アート:Svetlin Velinov |
過去の訪問:『テーロス』『神々の軍勢』『ニクスへの旅』『マジック・オリジン』
人気:好評
ギリシャ神話を元にしたセットが長年待ち望まれていたので、ついに作ることになってプレイヤーの多くはとても喜んでいた。
メカニズム的特徴:強力
テーロスは、神々、英雄、怪物中心(つまりトップダウンのギリシャ神話)で、濃いエンチャント・テーマ(神々から定命の者の世界への影響力を表している)を持つ。再訪には、エンチャントをとても強調したものを含むメカニズム的実装が多くなるだろう。(『テーロス』ブロックからの最大の知見は、プレイヤーはもっとエンチャントに注目することを望んでいるということであった。)
クリエイティブ的特徴:強力
元ネタとしてのギリシャ神話は、クリエイティブ・チームが扱うべき大量のものをもたらした。文明、環境、生物にいたるまで、テーロスにはクールなものがあふれている。
拡張の余地:広大
深く、広く知られているギリシャ神話を元にしているので、将来のセットで描くべきものはまだ大量に存在している。
物語の継続性:重要な物語
一言で、エルズペス。前回の訪問で、エルズペスは殺され、テーロスの地下に送られた。この物語を完結させるために再訪しなければ、プレイヤーは満足しないだろう。さらに、この世界はゲートウォッチの2人と関係がある。ギデオンの故郷であり、アジャニは最初の『テーロス』ブロックでここを訪れている。
ラバイア値:3
テーロスは最も人気が高い世界というわけではないが、かなり上位であり、多くのプレイヤーが続きを求めている物語が存在している。そのため、再訪する可能性は充分だろう。
ウルグローサ
《The Dark Barony》 アート:Pete Venters |
過去の訪問:『ホームランド』
人気:不評
既存の世界の中で、最も人気がない世界を神河と競うとしたら(メルカディア以外で)、おそらくウルグローサだろう。(『ホームランド』は、我々が市場調査で世界を評価するようになるより前の話である。)ここを舞台としたセットは(メカニズム的な理由で)非常に不人気で、そのフレイバーと商品を結びつけようというわずかな試みはファンの間で成功しなかった。
メカニズム的特徴:貧弱
『ホームランド』は、世界にメカニズム的特徴を与えるようになる前に作られたものなので、そこに再訪する場合に扱うべきものはそれほど存在しない。
クリエイティブ的特徴:貧弱
この世界で最も人気があったところは、センギア一族とセラの物語だった。どちらも何年も再訪していないので、フレイバー専門家にしか知られていない。この世界は『アルファ版』で人気があった要素をごった煮にしたものだったので、世界のまとまりはあまりないように感じられる。
拡張の余地:最小
このセットは過去のセットの中でもっとも人気がないものの1つであり、象徴的なカードが少数存在するだけである。ウルグローサを再訪する場合に扱うべきものはあまり存在しない。センギア一族から作れるカードもそう多くはない。
物語の継続性:最小/不存在
名前のつけられていない他の次元へのポータル以外には、拾い上げるべき伏線は多くは残されていない。
ラバイア値:9
ウルグローサは、もっとも人気のないセットに縛られている。さらに、もっとも近いテーマといえるゴシックホラーについても、イニストラードでよりうまく扱われているので、再訪の可能性がさらに失われている。
ヴリン
《魔道士輪の跡》 アート:Vincent Proce |
過去の訪問:『マジック・オリジン』
人気:普通
ヴリンに関する最大のことといえば、おそらく、ジェイスの故郷であるということだろう。プレイヤーにヴリンを訪問したいかと聞けば、賛成される主な理由がそれだと思われる。
メカニズム的特徴:貧弱
ヴリンは『マジック・オリジン』でしか登場しておらず、それにメカニズム的特徴を持たせるようなことはあまりしていない。ヴリンを訪問するなら、ほとんど最初から設定していくことになるだろう。
クリエイティブ的特徴:貧弱
ヴリンについては、魔道士輪があるということぐらいしかわかっていない。その次元において、魔道士輪が何をするのかすらわかっていないのだ。ヴリンを訪問することになれば、クリエイティブはかなりの作業をして特徴を持たせる必要があるだろう。
拡張の余地:中等
実際に訪問して掘り下げたことがない他の次元と同じように、この世界は未定義なので多くの可能性がある。言い換えると、基盤になるものはほとんどない。
物語の継続性:小さな物語
ヴリンを訪問する最大の理由は、ジェイスである。彼がヴリンを訪れる理由は間違いなく存在し、プレイヤーはその物語を見たがっていることだろう。
ラバイア値:6
ヴリンを訪れるにはかなりの作業が必要になるが、固有の物語があるジェイスの故郷であることとから、その可能性は間違いなく高まっている。
ゼンディカー
《アガディームの面晶体原》 アート:Vincent Proce |
過去の訪問:『ゼンディカー』『ワールドウェイク』『エルドラージ覚醒』『戦乱のゼンディカー』『ゲートウォッチの誓い』『マジック・オリジン』
人気:大好評(エルドラージ抜き)、好評(エルドラージつき)
ゼンディカーはもっとも人気のある次元の1つである。ただし市場調査から、プレイヤーはエルドラージ抜きのほうが好きだということがわかっており、次に訪問するときには『戦乱のゼンディカー』よりも『ゼンディカー』に近いものになるだろうと考えられる。
メカニズム的特徴:強力
ゼンディカーはメカニズム的に、土地と「冒険世界」ネタの2つのことと関連している。再訪するなら、もちろんこの2つのことと関連することになる。
クリエイティブ的特徴:強力
ゼンディカーは最も視覚的に感動を呼ぶ世界の1つであり、すばらしい文明や人々が含まれている。
拡張の余地:広大
ゼンディカーは、メカニズム的、クリエイティブ的に掘り下げる余地が大量にあるテーマを扱っている。いくつかの世界については、セットを埋めるだけのものがあるかどうか不安に思っている。ゼンディカーではそれは全く心配がいらない。
物語の継続性:重要な物語
ゼンディカーは主要な物語と深く関係している。また、ニッサやナヒリ、キオーラの故郷であり、主な登場人物の多くが訪れた世界である。再訪した際に語ることができる物語は大量に存在している。
ラバイア値:2
再訪することの唯一の問題は、『戦乱のゼンディカー』ではなく『ゼンディカー』に寄せることだが、前回の訪問時にゲートウォッチがエルドラージに勝利を収めているので、その目標を達成するのは簡単なことである。
世界は回る
これでラバイア値の話は終わりだ。この2部作で、諸君に我々の次元それぞれへの再訪の可能性についての洞察を与えられたなら幸いである。いつもの通り、諸君からの反響を楽しみにしている。今日の記事について、話題にした次元について、またそれらの次元へのスタンダード・セットでの再訪について。メール、各ソーシャルメディア(Twitter、Tumblr、Google+、Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、ウェザーライト号の乗組員のカード・デザイン振り返りの2回目でお会いしよう。
その日まで、あなたが一番興奮した世界を我々が訪問しますように。
(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)
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