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Making Magic -マジック開発秘話-
カードの登場 その1
2018年11月19日
今週は『アルティメットマスターズ』のプレビュー記事を書くということが最初に決まっていた。しかし、そのカードのデザインについて語るべきことを考えていて、もっと広い話ができるということに気が付いたのだ。そこで、今日の記事ではキャラクターをマジックのカードにする方法について語ることにする。そのために、私が物語に深く関わっていた、ウェザーライト・サーガの時期の話をすることになる。
ウェザーライト・サーガやそれと私の関わりについてよく知らない諸君のために説明すると、何年も前(1996年)のこと、私の友人のマイケル・ライアン/Michael Ryanと私は、マジックには包括的な物語がないということに不満を抱いていた。そこで我々2人はライターとして、そういった物語を作ろうと決めたのだ。我々はマジック・ブランドチームにその発想を売り込み、作ることの許可を取り付けることができた。(その一連の流れについては、また別の時に語ることにしよう。)
現在の登場人物を作ることを含む現在進行系の物語を作る上では、大きい話をする中でユーザーが繋がりを感じられるキャラクターが存在する。我々の主な思いつきは、主役たちにはウェザーライト号という飛行船があり、次元を股にかけて旅して、さまざまな冒険をするというものだった。(最初の冒険は、拉致された船長のシッセイを助けることだった。)物語を続けていくうちに、少しずつウェザーライト号の乗組員をカードにしていくという計画があった。今日の記事(そして再来週の記事)では、その旅について話そう。
この物語が始まったのは『ウェザーライト』(1997年5月発売)で、『アポカリプス』(2001年5月)まで続いた。(敵の数人を特集した)『ウェザーライト』と、(物語上の伝説のクリーチャーがいなかった)『プロフェシー』を除く各セットで、最低1人の乗組員(あるいは元乗組員)が伝説のクリーチャーとして登場した。これから、各セットを順番に見て、それぞれの人物をどのように作ったか、そしてカードにするためにどういうことをしたかを説明していこう。それらのカードの1枚は『アルティメットマスターズ』で再版されているので、今回のプレビュー・カードとしてそのときに取り上げることにする。
『テンペスト』
オアリム
最初にウェザーライト号の乗組員を造ったとき、その目標はマジックの人物の種類やカラー・パイの広さを示すことだった。興味深いことに、この船の癒し手であるオアリムは、最後に追加された人物だった。飛行船があるので、我々は他のマスメディアに出てくる大型船の性質を調べ、どのような乗組員がいるかを調べたのだ。必ず必要な役職がいろいろと存在した。船長、一等航海士、航海士/技師、そしてもちろん医師。しかし、最初に我々が一通りの乗組員を造ったとき、なぜか医師を入れるのを忘れていたのだ。
私はそれをマイケルに指摘し、それから我々はもっともマジックらしい医師のような存在は何かということを考えた。最終的に我々は『アルファ版』から常連の白のコモン、《サマイトの癒し手》に行き着いたのだった。《サマイトの癒し手》は人間なので、プレイヤーがそれと関連を見いだせるようにその乗組員を人間にした。乗組員の中で、女性よりも男性の方が多かったので、女性にした。最後の追加だったので、彼女の名前は私のあだ名である「Maro」を逆順にした「Oram」とした。計画では彼女に正規の名前をつけることになっていたはずだが、この名前が定着してしまったので最終的に名前の元がわからないようにするために「a」を「i」に変えるだけにした。
物語上に主な乗組員を揃える時間はあまりかけたくなかったので、我々は役割を小さく押さえた状態で始めることに決めたのだった。興味深いことに、私は、登場人物を伝説のクリーチャーにすることがユーザーの注目を集め、重要な存在だと感じさせるようになるとは思っていなかったのだ。オアリムは『メルカディアン・マスクス』の物語で重要な役割を果たすことになる。
オアリムが《サマイトの癒し手》を元にしているので、彼女のカードは非常に直接的にデザインできるように思われた。つまり、単に大きく、衝撃的な《サマイトの癒し手》にすればいいのだ。最終的に我々は、1点ではなく3点のダメージを軽減できるようにし、また1/1でなく1/3にして除去しにくくした。レアで、どう考えても構築用カードではなかったので、我々は白マナ1点増やすだけでそれをすることができたのだ。
スターク
スタークは、完全に物語上の理由で作られた。シッセイを助けるために乗組員がラースへ行ける方法が必要だったのだ。また、主な敵であるヴォルラスが後で船にこっそり乗り込むようにする必要があった(詳しくは再来週)。そこで、我々は(タカラという)娘を助けるという利己的な理由だけで乗組員に協力している裏切り者を登場させたのだ。
彼のデザインは少し難しいものだった。信頼できないろくでなしで自分のことしか気にしない。これを一体どうやってマジックのカードに落とし込むのか。最終的に作り上げたフレイバーは、プレイヤーに忠実でないカードというものだった。そう、彼を唱えることはできるが、彼が自軍に残ってくれるとは限らないのだ。フレイバーの視点からは素晴らしいものに聞こえたが、なぜそんなものをデッキに入れなければならないのか。我々が出した答えは、彼は有用で、彼のコントロールをいつ失うかは唱えたプレイヤーが決めることができ、そして彼を先に使えるのは唱えたプレイヤーだというものだった。
赤はアーティファクトを壊したりクリーチャーにダメージを与えたりできるので、我々は最終的に、彼が裏切るときにアーティファクトかクリーチャーを破壊するようにした。なおこれは、今よりも色の混淆が少し多く、赤でクリーチャーを破壊することが認められていた当時のことである。今は、赤がクリーチャーを破壊するのはダメージによるものになる。
『ストロングホールド』
クロウヴァクス
マイケルと私がクロウヴァクスを作ったのは、カラー・パイで黒の面を占める乗組員が必要だったからである。追加される乗組員としてクールだと感じられたので、吸血鬼であるという発想が気に入った。ちょっとした問題として、一体なぜ乗組員は吸血鬼の乗船を許したのか、というものがあった。そこで、我々はクールな回避策を思いついた。彼が乗組員になった時点では吸血鬼ではなく、後に吸血鬼になったとしたらどうだろうか。そうすれば、乗組員の一員である彼を受け入れ続ける理由として筋が通るようになる。そうして、我々は彼を呪われた貴族だとした。(『テンペスト』ですでに登場していたセレニアという天使と関連している)呪いによって、彼は吸血鬼になったのだ。この出来事は『ストロングホールド』で、ミリーを救うためにクロウヴァクスがセレニアを殺さなければならなかったときに起こった。セレニアの死によって呪いは成就し、クロウヴァクスは吸血鬼になったのだ。
これは物語の鍵となる瞬間で、クロウヴァクスは我々の望み通り吸血鬼になったので、このタイミングで彼のカードを作るのが最適だと思われた。デザイン的には、我々は彼を吸血鬼にすることが全てだった。吸血鬼だと定義づける特徴は何だろうか。我々は、他のクリーチャーを継続的に食べる必要があるところに注目することにした。彼が食べたら、強くなる。食べなければ、弱くなる。そのため、我々は彼を+1/+1カウンターが4個載った状態で出てくる0/0クリーチャーにした。『アルファ版』からの人気の吸血鬼《センギアの吸血鬼》は4/4だったので、吸血鬼の基本としてそれがふさわしいと思われたのだ。クリーチャーを生け贄に捧げることで食べることを表すことにした。そして、彼に回避能力を持たせようと考えたが、物語の登場人物が空を飛べるようにしたくはなかったので、ジャンプするのが得意だということを表すために起動型の飛行能力を持たせることにした。
後に、クロウヴァクスは2枚のカードで登場することになる。そのうち1枚は、その2で触れることにしよう。もう1枚は、これだ。
『次元の混乱』はもう1つの現実を表すセットなので、クロウヴァクスでなくミリーが呪われたというもう1つの現実を扱った。そこではクロウヴァクスは高潔な勇士になっている。
『エクソダス』
ミリー
ミリーは、カラー・パイの緑部分にあたる登場人物が必要だったことから作られた。乗組員の中に強い戦士がいるようにしたかった上に、ジェラードにまったく恋愛関係のない女性の親友を持たせたかったのだ。『ミラージュ』ブロックにはクールな猫族の戦士がたくさん存在していたので、我々は最終的に彼女を猫族の戦士にした。
ここで物語には触れていなかったが、『エクソダス』はマイケルと私がウェザーライト・サーガから離れた時期だった。私は変わらずストーリー・チームと開発部の間の連絡役ではあったので、物語を作ることには関わっていなかったが、登場人物をカード化することの責任は負っていた。私の同意しなかった理由で、『エクソダス』でクロウヴァクスは悪に堕ち、ミリーを殺すことになった。ミリーをカード化するなら、このタイミングでなければ不可能になったのだ。(過去に存在した人物をカード化できる『統率者』デッキというサプリメント商品が作られるという未来は予想できなかった。)
ミリーの最も重要な特徴は、彼女が強い戦士であったということなので、我々は戦闘で強いカードを作りたいと考えた。最初は、{1}{G}{G}で先制攻撃、森渡り、警戒、プロテクション(黒)を持つ2/2だった。当時、先制攻撃も警戒も緑ではなかったが、物語的に重要なカードなので特例として認めることにしたのだ。(この理念は年とともに少し変化している。)ミリーがプロテクション(黒)を持つのは、当時のスタンダードでは黒のクリーチャー除去が大きな部分を占めていたからである。
カードを造ったとき、ミリーが殺されるのはわかっていたが、クロウヴァクスが殺すということはまだ決定事項ではなかった。それに気がついてすぐに、私はデザイン・チームに戻り、そしてプロテクション(黒)を取り除かなければならないと言ったのだ。物語上、彼女は黒の発生源(クロウヴァクス)に殺されるので、プロテクション(黒)を持っていると物語と完全に矛盾するのだ。プロテクションの代わりにする能力を何にするか決めるため、我々はかなりの時間を費やした。プロテクション(青)を検討したが、それは構築戦で我々が望むような意味を持たなかった。最終的に、我々は彼女のタフネスを1点上げ、初期の赤の除去に対していくらかの耐性を持たせることにしたのだった。
後にミリーは2回カード化されている。
1枚目は『次元の混乱』版のカードで、クロウヴァクスでなく彼女が吸血鬼の呪いを受けたものである。2枚めは『統率者(2017年版)』で、緑白になったミリーである。『統率者』商品によって過去の物語の登場人物が有名になり始め、彼女を緑白にしてもいいかという問い合わせを受けた。私が同意したのは、それが彼女の人物像にふさわしかったからである。彼女は緑単色だったが、その主な理由は『エクソダス』には多色カードが存在しなかったからである。(当時、多色カードをセットに入れるのを抑えることで、多色テーマのセットをより心躍るものにしようというポリシーがあったのだ。)
アーテイ
マイケルと私がアーテイを作ったのには2つの理由があった。まず、カラー・パイの青の部分からの乗組員が必要で、そしてウィザードが必要だった。ウェザーライト・サーガを旧来のマジックの物語と関連付けるため、バリン(ウルザの右腕。詳しくはハナの項目で触れる)の娘であるハナを作った。これによって、我々はトレイリア出身のウィザードを使えるようになったのだ。我々が作った物語は、ウェザーライト号は知らず知らずに時間渡航してドミナリアに向かい、襲い来るファイレクシアの侵略(すでに起こっており、ファイレクシアが勝利したことを知る)について知り、そこで、ラースに置き去りにされ、年を経て知恵を積んだ乗組員(門を通ってウェザーライト号が逃れるのを助けた時に取り残された)に出会うというものだった。それと対照的にするため、最初は彼を若く生意気な存在にしようと考えた。(フレイバーテキストに関しては、我々は人物ごとに担当者を決めていた。私は最終的に、アーテイとカーンのフレイバーテキストを書くことになった。)
アーテイのカードに何が必要かということは、私にはよくわかっていた。彼を歩く対抗呪文にしたかったのだ。アーテイの人物像は、魔法、特に対抗呪文(彼の特徴的なフレイバーテキストは、彼が呪文を打ち消した相手を嘲っているというものだ)が得意だということと、それを非常に鼻にかけているということを主軸にしていた。戦闘が得意ではなく、簡単に破壊されるようにしたかったことから、彼は1/1となった。そして、彼に起動型の対抗呪文を与えたのだ。タップを必要とするのは、ターンに1個しか打ち消せなくなり、対戦相手が対策できるようにするためである。他の呪文を大量に使いたければ序盤から対抗呪文を使うことが難しくなるように、4マナ(うち2マナは青)必要にもした。
クロウヴァクスと同様、アーテイもウェザーライト・サーガが終わる前にもう1度伝説のクリーチャーとして登場している。(それについてはまた再来週に扱う。)
『ウルザズ・サーガ』
カーン
マイケルと私は、アーティファクトの乗組員が必要だと考え、カーンを作った。当時はアーティファクト・クリーチャーのクリーチャー・タイプはそう多くなかったので、彼を「心優しい巨人」(大きく、力強く、脅威的だが、グループの中で一番優しい存在になる)の立場にするという発想が気に入ったことから、彼をゴーレムにすることにした。それを表すため、我々はカーンを平和主義者にした。彼の背景として、彼は誰かを事故で殺してしまい、それにショックを受けて、二度と暴力を振るわないと決めたのだ。(カーンは多くの経験を積み、この一面は現在は正しくなくなっている。)我々は、記念碑やランドマークとして石を積み上げたものを指す「cairn/石塚」という単語からカーンの名前をつけた。彼を銀のゴーレムにしたのは、それがビジュアル的にクールだと考えたからである。
ほんのわずかな帰還、『ウェザーライト』の《鋼のゴーレム》をカーンにするという発想もあったが、外見を決めるために時間が必要だったので、単なる《鋼のゴーレム》にした。カーンを『ウルザズ・サーガ』で作ったのは、当時生きていた数少ない(そして主役級では唯一の)乗組員だったからである。カーンのデザインは、他の乗組員の多くよりも少し回りくどいものだった。どのようにして作られたかを説明するため、まず『ヴァンガード』というサプリメント商品について語る必要がある。
『ヴァンガード』は、販売用ではなく店内リーグ(フライデー・ナイト・マジックの元になった、アリーナと呼ばれるもの)で配られていたサプリメント商品であった。『ヴァンガード』のカードは、デッキとは別に使うカードで初期ライフ総量や手札の枚数に修整を加え、ゲーム中に使える能力を提供するものだった。『ヴァンガード』が作られたのはウェザーライト・サーガが承認されるよりも前だったが、ウェザーライト・サーガの進行中にできることに気づいて、私は『ヴァンガード』カードにウェザーライト・サーガの登場人物を反映させるべきだと主張した。そして、私がそれを実現させる担当になったのだ。『ヴァンガード』のカードはすでに大量にデザインされていたので、私の仕事はそれらに目を通し、そして登場人物とうまく繋げられる既存のカードを探すことだった。完璧に合うものもあれば、いくらか困難が伴うものもあった。そしてカーンはその後者の1枚だったのだ。
最終的に、私は、アーティファクトをクリーチャー化する『ヴァンガード』カードが気に入った。カーンはアーティファクトであり、レガシー、つまり物語上重要な一連のアーティファクトの守護者だった。彼がアーティファクトをクリーチャー化するわけではないが、彼が物語上務める重要な役割と関わりがあるアーティファクトと組み合わせるのがいいと思ったのだ。そして、カーンはこんなカードになった。
そして、伝説のクリーチャーとしてのカーンをデザインするにあたって、誰もが『ヴァンガード』のアーティファクトをクリーチャー化する能力を持つものだと思った。物語的に無理をして彼に『ヴァンガード』でクリーチャー化の能力を持たせたことを説明しようとしたが、誰もが「それはもう大前提だ」と答えてきたので、私は降参して彼にアーティファクトをクリーチャー化する能力を持たせることにした。
しかしまだ1つ解決すべき問題があった。カーンは大きくて強力なので、4/4にした。彼が平和主義者であることは、彼の個性の重要な部分だった。彼が戦闘で他のクリーチャーと戦い、殺すというのはおかしいと感じられたのだ。彼をブロックされず、ブロックできないようにすることでこの問題を回避しようとしたが、それも変な感じだった。我々の取った解決策は、戦闘で殺すのが非常に難しくなる一方で(何もなければ)他のクリーチャーを殺すことがありえなくなる、-4/+4能力を持たせることだった。
カーンは後にプレインズウォーカーになり、最終的にさらに2枚のカードになる。1枚は『新たなるファイレクシア』、1枚は『ドミナリア』である。
『ウルザズ・レガシー』
ムルタニ
マイケルと私は、ジェラードの師匠がいたほうがいいと考え、ムルタニを作った。ジェラードは若い頃にムルタニの元で魔法を学んだ。その時にミリーやロフェロスと出会ったのだ。私はマロー(自然の精霊)を物語のどこかに入れたいとずっと思っていて、ここがふさわしいと思われた。ムルタニは後に元乗組員だったということになったが、それにはマイケルも私も関わっていない。我々が彼のカードを『ウルザズ・レガシー』で作ったのは、この回想のブロック中でももう生まれているといえるだけの年齢を重ねたもう1人の人物だったからである。
ムルタニはマローなので、我々は基本的に彼をより強力な《マロー》となるようにデザインした。彼のパワーとタフネスは自分の手札の枚数ではなく、全プレイヤーの手札の枚数の合計にした。そして、対処しにくくなるように、被覆を与えた。彼にトランプルを持たせることも議論されたが、トランプルと被覆の両方を持たせることはできないことになり、人物像的にもふさわしく、カードとしても強力になるのは被覆だと判断されたのだ。
ムルタニは後に『ドミナリア』でも登場している。
『ウルザズ・デスティニー』
ロフェロス
ロフェロスが造られたのは、マイケルと私が物語上解決すべき問題に気づいたからである。我々は、ジェラード(とミリー)を最初からウェザーライト号の乗組員にしたくはなかった。ウェザーライト号の乗組員が彼のもとを訪れ、そして彼は渋々復帰に同意するようにしたかったのだ。(彼に関する物語の重要な部分として、彼が自分の運命を受け入れるというものがあった。)つまり、我々には彼が離れる理由、しかも彼の人物としての評価を落とさないようなものが必要だったのだ。その答えは、彼が船にいる間に誰かを失うというものだった。ミリーとジェラードはムルタニを通して出会ったと決まっていたので、我々はそこに3人目の人物を増やし、その人物を死なせることにした。それが、その人物と最も親しいジェラードとミリーが離れる理由になるのだ。
乗組員を作っていたとき、我々は使う候補としてさまざまなクリーチャー・タイプの一覧を作っていた。使わないまま残っていた中に、エルフがあったのだ。マジックの過去を扱っているのだから、ラノワールのエルフを使わない理由があるだろうか。我々は最終的に、ロフェロスを『ウルザズ・デスティニー』に入れたが、これは彼が『ウルザズ・サーガ』や『ウルザズ・レガシー』の時代にはまだ生まれていないが、(しかも現在の時点では死んでいる)『ウルザズ・デスティニー』の時代なら長命なエルフなので存在していたからである。
彼のデザインは非常に直接的なものだった。非常に強い《ラノワールのエルフ》にしようと考えたのだ。つまり、軽くて小型で、大量のマナを生み出すものになる。大量の緑マナを出す可能性があるようにしようと考えたが、序盤で壊れたカードになることは望んでいなかったので、マナの生成量を戦場に出している森の数に合わせることにした。これによって彼は、強力だけれどもほとんど緑単色デッキでしか使わないような狭いカードになったのだった。
『メルカディアン・マスクス』
スクイー
スクイーは、コミックリリーフが必要で、マジックのクリーチャーではゴブリンがふさわしいと考えられたことから作られた。スクイーに関するよくあるジョークに、彼は知性がなくて小心だが、幸運で時々偶然窮地から救うというものがあった。彼の名前はこのカードを元にしている。
『ビジョンズ』のクリエイティブによるカード名やフレイバーテキストについての会議中に、私はこのカードのフレイバーテキストが気に入らないというコメントをした。ゴブリンの養成所の韻を踏んだ喊声というコメディな構想は好きだったが、その時点での実装が水準に達していないと感じられたのだ。その会議で、何か代替案があれば変更することができるが、ファイルは会議の直後に提出されると伝えられた。そこで私はその会議の席でフレイバーテキストを書いたのだ。ゴブリン2体の、どちらも1音節で、2体目の名前は「tree」や「flee」と韻を踏む名前が必要だった。そこで出てきたのがスクイーという名前だった。私はその名前がとても気に入ったので、マイケルと私がウェザーライト号の乗組員のゴブリンの名前をつけることになったときにスクイーを提案したのだった。
私がスクイーをデザインしたとき、その目標は彼が非常に幸運だという印象を再現することだった。墓地から手札に戻るのは蘇りを意味するのではなく、彼が非常に幸運なせいでなかなか殺せず、「死んだと思っていたが、死んでいなかった」と伝えることを意図したものである。このカードは好評を博し、小説家の1人は彼を不死の存在として描いた。それを知って、私はこのメカニズムが誤解されているということを説明しようとしたが、すでに出版されていたのだ。スクイーは不死となった。殺すことはできるが、彼は何度でも生き返ってくるのだ。
スクイーは『ドミナリア』で新しくカード化されたが、それも同じようなメカニズム空間を使っている。
《ゴブリンの太守スクイー》に関しては、もう1つ伝えるべきことがある。今日の『アルティメットマスターズ』のプレビュー・カードなのだ。ウェザーライト号の乗組員の中で、スクイーの1枚目のカードはおそらく構築フォーマットで最も使われたカードであり、したがって『アルティメットマスターズ』で再録されるのにふさわしいカードである。
ここをクリックして、『アルティメットマスターズ』版をご覧あれ。
本日はここまで。まだ語っていないウェザーライト号の乗組員は何人もいるので、再来週、その2としてこの続きを語ろうと思う。いつもの通り、この記事やウェザーライト・サーガ、その他についての諸君の感想を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(Twitter、Tumblr、Google+、Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、ラバイア値のその2でお会いしよう。
その日まで、ウェザーライト号の乗組員の誰かがあなたのデッキに入りますように。
(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)
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