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Making Magic -マジック開発秘話-
支配するギルド その2
2018年9月17日
ようこそ諸君! 先週、私は『ラヴニカのギルド』のカードがどのようにデザインされたかの話を始め、その中で展望デザイン・チームを紹介した。4つのギルドのうち1つしか扱えなかったので、今日はその続きをすることにしよう。それに、今週も新しいクールなプレビュー・カードがある。それでは、早速。イゼットの話だけで終わったので、次はディミーアに進むことにしよう。(ギルド間で共有している色をたどっていく。)
ディミーア
ディミーアは、過去2回のギルドのメカニズムが一番うまく行かなかった。まず、どちらも再録したいものではなかった。そしてさらに言えば、どちらもディミーアらしさを描く上で大成功したとは言えなかった。変成はライブラリーを操作する教示者メカニズムであった。変成 [コスト]([コスト], このカードを捨てる:あなたのライブラリーから、このカードと同じ点数で見たマナ・コストのカード1枚を探し、公開してあなたの手札に加える。その後、あなたのライブラリーを切り直す。変成はソーサリーとしてのみ行う。)
暗号は呪文をサボタージュ能力、すなわち対戦相手に戦闘ダメージを与えたときに誘発する効果にする。((この呪文を唱えた後、)あなたはあなたがコントロールしているクリーチャー1体に暗号化した状態で、この呪文カードを追放してもよい。そのクリーチャーがプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび、そのコントローラーは、このカードのコピーをマナ・コストを支払うことなく唱えてもよい。)
どちらもディミーアの一面を捉えてはいるが、どちらもギルドに濃いメカニズム感を与えることには成功しなかった。ディミーアには、そのメカニズムが色的に隣接したメカニズムと特にシナジーがあるわけではないという問題もあった。一言で言うと、ディミーアはデザインするのが一番難しいギルドの1つであるということがわかっていたのだ。
展望デザインは、ディミーアのメカニズムにかなり取り組んだ。確か、これが10個の中で(我々は『ラヴニカのギルド』と『ラヴニカの献身』を同時に手がけていた)最後に決めたメカニズムだったはずである。デザインから提出したメカニズムは「変装」と呼ばれ、忍術の変種だった。基本的に、忍術との違いは、変装を持つクリーチャーを攻撃クリーチャーと交換するということであり、それはつまりそれに関連するもの(エンチャントしているエンチャント、装備している装備品、上にあるカウンターなど)はそのまま、同一のオブジェクトであるかのように新しいクリーチャーにつけられるということである。
変装は間違いなく楽しかったのだが、少しばかり複雑過ぎ(セットに5つのメカニズムがあることから、それぞれのメカニズムの複雑さを落とそうとしていた)、また周りのメカニズムとのシナジーもなかった。展望デザインはこれをギルドの小さなテーマに合わせようとしたが、エリック・ラウアー/Erik Lauer(『ラヴニカのギルド』のセットデザイン・リード)は、これが必要な役には立たないということを正しく感じ取ったのだ。
エリックは関連するメカニズム、つまりイゼットの再活メカニズムとゴルガリの宿根メカニズム(これについては次に触れる)を見て、どちらもカードを墓地に送る助けが必要だということに気がついた。ディミーアの、知識あるいはライブラリーを扱うという狙いと組み合わせて、エリック率いるチームは墓地を肥やすことができるライブラリー濾過である諜報(基本的には占術の変種で、カードをライブラリーの一番下に送るのではなく墓地に置くという違いがある)を作り出したのだった。
諜報は、各ギルドが共通のキーワードを使うことができるような形でさまざまなギルドのメカニズムを重ね合わせることの難しさを示す好例である。このメカニズムをもっと目立つようにしたいという議論もあったが、最終的に、それほどあからさまでない方法で勝利の助けとなる繊細なメカニズムこそが完璧にディミーアらしいメカニズムなのだと判断されたのだった。
ゴルガリ
ゴルガリは、理念とメカニズムの重なり合った、もっともはっきりした特徴のギルドの1つである。「生命のサイクル」のギルドであり、メカニズム的には、墓地を参照したり墓地にあるカードを手札や戦場に戻したりといった墓地の利用を意味する。ゴルガリの過去のメカニズムである発掘(あなたがカードを引く場合、代わりにあなたのライブラリーの一番上からちょうどN枚のカードをあなたの墓地においてもよい。そうしたなら、このカードをあなたの墓地からあなたの手札に戻す。そうでないなら、カードを引く。)と活用([コスト], あなたの墓地からこのカードを追放する:クリーチャー1体を対象とする。このカードのパワーに等しい数の+1/+1カウンターをそれの上に置く。活用はソーサリーとしてのみ行う。)はどちらも人気があり、フレイバーに富んでいた。(ただし、強さ的には、発掘はギルドのメカニズムの中で最も壊れていると言えるだろう。)展望デザイン・チームの目標は単純なものだった。この枠にふさわしい、他のメカニズムを見つけることだ。
我々が直面していた問題は、ゴルガリはあまりにもはっきりしていて、我々が見ているものすべてが過去のゴルガリの焼き直しに感じられたことである。我々は、過去に大量に存在した墓地メカニズムからの再録について話し合った。会議1つを費やして、蘇生メカニズム(『アラーラの断片』のグリクシスのメカニズム)を再録する可能性について検討したこともあったと思う。最終的に、この問題の解決策はチームの外部、誰あろうエリック・ラウアーからもたらされた。
エリックが考えたのは、墓地からカードを戻すのではなく墓地を参照するメカニズムに注目することだった。彼が一体どこからひらめいたのかはわからないが、おそらくは《ルアゴイフ》(『アイスエイジ』)だろうと思っている。そのメカニズムは最初、展望デザインでは「屍花」と呼ばれていたが、今は宿根という名前である。このメカニズムは、常に、自軍の墓地に何枚のクリーチャー・カードがあるかを参照するというものである。多ければ多いほど、効果も大きくなるのだ。
このメカニズムについて、エリックはプレイヤーが常に自分の墓地を確認し続けるようなことになるのを懸念していたので、宿根カードはすべて唱えたときや戦場に出たときに効果を発揮するようになっており、墓地を数えるのは一度だけで済むようになっている。ディミーアには自分の墓地にカードを送るさまざまな手段があり(諜報メカニズム、ライブラリー削り、コストとしての捨て札など)、セレズニアにはその多くがギルドのために死ぬことになるクリーチャーがあったので、エリックはゴルガリとそれに連なるギルドの間のシナジーが気に入っていた。宿根は、展望デザインによって提出されて印刷に到った、ギルドのキーワード2つのうちの1つである。
セレズニア
全てのギルドの中で、セレズニアはギルドのメカニズムの実績に関して最高の実績を収めている。召集(あなたのクリーチャーが、この呪文を唱える助けとなる。この呪文を唱える段階であなたがタップした各クリーチャーは、{1}かそのクリーチャーの色のマナ1点を支払う。)はすでに基本セットで再録されており、居住(あなたがコントロールしているクリーチャー・トークン1体のコピーであるトークンを1体戦場に出す。)もまた、いつの日か再録されるであろうメカニズムである。どちらのメカニズムも、プレイヤーの間でとても人気がある。セレズニアは多くのクリーチャーをプレイして、大量の小型クリーチャーか、少数の大型クリーチャーで対戦相手を蹂躙することがすべてなのだ。必要なのは、クリーチャーに注目して、大量のクリーチャーをプレイすることを推奨するメカニズムであるということは最初からわかっていた。
我々はさまざまなメカニズムを試したが、最終的に、これまでに多くのセットで試してきた「上クリーチャー」というべきものに収束した。上陸や星座と同じように、上クリーチャーはあなたがコントロールしているクリーチャーが戦場に出たときに誘発する能力を含む。何年にも渡ってこの能力を持つカードは作られてきたが、キーワード化されたことはなかった。これをついにキーワード化するギルドとして、セレズニアはふさわしく思えたのだ。
このメカニズムは最終的にセットデザイン中にボツになったが、その理由は諸君が想像するものとはおそらく違っている。これは、ボロスのメカニズム(この次に説明する、教導)とシナジーが強すぎたのだ。ここでシナジーの必要性についてもう少し語ろう。なぜシナジーが強すぎると問題なのか。開発部語で言うところの、「ナヤ問題」に到ってしまうからである。セレズニアとボロスは、自然に、お互いに重複するテーマを持つことになりがちである。両ギルドとも、大量のクリーチャーをプレイして常に攻撃する、並べる戦略に焦点を当てている、これが問題なのは、プレイヤーが興味深い選択肢を持つような自由度の高いドラフトが望まれているからである。2つのギルドがあまりにも濃いシナジーを持っていれば、常にその2つのギルドを組み合わせてドラフトすることになり、存在する戦略の数が減ることになる。
教導のほうが革新的でフレイバーに富んだメカニズムだったので、エリックは教導を残してセレズニアのメカニズムを差し替えることにした。彼は新しいメカニズムをいくつか研究したが(その中には、起動型能力限定のクリーチャーとの親和もあった)、再録という選択肢も検討していた。先週言ったとおり、過去のラヴニカのセットでは再録メカニズムは使わないことにしていたが、今回は再録も認めることにしていた。エリックは、他のメカニズムを調べれば調べるほどに、セレズニアに最適なメカニズムは召集であると実感していった。ボロスと組み合わせることができる形でクリーチャーを必要とするが、効率的すぎることはないのだ。(これまではギルドで使われていなかったメカニズムを再録するのではなく)ギルドのメカニズムだったメカニズムを再録することに問題ないかどうかという議論が交わされたが、召集はあまりにも完璧にふさわしかったので、セットデザインはそれを使うことに決めたのだった。
ボロスに進む前に、ここでセレズニアのカードである(透かしはないが、意図としてはそうである)今日のプレビュー・カードをお見せしよう。私の記事をいくらかでも読んできた諸君は、私がクリーチャー・トークンの大ファンだということをご存知のことだろう。そして、もし諸君もそうであるなら、このプレビュー・カードを楽しんでくれるに違いない。
これは、私が初めて見たときに「なぜこのカードをこれまで作っていなかったのだろう」と自問自答させられたデザインの1つである。諸君の多くがこのカードを大いに楽しんでくれたなら幸いである。
ボロス
ボロスもまた、フレイバーとメカニズムが密に関わった、非常に焦点の定まったテーマを持つギルドである。軽いクリーチャーを大量にプレイして攻撃するアグロのギルドなのだ。10個のギルドの中で最速のギルドである。ボロスには、最もフレイバー的にかけ離れたメカニズムである光輝(クリーチャー1体を対象とし、それ、およびそれと同じ色を持つクリーチャーに影響を及ぼす)と、最もフレイバーに富んだメカニズムである大隊(このクリーチャーと少なくとも2体の他のクリーチャーが攻撃するたび、誘発する)があった。展望デザインは、ボロスのテーマを扱い、いくらかひねりを加えたメカニズムを探すことにした。
その結果、私のお気に入りの『ラヴニカのギルド』のメカニズムである教導(このクリーチャーが攻撃するたび、パワーがこれよりも小さい攻撃クリーチャー1体を対象とする。それの上に+1/ +1カウンターを1個置く。)が生まれた。このメカニズムは最初から教導という名前であり、そのフレイバーがいくらか複雑なメカニズムの複雑さをいくらか低減して感じさせる助けになっていることは嬉しいことである。また、これの、攻撃クリーチャーについて普通と異なる形で考えることを推奨するという動きも気に入っている。
教導は、展望デザイン中に作られ、印刷まで到ったもう1つのメカニズムである。興味深い形でプレイされるカードを作るため、セットデザインにかなりの労力を必要としたメカニズムであったことはわかっている。小型クリーチャーと教導の相性が良いので、これとセレズニアのシナジーはわかりやすいものであった。ボロス/イゼットのシナジーはもう少し難しいことがわかってきた。セットデザイン・チームは、クリーチャーを強化して教導を助けたり、ブロック・クリーチャーを除去して小型クリーチャーで攻撃できるようにしたりする、ボロスの戦略と相性のいい赤の再活カードを作ることで、それを解決した。
諸君が教導をプレイする機会を得たら、それについての感想を聞かせてほしい。
そしてそれ以外に
ギルドについての話が終わったので、他の小さなテーマについて話していこう。
ショックランド
ラヴニカへの3度目の再訪を企画したとき、ショックランドを再録することも同時に企画した。しかし、興味深いことに、その再録はラヴニカを舞台にしたセットそのものでではなかったのだ。最初の計画では、ショックランドは『ラヴニカのギルド』の前年の大型セットに入れる予定だったのだ。物理的な問題と、ラヴニカのセットに入れるのにいい2色土地が見つからなかったことから計画は変更され、ショックランドが戻ることになった。(開発部内のジョークで、ショックランドをどの世界でも使えるような名前にして、再録するのは毎回ラヴニカだ、というものがある。)
ギルド門
ギルド門は『ラヴニカへの回帰』ブロックで、コモンの2色土地として作られたものである。純粋な「タップ状態で戦場に出る」2色土地にするとあまりにもショックランドの完全下位互換だと感じられてしまう懸念があったので、他の機能を持たせるために門というサブタイプが与えられた。ギルド門は再録され、今回は門というサブタイプを参照するカードがいくらか強化されている。
混成マナと分割カード
元祖『ラヴニカ』で、混成マナがマジックに導入された。それ以来ラヴニカのセットでは毎回登場しており、その多くは垂直サイクル(コモン、アンコモン、レア各1枚)だった。過去のラヴニカのブロックそれぞれの最終セット(『ディセンション』『ドラゴンの迷路』)では、さらなる多色カードを増やすために分割カードが存在していた。『ラヴニカのギルド』と『ラヴニカの献身』ではこれらの2つの要素を再録しているが、それらを組み合わせたのはこれが初めてである。コモンの混成カードのサイクルが存在する。そして、アンコモンとレアには分割カードのサイクルが存在する。分割カードは、軽い混成カードと重い伝統的な多色カードの組み合わせになっている。また、コモンには、マナ・アーティファクトで、起動コストに混成マナを使ったサイクルが存在する。
ギルド魔道士
ギルド魔道士が存在することになるのは当然のことだ。ここでの問題は、今回、どのようにそれらをデザインするかである。初代『ラヴニカ』ブロックでは、2マナの混成クリーチャーで、それぞれの色から1つずつ合計2つの起動型能力を持っていた。それらはどちらの色のデッキでも使えるが、最適化するには両方の色が必要というものだった。『ラヴニカへの回帰』ブロックでは、2マナの伝統的な多色カードで、起動するのに両方の色のマナが必要な能力を2つ持っていた。新しいギルド魔道士は、その両方の組み合わせである。2マナの伝統的な多色カードだが、それぞれ異なる色で起動する2つの能力を持っているのだ。もう1つ新しいひねりとして、それらの起動型能力にはタップが必要となり、ターンに1回しか使えなくなった。
ギルドの指導者
『ラヴニカ』『ラヴニカへの回帰』両ブロックで、多色カード10枚からなるギルドの指導者のサイクルと、もう1つ多色カード10枚からなるギルドの勇者のサイクルが存在した。『ラヴニカのギルド』と『ラヴニカの献身』では、これに少しひねりを加えている。ボーラス寄りのギルド5つの指導者は、プレインズウォーカーである。抵抗しているギルドは、伝説のクリーチャーを指導者に仰いでいる。そして、すべてのギルドに1枚ずつ、もう1つ伝説のクリーチャーのサイクルが存在するのだ。ギルドごとにその地位は少しずつ違っているが、そのギルドの構成員であることは変わらない。
透かし
もう1つ再録された要素が、ギルドの透かしである。ギルドの透かしは、その両方の色であったり、ギルドのメカニズムを持っていたり、最適化するのに両方の色が必要だったりするカードに入っている。(『ラヴニカのギルド』や『ラヴニカの献身』には、色違いの起動コストを持つカードは存在しない。)
よりよい未来のために
本日はここまで。私と同様、諸君もラヴニカへの再訪に興奮してくれていたなら幸いである。今日の記事や『ラヴニカのギルド』、あるいはギルドについて意見があれば、メール、各ソーシャルメディア(Twitter、Tumblr、Google+、Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、『ラヴニカのギルド』のカード個別のデザインの話する日にお会いしよう。
その日まで、あなたがボーラスの支配下に堕ちませんように。
(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)
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