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Making Magic -マジック開発秘話-
懐かしの地に
2018年4月2日
『ドミナリア』プレビュー特集第1週にようこそ。長年、語りたくて仕方なかった話がある。今日は最初に『ドミナリア』の展望デザインの話をして、何枚かのプレビュー・カードをお見せしよう。その前に、『ドミナリア』の展望デザイン・チームを紹介しなければならない。
マーク・ローズウォーター/Mark Rosewater(リード)
私は、7か年計画を立てていて、マジックの25周年にドミナリアを再訪することができると気がついたときのことを覚えている。マジックの故郷である次元に13年間も戻っていなかったので、マジックのかつての地盤に立ち戻ることができるかもしれないということに私は興奮したのだ。これから見ていく通り、それは誰もが想像していたよりも少し険しい道のりだった。
アーロン・フォーサイス/Aaron Forsythe
マジック開発部上席ディレクターであるアーロンは、私の上司だ。彼はそれほど多くのセットで働くことはできないが、今年1つだけセットに関われるのなら『ドミナリア』だと言ったのだ。アーロンは私同様、ドミナリアを舞台としたセットが大好きな古株だ。デザイン・チームでアーロンと一緒に働く機会はあまりないので、彼の帰還は素晴らしいことだった。
イーサン・フライシャー/Ethan Fleischer
イーサンは『ドミナリア』の先行デザイン・チームのリードを務め、また、ケリー・ディグス/Kelly Diggesと並んでドミナリアの歴史の専門家の1人でもある。(イーサンはドミナリアを舞台としたすべての本を読んでいると思う。ちなみに、本は本当に大量にあるのだ。)イーサンはこのデザイン・チームの心臓となり、チームの他のメンバー全員に影響を及ぼす情熱を持っていた。
イアン・デューク/Ian Duke
イアンはプレイ・デザイン・チームからの代理人だった。最初は確かデベロップ代理だったが、間もなくそうなったのだと思う。イアンの仕事は、我々が思いついたあらゆる狂ったものをトーナメントの世界で実際に使えるようなものにすることだった。彼はプレイテスト前にカードのコストを決め、我々のアイデアが正気のものかどうかを確認する責任者だった。
ケリー・ディグス/Kelly Digges
ケリーはクリエイティブ代理だった。まとめるべき物語のかけらが大量に存在しているのみならず、『ドミナリア』は過去を大量に参照するセットになることになっていて、ケリー(とイーサン)が我々のネタ本だった。扱うべき内容はあまりにも多かったが、ケリーはそれを見事に扱いきったのだ。
ガヴィン・ヴァーヘイ/Gavin Verhey
ガヴィンは私の次席者で、ファイルの管理をしていた。つまり、彼はすべての会議の記録を取り、すべての変更を記録し、カードをデータベースに入力し、すべての隙間を埋めたのだ。ガヴィンがこの仕事をしたのは初めてだが、すばらしい仕事をした。
リチャード・ガーフィールド/Richard Garfield
ここ数年、誰かがリチャードをデザイン・チームに迎えられないかと尋ねてきたとき、私は直接聞いてみるようにと常に答えていた。そして、デザイン・チームに入ることがありうるかどうかと尋ねられたリチャードは、私に求められればそうすると常に答えていた、ということに私は気がついた。つまり、我々2人はお互いに、相手が何かを言ってくることを待っている、ということに気づいていないまま数年が過ぎていたのだ。これに気づいて、私はリチャードに連絡をとり、「マジックの新しいデザイン・チームに参加するというのはどうですか。おそらく最適なセットだと思います。」と言ったのだ。いつもの通り、リチャードとともにデザインするのは素晴らしいことだった。
部屋の中の象
ドミナリアへの帰還にこれほどの時間がかかった理由として、その次元にはちょっとした問題があったということがある。
現代のマジックにおいて、次元はそれぞれが明白で明確な特徴を持っているものである。イニストラードはゴシックホラーの次元。テーロスはギリシャ神話の次元。アモンケットはエジプト風の次元。ゼンディカーは冒険世界の次元。ラヴニカはギルド都市の次元だ。
ドミナリアを舞台にしてあまりにも何年も過ごし、あまりにも多くのセットを作ってきたため、ドミナリアには単一の特徴が存在しなかったのだ。氷の次元。ジャングルの次元。ミュータントの次元。破滅後の次元。そのすべてがドミナリアだったのだ。我々の前にある問題とは、ドミナリアの本質を再現しながら、明白な特徴を作り出さなければならないということだった。そして、これは後に明らかになるが、非常に難しいことだったのだ。
イーサンとケリーはこれまで存在したドミナリアのあらゆるクリエイティブ的要素を一覧にまとめていった。場所や人々、クリーチャー、アーティファクト、魔法、物語、まさにあらゆる要素だ。我々はそれらのものを3つに分類していった。絶対残すもの、残すかどうかわからないもの、今回は扱わないもの。それが終わった時点で、我々は扱うべきものの多さに気がついたのだった。1つのテーマでそれらすべてを扱うことができるのだろうか。
先行デザインでは、いくらかの時間をかけてメカニズム的にドミナリアを振り返った。ドミナリアを舞台としたセットで登場したことがあるメカニズムをすべて列記したのだ。メカニズム的に使ったことがあって、その後使わなくなったものも振り返った。そのとき、私はいわば「『時のらせん』ルール」と呼んでいたものを思い出したのだ。
我々の任務は、マジックを過去に戻す(つまりかつてのようなプレイをするようにする)ことではなく、マジックの過去から要素を選び、それを現代のゲームプレイへと進化させることなのだ、と私は言った。我々は『時のらせん』ブロックでこの過ちを犯し、そして現代のマジックで何が許容され何が許容されないのかについて、終わりなき混乱を引き起こしたのだ。『ドミナリア』は思い出を呼び起こすものでありうるし、そうあるべきだ(『時のらせん』のいいところだ)。しかし、カラー・パイ違反や意図的にマジックから取り除いたものを戻すようなことをしてはならないのだ。
『時のらせん』から得られたもうひとつの教訓が、カードが文脈なしでもクールなものであるようにすべきだということである。例えば、強力な剣を過去から採用したとしたら、それは単独でもエキサイティングなものである必要がある。その剣がかつてマジックの有名な登場人物が持っていたものだということを知らなくても楽しめて、もし知っていればさらに価値が加わる、というようなものであるべきなのだ。
この工程を進めている間に、開発部はマジックのセットの作り方を根本から改める必要があると判断し、1か月かけて、1年間あったデザイン期間を6か月の展望デザイン期間に変更したのだ。展望デザインとは一体何で、それがこの開発部の新システムでどう働いたのか。それについてここから語らなければならない。
振り返って
展望デザインは、世界構築が外部のアーティストを招いて世界を描写するよりも前に行なわれる。通例、我々がすべきことを掴むため、クリエイティブ・チームは我々のひらめきの助けにするために数枚の絵を作ってくれる。
『ドミナリア』では、このセットのアート・ディレクターであったマーク・ウィンターズ/Mark Wintersがサム・バーレイ/Sam Burleyに過去の要素を組み入れながら世界の再生の明暗を示す絵を作らせたのだ。マークと他のクリエイティブ・チームのメンバーは、ドミナリアは長年の苦しみの後で再び繁栄しているが、過去の要素を組み入れたものだと強く感じていた。アートの中で、ファイレクシアの侵略の残骸の周りに作られた新しい都市が描かれていた。過去を無視するのではなく、過去は現在をなす一部になっているのだ。私は本当に、ドミナリアがその過去によって現在を定義している世界だというアイデアのことが気に入った。
初期『ドミナリア』コンセプト アート:Sam Burley |
そのとき、デザイン・チームに閃きが走った。ドミナリアを定義づける特質が歴史だとしたらどうだろうか。それ自身の過去で埋め尽くされている世界だとしたらどうだろうか。いろいろなことが起こった世界で、そのすべてが、どんな困難な状況に直面しても常に繁栄するための方法を見つけ続ける活気ある世界であるドミナリアを形作っているのだ。
この中でクールな部分は、歴史はユーザーにとって未知のものではないということである。ドミナリアが経験したのと同じように、我々ユーザーも経験してきたのだ。兄弟戦争。ファイレクシアの侵略。大修復。これらはどれもドミナリアの大事件だが、マジックそのものにおいても大きな出来事だったのだ。歴史というテーマが世界に特徴を与え、またこのセットでもう1つ求めていた郷愁というテーマとも直接つながった。
このテーマを掘り下げていくと、それがこの世界にすでに練り込まれたものだったということがわかってきた。マジックが始まったときでさえ、ドミナリアは現在を定義づける過去を持つ世界だったのだ。ウルザとミシュラはドミナリアの過去を掘り下げて古の文明であるスランについて研究した工匠だった。このテーマを掘り下げていけばいくほど、それが『ドミナリア』にまさにふさわしいということがわかってきたのだ。
中央に残されていた1つの疑問、それは、それがメカニズム的にどういう意味を持つかだった。歴史をどうやってゲームプレイ上で表現するのか。
調査開始
歴史をテーマにするということが決まって、我々は歴史がメカニズム的にどういう意味かについてブレインストーミングを行なう会議を開いた。何度も議題に上がったのは、墓地だった。
墓地には、かつて戦場に存在したクリーチャーやオブジェクト、そして過去に唱えられた呪文が詰まっている。フラッシュバックは文字通り過去を振り返ることを意味する名前のメカニズムなので、何度も話題に上がった。1つだけ問題があった。『イニストラードを覆う影』と『アモンケット』の両方(後者は『ドミナリア』と一緒のスタンダードに存在する)が、濃い墓地テーマを持っていたのだ。また、同じテーマを同時に存在する複数のセットで取り上げるという実験は、我々が狙っていたようには上手く行かなかったのだ。大テーマとしての墓地も、『アモンケット』で余波を使っていたことから、フラッシュバックも使うことができなかった。
それでは、墓地以外で何が歴史を表すだろうか。アーティファクトはどうか。アーティファクトの多くは、遠い昔の品物を表している。特に、アーティファクトという単語は、時代感を暗示しているものだ。伝説のパーマネントはどうか。それらそのものも有名でありうるし、また遠い昔の有名なものの血脈であることを示すものでもありうる。エンチャントの中にもあるのではないか。時折、我々はエンチャントを使って物語を語ることを描写することがあった。こうして一覧ができた。
我々は1つずつ検討していった。アーティファクト・テーマはふさわしいものには感じられない。確かに有名なアーティファクトは存在するが、ドミナリアは特にアーティファクトの世界という雰囲気ではない。
ドミナリアは間違いなく大量の有名な人物がいる世界なので、伝説をテーマにするのはそれよりはドミナリアにふさわしい。しかし、伝説をテーマにするのは以前『神河物語』ブロックで試みており、問題があることが証明されていた。伝説のパーマネントは高いレアリティに偏っており、特にリミテッドにおいてメカニズム的に意味を持たせるには開封比(ブースターパックに含まれるそのカードの割合)が低すぎるのだ。
全体のテーマとしての「エンチャント関連」はドミナリアには合わず、テーマとして扱えるようなエンチャントの一部分という分け方はほとんどない。どれも使い物にならないと思われた。
そんなとき、私はある提案をしたのだ。「歴史的」というような単語を作って、それを特殊タイプとして使うというのはどうだろうか。歴史的なものを示すものなら何でもこのラベルをつけるだけだ。歴史的クリーチャー、歴史的アーティファクト、歴史的エンチャント、歴史的土地。我々はプレイテストをしたが、この計画には2つの問題があった。
1つ目に、欠色で学んだ通り、プレイヤーの多くは開発部語で言う「目印」を嫌っている。目印とは、他のカードで参照するためという以外にメカニズム的意味を持たない単語のことである。2つ目に、そのメカニズムには全く後方互換性がない。ドミナリアを再訪して、過去のドミナリアのカードと組み合わせられないようなメカニズムを作るというのは間違っていると思われた。
ここで、アーロンからある提案があった。アーティファクトと伝説のパーマネントをひとまとめにしたらどうだろうか、と。マジックにおいて歴史を表している2つのものを組み合わせることで、メカニズム的に歴史を表現するというのはどうか、と。
私が歴史的という特殊タイプでやろうとしていたことに近かったので、私はそのアイデアのことを非常に気に入った。私は、プレイヤーがデッキを構築する間に別の考え方をしなければならなくするようなテーマが大好きなのだ。私は、複数の分類のものをまとめる方法を探していたが、アーロンのアイデアはそれと同じことを別の角度からしていたのだ。
プレイヤーは、アーティファクトをテーマとしたデッキを作ったことがある。伝説のパーマネントをテーマとしたデッキを作ったことがある。しかし、それらのテーマを混ぜ合わせたデッキを作ったことはないのだ。これは、新しい分類を作らずに新しいものを作り出す方法だった。
また、それは『神河物語』にあった伝説のカードの開封比問題を解決する助けにもなった。伝説のパーマネントは、それ単体では、開封比の問題がある。しかし、低いレアリティに編み込むことができるアーティファクトと組み合わせれば、回避方法になるのだ。(そのセットのリード・デザイナーであったデイブ・ハンフリー/Dave Humpherysは、開封比問題に対応するため、パックに1枚伝説のクリーチャーを入れる枠を作った。)
アーロンのアイデアから歴史的の最終形に到るまでの経緯は、それだけで1本の記事になるほどのものだったが、ここで重要なのは、それがこのセットの「歴史関連」要素を再現する助けとなるメカニズムだった、ということである。
古いもの
ほとんどのセットで、我々はメカニズムを1つ再録している。『ドミナリア』でも、それが必要だということはわかっていた。再録するメカニズムは何でもいいというわけではなく、ドミナリアのものでなければならない。
幸いにも、持ってくる元となるセットは大量に存在する。先行デザインの間に、我々はドミナリアを舞台としたセットに起源を持つキーワード・メカニズムすべての一覧を作った。話題にするセットが大量にあることがわかっていたので、大量の選択肢があるものだと思い込んでいた。
しかし、それは間違っていた。まず、ドミナリアを舞台にしていたのはマジックの初期のころであり、キーワード・メカニズムはあまり存在しなかった。例えば、初期のブロックでは、名前のついたキーワード・メカニズムは年に2つしか使っていなかったのだ。さらに、初期のメカニズムの一部はマジックの一部になってしまっているという問題もあった。しかも、単純に初期のメカニズムの失敗率は高かったのだ。
落ち着いてみると、使い物になる選択肢は3つしかないことがわかった。
- サイクリング
- フラッシュバック
- キッカー
この3つはどれも安定していて、充分こなれたメカニズムであり、1回か2回は再録されたことがあるものだ。どれでも、このセットに素晴らしいものを追加してくれるだろう。1つだけちょっとした問題があって、『アモンケット』でそのうち2つを実質的に使ってしまっていたのだ。サイクリングがあり、フラッシュバックはすぐに再利用するには余波とあまりにも似すぎていた。そうなると、残された選択肢は1つ、キッカーだけになる。
こうして、キッカーがこのセットに入ることになったのだ。
我々にとって幸いなことに、キッカーは実用的で柔軟なメカニズムであり、このセットに必要なのはマナを消費する方法だったので、すべてが上手く行ったことになる。
新しいもの
結びつけるための「歴史」メカニズムがある。ちょっとした郷愁の種として、再録メカニズムのキッカーがある。あと足りないのは、いくらかの目玉だった。マジックの25周年を『ドミナリア』で記念するにあたり、私は過去だけでなく未来を見たいと思ったのだ。
私はこのセットに、マジックは25年を経てもなおユーザーを新しいもので驚かせることができる力を失っていないということを、この大いなる記念の年にすべての人に思い出してもらえるような斬新なものが必要だと考えていた。
ドミナリアについて話す時に何度も話題になっていたものは、ドミナリアは歴史と物語に溢れた世界であるということだった。それらの物語に、メカニズム的に命を吹き込むことはできないだろうか。できるはずだ。興味深いことに、マジックの過去のアイデアの中にその基礎はあった。
初めてプレインズウォーカーを造ったとき、ターンに1つずつ、順番に発生する能力を持つというバージョンのものがあった。私が思い出したのは、最初のガラクだった。
〈初期ガラク/Early Garruk〉
復元力 ― 5
1) 2/2の緑の狼・クリーチャー・トークンを1体生成する。
2) あなたがコントロールしている狼・トークンの数を2倍にする。
3) ターン終了時まで、あなたがコントロールしている狼・クリーチャーはすべて+2/+2の修整を受け、トランプルを得る。
初期のプレインズウォーカーは、戦場に出た時に1つ目の効果が発生するというものだった。ガラクの場合、2/2の狼を生成することになる。その後、各ターンの開始時に、プレインズウォーカーは次の能力に進む。第2ターンには、ガラクは自軍の狼を倍にする。つまり、1体から2体にする。そしてその次のターンに、自軍の狼全てに+2/+2とトランプルを与える。おそらく攻撃することになるだろう。その次のターンには、最初の能力に戻ってまた狼を1体生成するのだ。これが、ガラクが戦場にいる限り繰り返されることになる。最初のプレインズウォーカーは今のプレインズウォーカーと同じように攻撃される。(これは、リチャードが初代『ラヴニカ』のときに建造物/Structuresというカード・タイプのためにデザインしたが使われなかったアイデアに基づいている。)
このシステムの問題点は、ときどき馬鹿な結果が起こることだった。例えば、ガラクをプレイして、狼・トークンを手に入れたとする。対戦相手がそれを破壊する。第2ターン、ガラクは自軍の狼・トークンを2倍にするが、狼・トークンがないので、何もしないことになる。そして、第3ターンには、ガラクは自軍の狼全てに+2/+2とトランプルを与えるのだが、狼がいないので、何もしないことになる。
私が何度も受けたコメントは、プレインズウォーカーは馬鹿っぽく感じられて、雇う意味がない、というものだった。もちろん、我々は何をするかをプレイヤーが選ぶという現在のシステムに変更した。忠誠度という構造のおかげで、プレインズウォーカーに時とともに積み上げる要素を持たせることができた。
物語の本質を再現する方法についてブレインストーミングしていたとき、私はこのプレインズウォーカーの原形を思い出したのだ。物語は特定の順番で起こるものだし、雇う意味など必要ない。この構造を始点として使えないだろうか。
リチャードはこのアイデアをいたく気に入り、家に帰ってから何枚かのプレイテスト・カードを作り、このメカニズムでできることを掘り下げてくれた。
リチャードは、同じことをするモードが複数あっても良いというアイデアと、各モードが行なうことを示すためにアイコンを使うというアイデアを思いついた。また、我々は実際のドミナリアの物語をデザインの素として使うというアイデアも手に入れていた。このメカニズムもまたセット・デザインでかなりの反復工程を経ることになるが、物語自身がゲームプレイ上複数ターンにわたって物語を表すという中核のアイデアはずっとそのままだった。
我々はこれを新しいカード・タイプにしようかとも話し合ったが、エンチャントにするほうがいいと判断した。最初は、これらは歴史的メカニズムの一部にするために伝説のパーマネントになっていたが、後に、戦場に同時に1枚しか存在できないという制限がないほうが上手く働くと判断し、歴史的として参照するものをアーティファクト、伝説のオブジェクト、英雄譚に変更したのだ。また、物語には始まりと中盤と終わりがあってそれで完結するものなので、すべて終わったらなくなるようにすることにした。英雄譚の進化については今後の記事でも語られることになるだろう。
嵐を越えて
これが、展望デザインの大枠である。『ドミナリア』のテーマは歴史であり、それを表すための3つのメカニズム(歴史的、キッカー、英雄譚)がある。また我々は、様々なものを再訪する個別カードのアイデアを考えるためにもかなりの時間を費やした。(その中のいくらかについては、カード個別デザインの記事で話そう。)
再訪と言えば、いよいよプレビュー・カードを公開する番であり、まずは長年待ちわびられていたカードをお見せすることから始めよう。そのカードとは、《ウェザーライトの艦長、ジョイラ》だ。マジックの歴史を知っている諸君にとっては懐かしい顔だろう。実際、彼女はウェザーライト号の初代艦長であり、『ドミナリア』のストーリーの中で再びその役目につくのだ。
ジョイラは鍛冶屋である。(実際、彼女は『ウルザズ・レガシー』の《修繕》のアートで描かれていた。)彼女は当時二度とカードにはならなかったので、我々はそれを『時のらせん』で正すことにした。しかし、我々はなぜか彼女にその性質に全くそぐわない待機関連の能力を与えてしまった。それに加えて、我々はなぜかアーティファクト関連のテーマに沿った青赤の伝説のクリーチャーを作ってこなかったので、ジョイラは新しいカードになることが運命づけられていたのだ。
歴史的メカニズムがあり、それはマジック史上最も歴史に注目した人物の1人であるジョイラにまさにふさわしいとわかっていた。最終的に、ジョイラらしくて青赤の「アーティファクト関連」の統率者であるジョイラになったのだ。
乗員のいない艦長など何の意味もない。
ストーリーのネタバレをするつもりはないが、諸君がすでに知っているであろう人物も、ジョイラとともにウェザーライト号に乗り込むことになる。
本日はここまで。『ドミナリア』のストーリーはまだまだあるが、今日の記事で展望デザインの雰囲気が伝われば幸いである。いつもの通り、いや、いつもにも増して、諸君からの反響を楽しみにしている。何と言ってもついに『ドミナリア』の話ができるのだから! メール、各ソーシャルメディア(Twitter、Tumblr、Google+、Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、『ドミナリア』の話をもっとする日にお会いしよう。
その日まで、我々が『ドミナリア』を作ることを楽しんだのと同じように、あなたが『ドミナリア』をプレイすることを楽しみにできますように。
(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)
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