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Making Magic -マジック開発秘話-
カードの義務 その1
カードの義務 その1
Mark Rosewater / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru
2014年7月7日
『基本セット2015』のプレビュー期間が終わったので、次はカード個別のデザインの話をする番だ。このセットに私は関与していないので、今回の話の重点はデザイン手順よりもむしろデザインそのものに関する話になることにご留意願いたい。また、今回特別に外部デザイナーを招聘したので、外部デザイナーの手による15枚のカード全てについて説明し、デザイン上の観点から一言二言添えるのは面白いだろう。どれが外部デザイナーの手によるカードかは、実際にそのカードについて語る時にご紹介しよう。
《紅蓮の達人チャンドラ》が最初に登場したとき、その2つめの能力、衝動的にカードを引く能力は、カラー・パイ上の赤の領域に関して私のブログ(Blogatog(リンク先は英語))で行われた議論から生まれたものであり、我々は赤に試しに認めたのだという話をした。そして、喜ばしいことに、それは成功した。つまりこの能力を持つカードが今後諸君の目に触れることが増えるということである。このカードは、「赤の《Ancestral Recall》はどんなカードになるだろう?」という疑問への回答である。
この能力でカードを引けるようにすることの興味深い点は、カードを大量に手にできるようになる結果として大きな呪文が唱えにくくなるということである。なぜなら、呪文を唱えるのに使えるマナはターン数に伴った数しか存在しないからだ。つまり、ゲームの終盤になると使えるマナが増えるので、この能力は強くなる。赤の能力にはそういう性質を持つものが多くはなかったので、長期戦になったときに赤らしい要素を増やすことができるのはいいことなのである。
これは1枚目の外部デザイナーのカードである。デザイナーの名前はマーカス・ぺルソン/Markus Persson、だがこの名前よりもニックネームである「ノッチ/Notch」のほうで知られているだろう。マーカスは「Minecraft」というゲームの作者であり、Mojang社の創設者である。ところで、私の息子のアダム/AdamはMinecraftの大ファンなので、ノッチがマジックのカードを作るという話をしたとき、これまで私がどんなマジック関連のニュースを伝えたときにも見たことがないほどに興奮していた(ありがとうノッチ、君のおかげで私はクールな父親になれた。一晩だけだったとしてもね)。
この企画をやると決定したとき、同時に決めたのが、外部デザイナーがカードをデザインできる範囲を少し広く認めようということだった。もちろん通常のデザインとデベロップの工程を経ることになるが、彼らの手によるカードをより特別なものに感じさせたかったので、我々が普段内部デザイナーに認めているよりも少し認める範囲を広げることにしたのだ。
このカードはその好例である。通常、赤はカードを引くことに関しては第4色(白よりマシなだけ)である。赤にも物あさり能力や《変化の風》のようなカードは認めているが、どちらもカード・アドバンテージを得るカードではない。また、カード・アドバンテージを得られる、衝動的にカードを引く能力も存在する(上記の通り)。しかしこれの可能性は大きくはない。《強引な採掘》は、長期戦になったときのカードを引くカードである。マーカスはフレイバー的に素晴らしい仕事をした。伝統的に、赤は長期戦でカードを引ける色ではなかったが、彼はそれを正すフレイバーに富んだ方法を見つけ出し、赤らしくしたのだ。そう、赤はこの取引はできるが、その結果として問題が生じることがある――いかにも赤だ。
もう1つこのカードに関して気に入っている点は、これまで存在した大問題を解決する助けとなるということである。赤は、統率者戦では非常に使いにくい要素を持つ色である。攻撃的になりがちだが、それは全員のライフが2倍あり、そして複数の対戦相手によって妨害されるフォーマットでは有効とは言えなかった。そこで、赤はずっと長期戦で有効なカードを探し続けていたのだ。マーカスはその問題を解決してくれる、フレイバーに富んだ赤のカードを作り出してくれたのだ。
デザイン・チームは、この基本セットに何体かの伝説のクリーチャーを入れることにしたが、何でもいいというわけではなかった。ユーザーがよく知っているクリーチャーを入れるのだ。よく知られたクリーチャーの第2版を作るのは、新しいカードと思うのに充分違っていて、かつ同じクリーチャーだと感じるのに充分似ていなければならないので、いつも困難が伴う。私は、この新しいアヴァシンはそのバランスを見事に取っていると感じた。初登場時と同じ防御的フレイバーを持ちながら、独自のプレイスタイルを持つ別のカードに仕上がっている。
これは2枚目の外部デザイナーのカードである。デザイナーの名前はマイク・クラヒューリク/Mike Krahulikとジェリー・ホルキンス/Jerry Holkins、ウェブコミックの「Penny Arcade」で、ゲイブ/Gabeとティコ/Tychoとして知られている。このカードは彼らのコミックでのジョークに基づくトップダウン・デザインだ(ゲイブとティコはいつもパックマン時計の所有権を巡ってお互いを「殺し」あっているのだ)。そのフレイバーにあわせるため、このカードはプレイヤー間で所有権が行ったり来たりする能力を持つ装備品でなければならなかったわけだ。
このカードがもしオーラだったとしたら、エンチャントされたクリーチャーが死んだときに動くだけだ。しかし、これは装備品なので、もうちょっとおかしなことが起こる。その理由は、装備品とオーラを差別化するために、アーティファクトを装備させられるのは自分のコントロールしているクリーチャーだけに限られているからである。また、フレイバー上の理由からも、このカードの所有権が変わるのはいいことである。
このデザインの気に入ったところは、これがクリーチャーのパワーを強化することで攻撃したくなるようになっており、それによって装備しているクリーチャーがより死亡しやすくなり、また、装備しているクリーチャーに対してクリーチャー除去を使いたくなるに充分なボーナスを与えていることである。このカードの面白みは、何度も行ったり来たりするところにある。実際、このデザインのどこを一番楽しんだかというと、トップダウンの元が物語の要素であること、そしてマイクとジェリーがその物語をゲーム内の形で見事に再現してくれたことである。《強欲の護符》を装備するのはいいことだから、これを自分のクリーチャーに着けさせられるように、今これを身につけているクリーチャーを殺したくなるわけだ。常々、良いデザインは物語を作ると言ってきたが、《強欲の護符》はまさにその通りのカードなのだ。
ガラクは悪に染まった。物語を知っているなら、この小さなアーティファクトが果たした大きな役割を知っていることだろう。だから、『基本セット2015』こそがこの鎖のヴェールをカードにするのに相応しい場所だと思う。デザインの鍵は、これをプレインズウォーカーと組み合わせるところにある。これとプレインズウォーカーを一緒に出していれば、さらに強くなる。しかし、プレインズウォーカーを出していなければ、《鎖のヴェール》は巧く働かないのだ。
《鎖のヴェール》は、プレインズウォーカーの忠誠度に関する初めてのカードである。プレイヤーが長きに渡って求めてきたものだったが、非常に危険な部分でもあるので、実際にカードにするにはかなりの時間がかかった。《鎖のヴェール》は見逃すにはあまりにもったいないチャンスに思えたのだ。
これは3枚目の外部デザイナーのカードである。デザイナーの名前はマイク・ノイマン/Mike Neumann、「ボーダーランズ」のクリエイティブ・ディレクターで、Gearbox Softwareで働いている。このデザインにはいくつかクールな要素がある。まず、このクリーチャーはカードを引くことによって+1/+1カウンターを得るので、カードを引くこととクリーチャーの成長とを関連づけている。効果を最大にするためには他のあらゆる手を使ってカードを引きたいということになるので、青に相応しい。また、カードを引くことはマジックを普通にプレイしているだけでも発生するので、単体でも有用である。このため、このカードは構築の軸にもなり得るし、リミテッドでも有効である。
もう1つこのカードにはクールな特徴がある。それが、自動のバックアップだ。対戦相手がなんとかして《地割れ潜み》を除去したとしても、今度は1/1島渡り軍団という問題が発生するのだ。このカードは、この2つの要素をフレイバー的に見事に繋げているが、私が気に入ったのはそのことによってジョニーのデッキ構築意欲をかき立ててくれることである。《地割れ潜み》は、カードを引く方法と、大量の1/1トークンを活かす方法を必要とするわけだ。そのためにはどうすればいい? デッキ構築上の妙味はそこにある。
デザイナーとしてもっとやりたいこと、それは、プレイヤーがそのカードの持つ独特でフレイバーに富んだ要素を最大限に活用するためにどうすればいいかを考えたくなるような、独特で突飛なフレイバーを持つカードを作ることだ。
カラー・パイの話をするとき、カラー・パイそのものの微妙なところや各種能力をどう割り当てるか厳密に定める最高会議のようなものがあると思われがちだ。しかし、それは事実ではない。知っての通り、カードを作っていくのは各個人だ。そして、カードを作って行く中で、カラー・パイは少しずつ変遷していくのだ。フレイバーにメカニズムを合わせるのは簡単なので、カード単体で見れば色を当てるのは簡単だ。しかし、全体として見ると、マジックにおいてある効果がどの色であるかは確定したものではなく、混乱が生じるのだ。その一例が、カードを戦場からオーナーのライブラリーの一番上に置く、という効果である。
緑にその効果は存在する。黒にも存在する。その気になれば、赤にも混沌っぽいバージョンを作ることができるだろう。しかし考えてみれば、この効果を我々が最も多く作っているのは白と青である。白では遅延戦術、青では超《送還》を意味するものとして作られている。
こういう対立が生じた場合、我々はそれをカード技術の週例会議で取り上げる。カード技術とは、開発部が技術的問題について語り合う会議である。この能力はそれほど頻繁に使われるものではないので、2色に特徴付けたものを持たせるのは無理だと結論が出た。そこで、この能力をどの色のものにするかという議論を始めた。白も青もどちらも譲らなかったが、最終的には、遅延戦術というよりおも超《送還》のほうがそれらしいということで青のものになった。今後はこの類の効果は白ではなく青でよく見かけられることになるだろう。
これは4枚目の外部デザイナーのカードである。デザイナーの名前はエドモンド・マクミラン/Edmund McMillen、「Indie Game: The Movie」で取り上げられた「Bindig of Issac」と「Super Meat Boy」のデザイナーだ。このカードはリソースを操るもので、私はこういうカードを「エンジン・カード」と呼んでいる。このカードは、ライフを+1/+1カウンターに変換でき(ただし《残酷なサディスト》に対してだけに制限されている)、さらに+1/+1カウンターをクリーチャーへのダメージに変換できるのだ。これらの能力がタップを必要とすることも気に入っている。というのは、ライフをクリーチャーへのダメージに変換するというアイデアは好きなのだが、あまりに早く簡単にできてしまうのは問題だからである。
また、私はこの1つめの能力そのもののエキサイティングさも楽しんでいる。ライフを支払って自分のクリーチャーをタップすることでこれを強化した方がいいのか、それともこれで攻撃するほうがいいのか? 私がこのカードをデザインしたなら、ここで終わりにしていただろう。これだけでもうまく働く、フレイバーに富んだ能力である。しかし、私はいつもマジックのカードをデザインしているが、エドモンドはこのカードしか作っていない。そこで、彼は(当然ながら)もう少し詰め込みたいと思ったのだ。2つめの能力は、再び小さく戻ってしまうことを代償として、この成長をダメージに変換するものだ。
この2つの能力を組み合わせると、様々な選択肢を持つクリーチャーができあがる。現在、《残酷なサディスト》のようなカードが大量に存在すると盤面が複雑になりすぎるので、このようなクリーチャーをどれほど入れるかについては慎重になっている。しかし、これを魅力的なレアとして投入することは本当に楽しいことである。
『基本セット2015』の箱、あるいは『基本セット2015』のポスター、その他このセットの宣伝広告を目にしたなら、ガラクがこのセットに入っているかもしれない、という手がかりを得ることだろう。ガラクは悪に堕ち、そして『基本セット2015』最大の敵として立ちはだかるのだ。我々はその誇大広告に負けないだけのカードを提供しなければならないということになる。
そのためには一体どうしたらいいのか? 最初、我々はガラクを2色にしようとした。基本セットに登場したプレインズウォーカーの中で多色だったのは《プレインズウォーカー、ニコル・ボーラス》だけであったが、彼は再録カードだった。史上初となる、新作の多色プレインズウォーカーとしてガラクが登場したらどうなるか?
ガラクは現時点で明らかに緑黒なので、これはいい選択に思われた。
次に、我々は至高の狩人のフレイバーを明記する必要があった。ガラクの獲物は、動物からプレインズウォーカーに変わっていた。よし、それなら能力の1つをプレインズウォーカーを殺すものにしたらどうだろう? とても魅力的だ。その後、デザイン/デベロップ・チームはガラクが捕食者らしくなるように全ての能力を作り上げるのに尽力した。
そこまでは出来たが、あと1つ魅力的なことが必要だった。我々がプレインズウォーカーでやってきたことのなかで、未だ繰り返していないことはないだろうか? そう、あるとも。
諸君はこのカードを覚えているだろうか? 《精神を刻む者、ジェイス》は単一のプレインズウォーカーが4つ能力を持った唯一の事例だ(ああ、うん、《情け知らずのガラク》/《ヴェールの呪いのガラク》にも4つ、いや5つの能力があったよ、でもあれは面を2つ使っていたじゃないか)。《頂点捕食者、ガラク》が、史上2枚目となる4つの能力を持つようにしてみよう。できた!
こうして、『基本セット2015』のために、この巨大で邪悪なプレインズウォーカーができたのだった。
2年前、私はこの次なる外部デザイナーと面会する光栄に浴することができた(一応言っておこう、5人目だ)。ジョージ・ファン/George Fan、彼は「Plants vs. Zombies」のデザイナーである。『イニストラード』のデザイン中に、このゲームへの賛意を示すカードを作っていたことから、私がこのゲームのファンだと言う諸君もいることだろう。
また、私自身お気に入りのデザイナー系記事、「抱き合わせ」はジョージに触発されて書いたものだ。つまり、当然のことながら、私はジョージがマジックのカードを作る機会を得たときに作るものがどんなものか、非常に興奮していたのだ。そして彼は期待を裏切らなかった。まず第一に、私はパワーやタフネスが変動するクリーチャーが大好きだ。特に、マナ・コストに{X}が入っていたりすると最高だ。長年にわたり、私はそういったカードを何枚か作ってきたが、その多くは緑で、デザイン名は「クリーチャーボール/Creatureball」だった。しかし、そこはジョージにとっては出発点に過ぎなかったのだ。ジョージはさらにもう1つ、人気のある、遠い昔の緑のカードからの効果を掘り起こしたのだ。
ただの巨大ハイドラではなく、それにさらにおまけがついていたらどうだろう? ハイドラが大きくなればなるほど、そのおまけの可能性も大きくなっていくのだ。5年前、私は「無作為はともだち」という記事を書いた。その中で、最善の無作為は、何が起こるか判らないがたいていの場合良いことが起こるものだ、という理由について語ったのだ。プレゼントを受け取ったなら、それが一体何なのかは判らないが、それでも何か受け取って嬉しいものだと予想するだろう。素晴らしいデザインは素晴らしい物語を作る。そして、《起源のハイドラ》は期待を裏切らない。そして、ジョージはこれを植物・ハイドラにするという彼らしさも発揮している。
これは6枚目の外部デザイナーのカードである。デザイナーの名前はストーン・ライブランド/Stone Librande、現在はRiot Gamesでリード・デザイナーを務めており、かつては「Diablo 3」のデザイナー、そして「SimCity」(訳注:2013年版)のクリエイティブ・ディレクターでもあった。《ゴブリンのドカーン物取扱者》は、私の心を直撃したデザインだ。なんと言っても、私は、かつてこんなカードを作ったことがある。
ストーンは、良いゴブリンのデザインの、私が好きな部分を完璧に捉えていた。まさにゴブリンであることの本質を示している。《ゴブリンのドカーン物取扱者》は仕事があり、その仕事が正しく行われていれば非常に強力になる。問題が1つだけあって、もう言ったかもしれないが、こいつはゴブリンなんだ。ストーンは、今まで我々がほとんど触れてこなかったことに手を着けた。アーティファクト・トークンである(アーティファクト・クリーチャー・トークンなら『アルファ版』からリチャード/Richardが作っている)。《ゴブリンのドカーン物取扱者》は地雷を埋設する。地雷というものは効果的に使えば非常に危険なのだ。
ただし、《ゴブリンのドカーン物取扱者》が地雷を埋設するたび、半分の確率で――ドカーン! ただし、ここがデッキ構築に一ひねり必要になるデザインなのだが、《ゴブリンのドカーン物取扱者》のタフネスはちょうど2。つまり、何らかの方法でタフネスを強化すれば、失敗しても生き残れるのだ。このカードはデッキを組んでみたくなるカードでありながら、フレイバーにも富み、面白いものなのだ。
『基本セット2015』は6つの次元を舞台としている(それらの次元は『マジック2015 ― デュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズ』の舞台でもある)。その次元の1つがテーロスなので、このセットのデザイナーたちは『テーロス』ブロックに関係したカードを数枚作り、スタンダードに影響を与えるようにすることができた。《ヘリオッドの巡礼者》はまさにその例だ。あらゆる意味で、このカードは『テーロス』ブロックのセットのどれに入っていてもおかしくない。《ヘリオッドの巡礼者》がクールなのは、授与クリーチャーと組み合わせて見事に働くからである。
これは基本セットの利点の1つである。このセットが1つの世界に封じられていないので、前後のテーマに合わせたカードを追加することができるのだ。後? ああ、いや、どのカードが『タルキール覇王譚』ブロックと組み合わせて巧く働くのか伝えることはできないが、基本セットの中には現在の環境だけでなく未来の環境でも巧く働くカードがいくらか仕込まれているというのは、我々にとっていつものことだとは言える。どのカードがそうなのか、よく見て考えてみて欲しい。
記録に残すため、ここで公式に宣言しておこう。スズメバチは私の命取りである。実生活の方では何もスズメバチにこだわりはないのだが、マジックにおいては緑に無理矢理何かを押し込む理由付けとして使われ続けている(ある理由により、白であるべきだという説得ができない――誰でもいい、ハチについて読んでみるがいい)。この最新のアプローチは、スズメバチを1/1で接死と飛行を持つクリーチャーにしている。
これならまあ、緑らしいカードに近づいていると言える。緑の飛行は絶滅すべきだとは言わない(ただし、小型クリーチャーなら、だ)。4体以上の接死持ちトークン・クリーチャーを作らなくてもよかったとは思うが、少なくとも正しい方向に向いているとは言えると思う。ただ、まあ、なんで白じゃないのかと。
諸君はマジックのカードをデザインし、また、マジックのカードのイラストを描いた人物の名前を挙げることができるだろうか? ジェスパー・ミルフォーズ/Jesper Myrforsと私は、カードをデザインし、そしてそのカードのイラストを描いた(それぞれ《深き闇のエルフ》と《こっち見てよ、僕開発部》がその作品である)。マット・カヴォッタ/Matt Cavottaは多くのカードのイラストを手がけ、そして『未来予知』のデザイン・チームでは数枚のカードをデザインした。《熱いスープ》によって、4人目となる人物が登場した(ああ、もしかしたら誰かを忘れているかもしれない)。《熱いスープ》は7枚目の外部デザイナーのカードであり、デザイナーの名前はジェームズ・アーネスト/James Ernest。「Chepass Games」のオーナーにしてリード・デザイナーだ。ジェームズは多くのカードをデザインしてきて、中でも「Kill Doctor Lucky」は非常に有名である。
諸君の多くが知らないであろうこととして、何年も前、ジェームズはウィザーズ・オブ・ザ・コーストで働いていたのだ。その頃、彼はマジックのカードのイラストを描くことがあった。そのカードとはこれである。
このカード《Reality Twist》は『アイスエイジ』のカードで、つまりジェームズがカードのイラストを描いてからカードをデザインするまでには19年の開きがあるということになる。幸いにして、待っただけのことはあった。先述の通り、外部デザイナーにはカードを作る上で多少多い自由度を認めていた。そして、このカードはメカニズム的な制約だけでなくクリエイティブ的な制約をも押し広げているのだ。マジックの黎明期にはクリエイティブ的にばかげたことを色々とやってきたが、時を経て次第にマジックの幅が狭められてきていた。今でもマジックに大量のユーモアは存在するが、しかし「ばかげたこと」は減っている。そして、ジェームズのカードはクリエイティブの協力なしではできなかった。《熱いスープ》、ジェームズが名付けたものだが、これは《熱いスープ》以外ではあり得ないのだ。
そこで、アーロン・フォーサイス/Aaron Forsytheは自らこのカードを携えてクリエイティブ・チームを訪れ、「これが通常のクリエイティブ的な枠からはみ出ているのは判っている、だが、このプロモーションでは問題だろうか?」と言ったのだ。クリエイティブ・チームが同意したので、《熱いスープ》が諸君の手元に届けられることになる。デザインはもちろんトップダウンだが、メカニズム的にもよくできている。これこそが機能とフレイバーの完璧な融合だと言えるのだ。
時の流れは速いもの
このカード個別の記事はすぐに書けるのだが、もう文字数の制限がやって来た。ということで、来週、その2をお送りすることになる。いつものとおり、今日の記事についての感想を聞かせて欲しい。メール、掲示板、各ソーシャルメディア(Twitter、Tumblr、Google+、Instagram)で聞かせてくれたまえ。
それではまた来週お会いしよう。
その日まで、他の人がやりたいと思うような楽しい仕事があなたとともにありますように。
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