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Making Magic -マジック開発秘話-
アンの視点
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Making Magic
アンの視点
Mark Rosewater / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru
2013年8月12日
数ヶ月前、ポッドキャストで、Unglued 2のデザインについての話(リンク先は英語)をした。『Unhinged』ではなく、仮に『Unglued 2: The Obligatory Sequel(当然の結果)』と呼ばれていた、発売に至らなかったセットのことだ。デザインはほぼ完成しており、アートは全て揃っていた。ただし、カードは出来ていなかったのだ。
セットのデザインについて語る時、私は、作られなかったものについてちらりと見せるためにカードとそのアートを見せるという面白い記事があると気がついた。『Unglued 2』の多くは『Unhinged』で使われたので、今回見せるのは『Unhinged』で使えない何らかの理由があったものということになる。メカニズム的テーマに関連しなかったからというものもあれば、『Unhinged』の時期にはフレイバーが時代遅れになっていたものもある。カードを見せて、そしてなぜそれらが作られなかったのかについて語っていく。もちろん最高のものは採用されているから、ここで示すものは実際のセットに比べて平均的には劣るものということになる。
実際に作られなかったマジックの商品についての考察は珍しい。まだ編集の手を通っていないので、テンプレートも非常に乱雑なものだ。さらに加えて、この商品は15年前のものなので、テンプレートは時代遅れで誤っていることもある。しかし、その方が面白いだろうから、文章は当時のままにしておこう。(訳注:参考のために添えた日本語訳は単語やテンプレートは現在のものに揃えてあります)
〈エアロビの先生/Aerobics Instructor〉
アート:Phil Foglio |
〈エアロビの先生/Aerobics Instructor〉
{3}{W}
クリーチャー ― 先生
1/2
{2}{W}, {T}: 6面サイコロを振る。6が出たらエアロビの先生を生け贄に捧げる。そうでなければ、あなたはそのサイコロの出目に等しい点数のライフを得る。2W, T: Roll a six-sided die. On a 6, sacrifice Aerobics Instructor. Otherwise, you gain life equal to the die roll.
諸君は、これらのカードにいくつかのテーマが通底していることに気付くだろう。その1つが、サイコロを振ることだ。『Unglued』にはサイコロを振るというテーマがあり、『Unglued 2』はそれを継承していた。これは『Unglued』で人気が出なかったので、『Unhinged』では採用されなかったのだ。どちらも同じデータを見ているのに、『Unhinged』で採用されなかったサイコロというネタをなぜ『Unglued 2』では使うことにしたのかは思い出せない。しかし、サイコロの問題点は使うことそのものにあるのではなく、『Unglued』での使い方にあったのだと今は考えている。巧く使えば、サイコロを振ることは非常に面白くできるはずだ。
このカードはクリーチャー5枚からなるサイクルの一部である。それらのカードでは、6面サイコロを振り、そのサイコロから何らかの有利を得るが、6が出たらそのカードを生け贄に捧げなければならない。
〈エアロビの先生〉についてもう一つ覚えているのは、最初に上がってきたイラストを却下しなければならなかったということだ。そのイラストは、教室で教えている先生をその背後から見たというもので、マジックにとって少々危険だったので、新しいものを書いてもらうことになった。
〈まあでっかいズボン/Some Fat Pants〉
アート:Phil Foglio |
〈まあでっかいズボン/Some Fat Pants〉
{2}{W}
エンチャント(クリーチャー)
エンチャントされているクリーチャーは+2/+6の修整を受ける。
三人称で話すこと。
三人称で話さない場合、まあでっかいズボンを生け贄に捧げる。(三人称がわからない人は辞書を引くこと)We recommend you speak in the third person.
Whenever you don't speak in the third person, sacrifice Some Fat Pants. (If you don't know what third person is, get a dictionary.)
このカードが『Unhinged』に採用されなかった理由は、このカードが当時のマジックのスラングに基づくものだからである。「でっかいズボン/Fat Pants」は、エンチャントされているクリーチャーのタフネスを強化するエンチャントを示すスラングだった。「まあ/Some」は「とても/very」を曖昧に表すスラングだった。当時はどちらもマジック界でよく使われている言い回しだったのだ。
「三人称で話すこと」という記述自体が三人称で書かれていないのは面白いことだ。編集を通したら、多分これは直されていただろう。なんにせよこの注釈文は傑作だと思う。このセットのテーマの1つは、こういったスマートで愚直な注釈文なのだ。
〈ケ・セラ・セラ/Que Serra Serra〉
アート:Douglas Shuler |
〈ケ・セラ・セラ/Que Serra Serra〉
{3}{W}{W}
クリーチャー ― 天使
4/4
飛行
ケ・セラ・セラは攻撃してもタップされない。
あなたのターンの間、ケ・セラ・セラがどれほど壊れていてバランスを壊すかを対戦相手に説明する。そうしなければ、ターン終了時にケ・セラ・セラを生け贄に捧げる。Attacking doesn't cause Que Serra Serra to tap.
During your turn, describe to your opponent how Que Serra Serra is broken and unbalances the game. If you don't, sacrifice Que Serra Serra at end of turn.
私がこのセットのデザインを始める直前に、開発部は、《セラの天使》が強すぎるので基本セットには入れないという決定を下した。私はその判断が正気ではないと思い、その決定を茶化すためにこのカードを作ったのだ。
歴史的視点で見て、このカードの最も面白いことの1つに、カード・イラストを全面に表示するというアイデアがある。これは『Unglued』の土地に影響を受けたもので、後の全面アートのカードは、プロモの新しいギミックを考えるときに私が「『Unglued 2』で使った手があった」と言ったことから生まれたのだ。
もう1つ、このカードのクールな点は、全面アートにしただけでなく、『アルファ版』の《セラの天使》のイラストを描いたダグ・シューラー/Doug Schulerのところまでアート・ディレクターを向かわせ、全面アートのカードのためにもう一度描いてもらったことだ。《セラの天使》のウェストから下がどうなっているのか知りたかった諸君、その答えはここにある。
ちなみに、「攻撃してもタップされない」と書かれているのは、当時まだ警戒キーワードがなかったからである。
〈ボツリヌス中毒症/Botulism〉
アート:Mark Brill |
〈ボツリヌス中毒症/Botulism〉
{2}{U}
エンチャント(クリーチャー)
エンチャントされているクリーチャーのコントローラーのアップキープの開始時に、そのプレイヤーは{3}を支払ってもよい。そうしないなら、そのプレイヤーは毒カウンターを1個得る。At the beginning of the upkeep of enchanted creature's controller, that player may pay 3. If he or she doesn't, that player gets a poison counter.
『Unglued 2』のもう一つの大テーマが毒だった。毒は『テンペスト』の大テーマだったが、当時、開発部は毒をマジックから徐々に失わせようとしていた。これは『Unglued』の制作当時のことなので、『Unglued 2』にかかっていた私は銀枠世界こそ毒の生きる道だと判断したのだった。
また、『Unglued』に鶏テーマがあったように、このセットにも物理的なテーマを与えたかった。私は、毒クリーチャーとして、動く野菜を選んだ。このカードのフレイバーは汚染された野菜というイメージを物語っているし、絵をよく見るとほうれん草が描かれているのがわかるだろう。
野菜テーマに関して言うと、私は全アーティストに、イラスト内に野菜を潜ませるように頼んだ。今日紹介しているイラストをよく見ると、野菜が隠されているのに気付くことだろう。『Unglued 2』のアートの中には『Unhinged』で使われたものもあるので、『Unhinged』のアートにも野菜が隠されていることがある。
〈小さなティーポット/Little Teapot〉
アート:Kev Walker |
〈小さなティーポット/Little Teapot〉
{1}{U}
インスタント
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは立ち上がり、「私は小さなティーポット」と歌い、片腕でティーポットの持ち手を象りながら「こっちが持ち手で」と歌い、逆の腕で注ぎ口を象りながら「注ぎ口」と歌う。そうしないなら、あなたがそうすることでゲームに勝利できる。Target player may stand up, sing for everyone's amusement "I'm a little teapot, short and stout," form a teapot handle with one arm, sing "here is my handle," form a spout with the other arm, and sing "here is my spout." If he or she doesn't you may do so to win the game.
『Unhinged』の仕事を始めたとき、ブランド・チームの1人が、対戦相手に馬鹿なことをさせることは止めて欲しいと頼んできた。自分自身が馬鹿なことをできるというカードを作ることはできるが、馬鹿なことをしたいと思っていないプレイヤーに強制するのはだめだと。そうなると、このカードは『Unhinged』には入れられない。
このカードは、マジックのプレイヤーに「小さなティーポット/Little Teapot」の歌を歌わせるのは面白いだろう、という発想から来ている。ケヴ・ウォーカー/Kev Walkerにティーポットのポーズを取った怪物を描いてもらうのも非常にエキサイティングなことだった。このカードは日の目を見なかったが、それでも私はこのカードの存在に満足しているのだ。
〈無茶な時間渡り/Time Walk on the Wild Side〉
アート:Mark Tedin |
〈無茶な時間渡り/Time Walk on the Wild Side〉
{1}{U}
インスタント
無茶な時間渡りを追放する。無茶な時間渡りが追放領域にあることを除き、ゲームの局面を可能な限りそのターンの開始時に戻す。(ちぎられたカードはそのままであり、スクラッチ・カードの削られた文章欄は再利用できない。)Remove Time Walk on the Wild Side from the game. Return the game to the state it was in at the beginning of the turn as much as possible except Time Walk on the Wild Side is still out of the game. (Ripped up cards are still out of the game and text scratched on scratch cards can't be reused.)
銀枠カードの素晴らしいところは、技術的には不可能でもやろうとするととても面白いことになるようなことができるということだ。このカードは混乱を巻き起こすが、プレイテストしても楽しかった。これが『Unhinged』に採用されなかったのは、銀枠世界でもあり得ないほどに混沌となったからである。
『Unhinged 2』は人気のある古いカードをパロディにしたものが多い。もちろんこのカードは『アルファ版』の《Time Walk》のパロディである。
ちなみに、ここで「スクラッチ・カード」と書かれているのに気付いただろうか。そういうのもあるのだ。
〈オペラ座の鶏人/Bantam of the Opera〉
アート:Heather Hudson |
〈オペラ座の鶏人/Bantam of the Opera〉
{3}{B}
クリーチャー ― ニワトリ
2/2
{2}{B}, {T}: クリーチャー1体を対象とする。6面サイコロを振る。6が出たなら、オペラ座の鶏人を生け贄に捧げる。そうでないならそのクリーチャーはターン終了時まで?X/?Xの修整を受ける。Xはサイコロの出目に等しい。2B, T: Choose target creature and roll a six-sided die. If you roll a 6, sacrifice Bantam of the Opera. Otherwise, that creature gets -X/-X until end of turn, where X is the number rolled on the die.
『Unglued』にはニワトリ・テーマが存在していた。このセットの発売後、ウィザーズの誰か(誰だかは覚えていない)が、「また『Unglued』を作るんだって? ニワトリネタなら、オペラ座の鶏人ってのはどうだい?」と言ってきたのだ。そこでこのカードが出来たわけである。『Unglued 2』はニワトリをテーマにしてはいないが、ニワトリ・デッキに追加できる新カードをあげるのに問題はない。
このカードを公開する理由は、イラストを見るたびに爆笑してしまうからだ。このカードは〈エアロビの先生〉と同じサイクルの一部である。『Unglued』のニワトリにはサイコロ・テーマがあったので、ここにあるのは相応しいだろう。
〈壊疽コショウ/Gangrene Pepper〉
アート:Edward P. Beard, Jr. |
〈壊疽コショウ/Gangrene Pepper〉
{1}{B}
クリーチャー ― 野菜
1/1
沼渡り(意味はわかるだろ)
毒:1Swampwalk (You know what it means.)
Poison: 1
毒がやりたくて、動く野菜は面白いということはわかってた。となればもちろんこれは組み合わせるしかない。『Unhinged 2』は「野菜は身体にいいとは限らない」というようなキャッチコピーにするつもりだった。そのために、野菜とマジックの語呂合わせが必要だった。なぜこのカードのクリーチャー・タイプがゾンビでないのかはわからないが、このカードが表しているのはゾンビ化した動く野菜だ。
毒に関して。私は数字の着いたキーワードで書くことにした。つまり、このクリーチャーが戦闘ダメージを与えると、そこに記された数の毒カウンターを載せるのだ。なぜ注釈文に書かなかったかはわからないが、編集の手を通っていれば(繰り返しになるが、実際は通っていない)「毒:N」は後の未来予知にあったように「有毒 N」に書き換えられていたことだろう。『ミラディンの傷跡』のデザイン中に、我々は有毒を大メカニズムにしようと取り組み、最終的に感染というメカニズムに仕上げたのだった。
もう一言、『Unglued 2』で一番のお気に入りは、しゃれた注釈文だ。
〈衣装棚の骸骨/Skeletons in the Closet〉
アート:Randy Gallegos |
〈衣装棚の骸骨/Skeletons in the Closet〉
{B}
クリーチャー ― スケルトン
1/1
{2}{B}: 衣装棚の骸骨を再生する。
{B}{B}, {T}: プレイヤー2人を対象とし、その投票を交換する。この能力は投票が宣言されてから投票されるまでの間にのみプレイできる。2B: Regenerate Skeletons in the Closet.
BB,T: Exchange votes of two target players. Play this ability only after a vote has been called but before voting has started.
このカードは、このセットに存在する別のテーマをほのめかしている。そう、投票カードだ(後で公開するが)。このカードは投票を操作するというものだが、テンプレートが不充分だったためにその処理は理解しにくいものになっている。処理はこうだ。投票カードのサイクルが存在している。各投票は各プレイヤーが1票持っており、追加の投票権利を得る方法はそこに書かれている。それで、このカードは、プレイヤーが投票できる権利の数を交換するという意図で作られた。例えば、私が1票、他の誰かが2票持っているときに〈衣装棚の骸骨〉を使えば私が2票、そのプレイヤーが1票を持つようになるわけだ。
長年にわたる研究の結果、このカードが本当にやりたいのは投票権を増やすことであって、投票を交換するという形で混乱を招く必要はないということがわかった。まあ、それでもこのカードに含まれたシャレやイラストは大好きなんだがね。
〈注意喚起+意気消沈/Heads Up+Tail Spin〉
アート:Mike Raabe |
〈注意喚起+意気消沈/Heads Up+Tail Spin〉
{1}{R}{R}
エンチャント
サイド1:
あなたのアップキープの開始時に、コイン投げを行う。裏が出たなら、このカードを180度回転させる。
あなたがコントロールするクリーチャーは+2/+2の修整を受けるとともに先制攻撃を得る。
サイド2:
あなたのアップキープの開始時に、コイン投げを行う。裏が出たなら、このカードを180度回転させる。
あなたのクリーチャーはすべて?5/?0の修整を受ける。Side 1:
At the beginning of your upkeep, flip a coin. If you flip tails, rotate this card 180 degrees.
Creatures you control get +2/+2 and gain first strike.
Side 2:
At the beginning of your upkeep, flip a coin. If you flip tails, rotate this card 180 degrees.
All your creatures get -5/-0.
このカードは少し混乱するので、その動きを説明しておこう。このカードは違う向きのイラスト2つを組み合わせた形で配置されている。つまり、ある向きで見たら〈注意喚起〉、別の向きで見たら〈意気消沈〉になるのだ。そう、『神河物語』よりも何年も前に、私は反転カードを作っていたのだ(このときも、「ああ、それは『Unglued 2』でやったよ、と言ったはずだ)。
このカードは、毎ターンコイン投げをして、表だったら〈注意喚起〉、裏だったら〈意気消沈〉になるというものだった。〈注意喚起〉はいいことがあり、〈意気消沈〉は悪いことがある。そして、何年もの研究の結果、〈注意喚起〉はすごくいいことが起こり、〈意気消沈〉は問題ないことが起こるようにした。これによってどちらでも利益を得るが、その一方はより大きな利益を得る、というようになったのだ。やはり表の方がいいのは変わらないが、裏になってもそれほど嫌な思いをしなくて済むようになった。これでこのカードはより使われるようになることだろう。
〈経理部のボブ/Bob from Accounting〉
アート:Heather Hudson |
〈経理部のボブ/Bob from Accounting〉
{1}{R}
伝説のクリーチャー ― 会計士
0/1
経理部のボブが戦場に出たとき、6面サイコロを振る。その出目を示した状態でそのサイコロを経理部のボブの上に置く。
{1}{R}, {T}: 6面サイコロを振る代わりに、経理部のボブの上にある結果を用いる。その後、そのサイコロを振り直し、経理部のボブの上に戻す。When Bob from Accounting comes into play, roll a six-sided die. Put the die with the rolled result on Bob from Accounting.
1R,T: Instead of rolling a six-sided die, use the result on Bob from Accounting. Then reroll the die and put it back on Bob from Accounting.
このカードが『Unhinged』で作られなかった理由は2つある。1つめは、サイコロを使っていること。2つめは、経理部のボブを使っていることだ。わかった諸君は笑うだろうが、わからなかった諸君は「で、経理部のボブって誰だよ?」と言うことだろう。その問いに答える代わりに、この動画を見てもらいたい。
これは私の一番気に入っているマジックのコマーシャルで、このカードはこのコマーシャルをネタにしている。『Unhinged』が世に出るころには、このコマーシャルはもうかなり時代遅れだったので、今更このイラストで新しいカードを作ることはしなかったのだ。
〈熱い選択/Hot Picks〉
アート:Melissa A. Benson |
〈熱い選択/Hot Picks〉
{2}{R}
ソーサリー
1つを削る。
以下のうち3つがカードに印刷されている。
1) 熱い選択は各クリーチャーにそれぞれ3点のダメージを与える。
2) 基本でない土地をすべて破壊する。
3) このターン、クリーチャーではブロックできない。
4) 各プレイヤーはそれぞれ土地を4つ生け贄に捧げる。
5) 熱い選択はあなたの各対戦相手にそれぞれ5点のダメージを与える。
6) あなたがコントロールするクリーチャーはターン終了時まで+2/+0の修整を受ける。
7) 赤の1/1のゴブリン・クリーチャー・トークンを4体戦場に出す。
8) すべてのアーティファクトを破壊する。
9) あなたがコントロールするクリーチャーはターン終了時まで山渡りを得る。
10) このターン、あなたが次に振るサイコロは5である(実際にサイコロを振る必要はない)。Scratch one.
Three of the following are on the card:
1) Hot Picks deals 3 damage to each creature.
2) Destroy all nonbasic lands.
3) Creatures can't block this turn.
4) Each player sacrifices four lands.
5) Hot Picks deals 5 damage to each of your opponents.
6) Creatures you control get +2/+0 until end of turn.
7) Put four red 1/1 goblin creature tokens into play.
8) Destroy all artifacts.
9) Creatures you control get mountainwalk until end of turn.
10) The next die you roll this turn is a 5. (You need not roll the die.)
これは規格外で、そして 夫見 木各 タト だ。『Unglued 2』では様々な奇妙なことをやっているが、その中でもおそらくこれが一番だろう。〈熱い選択〉は、スクラッチ・カードの1種である。ん? そう、スクラッチ・カードだ。スクラッチ・カードを1シート作って、どのブースターにも1枚入れるようにすればいいと思いついたのだ。どのカードにも3つのスクラッチできる行があり、唱えるたびにその1行を削るのだ。
突き当たった問題、そしてこれが『Unhinged』に採用できなかった理由は(実装上の問題を置いておくと)、何が起こるかをプレイヤーが予想できてしまうという問題を看過できなかったことである。いろいろな方法で隠そうとはしたが、カードリストがわかってしまうと、2行目を隠すことはできても3行目を隠すことはできなかった。
これらのカードのテーマは、クジのスクラッチ・カードのようなアートにすることだった。各色に2枚ずつあるのだ。
〈テンサイの突撃/Mad Beetdown〉
アート:Mike Raabe |
〈テンサイの突撃/Mad Beetdown〉
{3}{G}
クリーチャー ― 野菜
2/2
毒: 2
テンサイの突撃は呪文や能力の対象にならない。Poison: 2
Mad Beatdown cannot be the target of spells or effects.
これも毒クリーチャーで、野菜とマジック語のダジャレだ。槍を持った動くテンサイなんて素敵じゃないか。
私が見せている毒クリーチャーは、毒の問題を解決してはいない。毒クリーチャーとそうでないクリーチャーを混ぜて使った場合、毒カウンターが10個乗るより前にダメージで相手が死んでしまうことだろう。そして、毒クリーチャーとコンボになるのは回避能力ぐらいしかないのだ。
〈ケ・セラ・セラ〉が警戒を持たないのと同様、〈テンサイの突撃〉も被覆を持たない。被覆が登場するのはもっとずっと後の話だ。
〈ポータルのエルフ/Portal Elf〉
アート:rk Post |
〈ポータルのエルフ/Portal Elf〉
{2}{G}{G}
クリーチャー ― エルフ
1/1
インスタントはソーサリーとしてプレイされる。
アーティファクトやエンチャントはプレイできない。
起動型能力は起動できない。Instants are played as sorceries.
Artifacts and enchantments cannot be played.
Activated abilities cannot be played.
このカードが『Unhinged』に採用されなかったのは、この冗談があまりに時代遅れになっていたからだ。このカードは、『ポータル』という、マジックを初心者に教えるために遠い昔に作られたセットをネタにしたものだ。『ポータル』はマジックの簡略版で、いろいろな要素が省かれていた。このカードは通常のマジックを『ポータル』のようにしてしまうというものだ。『ポータル』にはインスタントもアーティファクトもエンチャントも起動型能力もなかったのは見ての通りである。
このアートも『ポータル』をネタにしている。エルフは動物に乗り、鉄砲がある(『ポータル』の続編、『ポータル・セカンドエイジ』のネタだ)。それが、木製のウージーを持ったムースにエルフが乗っている理由である。
〈プードル少年/Poodleboy〉
〈プードル少年/Poodleboy〉
{3}{G}
伝説のクリーチャー ― 犬・男
0/1
プードル少年が戦場に出たとき、コイン投げをする。あなたがコイン投げに勝ったなら、プードル少年を追放し、あなたのライブラリーからクリーチャー・カードを1枚探し、そのクリーチャー・カードを戦場に出し、あなたのライブラリーを切り直す。あなたがコイン投げに負けたなら、あなたはプードル少年を手放さない。When Poodleboy comes into play, flip a coin. If you win the flip, remove Poodleboy from the game and search your library for a creature card. Put that creature card into play then shuffle your library. If you lose the flip, you're stuck with Poodleboy.
これもマジックのコマーシャルを元ネタにしたカードだ。
これも、〈経理部のボブ〉と同じシリーズになる。これが『Unhinged』に採用されなかった理由は、時代遅れだということの他に、このカードでやっていること全てを黒枠でできるようになっていたからである。やるべきだと言っているわけではないが、銀枠でやらなければならない理由はただコマーシャルが元ネタだということだけになっていたのだ。
〈ドクター・モローのツリーハウス/Treehouse of Dr. Moreau〉
アート:Ron Spencer |
〈ドクター・モローのツリーハウス/Treehouse of Dr. Moreau〉
{3}
アーティファクト
{T}, ドクター・モローのツリーハウスを生け贄に捧げる:緑の1/1のリス・クリーチャー・トークンを、あなたが持っている毒カウンター1つにつき3体戦場に出す。
すべてのリスは毒:1を持つ。T, Sacrifice Treehouse of Dr. Moreau: Put three 1/1 green Squirrel creature tokens into play for each poison counter you have.
All Squirrels gain Poison: 1.
私がリスのことを忘れていると思っていないだろうか? ほんの数週間前に、リスが疫病に感染したという話題があった(リンク先は英語)。つまりこのカードは今こそ世に出るべきなのだ。まあ、『Unhinged』は毒を扱わなかったので、このカードが世に出ることはできなかったのだが。
ところで、なぜ私が『Unglued 2』から『Unhinged』までの間に毒を探求するのを止めたのか、気になる諸君もいることだろう。実際、私は諦めてはいなかった。ただ、より高い目標を掲げたのだ。時を経て、私は毒を黒枠世界に戻すことができると信じるようになっていたので、銀枠で扱うのを止めたのだ。もし銀枠に入れてしまえば、毒はもう黒枠のものではないと思われるようになってしまう。その後、私が毒を黒枠世界に戻すことに成功したのは衆知の通りである。
〈恥知らずな宣伝/Shameless Plug〉
アート:Tom Wanerstrand |
〈恥知らずな宣伝/Shameless Plug〉
{3}
アーティファクト
恥知らずな宣伝を生け贄に捧げる:Duelist誌の最新号で描かれているマジックのカードを1枚選ぶ。ターン終了時まで、あなたはそのカードがあなたの手札にあるかのようにプレイしてよい。この能力は、あなたがDuelist誌の最新号を持っていなければ起動できない。Sacrifice Shameless Plug: Choose a Magic card pictured in the latest Duelist. Until end of turn, you may play as though that card were in your hand. Play this ability only if you have the latest copy of The Duelist with you.
『Unglued 2』のデザイン・リーダーを務めていたとき、私はDuelist誌の編集長でもあって、それをなんとかセットに組み込めないかと考えていた。このカードが傑作だと思うのは、これがDuelist誌を直接関与させているだけでなく、プレイヤーに最新号を手に入れるモチベーションを与え、そして商品の宣伝に冗談中の冗談を絡めたという点である。
『Unhinged』のころになると、Duelist誌はもうなくなっており、このカードは意味を成さなくなっていた。ウェブサイトを同じように組み込めないかと考えたが、プレイ中にインターネットを見ることができるようになるのはそれから数年後、スマートフォンが普及するまで待たねばならなかったのだ。
〈死兎の島/Dead Bunny Isle〉
アート:Tom Wanerstrand |
〈死兎の島/Dead Bunny Isle〉
土地
{T}, 毒カウンターを1個得る:あなたのマナ・プールに{W}か{U}を加える。T, Receive a poison counter: Add W or U to your mana pool.
このカードが『Unhinged』に入らなかったのは、毒を使っているからである。私はこのようなカードを(実際は青黒だったが)未来予知の未来土地サイクルの一部として入れようと試みた。デベロップはリソースとして毒を使うことが嫌だったので、拒否してきた。今回公開するのにこの白青を選んだのは、このカード名が好きだからだ。もちろん、『Unhinged 2』には、友好色の2色毒土地5枚からなるサイクルがあったのだ。
またアンう日まで
今日はここまで。印刷まで至らなかったマジックのセットの閲覧について諸君がどう感じたか興味がある。気に入ったなら、まだまだネタはあるので、将来また取り上げて欲しい内容だと教えてほしい。いつものとおり、メール、掲示板、各ソーシャルメディア(Twitter、Tumblr、Google+)で教えて欲しい。
それではまた次回、私が教授帽をまた被る日にお会いしよう。
その日まで、あなたが成功も失敗も忘れませんように。
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