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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

パーティー侵犯 その1

読み物

Making Magic

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パーティー侵犯 その1

Mark Rosewater / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru

2012年12月31日


 ギルド門侵犯・プレビュー第1週にようこそ。デザイン・チームも新しいメカニズムも紹介しなければならないので、無駄なおしゃべりはやめて早速本題に入ることにしよう。

ギルド門侵犯の陰に

 まず、デザイン・チームの紹介だ。

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マーク・ローズウォーター/Mark Rosewater (共同リーダー)

 首席デザイナーとしての私の仕事の1つに、デザイナー諸氏の技能を高めることがある。ケン・ネーグル/Ken Nagleがラヴニカへの回帰のリード・デザイナーを務めたのは、私が、彼は今なら最初の大型セットのデザインをできると感じたからである。この時点では、ギルド門侵犯は小型セットの予定だったことを覚えておいて欲しい。5/5/10の計画が作られ、ギルド門侵犯が大型セットになることが決まった時、私はすでに闇の隆盛で手一杯だったので、ラヴニカへの回帰のリーダーはケンのままにして、ギルド門侵犯のリーダーを自分で務めることにした。2013年の秋セット(「Friends」という開発名)とスケジュールが被るが、「Friends」のデザイン・リーダーはブライアン・ティンスマン/Brian Tinsmanの予定だったので問題なかった。そう、ブライアンがウィザーズを退社することを決めるまでは。

 問題は、大型の秋セットのリーダーというのは最も複雑なデザインだということである。社内に、秋セットのデザインのリーダーを務めたことのある人間は私の他にはアーロン・フォーサイス/Aaron Forsytheとビル・ローズ/Bill Roseの2人しかいない。この2人はそれぞれマジック開発部ディレクター、開発担当副社長という重責を担っており、秋セットのリーダーを務めることはできなかった。私がやるしかなかったのだ。ここで、アーロンがある計画を思いついた。私がギルド門侵犯のデザインを立ち上げ、Friendsの仕事を始めなければならなくなるまでリーダーを務め、そしてチーム内の他の誰かにリード・デザイナーの職責を手渡せば良いというのだ。

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イーサン・フライシャー/Ethan Fleischer

 イーサンの名が一番知られているのは、グレート・デザイナー・サーチ2(リンク先は英語)の優勝者としてだろう。これから見ていく通り、GDS2がギルド門侵犯のデザインに与えた影響は大きい。イーサンは6ヶ月のデザイン・インターンシップを勝ち取り、さらにマジックのデザインの仕事を手に入れた。ギルド門侵犯は、そんなイーサンが初めて属したデザイン・チームだったのだ。実際、私がこのチームを編成したとき、席の1つは「GDS2優勝者」のためのものだった。イーサンがインターンシップから正規の仕事に進んだのは、このデザイン・チームでの仕事による部分もある。彼は初打席でホームランをかっとばしたのだ(私が物事をスポーツで喩えることはあまりないが、まあ、たまにはあるよ)。イーサンには大きな可能性があるが、大型セットに限らず、セットのリーダーを務めるのにはまだ早い。

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ジョー・フーバー/Joe Huber

 私がデザイナーについて話すとき、大抵はマジックのデザイナーについて話すが、開発部にはマジック以外の仕事をしているデザイナーも多数在籍している。ジョーはそんなデザイナーの1人だ。普段、マジックの仕事をしていないときは、彼は開発部のデジタル面の仕事をしている。しかし、我々はデザイン・チームを混ぜて作るのが好きで、そしてジョーはマジックのデザインに興味があった(彼は新たなるファイレクシアのデザインをしていた)。常時マジックの仕事をしているわけでないデザイナーを加えることで、デザインに全く新しい視点がもたらされるのだ。密接に協力して働くことには多くの利点があるが、その一方で、集団思考、すなわちグループ全体が同じような考え方をするようになってしまうという危険が伴う。ジョーにはその心配はない。彼が持ってきた質問は、私が受けたことのないようなものだった。あとで見るが、彼の提案が今日のメカニズムに関与している。ジョーは多くのデザインをしてきているが、大型セットに限らず、セットのリーダーを務めるにはマジックのデザイン経験が足りない。

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デイブ・ハンフリー/Dave Humpherys

 ギルド門侵犯のデザイン・チームに所属するマジック・プロツアー殿堂顕彰者は彼だけである。デイブは(デベロップ上の問題を特定するため、デザイン・チームには必ず中核デベロッパーが配属される)デベロップ代表であるのみならず、ギルド門侵犯のデベロップ・リーダーでもある。リーダーをデベロップ代表としてデザイン・チームに入れることは通常ないのだが、デイブはデザイン・チームの行いを理解することでよりよい仕事が出来ると強く感じたのだ。そのための最適手が、デザイン・チームに入ることだったわけである。デイブがデザイン・チームに入ったのはこれが初めてなので、大型セットのデザインを主導するということはあり得ない話だ。

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ショーン・メイン/Shawn Main

 ショーン・メインはグレート・デザイナー・サーチ2の優勝者ではないが、彼もまたインターンシップを勝ち取り、そして後にはデザイナーとしての職を得た。彼が得られなかったものはといえば、ギルド門侵犯のデザイン・チームの席であった。私がここに、またギルド門侵犯のクレジットに彼をデザイナーとして記したのは、彼はデザイン・チームの一員ではなかったが、ギルド・キーワードの2つ(ボロスの大隊メカニズムと、オルゾフの強請メカニズム)をデザインしたからである。クレジットに記載されるのはそれだけの功績があった人間であるべきなので、ショーンはデザイン・チームの一員ではないが、デザイナーとして名を連ねることになった。この時点でショーンはデザイン・チームに参加したことがなかったので、秋セットのリーダーなんて問題外である。

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マーク・ゴットリーブ/Mark Gottlieb (共同リーダー)

 ギルド門侵犯のデザイン・チーム最後のメンバーは、かつての私の天敵(つまり元ルール・マネージャー)のマーク・ゴットリーブだ。マークはいくつものデザイン・チームに所属してきていたし、ミラディン包囲戦ではリーダーも務めた。リーダーの重責を誰かに渡すなら、彼になるだろう。そこで、デザインが始まる前から、私はマークと移譲の準備について話し合った・彼はデザインの前半では次席として働き(開発部用語で、デザイン・チームの副司令官のこと。より重い責任を持つ)、そして私がこのセットでやりたいことについて毎週話し合った。移譲はスムーズに進み、マークはデザインの片足としてすばらしい役目を果たしてくれた(片足どころではないのは、ギルド門侵犯のデザインについて語るうちに明らかになるだろう)。


アート:Chase Stone

突撃! ギルド門侵犯

 ギルド門侵犯のデザインの話をするにあたって、まずは今日のプレビュー・カードをお見せしよう。シミック連合の《実験体》だ、見てくれたまえ。

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 ふむ、進化は少しばかりなじみがある。何か1つのメカニズムについてその発祥から語っていくとなると、やはりこれだろう。知らない、あるいは覚えていない諸君のために説明すると、進化はイーサン・フライシャーがグレート・デザイナー・サーチ2のために作成した世界、エポリス/Epolithの主たるメカニズムだったのだ。つまり、このメカニズムの初期の話は、GDS2(リンク先は英語)の間に説明されている。今回は、進化の起こりから先ほど示した完成形に至るまでの話をしていこう。

 第1問(リンク先は英語)にその芽があった。決勝に進むには、受験者はブロックで使える自分の世界を作らなければならなかった。イーサンが作ったのはエポリスで、セット間に数千年の時間が流れて進化していく未開の世界だった。第1問は、色を選び、その色で使うコモンをひとそろい(18枚)作ること。イーサンは未開の世界を表すのに最も簡単な色は緑だと正しく見抜いていた。

 イーサンが最初に提出したカードは、これだった。

CG01

アケボノウマ

{G}

クリーチャー ― 馬

0/1

進化 ― [カード名]のパワーよりも大きなパワーを持つクリーチャー1体があなたのコントロール下で戦場に出るたび、[カード名]の上に+1/+1カウンターを1個置く。


 そして、私の採点はこうだった。

MR: このセットが進化に関するものであるというのは伝えたとおりである。最大の追加点の1つが、この進化メカニズムだ(君はデザイン上の重要な技を理解しているようだ。何かを明確にしたければ、その単語をデザインに入れるべきなのである。このセットが進化に関するものだと示すためには? メカニズムを「進化」という名前にすればいい)。

 まず第一印象として、誘発は1種類にまとめるべきである。どうしても複数置きたくても、色ごとに1つにまとめるべきだ。進化カードに複数の誘発を置くと、必要以上に心理的な負荷になるものである。実際に進化するのと違う形に進化すると思ってしまったことは何度もあった。

 もし私が進化を、あるいは緑の進化を1種類の誘発にするなら、このカードのものを選ぶだろう。これはフレイバーに富み、またプレイ感も良い。あとは、実際のゲームにどう影響を及ぼすかである。

 もう一つこの版の進化の良い点を挙げると、確かにこれは主軸的な部分もあるが(特にそのセットが+1/+1カウンターに目を向けているなら)、これをただデッキに入れるだけでも充分働くだろうということである。この誘発に関する私の最大の疑念は、これを組み上げるのにどれだけの空間を使うかである。私は充分にあると思っているが、君も自分のデザイン空間を維持しなければならない。もう一言。進化クリーチャーは最初は小さくなければ成長できないので、使える空間はそれほど広いとは言いがたいのだ。

 このデザイン空間は、このメカニズムをブロックを通して使おうと思っているのなら特に重要な問題になる。このブロックが進化をテーマとしているのなら、ブロックを通して進化が変化することだろう。途中で進化も進化するのだ。進化をどう進化させるかというアイデアがあるかどうかは知らないが、それはこのセットに関する話だけが設問だったので答えなければならないものではない。

 この最初のカードが、非常に基本的なものであることにも好感を覚える。ケン(・ネーグル)/Ken Nagleは1/1のほうが把握しやすいと言っているが、私は0/1のほうが成長の余地があると異論を添えておこう。


 イーサンの最初に提出したカードが今日のプレビュー・カードとそっくりだということは面白い話だ(ケンの採点はここには載せていないが、ケンはこのカードは1/1であるべきだと提案していた)。これから見て行くとおり、彼は彼の内容を完全には理解していなかった。

 もう一つ面白いことは、このメカニズムのデザイン空間の限界に関する私のコメントだ。これはシミックには非常にふさわしく、また、ギルド・メカニズムの空間にまさにふさわしかったのだ。

 3枚目のカードはこれだった。

CG03

洞窟熊(成長熊)

{1}{G}

クリーチャー ― 熊

2/2

進化 ― [カード名]のパワーよりも大きなパワーを持つクリーチャー1体があなたのコントロール下で戦場に出るたび、[カード名]の上に+1/+1カウンターを1個置く。


 私の評価:

MR: 進化カードその2。これも評価できる単純なカードである。こういった《灰色熊》の上位互換を作るのは、経験の浅いデザイナーの通過すべき関門である。進化の創造者として君の名が挙げられなくても、君のチームに働きかけて君のものだと言うぐらいに素晴らしい出来映えだ。


 同じ誘発のカードを2枚作ったのはこれともう1種だけだったということは、イーサンがこの誘発が一番いいと思っていたという、かすかな兆しだったと私は考えている。

 7枚目のカードがこれだ。

CG07

翼つかみの樹霊(我慢強いアラクニド)

{2}{G}

クリーチャー ― 植物・スピリット

1/3

到達、進化 ― 飛行を持つクリーチャー1体が対戦相手1人のコントロール下で戦場に出るたび、[カード名]の上に+1/+1カウンターを1個置く。


 私の評価:

MR: 通常、緑のコモンには1枚の飛行対策カードが入っている。私は到達が好きだが、それは各デザイナーそれぞれがそれにどんな意味を持たせたいかによる。2枚目の飛行対策カードは、このセットにより大きな問題があることを示しているのか? 緑の敵には大量の飛行クリーチャーがいるのか?

 進化クリーチャーのパワーを低くし、成長の余地を持たせたことは評価している。しかし、この進化カードはこれ以前の2つに比べて進化しにくいものである。2つの理由から、これには失望させられた。まず1つめに、最初の2つのデザインの誘発の方が好きだったということ。そして2つめに、直観的にわかりやすい比較的単純なメカニズムから離れてしまっているということである。進化クリーチャーがそれぞれ異なった誘発条件を持っている場合、多くの理由から処理が非常に難しくなっていくのだ。

 1つめ、戦場に出たときに全ての進化クリーチャーを処理しなければならない。ゲームが進行していくと、全ての進化誘発と、それぞれがどのクリーチャーのものかを覚えなければならない。これは一見すると単純なことに見えるが、実際はそうではない。単一の誘発(私はCG01やCG03のものを推す)でできないか検討することを薦める。そうしないにせよ、少なくとも全てのコモンの進化クリーチャーの誘発は同一にすべきである。進化を持つそれぞれの色ごとに分けるのは可能だろうと添えておく。色が違えば、覚えるのは簡単になることだろう。

 これを踏まえて、もう一つ別の問題がある。これはコモンの緑にある3枚目の進化クリーチャーである。2つで止めておくのが通例である。3枚目を作る理由は、そのメカニズムがそのセットの根幹を成すものである場合だけであり、これはまれな例外である(ミラディンの傷跡の感染はこの例外に当たる)。進化は君の主たるメカニズムなので問題ないかも知れないが、このメカニズムを持ったクリーチャーを3種類コモンに入れる前にもう一度検討するべきだと思う。


 進化の進化を見て行くにあたってもっとも面白いことの1つは、初期のうちにイーサンは正解にたどり着いていたにもかかわらず、他の答えを探し続けてきたということである。アイデアを作り出すことのもっとも難しい部分は、良いアイデアを出すことではなく、そのアイデアを良いものだと認識することなのだ。

 これが11枚目だ。

CG11

前竜脚類

{3}{G}{G}

クリーチャー ― トカゲ

4/4

進化 ― 土地が1つあなたのコントロール下で戦場に出るたび、[カード名]の上に+1/+1カウンターを1個置く。[カード名]の上に+1/+1カウンターがあるかぎり、[カード名]はトランプルを持つ。


 私の採点:

MR: 君は欲張りだと言わざるを得ない。新人デザイナーが我々の普段やる以上の数のクリーチャーを作りがちな理由は2つある。1つめに、人々はマジックのクリーチャーの比率を実際よりも高く見積もっていること(そして開発部はここ数年、その数字を引き下げているということ)。2つめに、緑のコモンのクリーチャーは緑のコモンの呪文よりもずっとデザインしやすいということである。

 このカードのもう一つの問題点は、その進化メカニズムにある。まず、これは緑のコモンにある4枚目の進化クリーチャーであるということを指摘しておこう。多すぎだ。すでに言った通り、通常、我々は1枚か2枚しか入れない。セットにどうしても必要であれば、3枚になることはある。しかし4枚はあり得ない。すでにクリーチャーは多すぎるので、どれを除くかを決める簡単な選択になる。

 他にも、誘発も問題である。すでに述べたとおり、私は特にコモンの同じ色の中で進化の誘発を変えるのはよくないと思っている。さらに、この誘発は「進化」というイメージにそぐわないように思う。ケンの言っている、トランプルは不要だという意見にも同意したい。


 デザイン第1問を簡単にまとめると、イーサンは進化のコンセプトを表現する必要があった(それはこの前の週に彼の提出した世界を見たときに、見たいものとして協調していたことだ)。そこで、彼は彼のクリーチャーを時とともに成長させられる自由度の高いメカニズムを作り上げたのだ。問題は、あまりに多種な誘発を使ったことで、プレイ中に対応するのが難しくなったということだった(このカードが提出されたときにテストプレイはしているので、実際に混乱が起こるのを体験しているのだと言うことを思い出して欲しい)。

 これを踏まえての第2問(リンク先は英語)、私が選んだ色のコモンをひとそろえ18枚作ってもらうという課題になった。私がいつこのメカニズムをシミックに使おうと思い始めたか興味がある諸君は、彼が緑を選んだあとのこの第2問で私がイーサンに出した課題色が何だったかに目を向けてもらいたい。

 この問題では、イーサンは「開発/develop」という能力を持ったカードを2枚作ってきた。私の評価を見て、イーサンは各色の進化を1つの能力にまとめようと決めたのだ。開発は、青の進化のことを指す名前だった。

 重要な部分は最初のカードに対する私の評価に書かれているので、それをお見せしよう。

CU03

霊気嵐の始祖鳥

{1}{U}

クリーチャー ― 鳥・トカゲ

1/1

飛行、開発 ― あなたが呪文を1つ唱えるたび、それがあなたがこのターンに唱えた2つめの呪文である場合、あなたは[カード名]の上に+1/+1カウンターを1個置いてもよい。


 私の評価:

MR: オーケー、開発か。まず、その単語について話をしよう(誰もがそうするだろう)。開発は進化の青版である。その場合、よりふさわしい単語が存在すると思う。それは、進化だ。5つの異なった色を通して同じ効果を用いるために、プレイヤーに5つの単語を覚えさせるべきだとは思わない。マーク(・ゴットリーブ)が指摘しているように、このセットにはクリーチャーに+1/+1カウンターを置く能力語が存在し、色ごとに異なる誘発条件を持つと説明する方がずっと簡単である。覚えるという問題に加え、他にも単語の問題が存在する。それぞれに単語を使うと、今後その単語のどれかをつけるのにふさわしいメカニズムを作った時の命名が非常に難しくなる。進化するのはマジック共通のテーマなのだ。

 次に、この誘発について。2つの呪文を唱えることはいくつもの制限がある。その最たるものは、初期に達成するのが難しいということだ。中盤まで成立しないような進化を作りたいわけではないはずだ。この誘発を使うためには、このセットには点数で見たマナ・コストが低い呪文が特に青に大量に必要になり、セットをゆがめてしまう。それが君の今週の提出で意図したことであれば、問題はない。いずれかの色に終盤で使う進化能力があるとすれば、それは青(か、白)になるので、この誘発には反対しない。また、これはフレイバー的にはいかにも青であることも認めよう。ただ、これが君のデザインを想像以上に形作るものであるということを理解してもらいたいのだ。


 イーサンは第2問において、進化の持つデザイン空間を掘り下げていた。デザイン能力を示すコンテストなので、他の選択肢を探す動機があると思っていた。私がここで彼に贈ったメッセージは、進化というテーマを固めろというものだった。様々な方向に手を広げるのではなく、何ができるかを探し、それを掘り下げるのだと。

 第3問(リンク先は英語)で、イーサンはパートナーであるジョン・ロウク/Jon Louchの世界にあわせたデザインをおこなった。第4問(リンク先は英語)では、再びエポリスのデザインに戻った。今度は、彼の夢のブースターをデザインするというものだった。その中には3枚の進化クリーチャーが含まれていた。

 イーサンの1枚目がこれだ。

洞窟熊(成長熊)

{1}{G}

クリーチャー ― 熊

2/2

進化 ― [カード名]のパワーよりも大きなパワーを持つクリーチャー1体があなたのコントロール下で戦場に出るたび、[カード名]の上に+1/+1カウンターを1個置く。


 私の評価:

MR: 私は緑の進化が気に入っているし、この熊はコモンの足がかりに完璧だ。君の提出した全ての進化誘発の中で、緑のものが圧倒的に好きだと言える。君のテーマにおいて非常にフレイバーに富み、プレイ感も良く、これまで見たことがない類のものだ。もし私がこのセットをデザインするとしたら、この版の進化をどれだけ入れるかを考えるだろう。これがこのセットの上陸地点だと私は考えている。


 イーサンが掘り下げられるよう、私はこの最初の版の可能性に向けて彼の背中を押した。私の評価は、彼の2体目の進化クリーチャーに対する評価でより明らかになる。

熱血の猛禽

{1}{R}

クリーチャー ― トカゲ

1/1

進化 ― [カード名]がプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび、あなたはこれの上に+1/+1カウンターを1個置いてもよい。


 私の評価:

 赤の進化はミラディンのスリス(あるいはレジェンズの《疾風のデルヴィッシュ》)系のものだ。これは充分強くて赤らしいので、私は気に入った。コモンでは最も単純で最も小さいカードから始めていることも気に入った。

 より大きい疑問は、本当に5種類の進化誘発が必要なのかということだ。それぞれの進化クリーチャーが異なる誘発条件を持つにしても、色ごとに1つが限界だと言った。これは限界の数だということに注意して欲しい。これは、本当に最大の数だと考えている。デザイナーにとっての目標は、使うものをどれだけ減らせるかを探すことにある。2つで済むなら、5つ使う必要はない。1つで済むのなら、2つ使う必要もないのだ。

 緑の進化だけで全ての進化をまかなえないか考えてみることを薦める。もし複数必要なら、2つめを探すことになる。2つだけ使うのであれば、2つは名前を変えた方がいい。


 最後の進化クリーチャーは黒だった。私の評価では、これは進化の物語において充分な意味があったとは思えないと言えるだろう。

 私は、この第4問を経て、進化はマジックで使いたいメカニズムだと理解した。イーサンにもう少し選択肢を試してみる機会を与えたが、最終問題(リンク先は英語)ではイーサンがこの版の進化を実用的なものにするということに焦点を当てたいと思った。

 イーサンの進化クリーチャーがこれである。

クリーチャー#1:

洞窟熊(コモン)(またの名を成長熊)

{1}{G}

クリーチャー ― 熊

2/2

進化([カード名]のパワーよりも大きなパワーを持つクリーチャー1体があなたのコントロール下で戦場に出るたび、[カード名]の上に+1/+1カウンターを1個置いてもよい。)


 私の評価:

MR: 洞窟熊が君のデザインにどれだけ重要かは認識していないかも知れない。このカードは君が最初に提出した中でのMVPであり、現時点でもやはりそうである。幸いにして、今回の提出では君はこの版の進化の可能性を見付けてくれたようだ。プレイテストでも素晴らしい働きを見せ、これが私のセットだとしたら進化を主たるメカニズムにすることだろう。特にこのカードは進化において重要な位置を占めているように思える。


 ラヴニカを考え、進化がシミックにちょうどいいということを私はすでに気付いていた。はっきり言ってしまえば、私は進化に惚れ込んでいたのだ。

クリーチャー#2:

アケボノウマ(アンコモン)

{G}

クリーチャー ― 馬

1/1

進化([カード名]のパワーよりも大きなパワーを持つクリーチャー1体があなたのコントロール下で戦場に出るたび、[カード名]の上に+1/+1カウンターを1個置いてもよい。)


 私の評価:

MR: このカードもまたよく働いてくれた。強すぎるかどうか私は判断しないが、デベロップがそれは判断してくれることだろう。私が評価するのは、このカードを初手に引いた時にエキサイティングであること、そしてクールなプレイを生み出してくれるということだ。


 彼のセットが進化するにつれ、このカードが今日のプレビュー・カードに近づいている(0/1だったのが1/1になっているが)のも面白いことだ。《実験体》にはさらに起動型能力がついているのを見ても、デベロップは強すぎるとは思わなかったということは明らかだ。

クリーチャー#3:

太ったマイアザウルス(アンコモン)(またの名を進化蒔き)

{3}{G}

クリーチャー ― トカゲ

2/2

進化([カード名]のパワーよりも大きなパワーを持つクリーチャー1体があなたのコントロール下で戦場に出るたび、[カード名]の上に+1/+1カウンターを1個置いてもよい。)

[カード名]が進化するたび、2/2の緑のトカゲ・クリーチャー・トークンを1体戦場に出してもよい。


 私の評価:

MR: 私はこの進化の進化が気に入った。このカードは進化を単に+1/+1カウンターだけに限らないものにできると示している。またこの種の効果はプレイヤーに楽しいゲーム・プレイをさせる小さな目標を与えるという点でも良いものである。このカードはレアであるべきだというトム(・ラピル)/Tom LaPilleの見解に同意する。


 他の進化カードについては個々では見せられないが、イーサンがこのメカニズムを掘り下げて見付けたいろいろなものがギルド門侵犯(や、ドラゴンの迷路)に含まれている。そのヒントを出しておこう。

 イーサンは他にも数枚の進化クリーチャーを作っている(多すぎる。これについて私は批判している)が、私のコメントの重要なポイントは最初の3枚に含まれている。私の関心の最後の部分は、最後のこの一言にまとめられている。

 デザインはダイヤモンドの原石を探すようなものだ。そして、進化は間違いなく君のダイヤモンドなのだ。



アート:Svetlin Velinov

シミックの街

 進化のデザインの初期についてこれだけの時間を費やしてきたのは、進化に関してギルド門侵犯のデザイン中にはそれほど語るべきことがないからである。初日にこのメカニズムを提示し、みんなが気に入り、そしてそのまま残った(とても短いコラムになったことだろう)。

 ああ、いや、1つ変更点があった。進化は、イーサンがデザインした通り、戦場に出るクリーチャーのパワーが大きいかどうかだけを見ていた。デザイン中に、ジョー・フーバーが「パワーだけなのはなぜだ? タフネスは無視するのか?」と言ったのだ。

 私は、数字1つだけを見る方が単純だからと答えたが、ジョーはいい質問を返してきた。まず、タフネスも見るようになれば進化クリーチャーはもちろん他の進化をフォローするクリーチャーも含めたデザインの幅が広がるということ。前の版では、進化を誘発させる軽いクリーチャーを作るためにはパワーが大きくタフネスが小さいものにする必要があった。2つめに、タフネスを見るようにすれば、サポートするカードの幅が広がるということ。3つめに、これは議論する上で見落とされがちになることだが、プレイ感がより良くなるということだ(ここについて協調していなかった理由がコレである。答えを得るためにはプレイテストが必要なのだ)。

 この変更以外は、進化にはなにも起こらなかった。セットから取り除こうという人々の話もなかった。使い物になるようにするためのひらめきがシャワー中に得られるということもなかった。デザイン中の微調整の物語もなかった。進化はイーサン・フライシャーを一介のマジック・プレイヤーからマジック・デザイナーに変身させた、素晴らしいアイデアだったというだけなのである。そして、諸君みんながこのメカニズムを味わえる日がもうすぐやってくるのだ。

ベートーベン第5番

 来週その2があることに関して、このコラムのタイトルにその1がついていることとギルド5つのうち1つだけ、しかもそのキーワードについてしか話していないことのどちらが重要なのかはわからない。それではまた来週、他のギルドの面白い部分を覗くときにお会いしよう。

 その日まで、あなたの運命の扉を開く素晴らしいアイデアがあなたのもとに訪れますように。


アート:Ryan Yee
ギルド門侵犯
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