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金子と塚本の「勝てる!マジック」
金子と塚本の「勝てる!マジック」 第35回:マリガン
金子と塚本の「勝てる!マジック」 第35回:マリガン
by 金子 真実 & 塚本 樹詩
登場人物:
金子 真実
ウィザーズ・オブ・ザ・コーストの人。塚本に押しかけられ突然弟子をとることになった。
連載中の思い出に残る写真:人形になって連載を乗っ取られたときの写真ですね。どうしてこんなことに......。あ、あの人形はちゃんと焼いて供養しました。
塚本 樹詩
マジック初心者。マジックの大きな舞台での活躍を夢見て、金子に弟子入りした。とにかく元気。
連載中の思い出に残る写真:第8回の、目からレーザービームを出している写真。
どうして目から光線的なものが出る流れになったのか自分でもよく覚えていないのですが、素敵な写真加工技術が文字通り光る、素晴らしい出来上がりでとっても気に入っています。前回の勝てマジ!
突如大会に参加した塚本。しかし対戦相手の手札のカードを忘れたり、カードの効果の誘発忘れたりとミスを連発。
金子に改めていろいろと教わるも、今回が最終章だということが発覚!?どうなる勝てマジ!!そして最後に塚本が金子に教わることとは一体!?
金子「ついに最終章ということで、プロでも極めるのが難しいとされているマリガンについて教えたいと思います!いえーい!!最終章!!」
塚本「金子さん、テンション高いところごめんなさい、マリガンについて教わりたいのはやまやまなのですが、もうマッチが始まってしまいます。」
金子「それでは黙って後ろから見ていて、後でたっぷり教えてあげますよ!」
塚本「それ、一番緊張するパターンですやん!! ぐぐぐ、わかりました!それではペアリング見てきますね!」
ケース1
―試合開始直後―
塚本「これは、キープですね。よろしくお願いします。」
金子「ずこーっ!!」
―試合後―
金子「塚本さん、あの手札はどういう心境でキープしたのですか?」
塚本「手札が土地だけ=大地主。ということでこの先、僕に富が溢れることの前兆かと思ってキープしました。」
金子「......マジックの土地と実際の土地は、そんなに関係ないですよ?」
塚本「そんな!それならマリガンしますよ! 僕にだって手札が全部土地とか全部呪文とかは駄目な手札だってわかりますよ!」
金子「そうですよね、塚本さんが実際の土地にかなり執着していない限りはあんな手札でキープしませんよね......。」
塚本「次からは1秒でマリガンします!」
金子「ではもう少し汎用的な話を進めていきましょう。全部が土地、土地以外でなくちょっとでも別のカードが混じっていたらどうします?」
ケース2
塚本「これは悩みますね、土地を6枚すでに引いているということは、この先、土地以外を引き続けそうですし......。」
金子「すとーっぷ! 塚本さん、それは幻想です。初手の比率が偏っているからって、残ったライブラリーの比率が偏っているわけではないんです。
自分がもらった「1:6」という数字に騙されてしまいそうになりますが、例えば仮に60枚デッキで土地が24枚のデッキなら、残りのライブラリーの呪文の比率は35/53で66%、仮に初手に土地が3枚だったとしても32/53で60%。大差ありませんね。だから、『これから呪文ばっかり引ける』なんてことはありません。」
塚本「そうか! ライブラリーの上のカードなんてそもそもわからないから、ここでまた土地を引いてしまった場合一気に雲行きが怪しくなるし、これはマリガンですね!」
金子「そうですね、相手のデッキが不明なら、基本的にはマリガンです。ライブラリーの上から土地を引くか、それ以外を引くかという確率に大差はなく、相手と戦えるだけの呪文をきっちり引けるとは限りません。多少呪文を引けても単純な枚数で相手に追いつくには時間がかかるでしょうし、マリガンしたほうが良さそうですね。
相手のデッキがわかっていて土地が並ぶのが重要、とかなら話は別なんですけどね。例えばお互いにコントロールデッキであるとわかっているシチュエーションなら、このような手札をキープするのもアリです。
逆に『呪文が6枚、土地が1枚』の手札は、土地を引いてきた時には勝てる可能性は高いですが、よっぽど軽いデッキでなければこれもマリガンしたほうが良いです。先手だったりしたらなおさらですね。ここから2枚連続で土地を引く確率は、土地が24枚のデッキだとしてたったの18.3%なんですから。」
塚本「あ、大会は終わったので、このままマリガン講座続けてください。」
金子「......随分あっさり終わりましたね。では、汎用的な話の次は、実際のデッキを元にケーススタディしましょうか。」
ケース3
8 《森》 7 《平地》 4 《梢の眺望》 4 《要塞化した村》 2 《ウェストヴェイルの修道院》 -土地(25)- 4 《森の代言者》 2 《ラムホルトの平和主義者》 4 《大天使アヴァシン》 4 《搭載歩行機械》 -クリーチャー(14)- |
4 《ニッサの誓い》 4 《ドロモカの命令》 2 《石の宣告》 1 《停滞の罠》 2 《荒野の確保》 4 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文(21)- |
2 《棲み家の防御者》 1 《保護者、リンヴァーラ》 2 《翼切り》 2 《石の宣告》 2 《進化の飛躍》 1 《神聖なる月光》 1 《絹包み》 2 《天使の粛清》 2 《悲劇的な傲慢》 -サイドボード(15)- |
金子「このデッキでもし、こんな手札が来たらどうしますか?」
塚本「うおおおおおおお!!トリプル・天使!!ラッキーの兆候!!期待度高いですよこれ!」
金子「......塚本さん、マジックは絵柄を合わせるゲームではありませんよ?スリーカードとかみたいな役は存在しません。」
塚本「でも《大天使アヴァシン》が強くても、この手札だと動き出すのが5ターン目からだから、4ターン動けないのは不安ですね。その間に天使の守護で守れればいいけど、僕にそんな特殊なスキルは無いのでマリガンしますね。」
金子「そうですね、このデッキのマナカーブの頂点である5マナのカードがここまで手札に集まってしまうと、塚本さんの言うとおり序盤は動けないので、せっかくの《大天使アヴァシン》も効果的に使えなさそうです。なので、この手札はマリガンですね。」
塚本「いくらパワーカードを引き込んだとしても、それが機能するような展開にならなそうな手札だとマリガンなんですね。」
金子「似たような手札ですが、こちらはどうですか?」
塚本「うおー!!天使強い!《荒野の確保》強い!キープ!となりそうですが、よく見たら土地も2枚しかない、残りのカードもマナがある程度無いと使えなさそうな《荒野の確保》と、不安要素ばっかりですね。」
金子「これは良くない手札ですね。例えば序盤に使える呪文を引いたら、この手札に集まっている重いカードを唱えるための土地が引けません。逆に順調に土地を引いた場合、こんどは序盤に使える呪文を引けないんです。よっぽどうまく土地と呪文をバランス良く引かなくてはいけないですが、現実的にはマリガンですね。」
塚本「強いカードが手札に来たからキープ!とはいかないのですね。」
金子「デッキにもよりますが、大抵のデッキでは毎ターン行動できるような手札で始めたいものですね。それでは次はこちらのデッキを使った例題です!」
ケース4
12 《平地》 4 《戦場の鍛冶場》 4 《鋭い突端》 -土地(20)- 4 《スレイベンの検査官》 4 《町のゴシップ屋》 3 《ドラゴンを狩る者》 3 《アクロスの英雄、キテオン》 2 《探検隊の特使》 4 《白蘭の騎士》 4 《サリアの副官》 3 《ケラル砦の修道院長》 2 《無謀な奇襲隊》 -クリーチャー(29)- |
3 《グリフの加護》 4 《石の宣告》 4 《永遠の見守り》 -呪文(11)- |
3 《ハンウィアーの民兵隊長》 2 《族樹の精霊、アナフェンザ》 1 《グリフの加護》 2 《絹包み》 2 《停滞の罠》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 1 《平地》 -サイドボード(15)- |
塚本「これは、序盤から攻めるデッキで、1ターン目と2ターン目のアクションが確約されている!攻めること火の如し!キープ!!」
金子「塚本さん、ケース2を思い出してくださいよ!! これで土地を引いたらどうなりますか?」
塚本「1ターン目に《探検隊の特使》を召喚したとして、土地を引いたら《探検隊の特使》と土地5枚......よ......弱い手札だ!」
金子「はい、このまま呪文を引き続ければ良いのですが、それはちょっと運任せすぎますね。あと、デッキリストをもう少しよく見てください。」
塚本「うーん......全体的にマナ・コストが軽いデッキですね。それが何か関係あるんですか?」
金子「はい、関係大ありです!こういった低マナ域のカードで固めた攻めるデッキは、手数の多さがそのまま攻めの勢いになります。継続して呪文を唱え続けたいですし、できれば2アクション取るターンもほしいので、余分な土地は極力引きたくないんです。」
塚本「ケース4の手札だと、たとえ呪文が引けたとしても3ターン目以降の2アクションは取れなさそうなハンドですね。というかそもそも、そういうデッキならこんなに土地いりませんね!!」
金子「気が付きましたか! そうです、このデッキは土地が3枚前後で止まって、後は呪文を引き続けてひたすら叩き付けるのが理想です。この手札からだと最初から土地ばかりになってしまう状態、いわゆるマナフラッドが見えていますね。」
塚本「そうなると4、5枚目の土地はこの時点では役に立たなそうなので、残り5枚で戦うよりはマリガンした方が期待値高そうです。マリガン!」
ケース5
(※デッキはケース4と同じ)
塚本「土地は理想枚数だし、手札のカードがどれも強い、マナ・カーブも綺麗......これはキープなのか......。」
金子「どうしますか? マリガンしますか? キープしますか?」
塚本「......は!この手札......そもそもクリーチャーがいないじゃないですか!!」
金子「いいところに気が付きましたね!」
塚本「そうか......このデッキは実はコントロールデッキだったんですね!キープ!」
金子「ええええええ!!」
塚本「というのは冗談で、クリーチャーで攻めて勝つデッキなので、この手札だと何がしたいのかわからないですしマリガンですね。」
金子「良かった......本当に良かった......。」
塚本「というか、例題は全部マリガンでしたね!」
金子「この世は罠だらけですからね、では最後に、相手のデッキがわかっているサイドボード後の話です! ここではちょっとキラーカードのお話をするために、フォーマットはモダンとします。」
ケース6
8 《山》 4 《聖なる鋳造所》 4 《戦場の鍛冶場》 4 《乾燥台地》 -土地(20)- 4 《ゴブリンの先達》 4 《苛立たしい小悪魔》 3 《渋面の溶岩使い》 4 《大歓楽の幻霊》 -クリーチャー(15)- |
4 《溶岩の撃ち込み》 4 《稲妻》 3 《欠片の飛来》 4 《頭蓋割り》 3 《ボロスの魔除け》 3 《灼熱の血》 4 《裂け目の稲妻》 -呪文(25)- |
4 《石のような静寂》 4 《溶鉄の雨》 2 《摩耗 // 損耗》 1 《粉砕の嵐》 4 《神聖の力線》 -サイドボード(15)- |
塚本「うーん、そもそも最初の7枚が滅茶苦茶強い内容だったらキープしそうなものですが......。」
金子「正解!!」
塚本「でも、ほぼ勝てるカードをデッキに入れたのだし、中途半端な手札なんだったら引くまではなるべくマリガンしたいような......。」
金子「正解!!」
塚本「でも、マリガンを繰り返すほど手札に来る確率も減るから、来るまでマリガン!みたいな暴挙には出られないような......。」
金子「それもまた、正解!!」
塚本「結局、一番正しい意見はどれなんですか!?」
金子「マリガンのジレンマですね。何回もマリガンするとどんどん苦しくはなっていきますが、僕なら中途半端な手札ならば、《神聖の力線》を求めて5枚になるまではマリガンしますね。」
塚本「ベストな手札なら無理にマリガンせずにキープ、少しでも不安要素があるのならマリガンという方針が一番良さそうですね。」
金子「そうです、マリガンを重ねる勇気も大切ですが、冷静に毎回手札を吟味するのも大事ですよ!あとは、デッキの相性によっても変わってきます。『普通に戦っても勝てず、特定のカードを引く以外勝ち目がない』とかなら、どこまでもマリガンをすることが正当化されますね。というわけで今回のポイントはこれです!」
ポイント1:手札を元にゲーム展開をシミュレートしてマリガンを選択!
例:初動は何ターン目か? 何ターン行動できるか、など。
ポイント2:デッキの得意な動きができそうか?
例:クリーチャーで攻めることができそうか? 相手を手数で圧倒できそうか? など。
ポイント3:時には中途半端な手札をきっぱり諦めて、有効なカードを探しに行くマリガンも大事!
例:《神聖の力線》のような特定のデッキに対してのキラーカードがデッキにある場合。
塚本「これで長いこと続いてきた連載も終わりですね......。」
金子「塚本さん......次回の総集編頑張ってくださいね。」
塚本「え?」
金子「本編はこれで終わりですが、塚本さんの仕事はまだ残っていますよ、っていう意味ですよ。」
塚本「そんな......金子さん......今までありがとうございました!!」
金子「塚本さん?」
塚本は夕日に向かって走った、それは決して逃亡などでない。
この連載が終わる悲しみ、そして今まで金子に教わった全てを胸にトーナメントシーンに向かって羽ばたいていくという決意の表れであった......!!
金子「そんな綺麗なエピローグ風に書いたって無駄ですよ!!待てー!!」
こうして二人は夕日の向こうへと消えていったのであった。
総集編へ続く!
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