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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ある1枚のストラテジー:《口達者な一年生、アビゲール》入り黒単(スタンダード)

岩SHOW


 『ローウィンの昏明』の新カードが大挙して押し寄せてきた。さて、こういう新セットリリース直後には、どう立ち回るのが良いだろうか?セット全体を分析してデッキを組むのも良いが……情報量が多すぎて頭がパンクするかもしれない。だったら無理をせず、気になったカードについて1枚ずつ考察を深めていく、というアプローチもある。200枚を超える新カードを一人で全部受け止めるのも、1枚のカードについて深く考え抜くのも、プレイヤーの自由だ。今回は後者を行っていきたい。新カードの中からこの1枚をピックアップ!

 

 《口達者な一年生、アビゲール》!白黒の混成マナがカッコイイ。このシンボルはどちらのマナで支払っても良いというものであり、故にアビゲールはオルゾフ(白黒)カラーのデッキはもちろん、白単でも黒単でも問題なく用いることができる。この伝説の鳥・バードは、2マナで1/1ながら飛行・先制攻撃・絆魂と3つもキーワード能力を持っている。線は細いが攻防両面で活躍が期待できる……そして、アビゲールは戦場に出た時に能力が誘発する。対象のクリーチャー1体の能力を失わせると同時に、それに自身が持つ能力と同じものを付与するカウンターを置く、という独自色の強いものだ。この能力はなかなか深堀りのし甲斐がある。

 

 まずは対戦相手のクリーチャーを対象にすることについて考えよう。たとえばこちらが先手。対戦相手は後手1ターン目に《サッズのヒナチョコボ》を繰り出してきた。上陸系のアグロの重要な1マナ域であり、ターンを返せば上陸でサイズアップして脅威となるだろう。これに対してこちらの2ターン目でアビゲールを出してその能力失わせれば……何も怖くない。カウンターで3つの能力を得たところで、上陸していなければパワー0のかわいい雛に過ぎないのだ。

 これは極端な例だとしても、たとえば本来マナを加える目的で採用されている《ラノワールのエルフ》のようなマナ・クリーチャーやそれらを強化する《アナグマモグラの仔》、気の技とのコンボパーツである《灰毛の天才、オーロック博士》などなど、戦闘面を期待して採用されているわけではないクリーチャーから、肝心かなめの能力を取り去ってしまうというのはかなりのやり手に見える。それらを破壊や追放するだけのインスタントやソーサリーを唱えるのと違って、自身の戦場にしっかりとした戦力が残る、というのがアビゲールの強みだ。

 

 続いて自身のクリーチャーを対象にする場合……これには2つのアプローチがある。まずはそもそも能力を持っていないクリーチャーを対象にする。当たり前だが能力がないものからそれを失わせることにデメリットはなく、シンプルにカウンター3つ分の恩恵を受けられる。能力を持たないバニラと呼ばれるようなクリーチャーを構築のデッキに採用することは難しいが、たとえばトークンなどは能力を持たないものが大多数を占めている。アビゲールはトークンデッキの強化要因になり得るということだ。それから戦場に出た時に誘発する能力などを持ち、出た段階でその能力が完結しているようなクリーチャーも、能力を失わせることにマイナスな側面はないと言える。《蜘蛛を貪る者、モーラン》なんかは相性◎だね。

 そして、もう1つのアプローチ、こちらはむしろ能力を失わせたいクリーチャーを対象にするというもの。デメリット能力を与えられたクリーチャーは、今でこそ数は減ったがそれでも目にするものだ。マナ効率で見るとハイスペックながら、能力が足を引っ張ってなかなか活躍できないようなクリーチャーに対して、アビゲールはアンサーとなる。なんといっても《古のもの》との組み合わせはロマンに溢れている……扱いにくい2マナ8/8が最強戦力に早変わり。クリーチャーの弱点を帳消しにするという使い方は常に念頭に入れておきたい。

Yuto Yoshida - 「黒単ミッドレンジ」
店舗イベント 3-0 / スタンダード (2026年1月19日)[MO] [ARENA]
15 《
4 《魂石の聖域
4 《コーの領域
-土地(23)-

4 《暗黒騎士、セシル
4 《黄昏の妨害工作員
4 《口達者な一年生、アビゲール
4 《止められぬ斬鬼
3 《エレジーの見習い
4 《蜘蛛を貪る者、モーラン
-クリーチャー(23)-
4 《報いの呪詛
2 《無情な行動
3 《保安官を撃て
1 《黒い太陽の日
4 《不浄な別室 // 祭儀室
-呪文(14)-
2 《脅迫戦術
4 《強迫
2 《黒い太陽の日
1 《長い別れ
1 《戦略的裏切り
3 《除霊用掃除機
2 《大反目者の魔除け
-サイドボード(15)-
晴れる屋 より引用)

 

 

 というわけで今回は《口達者な一年生、アビゲール》を4枚採用したスタンダードのデッキを紹介しよう。黒単色のミッドレンジだ!豊富なクリーチャー除去、そして《不浄な別室》のもたらすドロー……これらのバックアップを経て、軽~中量級のクリーチャーらの攻撃を通していって勝つ、真っすぐなマジックらしさを体現するデッキだ。《止められぬ斬鬼》も採用されており、攻撃を通せば対戦相手のライフを半減させるパワフルな一撃を誇る。ここに《アクロゾズの放血者》を絡めて一撃必殺コンボを仕込む、デーモン型の構成も良いが、このリストでは不採用。より堅実な仕事をするカードを優先したリストに仕上げられている。アドバンテージを取って殴る!シンプルだが飽きの来ない、延々とプレイできるタイプのアーキタイプだ。

回転

 

 そこにアビゲールを投下し、相手のクリーチャーを弱らせたり自身のクリーチャーを強化したりと臨機応変に戦う。先述の《蜘蛛を貪る者、モーラン》もフル投入、戦場に出たこの吸血鬼をアビゲールの対象にして、殴れば殴るほど有利になっていくパワフルなフィニッシャーを確保!あるいはデメリット持ちの面々に使うのも良し。戦闘ダメージを与えるとライフが減ってしまうという難点を持つ《暗黒騎士、セシル》。ライフが減ることで変身して恩恵は受けられるが、ライフが少ない時に引いてくるとなんとも使いにくい側面を持つ。これをアビゲールで能力を失わせることで、1マナ2/3という純粋なスペックのみを受け取ることができる(接死や変身能力は失われてしまうが)。

 また《黄昏の妨害工作員》は、攻撃時に対戦相手のクリーチャーを強化してしまう。相手のクリーチャーをしっかり処理できていれば問題はないが、そうも簡単な話ではない。このデメリットも失わせてしまえば、2マナでパワー4と美味しいところをメインで受け取れる。威迫や護法は消えるが、タフネスが低いという弱点は先制攻撃でカバーできる点がかみ合っているッ!

 

 そしてもう1種の新カード、《報いの呪詛》も要注目!1マナインスタントで、2マナ以下のクリーチャーを破壊。範囲は狭いようだが、今のスタンダードであれば緑や赤のアグロ、ディミーア……その対象に困ることはない。序盤の軽量クリーチャーをテンポ良く除去できる優秀な呪文がやってきた。これは枯朽1という新たなアクションを行えるカードで、自身のクリーチャーに-1/-1カウンターを置くことを選べば、2点のライフを得られるというオマケ付き。そりゃあクリーチャーは弱まってしまうが、アグロデッキとの殴り合いにおいてはそれを受け入れて2点のライフを取りに行くことが、勝敗を分けることもあるだろう。アビゲールの絆魂も相まって、今後の黒系のデッキはライフを保ちやすいアーキタイプという特色が出るかもしれないね。

 ということで1枚のカードから様々なストラテジーを考察してみた。《口達者な一年生、アビゲール》……かなりのやり手な予感!こうやって気になった1枚を徹底的に考察していけば、自ずとセット全体の把握も出来るだろう。自分のスタイルに合わせて、一歩ずつ、1枚ずつ、理解を深めてデッキ構築を味わおう!

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