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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:エンジン爆発、ターボネクロ(レガシー)

岩SHOW


 マジックのクールさを語り世界にクールを広めるのが使命、今週もやってきましたCool Deckのお時間ですよ。マジックには数えきれない、夜空の星の数ほどのデッキが存在する。それらには「赤単アグロ」のような分類学的な名前……デッキ名というよりもアーキタイプ名が与えられていることもあれば、特別な名前が授けられていることもある。そのデッキ名について。

 かつてマジックには「ターボ○○」と呼ばれるデッキが複数見られた。ターボとはそもそも何か?それは車のターボチャージャー、ターボエンジンが由来。ターボチャージャーはエンジンに圧縮された空気を送り込み、無理やり詰め込む。それにより2倍の空気が送り込まれれば2倍の燃料を燃焼できる……これにより小型のエンジンでも大量の燃料を燃やして爆発的なエネルギーを得られるようになる、とのこと。ターボ付きの車はそうでないものよりも加速力で上回り、力強く速い走りを実現…ここからターボ=速いものという意味で一般で使われるようになり、マジックでも爆発的な加速力を武器にしたデッキを「ターボ○○」と呼んだものだ。

 

 ターボ系の中でも最も人々の記憶に残っているクールなデッキは「ターボネクロ」。ライフを糧に大量の手札を供給する《ネクロポーテンス》をエンジンとし、ネクロでかき集めた《暗黒の儀式》などから対戦相手を溶かす一撃を放つ……パワフルさと、己のライフを削りながら突き進む脆さとが同居するコンボは実にクールなものだった。あとシンプルに語感が良いよね、「ターボネクロ」。ついつい口にしたくなる。

 そんな「ターボネクロ」は時を経て現在もプレイすることが可能だ。ネクロの子孫《ネクロドミナンス》が登場したことにより、似たような動きが可能になったのである。《ネクロドミナンス》はターン終了時にライフを支払い、それと同じ値分のドローを行える。初代ネクロとの違いは手札の最大サイズが5枚になるというデメリット。それほど大量の手札を抱えられるというわけではないが、それでも瞬間的に手札をチャージすることが可能だ。毎ターンの通常ドローがスキップされるという大きなペナルティを背負うことで許されたこのドローエンジン。ライフを燃焼してどんなターボなムーブを決めるのか……レガシーの最高にクールなリストを元に解説させていただこう。

岸間博之 - 「ターボネクロ」
レガシー選手権・秋 準優勝 / レガシー (2025年11月22日)[MO] [ARENA]
2 《ロークスワイン城
1 《魂の洞窟
10 《
-土地(13)-

4 《ダウスィーの虚空歩き
4 《古の館底種
4 《ボガートの獲物さらい
3 《黙示録、シェオルドレッド
4 《終末の影
-クリーチャー(19)-
1 《金属モックス
4 《暗黒の儀式
4 《暴露
2 《不敬者破り
4 《不快な群れ
4 《血の署名
4 《魂の撃ち込み
1 《ヴィスの吸収
4 《ネクロドミナンス
-呪文(28)-
2 《思考囲い
1 《陰謀団式療法
1 《魂の洞窟
2 《大洞窟のコウモリ
2 《惑乱の死霊
2 《見下す高手、メイ
1 《夜の囁き
2 《シェオルドレッドの勅令
1 《疫病を仕組むもの
1 《不快な切断魔
-サイドボード(15)-
BIG WEB より引用)

 

 

 ネクロはカードの引く枚数に規定はなく、ライフを払えば望むだけのドローが可能だ。しかしながらクリンナップ・ステップを迎えると5枚を超える手札は捨てなければならない……実はこの問題は簡単に回避できる。ターン終了ステップ中に、引いた手札を遣えば良いのだ。同ステップの開始時にネクロが誘発してライフを支払ってドロー、このステップ中にはインスタントた瞬速呪文を唱えたり、能力を起動することができる。つまり溢れるほどにドローしたカードの中からそれらのカードをプレイして、美味しく使い切ってしまえばよい。

 特に相性が良いのが《魂の撃ち込み》で、このインスタントは手札を2枚追放する代替コストで唱えられる。ネクロで大量に確保した手札を燃焼して投げつける撃ち込みは、対象に4点のダメージを与えて自分のライフを4点回復してくれる。このライフゲインが、命を削るねクロにとっては次のドローを約束してくれる重要な燃料である点も素晴らしい。

 そして《魂の撃ち込み》とセットで使うのが《古の館底種》!ややこしいことが書かれている能力であるが、呪文を唱えた際にそれに書かれているマナ・コストと、実際に払ったマナとの差額分のライフを対戦相手が失うというオンリーワンの能力を所持している。この館底種をコントロールしている状態で《魂の撃ち込み》を代替コストで唱えると、7マナの撃ち込みにr大して支払ったマナは0、つまり対戦相手は7点ルーズ。撃ち込みを相手本体を対象にしていたなら一瞬で11点のライフが消し飛ぶことになる。このムーブを2回決めればそれで初期ライフが削り切られてジ・エンド。ネクロの大量手札獲得と、《古の館底種》によるフィニッシュ。それが最新の「ターボネクロ」の狙いだ。フィニッシュに至るコンボ自体はネクロに関係なく狙える点がクールと言えよう。

 

 館底種でのライフルーズが主なフィニッシュとなるため、撃ち込み以外にもこれと相性の良いカードが多数用意されている。このデッキの第3のキーカードである《終末の影》だ。これは自身が失っているライフ分マナが軽減されるため、館底種の求める実際に払ったマナと本来のコストの差が発生する。このデッキにはネクロを筆頭に《血の署名》や《ロークスワイン城》などライフを減らす手段が用意されており、相手の攻撃に対してもボディで受けていくスタイルなので効率よくライフが減少する。《終末の影》はなんてったってマナ総量{15}。最大軽減までもっていければ黒マナ2つで唱えて対戦相手を13点ルーズさせることが可能だ。

 また、これを直接唱えなくともこの影のマナ総量を活かす手段も用意されている。《不快な群れ》!これは手札の黒のカードを追放する代替コストで唱えられ、そのカードのマナ総量がXに代入される。つまり影を追放して唱えた場合、X=15でこの群れのマナ総量は17に。しかし払っているマナは0……殺傷能力とビジュアルのクールさが相まって、凍てつくような一撃を見舞える。このクールなムーブは自分の館底種を対象に唱えるだけで決まるので、対戦相手がクリーチャーをコントロールしないようなデッキでも問題なく決まる。館底種を出すことさえできれば、優先権を保持したまま群れを唱えることで誘発を確定させられる……《魂の洞窟》経由で唱えれば《意志の力》など通常の打ち消しでは介入も困難……という具合に、回避することがすこぶる難しいコンボである。ネクロなどあらゆるカードでライフを失うだけのは価値は大いにある、これぞクールかつターボなコンボである。

 

 このリストはサイドボードも滅茶苦茶COOL!コンボを成立させるための手札破壊や対戦相手のクリーチャーなどへの除去などサイドの基本とも言える構造ではあるが……手札破壊の枠には《惑乱の死霊》!オールドファンにとってはたまらないチョイスだ。対戦相手に攻撃を通すとランダムに手札を捨てさせる、運も絡むがこれで対戦相手のプランがめちゃくちゃになることも。この死霊を《暗黒の儀式》から1ターン目に唱える光景は30年前のプレイヤーらにとってはお馴染みの光景となり、「A定食」と名付けられるほど定番のムーブとなった……というクールなエピソード付き。除去をあまり持たないコンボデッキ相手に対して1ターンに送り出せば、死霊1体でゲームをぐちゃぐちゃにかき回してくれそうだ。

 また、ひときわ異彩を放つクールすぎるクリーチャー《不快な切断魔》もアツい!戦場に出れば対戦相手のエンチャントとクリーチャーを1枚ずつ生け贄に捧げさせるという特大の影響をもたらすクリーチャー。しかしそのコストは7マナ!さらにこちらもクリーチャーorエンチャントの生け贄が必要であるという、激重コストのデーモンだ。これをどうやって唱えるのか?という話だが、実は唱えずに運用するのが真の狙い。リアニメイトデッキが衰退したことで、マナコストを踏み倒すコンボデッキの筆頭に躍り出た《実物提示教育》系のデッキ。《引き裂かれし永劫、エムラクール》や《全知》を手札から直接戦場に送り込むのが狙いのそれらのデッキに対して、《実物提示教育》でこちらは《不快な切断魔》を叩きつける!これによりエンチャントでこようがクリーチャーでこようが、返り討ちにするぞというわけである……1枚のみのお守り的な存在ではあるが、こういうクールなチョイスが大規模トーナメントでは明暗を分けたりするので、侮れない。

 ターボ○○のようなデッキ名、今後も受け継がれていってほしいものだ。どんなデッキなんだろうと興味を引く、絶妙にクールなデッキ名を皆も模索し、広めてくれれば嬉しいな。全プレイヤーがクールの伝道師!それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Let's turbo‼

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