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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

のらりくらり、気が付けば勝ってるイゼットはいかが?(スタンダード)

岩SHOW


 皆がマジックに求めていること、理想的なゲーム展開とはどんなものだろう?これは個人によって異なるので厳密にはタイプ分けできないが……ザックリ分けてみると

  • 手札を使い切るブン回りでスカッと気分良く勝つ
  • 苦しい状況を耐えに耐え抜いて、コンボで一発大逆転
  • 常に大量の手札を抱えて盤上の優位を保ち続ける

 それぞれにアグロ、コンボ、コントロールのイメージだ。コンボも楽勝で決めるのが好きな派がいたり、コントロールもいつ負けるかわからないライフ1で粘りに粘ってこそというプレイヤーもいたりする。色んな個性があるからこそ色んなデッキが組まれ、その多様性が面白い。ここであえて言語化が難しいジャンルをあげてみよう。

  • 何だかわからないがズルズルやってたら勝ってた

 こういうゲーム展開が好みにストライク、そんな人もいるはず。観戦していた仲間が途中で席を離れ、戻ってきたところに勝利報告をすると「あの状況からどうやって勝ったの?」と言われる、そんなゲーム体験が好ましいという層は存在するはず。今回はそんな体験ができる、とあるデッキを紹介しよう。

Urasaki Takayuki - 「イゼット・スペル」
ジャパンスタンダードカップ:『アバター 伝説の少年アン』 トップ16 / スタンダード (2025年12月3日)[MO] [ARENA]
4 《マルチバースへの通り道
4 《尖塔断の運河
4 《リバーパイアーの境界
1 《轟音の滝
1 《コーリ山の僧院
6 《
2 《
-土地(22)-

4 《稲妻罠の教練者
4 《量子の謎かけ屋
-クリーチャー(8)-
3 《選択
3 《食糧補充
4 《塔の点火
1 《抹消する稲妻
2 《今のうちに出よう
4 《ブーメランの基礎
4 《水飛沫の門
4 《嵐追いの才能
2 《咆哮する焼炉 // 蒸気サウナ
1 《降霜断崖の包囲
2 《轟く機知、ラル
-呪文(30)-
2 《抹消する稲妻
2 《炎魔法
1 《紅蓮地獄
2 《軽蔑的な一撃
2 《呪文貫き
2 《スパイダーセンス
2 《無効
2 《永劫の好奇心
-サイドボード(15)-
Melee より引用)

 

 

 イゼット(青赤)カラーのこのリスト……クリーチャーカードは少なく、合計30枚の非クリーチャー呪文がズラリと並ぶ、伝統的なイゼット風味を色濃く放つリストだ。実際のところはカワウソ・トークンを生成する手段があるのでもう少しクリーチャーは多めだが、少ないことには変わりない。青の打ち消しやバウンス(手札に戻す)、赤のダメージ呪文、そして青のお家芸の手札を補充するアドバンテージ源……これらが主な構成要素で、対戦相手を妨害し勝利への道を辿らせないようにしながら、のらりくらりとかわしつつ、果敢を持つカワウソらや《量子の謎かけ屋》で殴り勝つことを狙う。

 このデッキのキーカードは《水飛沫の門》。スタンダードの他のアーキタイプでは目にすることがほとんどない呪文だが、このデッキはこれがあるから成立していると断言できる重要なエッセンスだ。このソーサリーは自分のクリーチャーを追放して、戦場に戻すというもの。インスタントであれば、自分のクリーチャーが破壊や追放をされそうなところに撃ち込んで救出する、という使い方も出来るが残念ながらソーサリー、そのためこのカードの意義は「クリーチャーが戦場に出た時の能力を使いまわす」というのがほとんどを占めている。

 これで追放してから戻すのは……そう、《量子の謎かけ屋》だ。謎かけ屋はワープであれば2マナで唱えられ、戦場に出ると1ドロー。ワープで唱えた場合はターン終了時に追放され、また追放領域から正規のコストを支払うなどして唱えなければならない。《水飛沫の門》はこの工程をショートカットしてくれる。ワープで唱えて繰り出した謎かけ屋をこれで追放し、戦場に戻す。謎かけ屋の能力で1ドローしターン終了時に追放…されることはない。一度追放領域という戦場以外の場所を経たパーマネントは、以前のものとは別のオブジェクトとして扱われる。そのため、この謎かけ屋はワープで唱えた際のペナルティを受けずにそのまま戦場に居座るのである。これにより3マナで謎かけ屋を戦場に定着させることが可能に。手札を1枚消費しているが、謎かけ屋で引いているので実質無料。場合によっては謎かけ屋で2枚引けるので手札が増えているなんてことも。低コストで4/6飛行を戦場に進 撃させ、対処を迫る。すぐさま除去されてもドローしているので損をしておらず、生き延びたなら飛行と高タフネスを活かして攻防両方で大活躍。そんなプチコンボがこのデッキの狙いだ。

 

 そして状況によっては謎かけ屋よりも優先して《水飛沫の門》の対象にするのが《稲妻罠の教練者》!門は対象にしたクリーチャーがカワウソだった場合1ドローのおまけがついてくるため、教練者の出し入れも手札消費無しで行える。そしてこのカワウソは戦場に出た時にライブラリーの上から4枚見て、土地でもクリーチャーでもないカードを選んで手札に加えられる能力を持つ。これを門で使いまわして2枚の手札を手に入れ、対戦相手のクリーチャーなどを除去したりしながらのらりくらりと粘る……それを2度3度と繰り返していれば、いつの間にか逆転。気が付けばこちらが果敢持ちのカワウソや謎かけ屋で相手のライフを詰めている、というのがこのデッキの勝ち方の1つだ。

 新カード《ブーメランの基礎》が加わったことでこの教練者を使いまわす手段が増えたのも朗報だ。序盤に出したこれをブーメランで戻し、今度は新生コスト込みで唱えるという動きも狙えるようになった。

 どのカードをどう使うのが最も効果的か、という判断力や逆転にいたるまでのプランニングは求められるが、慣れれば難しいデッキというわけでもなく、3ターン目謎かけ屋でウッカリ勝っちゃうこともある……実に良いバランス感覚のデッキだ。

 

 このデッキにちょっとした中毒性を加えているのが《轟く機知、ラル》だ。このプレインズウォーカーの主な役割は[+1]能力で、これでカワウソを戦場に送り出してブロック役に回す、というのが基本ムーブ。押されていないならそのカワウソの果敢を活かして攻めていくことになる。いずれにせよクリーチャーの絶対数が少ないデッキで、毎ターン1/1とはいえ安定供給してくれるのは大変ありがたい。

 [-3]能力は手札が空になったようなタイミングや、忠誠度に余裕がある時に。3枚引いて2枚捨てるためあまりお得感はないが、掘れる量は多いため所望のカードを見つけられるかも。あまり起動しないがいざという時はここから除去を探そう。

 そして[-10]能力は3枚ドロー+無茶苦茶強い紋章の獲得。この紋章、インスタントやソーサリーにストームを持たせるため……《塔の点火》で高タフネス持ちを焼き切ったり、《ブーメランの基礎》で相手の盤面を空っぽにしたり……呪文の大量コピーを可能とするストームならではのダイナミックなムーブが炸裂する。ラルは非クリーチャー呪文を唱えることで忠誠度が上昇するため、[-10]能力も実は安定して起動出来たりするのだ。一度味わうともう、やめられない。

 このイゼットカラーの中速デッキは、なんだか説明は難しいけども気が付いていたら逆転している……そんなゲーム展開を好む人には是非とも使ってほしい、刺さる人には刺さるアーキタイプだ。万人受けするかはわからないが、《量子の謎かけ屋》×《水飛沫の門》のようなブン回りパターンも備えているため、一度プレイしてみるとマジック観が拡がるかも?要チェックな逸品だぞ。

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