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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

エスパー・フラッシュ:ようこそ、ワン・シー・トンの図書館へ(パイオニア)

岩SHOW


 冒険ものの作品において、膨大な知識を有する存在はお約束であり、主人公らを導いたり次なる展開への橋渡しをしたりと物語を進めるうえで重要なキャラクターとなりがち。いかにも高い知性を有していそうな、悠久の時を生きている者が数えきれないほどの書物を備えた書庫にいる……一度は目にしたことがあるだろう、ありとあらゆる作品で目にするワンシーンだ。アニメ「アバター 伝説の少年アン」にもそのポジションにあたるキャラクターが登場する。ワン・シー・トンだ。

 

 巨大なメンフクロウの姿をしたこの精霊は、世界中の書物を所蔵する図書館の主だ。ワン・シー・トンという名は作中で萬知堂と書かれていることからも、万物を知る精霊であることがうかがい知れる。作中では知識を求めて彼の図書館を訪れた主人公アン一行に対し、図書館にて知識を深めることを許可するが、その対価としてそれぞれが持つ知識、即ち書物の類を要求している。

 『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』においてもこのワン・シー・トンの特性は再現されている。このクリーチャーはX個の+1/+1カウンターを得て、その半数分のドローをプレイヤーにもたらす。マジックにおける知識は手札の枚数で表現され、ワン・シー・トンはそれを大量にもたらす可能性があるアドバンテージ源だ。飛行と警戒を持つため単純に航空戦力としても頼もしく、しかも瞬速持ち。そして対価となる知識を要求する性質もしっかりと能力化されており、対戦相手がライブラリー(図書館)を探す場合、ワン・シー・トンはカウンターを得て強化されコントローラーにドローをもたらす。対戦相手が《寓話の小道》や《闇の誓願》といったカードを使ってきたら、それを解決する前にこのフクロウを滑り込ませ、こちらもしっかりとドローを頂戴する……そういう使い方を推奨する、高いポテンシャルを持ったクリーチャーなのだ。

 リリース前から注目されているカードだが、プレリ期間に早速この神話レアを用いたデッキが組まれていたので、ここで紹介させていただこう!

Nishimura Kouhei - 「エスパー・フラッシュ」
店舗イベント 3-0 / パイオニア (2025年11月15日)[MO] [ARENA]
4 《金属海の沿岸
4 《闇滑りの岸
4 《秘密の中庭
2 《さびれた浜
2 《難破船の湿地
2 《砕かれた聖域
1 《天上都市、大田原
1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼
1 《平地
1 《
1 《
-土地(23)-

4 《狡賢い夜眷者
3 《聖戦士の奇襲兵
3 《フラッドピットの溺れさせ
2 《陽光真珠の麒麟
4 《滑りかすれ
3 《呪文捕らえ
2 《素早き救済者、アン
4 《司書、ワン・シー・トン
-クリーチャー(25)-
4 《逃げ場なし
3 《この町は狭すぎる
3 《海の神のお告げ
2 《死者の神のお告げ
-呪文(12)-
3 《永劫の好奇心
2 《黙示録、シェオルドレッド
2 《ティシャーナの潮縛り
2 《未認可霊柩車
3 《悪夢滅ぼし、魁渡
3 《放浪皇
-サイドボード(15)-
晴れる屋 より引用)

 

 

 パイオニアのエスパー(白青黒)カラーのデッキ……クリーチャーが主体であるこのリストはフラッシュ(瞬速)デッキ!フラッシュ系クリーチャーで固めることで対戦相手が何をしてくるかを確認してから《聖戦士の奇襲兵》《フラッドピットの溺れさせ》などを繰り出す、テクニカルなデッキだ。ただ瞬速を束ねただけでなく、それに意味を持たせるカードも採用されている。重要なのは《狡賢い夜眷者》で、これは瞬速を持った呪文のコストを{1}軽減する。さらにその呪文は打ち消されなくなるという、なかなかのやり手だ。コスト軽減されてより取り回しが良くなった瞬速呪文で手数勝負で優位に立というというわけで、またマナを要求する《司書、ワン・シー・トン》がかなり使いやすくなる。

 複数体の夜眷者が並べばかなり効率よく手札を補充できるだろう。またドローを提供するとなると《滑りかすれ》も要注目。瞬速呪文を唱えると1ドロー、そして対戦相手が1点ライフルーズ。書いてあることはめちゃくちゃ強い、知る人ぞ知る隠れた実力者だ。このクリーチャーはフラッシュデッキでこそ輝くものであり、それを成立させるには強く優秀な瞬速持ちが必要。ワン・シー・トンの登場によりその時が来たってわけだな。

回転

 

 パイオニアで瞬速持ちとなると思い浮かぶのが《呪文捕らえ》。4マナ以下の呪文を実質的に打ち消し、対戦相手のプランを崩すスピリットだ。この《呪文捕らえ》が戦場に出ると呪文を追放、これが戦場を離れるとその呪文がまた唱えられてしまう。そのため完全に対処できるというカードではないのだが、これの面白いところは「打ち消す」と書かれていないため、《至高の評決》のような打ち消せない呪文に対しても妨害できるという点。こういった除去やコンボパーツなんかを追放して1ターンでもずらすことができれば、それで十分。稼いだターンで殴り勝てば良いだけの話だ。

 そんな《呪文捕らえ》の亜種とも言えるのがこれまた新カードである《素早き救済者、アン》。気の技で呪文を追放、それのコントローラーは{2}を払うことでそれを唱えなおせるが、一時しのぎとしては十分に優秀だ。このアンはクリーチャーも追放できるため、対戦相手の攻撃やブロックを防ぐ役目も担えるし、自身のクリーチャーを追放することで相手の除去や戦闘での死亡を防いでくれるという、臨機応変な1枚である。変身して強靭な《大海の憤怒、アンとラー》になることでゲームを終わらせる役目も担う、期待度◎な新顔だ。

 

 クリーチャー以外の瞬速呪文を同採用するかというのもフラッシュデッキの構築の見せ場。このリストではクリーチャー除去は《逃げ場なし》が担当。普通のインスタント除去でも良いのだが、夜眷者でコスト軽減・《滑りかすれ》でドローできることを考えれば《逃げ場なし》に軍配が上がるね。さらにパーマネントとして戦場に残るため《陽光真珠の麒麟》《この町は狭すぎる》で拾ってまた投げつけるという動きも狙える。また細かいドローや墓地回収なども瞬速に頼っているのが面白い。《海の神のお告げ》でドロー操作して欲しいカードを引き込み、《死者の神のお告げ》で《滑りかすれ》やワン・シー・トンを再利用する。テクいねぇ、まったくおたくテクいぜ。

 今回のフラッシュデッキのようなリストを組み上げるには、カードやデッキに関する知識が必要だ。そんなわけで皆にもカードリストやデッキリストなど、マジックに関する書に目を通して自身の知識を高めていってほしい。ワン・シー・トンの図書館のように、我々には書籍やインターネットに膨大なマジックの情報がある。有用なものを見つけ出し、楽しみながら成長してほしいね。

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