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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:夜長のお供にシミック出産の儀(モダン)

岩SHOW


 マジックというクールなコンテンツへの理解と愛を深めるため、クールなカードやデッキを紹介する今週のCool Deck。最近すっかり冷え込んできて、秋らしさを通り越して冬が迫っているんじゃないかと感じる次第。

 そんな時こそマジック、何せマジックはテーブルトップもデジタルも室内で楽しめる。過ごしやすい部屋、クールを超えてコールドにならない程度のコンディションでじっくりと秋の夜長のお供にマジック。やり込めばやり込むほど味がする、いぶし銀系のデッキの習熟度を高めるにはこんな良いタイミングもない。休みの前の日、ちょっと夜更かしできるんだよなぁ……そんなタイミングに、こんなデッキはいかがかな?

Zer Shiuan Peng - 「シミック出産の儀」
MTG SEA Championships Singapore Open トップ8 / モダン (2025年11月2日)[MO] [ARENA]
4 《霧深い雨林
3 《新緑の地下墓地
1 《溢れかえる岸辺
1 《繁殖池
1 《湿った墓
2 《迷路庭園
1 《天上都市、大田原
2 《耐え抜くもの、母聖樹
2 《冠雪の島
2 《冠雪の森
-土地(19)-

4 《氷牙のコアトル
4 《とぐろ巻きの巫女
1 《迷い子、フブルスプ
4 《断片無き工作員
4 《忌まわしき眼魔
2 《忍耐
2 《海の先駆け
1 《厚かましい借り手
3 《緻密
-クリーチャー(25)-
4 《朦朧への没入
2 《四肢切断
4 《拒絶の閃光
2 《否定の力
4 《出産の儀
-呪文(16)-
3 《神秘の論争
3 《記憶への放逐
2 《活性の力
1 《溜め込み屋のアウフ
1 《疫病を仕組むもの
2 《選別の儀式
1 《忍耐
1 《否定の力
1 《海の先駆け
-サイドボード(15)-
MTGTop8 より引用)

 

 

 フォーマットはモダン、シミック(緑青)をメインにしたクリーチャー主体のリスト。爆増、というわけではないが最近その姿を見る機会が増えているアーキタイプだ。モダンでこのカラーリングとなると《断片無き工作員》。このクリーチャーは続唱能力を持っている。この続唱とは、それを持つ呪文を唱えた時に誘発。その呪文よりもマナ総量が小さい呪文が公開されるまでライブラリーを捲り続ける、公開されればその呪文をマナを支払わずに唱えられ、他の公開されたカードはライブラリーの底へ……という処理を行う。つまりカード1枚が2枚分の呪文になるということで、この時点でもうクール。工作員自体はただの2/2のアーティファクト・クリーチャーに過ぎないが、これに2マナ以下の呪文がついてくるとなると戦力としてカウントできるというものだ。

 またこの手の続唱呪文を使うデッキの特徴として、狙ったカードが公開されるように工夫が施されている。続唱で公開されてしまうと空振りする可能性のあるカード、受動的な妨害手段などは公開されてしまわないようにマナ総量の低いものは用いないのである。かといって重いカードばかりにその役目を担わせるとそれはそれで唱えにくいというジレンマが発生する。これを解消するのが代替コストを持った呪文だ。《拒絶の閃光》《否定の力》《四肢切断》……これらの呪文はマナ総量3以上であるため工作員の続唱の邪魔をせず、それでいて早いターンにも唱えることが可能という便利な面々だ。こういったカードで周りを固め、続唱で狙ったカードを公開する……モダンでは《死せる生》などのマナコストを持たないカードを続唱でプレイするクールなコンボが見られるが……このリストはそのようなカードは採用されていない。

 

 では何を狙っているのか?2マナ以下のカードは大きく分けて2種類。まずは2マナのクリーチャー達……《氷牙のコアトル》《とぐろ巻きの巫女》など、いずれも戦場に出た時に誘発する能力を持ち、手札を1枚増やすかそれに準ずるアドバンテージをもたらす。これを工作員で捲っても嬉しいが、もう1つ大当たりとして設けられているのが《出産の儀》!このエンチャントはターン終了時にライブラリーの上から7枚見ることができ、その後自分のクリーチャーを生け贄に捧げる選択肢をとれる。そうしたならそのクリーチャーのマナ総量に+1した値以下のクリーチャー……つまり2マナのクリーチャーを生け贄にして3マナ以下のクリーチャーを、その7枚の中から戦場に出すことができる。1段階上のクリーチャーに生まれ変わる、かつて猛威を振るってモダンでは禁止となった《出産の殻》のリメイクカードである。これを工作員で捲れば、そのままターン終了時に工作員を生け贄にできてお得に運用できるということである。

 さてそうやって《出産の儀》から繰り出したいクリーチャーはというと、《忌まわしき眼魔》!5/5飛行のナイスボディに、対戦相手のアップキープにこちらの盤面にクリーチャーを増やす戦慄予示……これ1枚が次々と援軍を呼び、次なる眼魔にも繋がるともうアンストッパブル。モダン環境でもたった1体でゲームを終わらせるThe Game(支配者)としての強さをこれみよがしに発揮する超強力な眼魔。唱えるためには3マナ+墓地のカードを6枚追放という追加コストが設定されており、これが難題なわけであるが、それを《出産の儀》ですっ飛ばしてお得に眼魔を繰り出そう!というのがこのクールな「シミック出産の儀」の狙いである。

 

 2マナクリーチャーから出産、あるいは工作員で出産を捲るという動きから眼魔に繋げ、これを《拒絶の閃光》などで守りながら戦う……というのがデッキのクールすぎるストーリー。7枚見れればそこに眼魔がいる確率はそれなりに高く、また眼魔がいなくても2マナクリーチャーがいればとりあえず得することは可能。そしてメインとサイドにはその他の当たりとも呼べる3マナ域の姿も。《海の先駆け》は基本でない土地を島にするという豪快な土地対策。3色以上のデッキを多色土地で強引に運用するデッキが多く見られるモダンにおいて、このマーフォークのマナロックは非常に強烈。また《ウルザの塔》や《エルドラージの寺院》など特定の土地への依存度が高いデッキもモダンにはひしめいており、そういったデッキを完全に機能不全に陥らせて1枚で完封、なんて展開も作れるクールすぎる対策カードでありフィニッシャーでもあるのだ。

 サイドには《疫病を仕組むもの》の姿も。エネルギーデッキが猫・トークンを大量展開してきたり、《ピナクルの特使》でドローンを精算しまくるデッキがあったりと、特定のタイプを並べてくるデッキ相手にはキレのあるクールな回答となってくれるだろう。1枚忍ばせた《湿った墓》からの素出しルートがあるのもまたクールだ。

 「シミック出産の儀」は一見すると派手さこそないが、大会の呪いデッキリストなどには着実にその名を刻みつつある期待のアーキタイプ。こういういぶし銀系デッキを使い込んで、確実に実力を高めていく……クールな時間の使い方だと思うね。それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Let's stay up late‼

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