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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ビビ大釜と大混乱(スタンダード)

岩SHOW


 スタンダードと言えば?この問いに多くのプレイヤーが思い浮かべるデッキが……「ビビ大釜」なことだろう。

 

 《迷える黒魔道士、ビビ》はクリーチャー出ない呪文を唱えると能力が誘発、対戦相手に1点ダメージを与えつつ+1/+1カウンターが乗りパワーが上昇。そしてビビは各ターンに一度だけ起動できる能力も持っており、これによりパワー分の青&赤マナを加えられる。このビビのマナを加える能力に注目して組まれたのが「ビビ大釜」デッキで、その名の通りビビに《アガサの魂の大釜》を組み合わせたものだ。

 大釜で墓地のビビを追放することで、+1/+1カウンターが乗っているクリーチャーらが全員ビビの能力を所持することに。これにより圧倒的なマナの量で対戦相手と差をつける……このコンセプトを盛り込んだデッキはプロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』にてその雛型が使用され、その後世界中のプレイヤー達によるブラッシュアップと『久遠の終端』からの《量子の謎かけ屋》の参入を経て、スタンダードでも最多勢力として君臨することに。対策されて多少は使用率も下がったりはしたが、クリーチャーの質が高く各種ドローによる対応力の高さもあるため、スタンダードを代表するデッキとして各種大会でも勝ちまくっている。

 この「ビビ大釜」、スタンダードの強いデッキあるあるで、デッキ内にはフリースロット的なスペースがあり、数枚の違いからプレイヤーらの好みを読み取ることができるため、「またビビ大釜か」と思いつつもデッキリストを舐めるように眺めれば色々な味わいが摂取できるものである。そして今回はその中でも野心的なリストを見つけたので、ここで取り上げさせていただこう。

IronBeagle - 「ビビ大釜」
Magic Online Standard League 32 第10位 / スタンダード (2025年9月26日)[MO] [ARENA]
4 《尖塔断の運河
4 《リバーパイアーの境界
2 《轟音の滝
1 《オズコープ社
6 《
5 《
-土地(22)-

4 《略奪するアオザメ
4 《逸失への恐怖
4 《蒸気核の学者
4 《迷える黒魔道士、ビビ
3 《量子の謎かけ屋
-クリーチャー(19)-
4 《洪水の大口へ
1 《塔の点火
1 《削剥
1 《エレクトロの電撃
4 《冬夜の物語
4 《プロフトの映像記憶
4 《アガサの魂の大釜
-呪文(19)-
2 《呪文貫き
1 《軽蔑的な一撃
2 《無効
1 《削剥
2 《声も出せない
2 《塔の点火
2 《抹消する稲妻
1 《炎魔法
1 《量子の謎かけ屋
1 《轟く機知、ラル
-サイドボード(15)-
Magic Online より引用)

 

 

 ビビを大釜で追放するというデッキのムーブを決めるには、戦場に展開して除去されたビビを対象にするという受動的な形でも良いのだが、やはり能動的な要素がなくてはならない。そのため《逸失への恐怖》《蒸気核の学者》といったカードを引いてそれと同じ枚数を捨てる手札入れ替え……過去のカードになぞらえてルーティングと呼ばれるアクションを行うカードを多数盛り込んである。これらで土地や除去や大釜など、その都度必要なカードを引き込み、不要カードを捨ててゲームを円滑に進めていく。チャンスが来ればビビを捨てて釜に放り込むわけだが、このルーティング担当カードの中で最も頼もしい一手が《冬夜の物語》。カードを3枚引いて、クリーチャー1枚or他のタイプを2枚を捨てるソーサリー。クリーチャーを捨てた場合、手札は2枚増えることになり、3マナでこのアドバンテージを得られるのはかなり美味しい。

 そしてこれらのルーティングを活かすカードは他にも用意されている。《略奪するアオザメ》は手札を捨てることでサイズアップ、打点に貢献する上にカウンターが乗るため自力で大釜の条件を満たせるナイス1マナ域。そして《プロフトの映像記憶》、こちらもこのアーキタイプでは重要な1枚で、これ自身がドローを行える上に、各ターンに2枚以上カードを引いていれば戦闘開始時に能力が誘発。その枚数-1個のカウンターでクリーチャーを強化……言わずもがなこれも戦闘面だけでなく大釜と相性◎、ビビ本人を一気に育てるのも良しと、デッキのカードが悉く噛み合うように作られている。そりゃ強いわけだわ。

 

 さて、このリストに採用されている新カードについて。『マジック:ザ・ギャザリング | マーベル スパイダーマン』にて登場した新能力、大混乱に関するカードが投入されている。この能力は手札から捨てたターンにそれを墓地からプレイできるというもので、これまたルーティングにより捨てることでその本領を発揮するというわけだ。

 《エレクトロの電撃》は3マナでクリーチャーに4点ダメージ、平凡なソーサリーだが、大混乱であればコストが軽減され2マナに。こうなると一気に使いやすくなるし、本来捨ててそれで終わりのカードを無駄なく使用できるため、ルーティングが実質的に手札を増やしていることになる。同じく大混乱を持つ《オズコープ社》は墓地からプレイできるという稀有な能力を持った土地であり、デッキが求める2色のマナを加えられるためなかなかに便利。タップ状態で出る、墓地から出たら2点のライフを失うというデメリットが設定されてはいるが、本来捨てた土地が戦場に並ぶということはそれだけの代償を払う価値があるものなのだ。

 強力デッキだからこそ、色々な新カードを試す余裕がある。「ビビ大釜」はスタンダード最強格であることは疑いの余地がなく、またこのデッキにしかできないアクションもあってとても楽しいデッキである。強いデッキを基盤に、自由に使えるスペースに未知数なカードを取り込んで、新たなゲーム体験や新デッキ開発の礎を探求してみよう。あのカードやこのカード、まだまだ気になるものを君のデッキに取り入れてみよう!

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