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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

《サイオニック・ウィーバー、アラクネ》を堪能するアゾリウス!(スタンダード)

岩SHOW
 

 マジックにおける白という色は正義や秩序を司っている。しかしそれらの概念は、別の一方から見た時にははたしてどう感じられるのか……というところまで考えてデザインされているのかはわからないが、白には時折すげぇワルなカードが登場することがある。

 ある特定のカードや呪文に関して制限を与えるという類の妨害能力で……たとえば《スレイベンの守護者、サリア》は非クリーチャー呪文のコストを{1}上昇させる。たとえばコントロールデッキの場合、本来であれば4ターン目に唱えられる《審判の日》が、唱えられなくなる可能性がかなり高くなる。コンボデッキであれば《暗黒の儀式》などの呪文を連打して《苦悶の触手》に繋げるコンボも、完走する難易度は異常に上昇。こうして稼いだターンのうちに殴り勝つというのが白絡みのクリーチャーデッキの常套手段で、過去に《精鋭呪文縛り》《選定された平和の番人》など強力なコスト上昇系妨害能力を持ったクリーチャーらが、スタンダードなどの構築フォーマットにて活躍を見せてきた。これらのカードを使われた時には「なんちゅう極悪なカードじゃ!」と思わされたものだ。

 

 《サイオニック・ウィーバー、アラクネ》はそんな系譜に名を連ねる『マジック:ザ・ギャザリング | マーベル スパイダーマン』の新カード。彼女は呪文のタイプを選び、それに該当するすべてに{1}の追加コストを求める。対戦相手だけでなくこれのコントローラーもそのコストを支払わなければならないため、一見平等ではあるのだが……そもそもエンチャントやアーティファクトなど、対戦をしている一方のデッキにとっては重要なタイプでありながらもう一方のデッキには1枚も入っていない、ということはざらにある。自分のデッキにとって害が少なく、対戦相手にとっては悩みのタネになる、そんなタイプを的確に指定して妨害したいところだ。

 このタイプ指定はあてずっぽうに行わなくてもよく、アラクネが戦場に出る際に対戦相手の手札の内容を確認してから指定するため、効果的なタイプに追加コストを課すことが可能となっている。そしてアラクネはウェブスリング能力の持ち主。スパイダーマンら蜘蛛の能力を持つキャラクターに割り当てられたウェブスリングは、タップ状態のクリーチャーを手札に戻すという追加コストを支払う代わりに通常コストよりも少ないマナで唱えられるという能力。これによりアラクネはたったの白マナ1つで唱えられるため、最序盤から終盤まで、ゲーム中のあらゆる場面で隙なく降臨させて対戦相手にとってのイヤ~なタイプを指定して妨害することが可能となっている。同セットの中でも広い構築フォーマットでの活躍が期待される1枚だ。今回はこのアラクネを採用したデッキの一例を見てみよう。

Hamuda - 「アゾリウス・アグロ」
Magic Online Standard Challenge 32 第13位 / スタンダード (2025年9月27日)[MO] [ARENA]
4 《始まりの町
4 《マルチバースへの通り道
4 《フラッドファームの境界
2 《不穏な投錨地
6 《平地
3 《
-土地(23)-

4 《ひよっこ捜査員
4 《遠眼鏡のセイレーン
4 《内なる空の管理人
3 《基地の監視者
3 《光に導かれし者、ハリーヤ
3 《サイオニック・ウィーバー、アラクネ
3 《星原の番人
2 《マネドリ
-クリーチャー(26)-
4 《縫い目破り
2 《跳ね弾き
2 《幽霊による庇護
3 《ルーメン級フリゲート艦
-呪文(11)-
2 《軽蔑的な一撃
2 《無効
2 《聖戦士の奇襲兵
2 《幽霊による庇護
1 《悪魔祓い
2 《失せろ
2 《過去立たせ
2 《安らかなる眠り
-サイドボード(15)-
Magic Online より引用)

 

 

 スタンダード、アゾリウス(白青)カラーのクリーチャー主体デッキだ。低コストのクリーチャーを主体とし、手数で勝負するアーキタイプだ。クリーチャー1枚1枚は《ひよっこ捜査員》《遠眼鏡のセイレーン》と小粒ばかりだが、それらはアーティファクトのトークンを生成する。1枚でパーマネント2つ分のカウントになり、これで《内なる空の管理人》の能力をスムーズに起動することが可能だ。管理人はサイズが上がるだけでなく占術も行え、また最終的には飛行と警戒を得て巨大な航空戦力になる。

 この管理人を育てたり、あるいは《ルーメン級フリゲート艦》に配備を行い、これの全体強化で盤面を強くして勝負する。いきなりガンガン殴るという類のデッキではないが、少々時間をかけてでも戦える状況を作って勝負を仕掛ける、そんな手数勝負デッキに仕上げられている。

 

 このアーキタイプにアラクネが加わるとどうなるか。管理人やフリゲート艦でクリーチャーを攻撃させずともタップすることが可能で、ウェブスリングのコストを支払いやすい。さらにひよっこやセイレーンの能力を再利用して手掛かりや地図をおかわり可能と、妨害だけでなくアドバンテージにも繋がる。さらに……《光に導かれし者、ハリーヤ》はクリーチャーが戦場に出ることでライフを得て、同一ターンに3点のライフを得られればカードを1枚引ける。クリーチャーを手札に戻すウェブスリングは、ライフを維持しながらこの条件を満たせる格好のメカニズムなわけだ。また同一ターンに2回呪文を唱えると飛行を持ったドローンを生成する《基地の監視者》も、アラクネのウェブスリングにより出し入れと効果的に噛み合うナイスチョイス!

 これらの能力を活かすために覚えておきたいテクニックとして、アラクネ2枚があった時のウェブスリング・ループについて触れておこう。アラクネは伝説のクリーチャーなので2体並べることは不可能、2枚目を引いた時にちょっと損をした気分になるかもしれない。でも1枚目を管理人やフリゲート艦でタップすることで、それをウェブスリングのコストとして戻す→2枚目もタップして手札に戻した方のアラクネをウェブスリングで……と、白マナがある限りグルグルと回転させられる。このループで長期戦に陥った時もハリーヤでドローしたり監視者からドローンを展開したりといった粘りの戦いが可能になっているのである。

 ただの妨害クリーチャーに終わらない《サイオニック・ウィーバー、アラクネ》。ウェブスリングも絡めて、このカードのポテンシャルを完全に発揮できれば勝利はグッと近づく。白いクリーチャーデッキで、縦横無尽の活躍ぶりを堪能しよう!

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