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岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:バーン、感染、シンプルだからこそのクールさ(レガシー)
世界中のクールな人、物、場所……色んなものを目にし、体験してきたが、やはり僕にとってはマジックこそが最もクールに感じられる。そんな人生における最クールなものの魅力を語り尽くすのが「今週のCool Deck」。このコーナーを続けて長くなる。様々な観点からクールについて語ってきたが……最近は「シンプルなデッキリストこそクール」というのを再確認するようになってきた。
マジックの構築フォーマットは60枚以上のカードでメインデッキを作るというルールに則っている。その60枚、あるいは80枚、時にはもっと膨大なライブラリーの中に、可能な限り多種多様なカードを盛り込んだ豪華絢爛なデッキリスト。それもクールなものであるし、謎の1枚挿しがタップリあったりするとワクワクして大好きだ。しかしそれと同じく、あるいはそれ以上にスッキリとシンプルに整えられたデッキリストも素晴らしい。多くの種類のカードを抱えるリストが豪華なホテルのロビーなのであれば、シンプルなリストには禅寺的なクールさが感じられる。今回はそんなシンプルにしてクールなデッキについて愛を語ってみよう。
| 18 《山》
-土地(18)- 4 《ゴブリンの先達》 4 《僧院の速槍》 2 《大歓楽の幻霊》 -クリーチャー(10)- |
4 《稲妻》 4 《稲妻の連鎖》 4 《溶岩の撃ち込み》 4 《稲妻波》 4 《発展の代価》 4 《裂け目の稲妻》 4 《批判家刺殺》 4 《火炎破》 -呪文(32)- |
3 《フェアリーの忌み者》 2 《外科的摘出》 3 《精神壊しの罠》 1 《紅蓮破》 1 《赤霊破》 2 《焼尽の猛火》 3 《粉々》 -サイドボード(15)- |
まずはレガシーより、バーンデッキをご紹介。レガシー初期のリスト、それこそ10年以上前の物と言われても違和感のないリストだが《稲妻波》が最近のものであると理解させてくれる。このリストは2025年9月14日にアメリカで開催された参加者98名のトーナメントで優勝したデッキになる。現在のレガシーで非常にクラシックな構成のバーンデッキが優勝!それだけでもクールな事件だ。何せ土地は《山》18枚、これ以上シンプルなマナベース構成は追求の仕様がない。マジック黎明期は《山》と《稲妻》だけのデッキなどというものもあったらしいが、それに準ずる1マナ3点ダメージを可能かなぎり詰め込んだリストは4枚挿しがずらりと並ぶ美しいものである。
《大歓楽の幻霊》以外は4枚フル投入、実質的に1マナ3点として運用できる呪文は実に24枚!これだけ徹底した構成であれば再現性も高く、速やかに対戦相手のライフを焼き切るというミッションもクールにこなせるはず。デッキのあのカードもこのカードも複雑なテキストで色んな事ができてアドバンテージを稼いでしまう、そんな現在のマジックにおいて「○○点ダメージ」とシンプル極まるテキストのカードを手札から投げ捨てる、バーンこそシンプルを極めたミニマリスト的なデッキ(なのかもね)。
現在のレガシーは土地の選択肢が非常に多く《ウルザの物語》などのパワフルな土地で勝ちにくるデッキが多く存在する。その中で《発展の代価》は尋常ならざるダメージ効率を誇る、バーンのシグネチャームーブとなる。基本でない土地1枚につき2点ダメージ、8点くらいは覚悟してもらおうか。こちらは《山》のみなのでノーリスク、2マナなので《虚空の杯》X=1というバーン殺しの妨害手段を設置されても勝ちに繋がる一手となるなど、レガシーにおける強さは今が旬なのかもしれない。マナ不要で唱えられる《火炎破》と合わされば、瞬間的に二桁ダメージを叩き出し対戦相手が瞬きする間にクールなフィニッシュをもたらすことも可能だ。
| 4 《樹木茂る山麓》 4 《吹きさらしの荒野》 3 《Tropical Island》 1 《Savannah》 1 《迷路庭園》 4 《墨蛾の生息地》 1 《森》 -土地(18)- 4 《貴族の教主》 4 《ぎらつかせのエルフ》 4 《荒廃の工作員》 -クリーチャー(12)- |
4 《渦まく知識》 4 《思案》 4 《意志の力》 4 《目くらまし》 4 《Embiggen》 4 《激励》 2 《狂暴化》 4 《Legolas's Quick Reflexes》 -呪文(30)- |
3 《夏の帳》 2 《狼狽の嵐》 1 《精神壊しの罠》 3 《活性の力》 2 《剣を鍬に》 2 《外科的摘出》 2 《聖カトリーヌの凱旋》 -サイドボード(15)- |
続いてもう1つレガシーのデッキを。青緑2色に白を足した、感染デッキだ。こちらのリストは先のバーンに比べるとカードの種類は多くなるが、土地以外を見れば割とすっきりしたメインデッキに見える。何より感染というデッキの戦い方が実にシンプルで個人的にはクールさを感じる。
《ぎらつかせのエルフ》《荒廃の工作員》ら感染を持つクリーチャーはライフを減らすのではなく毒カウンターという形で対戦相手にダメージを与える。これらの軽量感染持ちのパワーを上昇させて速やかに殴り勝つのを狙うコンボ的なアグロになるわけだが、このパワーを上げる手段がまたクール。《激励》は対戦相手に3点のライフを得させることでマナの支払いなしで唱えられる。これで感染持ちが5/5になり、そこに《狂暴化》を撃ち込んでパワーを倍にすれば……一撃で毒10個、ノックアウトだ。
クールな瞬殺系デッキである感染、このアーキタイプならではの強力な土地が《墨蛾の生息地》。{1}を支払うことでこれはクリーチャー化、1/1飛行で感染を持つので、このデッキは実質的に12枚の感染クリーチャーを有している。今が勝負時だというタイミングでこの土地を起動し、毒をもたらしにかかるわけだが……この墨蛾と組み合わせることで輝くクールな1枚が《Embiggen》(でっかく)!『Unfinity』のカードで、ジョークセットらしい普通のカードとベクトルが異なるデザインがクールである。このインスタントはブラッシュワグでないクリーチャー(なんで?)を対象とし、それを《巨大化》などのようにターン終了時まで修正して強化するものなのだが、その修正するサイズが実に面白い。そのカードの持つ特殊タイプ、カード・タイプ、サブタイプ1つにつき+1/+1修正を与えるというのだ。《ぎらつかせのエルフ》であればクリーチャー・ファイレクシアン・エルフ・戦士で+4/+4、マナ効率は非常に良い。これで墨蛾を対象とすると……土地・アーティファクト・クリーチャー・ファイレクシアン・ちらつき蛾で+5/+5!さらに《激励》があれば10/10の飛行持ち感染のできあがり、シンプルにしてえげつない破壊力だ。
これらのカードは初出の頃にはファイレクシアンのタイプを持っていなかったのだが、後年ルール改定でそのタイプを得た形になる。実物のカードに書かれているものよりも1つ大きく《Embiggen》が機能するというのは、長い歴史を持つマジックらしいクールさを感じるね。使う際にはファイレクシアンが追加されていることをしっかり明言して、トラブルのないように。
シンプルなリスト、シンプルに勝つデッキ、これらからこそ得られるクールさがある。どんなデッキをクールに感じるかは人それぞれだが、やはり多くのリストを見て感性を磨いてこそ。世界中の様々な人が使ったデッキから、クールさを摂取して豊かなマジックライフを。それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Live simply!!
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