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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:最新のアドバンテージ源で回す双子コンボ(モダン)

岩SHOW


 マジックのクールさを語る今週のCool Deck。今回は『マジック:ザ・ギャザリング | マーベル スパイダーマン』のリリースにより、一気に過ぎ去った感のある『久遠の終端』環境を最後に振り替えるという形にしよう。年間6セットというスケジュールは常にクールな刺激がもたらされるが、逆に1つ1つのセットが加わって変化した環境を味わう、という落ち着いた時間は限られたものになっている。そのわずかな時間をどれだけ堪能するか、人によってクールに感じるものが異なるようにそれぞれの楽しみ方があるだろう。

 宇宙を舞台にした『久遠の終端』はそれまでにない雰囲気がマジックの新たなクールさを切り開いてくれたセットだ。それまでのマジック観を覆す世界観に反するように、カードは意外と手堅いデザインのものが見られるというギャップも面白い。その中でもあらゆるフォーマットで注目を集めているのが……

 

 《星間航路の助言》だ。このインスタントは青によくある、ライブラリーの上から一定枚数のカードを見てその中から1枚を手札に加えるというもの。この手のカードは手札の枚数は増えないが、その時に必要なカードを探してこれる可能性があるため見た目よりもずっと便利で頼もしい。そしてこの《星間航路の助言》がクールである点は、そのライブラリー上から見れる枚数が土地の数により変動するということ。2ターン目に唱えれば2枚見てどちらか片方が手に入る程度の威力だが、ターンを重ねて土地を置けば置くほど、必要なカードが見つかる可能性が高まり効果的なドロー操作へとなっていく。さらにキッカーコストを払えば見た中から2枚を手札に加えるため、手札の枚数自体も増える。

 質と量の両面でアドバンテージを稼げるクールな有用インスタントとして、スタンダードを始め様々なフォーマットで試されている。インスタントの《食糧補充》だ、デッキによっちゃ《時を越えた探索》を超えてる、などなどクールな意見も散見される。土地や除去が都度欲しいコントロールや、あるいはパーツをかき集めるコンボなどでもこの助言は輝きを放つ。今回はこれを採用したモダンのコンボデッキを紹介しよう。

Chaughey - 「グリクシス・ツイン」
Magic Online Modern Challenge 32 第10位 / モダン (2025 年9月8日)[MO] [ARENA]
4 《沸騰する小湖
4 《汚染された三角州
1 《血染めのぬかるみ
2 《蒸気孔
1 《湿った墓
1 《血の墓所
1 《轟音の滝
2 《闇滑りの岸
1 《大音声の劇場
1 《天上都市、大田原
1 《冠雪の島
1 《冠雪の沼
-土地(20)-

4 《知りたがりの学徒、タミヨウ
4 《超能力蛙
4 《詐欺師の総督
1 《やっかい児
-クリーチャー(13)-
3 《思考囲い
2 《否定の力
2 《呪文嵌め
4 《致命的な一押し
1 《邪悪な熱気
2 《朦朧への没入
4 《定業
4 《星間航路の助言
1 《水浸しの教え
4 《欠片の双子
-呪文(27)-
3 《記憶への放逐
2 《神秘の論争
2 《紅蓮地獄
1 《否定の力
1 《炎魔法
2 《溶融
2 《墓掘りの檻
1 《外科的摘出
1 《悪夢滅ぼし、魁渡
-サイドボード(15)-
Magic Online より引用)

 

 

 《詐欺師の総督》は戦場に出ると自分のパーマネントをアンタップ、あるいは対戦相手のパーマネントをタップする。《欠片の双子》はクリーチャーにタップ能力を与え、その内容は自身のコピーであるトークンを生成するというもの。そのトークンには速攻がついている。これを《詐欺師の総督》に貼り付けると……総督トークンが戦場に出て、総督本体をアンタップ。またトークンを生成してそれでアンタップし……延々と速攻持ちのトークンを並べられる。対戦相手のライフがいくらあろうとも、こちらは望む数だけ……無限にトークンを出撃させられるので勝利を手中に収められる。

 この2枚でゲームに勝てる「双子コンボ」は一時期モダンにおける最強のデッキだった。比喩表現などでなく、文字通り最強の存在だったのだ。コンボに必要な青赤を軸に、他の色を足して別の勝ち手段を用意したり別のコンボとのハイブリッドだったり……少々お痛が過ぎたため、《欠片の双子》は2016年1月にモダンの禁止カードに。

 そこから約9年の歳月を経て、モダン環境は双子時代と比べて大きく変わった。『モダンホライゾン』系の強力カードを含むセットの参入、特に『モダンホライゾン3』後の環境への変化を促す意味も含めて、いくつかの禁止カードが解禁されるというクールなイベントが起こり、2024年12月に双子はめでたく解禁となった。結果どうなったか、以前のような双子デッキの嵐は吹き荒れているか?……いないね。かつて絶対的だったデッキは、時代の流れと共にモダンの数多あるデッキの中の一つ、というポジションに落ち着くことに。この栄枯盛衰にもクールさを感じずにはいられない。落ち着いたとはいえ、2枚揃えば勝てるという現実は昔も今も変わらない。総督や《やっかい児》を対戦相手のターン終了ステップに繰り出し、自身のメインに双子をつけるという黄金ムーブは色褪せないクールさを今でも放っている。これらのパーツを《星間航路の助言》や《定業》を駆使してかき集めるというわけだな。

回転

 先に触れた『モダンホライゾン3』、環境に劇的な変化をもたらし以前のモダンと別の風景を作り上げたセットの影響を、このデッキも受けている。コンボに頼らない勝ち手段となるパーツ達のことだ。《知りたがりの学徒、タミヨウ》は青いデッキには入れておけと言われるレベルの1マナのエース。パワー0でこれほど攻撃しているクリーチャーもおるまいという、この0/3飛行のウィザードは攻撃時に手掛かりトークンを生成。マナが必要だがドローになるゆっくりとしたアドバンテージを獲得し、同一ターンに3枚のドローを行えばプレインズウォーカーに変身。この《老練の学匠、タミヨウ》は堅い、やたらと堅い。対戦相手のクリーチャーのパワーを下げて自身を護り、墓地のカードを回収して使いまわす、相手からしたら嫌なことしか書かれていない。このタミヨウを落とせずに数ターンが経過すると、ライブラリーを半分引いて手札にする&手札の上限がなくなるというえげつない大技をかましてくるのだからたまらない。この起動までいったらもう勝負アリだ。

 変身するためのドローは《定業》、あるいはこのデッキに黒が足されている理由である《超能力蛙》を用いて行う。蛙で攻撃してドロー、相手の動きは打ち消しやクリーチャー除去、手札破壊などで妨害。不要な手札を蛙で捨ててサイズアップ……早いターンから攻撃を仕掛けながらコントロールする、クロックパーミッションと呼ばれる動きをしているだけでゲームに勝ててしまう。クリーチャーを護り攻撃を通すために手札を消費していくクロックパーミッションの弱点を、しっかりと補うこの蛙はクールなヤツなのだ。《超能力蛙》に手を焼いている隙に瞬速持ちをねじ込み、コンボを決めるという動き、クールに決めてみたいぜ。

 というわけで『久遠の終端』環境はいよいよというか早くもというか、夏の終わりと共に終焉を迎え……続けざまに『マジック:ザ・ギャザリング | マーベル スパイダーマン』環境がやってくる。クールを目指す旅、中々休ませてくれないね。というわけで今週はここまで。Stay cool! Prepare for the next!!

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