この夏は海に行ったかい？若い頃は毎年どこかしらへ海水浴に行ったもんだ。夏、海ときたら思い出すのが、かつて足をつって溺れかけたこと。あの時助けてくれた通りすがりの親子には本当に感謝しかない。油断していると急に足が動かなくなって、命の危険が訪れる。それ以来海水浴は怖くなってご無沙汰なのだ。本当の海で泳ぐのはまあもう良いかなぁ……って感じだが、もし溺れる心配もなく自由に潜ったりできるのなら、是非ともそうしたい！かなわない夢はマジックが大体かなえてくれる。というわけで多元宇宙の大海原を生きるマーフォークを主役としたデッキを紹介しよう！

　マーフォークはマジック最古のクリーチャータイプの1つであり、そして早くから同タイプを集めたデッキが構築されてきた種族だ。マーフォークは言うなれば海の人、その多くは人魚や半魚人のような姿をし、人間に近い身体の構造の随所に鱗や鰭、鰓などの魚類の特徴を併せ持っている。彼らの多くは文明を持ち、水中に都市を築くなどしている。また海にのみならず川に棲む者、陸上に進出している者も見られる。

　マーフォークは多くの次元に生息しているが、必ずしもどの世界にいるわけでもない。なので「今回のセットにはマーフォークがいる！」「マーフォークがテーマの一つだ」とセットが出るたびに一喜一憂するファンの姿がよく見られた。次元同志に繋がりが出来て移住なども可能になったことから、今後もマーフォークは増え続け、このタイプを強化したり参照したりするカードも登場していくことだろう。

　そんなマーフォークを主役としたのがこのリスト。まさかまさかの、スタンダードにおけるマーフォークデッキだ。スタンダードには確かに強力なマーフォークの姿が見られる。《フラッドピットの溺れさせ》はクリーチャーをタップして麻痺させる。瞬速で飛び出し、相手の攻撃を防ぎながらこちらの攻撃をねじ込む、いぶし銀の働きを見せる。地味に警戒持ちであり、攻撃しながらブロックに回ったりタップ能力も起動したりが可能で、その能力は麻痺しているクリーチャーとこれ自身をライブラリーにシャッフルするという、青らしい疑似的な除去だ。《ティシャーナの潮縛り》も瞬速で飛び出し、能力を打ち消す。これにより能力をもみ消されたクリーチャーやアーティファクトは能力を失うため、対戦相手のプランを大きく崩すことが可能だ。瞬速と妨害能力、実に青らしくマーフォークらしいこれらのカードは、スタンダードは勿論他のフォーマットでも活躍中だ。

　そんなマーフォークは個々で活躍しているが、『久遠の終端』期のスタンダードでこれらが束になりマーフォークデッキを形成しているイメージは薄い……というか全くない。このリストを見て「マーフォークデッキ、成立するのか！」と驚かされたレベルだ。トーナメントシーンのデッキばかりを追いかけていると、見えていないカードもあるのだなと思い知らされた。

　《思考の泉のマーフォーク》！これがマーフォークというタイプで固めてデッキを組むことを肯定する1枚だ。Xマイカードを引くという消尽能力、これはたんにカードを引くのみならず、その後すべてのマーフォークに＋1/＋1カウンターを1つ置くというオマケがついている。これが収録されている『霊気走破』にはこのカードしかマーフォークが収録されておらず、そのせいでマーフォークの全体強化役という印象はかなり希薄になっていたことだろう。本体が1マナと軽くて使いやすく、同族のクリーチャーを並べるという性質から手札を消費しがちなデッキおいて手札を補充できるのも魅力的。即効性がないのだけが玉に瑕だが、そこは他のカードのトリックで補ってやろう。

　《思考の泉のマーフォーク》で各種マーフォークを強化したら、次は《召喚：リヴァイアサン》の出番。海に生息するいくつかの種族以外を手札に戻すという豪快な能力、マーフォークはしっかりと見逃してもらえるのでこれで相手のクリーチャーをまとめて吹き飛ばし、攻撃を叩き込むという寸法だ。マーフォークで攻撃することがカードを引くことも可能、これ自身も6/6のクリーチャーというのもあり、効果的に運用デキれば勝負を決める必殺の1枚となる。

　トークンでないマーフォークがタップ状態になることで、マーフォーク・トークンを生成する《深根の巡礼》。マーフォークで攻撃を仕掛けることでどんどんと有利になっていくというエンチャントであるわけだが、タップするための手段は攻撃だけではない。《思考の泉のマーフォーク》や《フラッドピットの溺れさせ》のタップ能力、さらには《重厚な世界踏破車》の搭乗など、あの手この手でマーフォークを寝かせて頭数を増やそう。激ヤバな組み合わせは《目覚めの安息地、エヴェンド》！ソーサリータイミングではあるがマナが不要、マーフォークをタップして配備、巡礼から出てきたトークンも使って配備……と動けばあっという間にこの土地の本気が引き出される。トークンが並ぶことで加えられるマナが増えるという、素晴らしい噛み合いっぷりだ。それらを思考の泉で強化するのが勝ちパターンで、また緑を採用しているのを活かして《ウロボロイド》も強化役に抜擢されている。この植物、うっかり生き延びるとマジで強すぎてビビるやつなんだよな。マーフォークを並べてゴリッと強化し、一気に勝利をものにしよう。

　波も渦潮も何のその、むしろ己の武器とするマーフォーク。このタイプを主役としたデッキは本当に楽しい、ワクワクするビートダウンが組めるので、このリストを参考にスタンダードでもデッキを組んでみよう。海は本当に怖い、海に限らず水遊びは常に細心の注意を。盤面に並ぶマーフォークも、侮っているとコテンパンにやられちゃうぞ！