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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

オルゾフ・ピクシー:他に類を見ない異形の天使(スタンダード)

岩SHOW
 

 『久遠の終端』リリースからそれなりに時間が経過した。このセットの新カード、満喫しているかな?個人的にセットの全容が判明した時にビックリしたカードがあって……それが《光逸らしの審問官》。このカード、かなり異質じゃない?異質というか異形というか……まず1マナの天使という点。天使クリーチャーでこのマナ総量に該当するカードは《光逸らしの審問官》以前には1種しか存在せず、スタンダードで使用可能な通常セットでは初のこと。天使と言えば白を代表するタイプであり、かつては5マナ以上の大柄なクリーチャーが主体だった。クリーチャー全体の質が向上してくる中で軽量の天使も作られるようになってきていたが、それでも1マナというのは大変に珍しくエピックな存在だ。

 そしてさらにもう1つ……この天使は飛行を持っていない。天使と言えば背中から翼が生えており、飛行を持っているのがデフォルト。素の状態で飛行を持たない、何らかの条件を達成しても飛行を得ない天使はこれまた過去に特殊セットに1種あったのみ。というわけで1マナで飛行を持っていないという、実に天使らしくない天使である《光逸らしの審問官》。1マナでパワーが2あって警戒とスペックは良好、さらに戦場に出た際には対戦相手に手札1枚の追放を要求する。そのカードは手札にあるのと同じく唱えることはできるが、マナが{1}上昇してしまう。

 また土地であればタップ状態で戦場に出るという、強烈!とまではいかないが、ほんのりと嫌がらせを行う能力になっている。対戦相手に自由に行動させないこの手のカードは、白のお家芸。今回の審問官はそれらの中では控えめな性能ではあるが、1マナと軽いのが魅力的。もともとタップインの土地を追放されると妨害としては機能しなくなるが、特に序盤から動きたいデッキに対しては刺さることもある、なんとも絶妙な仕上がりになっている。というわけで今回はこの特殊な天使を用いたデッキをご紹介。スタンダードのオルゾフ(白黒)カラーのデッキをご覧あれ。

Ronnel Lara - 「オルゾフ・ピクシー」
Thursday Standard @ Dragon's Lair トップ4 / スタンダード (2025年8月21日)[MO] [ARENA]
4 《神無き祭殿
4 《秘密の中庭
2 《ブリーチボーンの境界
2 《指揮艦橋
3 《脱出トンネル
1 《寓話の小道
3 《平地
3 《
-土地(22)-

4 《光逸らしの審問官
4 《養育するピクシー
4 《陽光真珠の麒麟
2 《ロザリアの心、アンブロシア
3 《コスモグランドの頂点
3 《星界を呼ぶ者、ゾラリーネ
2 《エイヴンの阻む者
2 《永劫の無垢
-クリーチャー(24)-
2 《脅迫戦術
1 《長い別れ
3 《勢い挫き
3 《逃げ場なし
3 《チビボネの加入
2 《手術室 // 病室
-呪文(14)-
2 《領事の権限
2 《失せろ
1 《幽霊による庇護
1 《別行動
2 《戦略的裏切り
2 《没収の強行
1 《脅迫戦術
2 《古からの確執
2 《安らかなる眠り
-サイドボード(15)-
MTGTop8 より引用)

 

 

 「オルゾフ・ピクシー」……ピクシーとは《養育するピクシー》のこと。自身のパーマネントを手札に戻すことで+1/+1カウンターを得る、1マナの飛行クリーチャーだ。1マナで2/2飛行ならかなりのコスパであるが、パーマネントを戻すということはテンポを削ぐ動きになる…とデメリットになりそうなこのアクション。しかしながら戻すもの次第ではメリットに早変わり。《勢い挫き》や《逃げ場なし》など、戦場に出た時に能力が誘発するパーマネントと組み合わせて、これらの能力を使いまわし。結果1枚の除去でクリーチャーなどを2体以上、あるいは《チビボネの加入》などで手札を2枚以上捨てさせることが可能になる。

 ピクシーと同じくパーマネントを戻す《陽光真珠の麒麟》《ロザリアの心、アンブロシア》などを用いて、パーマネントをグルグル回転させて対戦相手を妨害……同時に軽量クリーチャーで攻めていくのがピクシーデッキの狙いだ。これに《光逸らしの審問官》が加わった形に。1ターン目から攻めるクリーチャーが増え、さらにこれもピクシーで戻すカードの候補に。1回では効果は薄めだったとしても、2回以上手札追放+コスト増加を仕掛けられてはさすがに鬱陶しい!と声をあげてしまいそうだ。

 

 ピクシーデッキは軽いカードばかりで構成されているため線が細いものであるが、最近は《コスモグランドの頂点》が加わり打点も向上。このオルゾフ型にもしっかりコスモグランドの姿が。2回目の呪文を唱えるたびにトークン生成かカウンターばら撒きを行う能力を持ち、頭数が少ない時にはトークン2体で盤面を固め、十分な数が揃っていればカウンターでそれらをまとめて強化。このカード1枚で戦線を支えられる、見た目よりもずっと強力なTHEパワーカードである。手札にパーマネントを戻して唱えなおすピクシーデッキにおいてはこのカードの要求する1ターンに2回の呪文という条件は楽に達成できるため、バリバリにフル回転させることが可能なのだ。

 とはいえ対戦相手もこのカードがヤバいことを理解しており、これを除去の的にするべく狙いを定めている。最低限の働きをさせるためにコスモグランド+2回目の呪文と動けない限りは戦場に出したくない……でも何もせずにターンを終えるのも勿体ない……そんなジレンマが生じうるのだが、あるカードがそれを解決してくれる一手になりそうだ。《手術室》は3マナ以下のクリーチャーを墓地から戦場に戻せる。これを使って、あえて除去の前に差し出して死亡させたコスモグランドを釣り上げるというわけ。リアニメイトでありながら戦場に残る《手術室》はもちろんピクシーで使いまわして嬉しいものでもある。《病室》のドアを開いて攻撃面でも機能してくれる、なかなかやり手な1枚。こういうシブいカードでパワーカードを支えるプレイが、最高にマジックしている感があって楽しいのだよ。

 《光逸らしの審問官》は白いアグロ系のデッキにおける定番になるだろうか。1マナで飛行を持っていない、イレギュラーすぎる天使。その異形のデザインも、時の経過と共に当たり前の光景になるのかも。こういうマニアの変なところを刺激しつつ、構築戦で活躍するカードが出てくるから、マジックはやめられんのだ。

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