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岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:Time Vaultのクールすぎる変遷(ヴィンテージ)
マジックのカードやデッキについて語ることでこのコンテンツのクールさを再確認し味わう今週のCool Deck。今回のテーマは……僕個人が大好きなアーティストの一人、マーク・テディン/Mark Tedin先生が手がけたカードの中でも珠玉の名アートを誇る1枚をチョイス。
《Time Vault》!直訳すれば時間の蔵というところか。そのイラストには独特な光沢を放つ空間に石臼のような装置があり……怪しすぎるカラーリングのローブに身をまとった何者かと、背の高い明らかに人外の何かが並んでいる。こいつらが何をしているのか?砂時計とハンマーを手に、それを砕いてその中身の発光する物質を取り出しているようだ。後方の臼のような装置を見るにその光る何かが注がれているようで……時間というものを形として取りだし抽出しているのか?なんともワクワクする、わかるようでわからない世界観が最高にクールだ。
このアーティファクトは{2}と軽いコストで、これをタップするだけで追加ターンを得られる。いくらなんでもそれは軽すぎるだろという破格の性能だが、もちろんデメリットも。《Time Vault》はタップ状態で戦場に出て、通常のパーマネントと同じようにはアンタップされない。ターンを開始する時にこれがタップ状態であるなら、そのターンを飛ばすことでこれをアンタップすることができる。ターンを糧にこれを起こして、それにより追加ターンを得る。一見無駄なようだが、どうでも良いターンを飛ばして勝負所で2ターン連続で仕掛ける、という使い方を意図して作られたのだろう。これがマジック最初のセットに含まれているという事実がクールすぎじゃないか?世界に放たれた初のカードの中にこんな実験的なものがあったなんてなぁ。アーティファクトをアンタップする手段と組み合わせることで簡単にアンタップして無限にターンを得る……というクールなことができてしまう超強力カードである。
この《Time Vault》は悪用されるのを回避するという名目で、何度もテキストが変更された。その回数はなんと四度!ここまでの回数、調整が為されたカードというのもそうそうない。稀有な存在なわけである。
先述した《Time Vault》の能力は、最新のものであり同時に初代テキストに書かれていたものとほぼ同じである。ただ大きく違う点は、「アンタップ・ステップの間にこれをアンタップしてターンを飛ばすかどうかを選ぶ」というテキストであった。しかしこれ、アンタップ・ステップまで突入しているならターンがもう始まっているのに、これを飛ばすとはどういうことだと。
なので実際にはアンタップ・ステップではなく「ターンの間」にこの処理を行っていたという。ターンの間?意味不明ではあるが、アーティファクト1枚のために謎概念が存在していたのだ。このターンの間というものを把握したプレイヤーは、クールに悪用する方法を発見した。《根の壁》は1ターンに1回しか能力が起動できないが、ターンとターンの間であればそれは誰のターンでもない!つまり望むがままに起動できる!と。
この《Time Vault》が生み出したターンの間を利用した「フェイズ・ゼロ」というデッキが組まれたとか。屁理屈にも程があるが、ルールがきちんと整備されていないアナログゲームの黎明期だからこそのエピソードで、個人的にはすごくクールだと思うんだなぁ。
1998年にこのターンの間をなくすため、その元凶となった《Time Vault》のテキストにメスが入った。この時点では既に一度修正されており、二度目のエラッタとなる。「あなたの次のターンを飛ばす:Time Vaultをアンタップし、時間カウンターをTime Vaultの上に1個置く」というテキストが与えられた。時間カウンターはタップして追加ターンを得る時に消費され、これがなければ追加ターンを得られないという寸法だ。
しかし……これはこれで問題があるテキストだ。ターンを飛ばす能力は1ターンの間に何回も起動できた。次のターン、その次のターン、その次の……無限にターンを飛ばしてアンタップすることが可能に。各パーマネントにそれをタップすることで1点ダメージを飛ばす能力を与える《炎の一斉攻撃》と組み合わせれば無限ダメージを叩き込める!これはこれでクールなコンボだ。2006年に三度目のエラッタが実施され、この手のコンボは不可能に。そして四度目のエラッタで現在に至る、と。初代のテキストに近くなったが、もちろん「ターンの間」はもう発生しない。
| 3 《古えの墳墓》 2 《Mishra's Workshop》 1 《トレイリアのアカデミー》 1 《ウルザの物語》 1 《マダラの鉤爪門》 4 《島》 -土地(12)- 1 《群青の獣縛り》 1 《アージェンタムのマスティコア》 -クリーチャー(2)- |
1 《ブラック・ロータス》 1 《Mox Pearl》 1 《Mox Sapphire》 1 《Mox Jet》 1 《Mox Ruby》 1 《Mox Emerald》 1 《魔力の墓所》 1 《太陽の指輪》 1 《魔力の櫃》 1 《厳かなモノリス》 1 《サウロンの遺物》 1 《Ancestral Recall》 1 《渦まく知識》 1 《ギタクシア派の調査》 3 《食糧補充》 2 《ロリアンの発見》 1 《神秘の教示者》 4 《意志の力》 2 《否定の力》 2 《マナ吸収》 1 《精神的つまづき》 2 《朦朧への没入》 2 《この町は狭すぎる》 1 《Time Walk》 1 《修繕》 1 《Transmute Artifact》 3 《一つの指輪》 1 《苛立たしいガラクタ》 1 《内なる太陽、チミル》 1 《止められない計画》 1 《多用途の鍵》 1 《Time Vault》 1 《覆いを割く者、ナーセット》 1 《大いなる創造者、カーン》 -呪文(46)- |
2 《記憶への放逐》 2 《狼狽の嵐》 1 《精神壊しの罠》 1 《群青の獣縛り》 1 《ハーキルの召還術》 2 《墓掘りの檻》 1 《船殻破り》 1 《The Tabernacle at Pendrell Vale》 1 《マイコシンスの格子》 1 《真髄の針》 1 《ファイレクシアへの門》 1 《ワームとぐろエンジン》 -サイドボード(15)- |
《Time Vault》のクールな変遷を振り返ったところで、現在これを使用しているデッキを紹介して今回は終わりとさせていただこう。構築フォーマットではヴィンテージで使用可能、制限カードなので1枚オンリーというのが逆にクールに思える。《多用途の鍵》でVaultをアンタップして無限ターン、2枚で決まるお手軽コンボ「キーヴォルト」がデッキのゴール。
制限カードを引いてこれるのかって?それを水増しするのが同じく制限カード、《修繕》よ!アーティファクトを生け贄に捧げてライブラリーからアーティファクトを探してきて戦場に直に出す。こんなパワフルなソーサリーももちろん制限されており、なのでこれを《神秘の教示者》でサーチしたり《Ancestral Recall》で引いてきたり……もちろんそれらも制限だ!強いカードで強いカード出して勝つ、わかりやすくってクールじゃないか。
「キーヴォルト」を成立させる鍵以外のパーツとして《止められない計画》が採用されているのも面白い。土地以外のパーマネントをターン終了時にすべてアンタップ、これで起こしたヴォルトを即起動して追加ターンをGET。さらに《一つの指輪》でドローしたり各種Moxでマナを得たりと、他にも色々恩恵があるのが面白い。
また《群青の獣縛り》の姿も見える。このデッキの数少ないクリーチャー・カードであり、これで攻撃すると対戦相手のクリーチャーやアーティファクトの能力を失わせることができる。ヴィンテージ的には特にアーティファクトを食い止めることに意味があり、マナ加速から1ターン目に出すなどすれば相手のマナ・アーティファクトを無効化して大きく減速させられるだろう。こうしてみると最近のカードもヴィンテージで使われているのがクールだね。軽くて青くて、何か独特の能力を持ったカードはヴィンテージにて白羽の矢が立つ可能性、大ありってことだね。
それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Open the Vault!!
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