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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

一周回って……一撃必殺!オルゾフ・デーモン(スタンダード)

岩SHOW


 一周回って、というのはどんなジャンルにもあることで。スープがなんだ具がどうだと日々複雑に進化していくラーメン、そういうのを追いかけるのも楽しいが……一周回ってごくシンプルな町中華のラーメンが食べたい!と思ったこと、あるでしょうよ。そんな感じでマジックも最新の日々移り行くトレンドを追いかけ、最新のカードで強化されたデッキの進化を追求……していった結果、一周回って少し前の時期のデッキが強かった、みたいなことが起こったりする。今回はそんなデッキのお話。

Luís Gobern - 「Orzhov Demons」
プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』 / スタンダード(2025年6月20~22日)[MO] [ARENA]
4 《ブリーチボーンの境界
4 《コイロスの洞窟
4 《秘密の中庭
4 《魂石の聖域
9 《
-土地(25)-

4 《アクロゾズの放血者
2 《薄暮の聖人、エレンダ
3 《分派の説教者
4 《止められぬ斬鬼
-クリーチャー(13)-
4 《残虐爪の強奪
4 《切り崩し
4 《強迫
4 《喉首狙い
2 《害獣駆除
4 《不浄な別室 // 祭儀室
-呪文(22)-
1 《苦痛ある選定
1 《覆い隠し
2 《除霊用掃除機
2 《ギックスの命令
2 《脅迫戦術
2 《軍勢を灰に
2 《第三の道のロラン
2 《害獣駆除
1 《一巻の終わり
-サイドボード(15)-
 

 戦闘ダメージを与えることで、対戦相手のライフを半分失わせるという、なかなかビックリな能力を持つ《止められぬ斬鬼》。20点のライフを持つ相手に攻撃したとして、2点与えて18点、そこから半分失わせて残りは9点。えげつないパンチ力を持ちつつ、このクリーチャーは接死を持つためダメージを与えられればどんなクリーチャーとも相討ちが取れる。さらに死亡しても墓地から戦場に戻る……という、ブロックしてもしなくても害をもたらす極悪なゾンビだ。

 これの能力をさらに活かすことができるのが《アクロゾズの放血者》。対戦相手がライフを失う時にその値を倍にするという、これまたデンジャラスなデーモン。この2体が並んでいる状況で、斬鬼の攻撃が通ると……対戦相手のライフが20点だろうが1億点だろうが、ライフ半減→その値が倍になって0になる。文字通りの一撃必殺コンボで、この2体が共演するデッキは2024年秋ごろに登場、一時的にブームとなった。黒単やそれに1色足したような中速デッキで、クリーチャー除去や手札破壊でコントロールしつつ斬鬼の攻撃を叩き込む。シンプルであり、そしてコンボに依存せずとも戦えるデッキというのがセールスポイント。だが環境の高速化にともなってスピーディーなデッキのユーザーが増え、斬鬼アクロゾズを搭載した「○○デーモン」と呼ばれるようなデッキは徐々に減少。最近ではめっきり見なくなった。

 

 しかしそんなデーモンデッキが、実はプロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』で静かに復活していた。このリストは同トーナメントのスタンダードラウンドにて7勝3敗という好成績を残したもの。デーモンデッキに白を足したオルゾフカラーの逸品だ。トップ8入りを競うようなラインかどうかなどで対戦するプレイヤーの層も異なるわけだが、とはいえプロツアーで勝ち越しているデッキには目を通しておいて損はない。それに禁止カードが制定される前の環境で好成績ということは、現環境でも検討の価値が大いにある。そんなわけで個人的にも目を離せないデッキの1つだと考えている。

 デーモンデッキと言えば《不浄な別室》!デーモンが居れば対戦相手のライフを吸い取れる、強烈なシナジーを内蔵したアドバンテージ源だ。これと放血者をコントロールしていれば、対戦相手のライフは4点失われる。手札の量、そしてライフの差も付けるえげつないコンビネーション。デーモンは《祭儀室》を解放しても得られるし、《魂石の聖域》も多相であるため、見た目よりもカウントはしっかり用意されている。そしてもしデーモンが居なければ2点のライフを失ってしまうが……環境の変化により、以前よりもライフを失うことのリスクが抑えられているため、今こそ別室を使ってみようじゃないか。

 

 さて、白が足されている理由もチェックしておこう。メインデッキでは《害獣駆除》《薄暮の聖人、エレンダ》……これらは当時猛威を振るっていた赤いアグレッシブなデッキを意識してのチョイスというのがよくわかる。逆にもし環境がスローダウンしてこういったカードが要らなくなったのなら?その時は黒単にしても良し、環境のメインデッキらへの対策手段を考慮し直しても良い。要するに今このまんまコピーしても、大いに勝てるとは限らないということ。そこさえ注意したら、このデッキはスタンダードを戦う上で大いに参考になるだろう。一周回ってまた魅力が増してきた《止められぬ斬鬼》《アクロゾズの放血者》を備えたデッキ。遊ぶなら今が旬かもしれないぞ!

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