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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

イゼット果敢、最多勢力のその後……(スタンダード)

岩SHOW
 
 

 《コーリ鋼の短刀》がスタンダードで禁止された。モダンやレガシーでも強いカードなので、スタンダードに存在するにはオーバーパワーな存在だったのかもしれない。スタンダードのカードプールが広くなったことで、軽い呪文がクリーチャー・非クリーチャー問わず環境に多くなっている現スタンダード、1ターンに2回のアクションでモンク・トークンを生成するという条件を満たすのは簡単なことになっていた。

 コーリ鋼と言えばイゼット(青赤)の果敢デッキ。モンクをはじめ《嵐追いの才能》のカワウソなど、非クリーチャー呪文を唱えることでパワーが上昇する果敢やそれに準ずる能力を持った面々を展開、青の《選択》《手練》《食糧補充》……要するに次のアクションに繋がるドローなど手札補充呪文を連打。これにより果敢クリーチャーを膨れ上がらせつつ短刀からのモンクで数の勝負でも上回りつつ……環境の大半のデッキを蹴散らすヤバいデッキだった。

 短刀が禁止されたことで、この果敢デッキは環境からいなくなる……というわけでもないようだ。超強力なエンジンは失ったが、それ以外に先述したカードなどデッキの構成要素は現役バリバリ。というわけで他のデッキに鞍替えしたプレイヤーもいれば、「イゼット果敢」を研ぎ続けるプレイヤーの姿も。今回は構成が変化した果敢デッキの今をチェックしてみよう。

maximusdee - 「イゼット果敢」
Magic Online Standard Challenge 64 トップ16 / スタンダード (2025年7月11日)[MO] [ARENA]
4 《シヴの浅瀬
4 《尖塔断の運河
4 《リバーパイアーの境界
6 《
3 《
-土地(21)-

4 《精鋭射手団の目立ちたがり
4 《迷える黒魔道士、ビビ
-クリーチャー(8)-
4 《塔の点火
1 《自爆
2 《洪水の大口へ
4 《選択
4 《手練
4 《食糧補充
2 《激しき乗りこなし
2 《魔法無効化「シェル」
4 《嵐追いの才能
4 《「占星術師」の天球儀
-呪文(31)-
2 《石術の連射
1 《焦熱の射撃
2 《炎魔法
1 《呪文貫き
1 《軽蔑的な一撃
2 《今のうちに出よう
2 《除霊用掃除機
2 《永劫の好奇心
2 《轟く機知、ラル
-サイドボード(15)-
Magic Online より引用)

 

 

 果敢デッキの現在形、まずはクリーチャーから。1マナ圏に《嵐追いの才能》、2マナには禁止直前環境では減少傾向にあった《精鋭射手団の目立ちたがり》が。2枚のみ採用するリストなど、今後も適正枚数は模索されていくだろう。タフネスが2であるため簡単に除去されるという弱点はあるものの、このカードならではの破壊力が魅力的なのも事実。このリストのように4枚の形が定番に帰り咲いても不思議ではない。

 そして《迷える黒魔道士、ビビ》もまた、前環境の果敢デッキでは使うか否かが議論の的となったカードだ。非クリーチャー呪文でパワー/タフネスが上昇するが、それがカウンターにより永続的というのがこの黒魔道士の最大の強み。それでいて同時に対戦相手に1点ダメージを飛ばすため、3マナでパワー0と貧相なスペックでありながら上手く育てればグイグイと打点に貢献する。そして自身のパワー分のマナを加える能力で、《食糧補充》などから一気にラッシュを仕掛けられる。

 くどいようだが3マナというスタートラインは、スピーディーに勝負を決めたい果敢デッキには重めのコスト。しかしながら計画からスタートする《精鋭射手団の目立ちたがり》を採用するなど、このリストはどちらかというと序盤から毎ターンに渡りガンガン!というより、仕掛けるターンを設定してそこの密度を高めるという作り。以前と同じデッキが組めないなら、やり方を変えるまでだ。

 

 上記のメンバーに加えてクリーチャー役であり、それでいて非クリーチャー呪文であるのが《「占星術師」の天球儀》だ。英雄を生成しそれに装備され、そして非クリーチャー呪文を唱えるたびに装備者に+1/+1カウンターを乗せる。この誘発は各ターンの3枚目のドローによっても引き起こされるため、ドロー呪文を連打する果敢デッキの動きとマッチしている。英雄はその名に恥じないサイズに一気に成長するだろう。短刀が抜けた2マナで高打点を生み出す席は、今後天球儀が座ることになるかもしれない。

 

 また果敢デッキが失ったものはもう1つ、《巨怪の怒り》がある。クリーチャーに役割を与えてトランプルを持たせパワーも引き上げる、1マナとは思えぬ大ダメージを弾き出すインスタントだ。果敢を促すこの呪文の枠も何かで埋める必要がある。パワーの上昇値などで近いものは《激しき乗りこなし》。これはトランプルではなく速攻を与えるため、場合によっては《巨怪の怒り》よりも有用かもしれない。特にビビを絡めた濃度の濃い1ターンを生み出すには良い1枚だ。墓地から唱えられる点もGOOD。《魔法無効化「シェル」》はどちらかというと受け身の1枚であるが、仕掛け時を対戦相手の除去によってくじかれるというガッカリパターンを乗り越えるにはこの上ない1枚。呪禁を付与して相手の除去を弾き、ゲームを終わらせるとしよう。

 カードが失われても、デッキが失われるとは限らない。スタンダードの「イゼット果敢」、形を変えてスタンダードに存続するか、あるいは他のデッキとの競合に敗れるか……今後のプレイヤー達の腕の見せ所。こういったデッキの紆余曲折を見届けることもまた、スタンダードの、そしてマジックの醍醐味だ。

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