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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:シンプル化したパルヘリオン(パイオニア)

岩SHOW


 マジックのデッキやカードのクールさを探求、今週のCool Deck。今回はマジックに度々見られる、シンプルになっていく現象について。

 マジックのデッキ構築には2つのルートがある。元々単純だったデッキに様々なシステムが搭載されて複雑化する、あるいはその逆。様々な要素で構成されていたデッキの純度を高めて、単純化。デッキがシンプルになることの良い点、それは余計なものがなくなることでデッキの強みをより打ち出せるようになること。デッキの強みが複数あればそれはそれで何重もの構成が仕掛けられるが……焦点がぼやけて突き抜けるものがなくなったりする。あさり出汁の味噌汁を味わいたいなら、具はあさりとネギくらいに抑えた方が旨味が感じられてクールという話に通ずるものがある。

 

 たとえば……パイオニアを代表するデッキ「パルヘリオン」。《大牙勢団の総長、脂牙》をキーとしたコンボデッキ。脂牙は墓地から機体を戦場に戻し、速攻を与えるという誘発型能力を持つ。こうして戻した機体はターン終了時に手札に戻ってしまうので、一度攻撃したらまた自力で盤面に出さねばならない。使い切りとは言え攻撃は可能なので、それにより能力が誘発する機体との相性が良い。そういったものの中でも、素出しは大変だが攻撃できれば一気に勝利が近づく《パルヘリオンⅡ》は最高の相方。これを墓地に落として脂牙で戦場へ、そのまま搭乗コストは脂牙をタップして支払い攻撃。これにより4/4飛行・警戒の天使が2体攻撃している状態で戦場に出てくる。一気に13点ダメージを叩き込みつつ巨大な飛行持ちが2体並び、何もなければ次のターンには勝ててしまうという強力なコンボだ。これが早ければ3ターン目には決まるというのだからクールだ。

回転

 このパルヘリオンデッキはパイオニアの定番デッキとなっている。これまでその多くは脂牙の白黒に、もう1色を足した3色で組まれることがほとんどだった。これは墓地にカードを送る手段が増えるというのが大きな理由。赤を足せば《税血の収穫者》《逸失への恐怖》や《鏡割りの寓話》など、手札を捨てる手段でありかつ単体でも強いカードが得られる。また緑であれば《忌まわしい回収》《ウィザーブルームの命令》など切削するカードで墓地を肥やせて、かつ《エシカの戦車》や《轟雷のブルードワゴン》など機体のバリエーションが豊富になってこれらを普通に出して勝つというプランも狙える。

 そんな3色のパルヘリオンデッキ。最近ではなんと2色にまとめた形がシェアを獲得し始めている。3色でなくなることの利点として、最もわかりやすいの土地。必要なマナの種類が減るため、土地のスロットに余裕ができ、色事故も起こりにくくなる。シンプルに脂牙コンボのキレが増すというところだが……オルゾフ(白黒)2色にまとめつつも、新たな勝ちパターンも獲得している。クールにシンプル化したパルヘリオン、トレンドの形を見てみよう。

Arianne - 「オルゾフ(白黒)パルヘリオン」
Magic Online Pioneer League 5-0 / パイオニア (2025年7月11日)[MO] [ARENA]
4 《神無き祭殿
4 《秘密の中庭
4 《陽光昇りの小道
1 《砕かれた聖域
1 《皇国の地、永岩城
1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼
4 《マイコシンスの庭
2 《ガイアー岬の療養所
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ
1 《平地
1 《
-土地(24)-

4 《歴戦の神聖刃
4 《束の間の霊魂
4 《新ベナリアの守護者
4 《大牙勢団の総長、脂牙
-クリーチャー(16)-
4 《致命的な一押し
4 《幽霊による庇護
4 《忍耐の記念碑
4 《墓所呼びの戦車
4 《パルヘリオンⅡ
-呪文(20)-
4 《思考囲い
1 《強迫
2 《真っ白
4 《ポータブル・ホール
4 《消失の詩句
-サイドボード(15)-
Magic Online より引用)

 

 

 というわけでパイオニアの「オルゾフ(白黒)パルヘリオン」!紆余曲折を経て2色に落ち着いたリストの分析開始だ。パルヘリオンデッキで重要なのは墓地にカードを送る手段。そこのところを他の色に依存する形のリストが多かったが……このリストでは白がそれを担う。

 このデッキには3種12枚の2マナクリーチャーが採用されているが、それらはすべて共通して手札を捨てることで起動する能力を持っている。《束の間の霊魂》は戦場から追放されてターン終了時に戻るという、一時的な回避を行える。《歴戦の神聖刃》《新ベナリアの守護者》はシンプルに破壊不能を得る。つまりはこれらのクリーチャーは手札を捨てることで戦闘や除去に対して耐性を持つということ。普段はディフェンシブな受け身の能力であるが、コンボのためとあらば能動的に手札を捨てられる機関となる。マナが不要で何度でも手札を捨てられる、そして2マナであるため、脂牙が出てくる前のセットアップとしては十分にクールな働きを見せてくれる。

 

 そしてこの手札を捨てるというアクションをテーマの1つにしている『霊気走破』のカードを組み合わせることで、脂牙×機体のコンボ以外の勝ち筋を確保している。それが《忍耐の記念碑》!これは1ターンの間に手札を捨てるたび、1ドロー・宝物生成・対戦相手のライフ3点ルーズから1つを選ぶという形で恩恵をもたらす。3つ誘発させられればかなり美味しくクールなゲーム展開に。特にドローできるのは大きく、《束の間の霊魂》などでカードを捨てることの損失を大きく軽減してくれる。ライフを詰められるため、墓地対策をされてコンボは成立しないが記念碑で勝ち、という展開も大いに起こり得る。

 そして最高にクールな1枚《墓所呼びの戦車》がこれに続く。手札を捨てた数だけゾンビ・トークンを生成。これによりパルヘリオンコンボを促しつつ、ゾンビを並べて盤面を固めることが可能になる。ワラワラ湧いたゾンビでこの機体に搭乗し、パワー5の威迫でガツンと一撃も叩き込める。これまた墓地を抑えられた際の勝ち手段として、大いに活躍してくれることだろう。

 

 このデッキは2色にまとめられたことにより《ガイアー岬の療養所》を無理なく運用できる。このクールすぎる土地は、全てのプレイヤーにカードを引かせ、そして捨てさせるという能力を持つ。手札破壊デッキで《無駄省き》と組み合わせ、対戦相手にカードを捨てさせるという目的でパイオニアでも使われているカードだが、このデッキでは自分が捨てることを促すという、逆の目的で採用されているのもなんだかクールだ。療養所から機体を捨てて脂牙で釣ったり、記念碑や戦車の能力を誘発させてクールに立ち回ろう!

 3色だったデッキが2色にまとめられる、それが成立するくらいにパイオニアのカードプールも拡がったということだろう。あなたが使っているデッキも、もしかしたら色を減らしてよりシンプルなものにできるかもしれない。そういうカスタマイズを楽しみながら、マジックをやり込んでいこう。それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Simple is best!!

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