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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

強欲の計略:デメリットを持つカードが使われる理由(スタンダード)

岩SHOW
 

 マジックを始めたばかりの頃、こう思った人は多いだろう……あるいは今まさにそう感じている人も。《地底の大河》とか《カープルーザンの森》とか、自分にダメージ与える土地、弱くない?と。なぜ自分にデメリットを与えるカードが、大会上位のデッキで当たり前のように採用されているのか、不思議に感じたことがあるはずだ。他にも自分のライフを支払わなければならなかったり、パーマネントを生け贄に捧げたり手札を捨てたり……唱えたり維持するために代償を支払うカードを弱く感じるというか、そういうのはデッキに入れたくないと思うものなんじゃないかな。

 僕はちょっとネジが外れたゲーム体験を求める人間なんでデメリットどんとこいという感じだったけど、周りの友人らにはそういうカードの強さがわからないと、トレードに応じてくれるプレイヤーが居たものだ。ダメージを受ける土地は、色マナを加えるという点ではそりゃあダメージを受けないものに劣る。しかしながらダメージを受けない無色マナを加えるモードもあり、戦場にタップ状態で出るということもなく店舗を損なわない。ダメージを受けないに越したことはないが、いざという時に1点のライフで必要なマナが得られるなら安いもの。

 というわけでデメリットを許容できる2色以上のデッキではこれらの土地を目にする。ダメージランドなどデメリット持ちカードの強さが分かり、デッキに必要だと欲しくなった頃には初心者から一歩成長した、と言われるものだ。

 

 しかしながらデメリットにも程度・加減というものがある。あまりにもデメリットが大きすぎるカードはマジックをやり込んだプレイヤーの手にも余る。たとえば現スタンダードであれば《悪魔の契約》。4つのもーどのうち3つは大きな恩恵だが、最後の1つはゲームに敗北するというモード。これはデメリット云々どころではない。というわけで《悪魔の契約》は使いこなせれば強力なカードではあるが、スタンダードでこれを用いるデッキは少ないのが現状だ。

 他にもスタンダードだけで見ても、大きなデメリットを抱えたカードはいくつか存在している。そういうカードはどう使えば良いのか?それが理解出来たらあなたももう立派なマニアの仲間入り……今回紹介するデッキは、もちろんそんな自分に害をなすカードを使いこなす意欲作だ。

Mike C - 「ファルコン・ギャンビット」
地域チャンピオンシップ予選(アメリカ・ディアーパーク) トップ8 / スタンダード (2025年3月8日)[MO] [ARENA]
3 《地底の大河
4 《闇滑りの岸
4 《グルームレイクの境界
2 《不穏な浅瀬
2 《解体爆破場
2 《寓話の小道
3 《
6 《
-土地(26)-

4 《切望の隼
3 《ティシャーナの潮縛り
-クリーチャー(7)-
3 《不気味なガラクタ
4 《逃げ場なし
2 《勢い挫き
2 《死人に口無し
4 《今のうちに出よう
2 《三歩先
4 《嵐追いの才能
4 《強欲の計略
2 《知識の徳目
-呪文(27)-
2 《苦痛ある選定
3 《悪意ある覆い隠し
2 《否認
2 《組立分解
4 《強迫
2 《除霊用掃除機
-サイドボード(15)-
MTGTop8 より引用)

 

 

 スタンダードにおけるディミーア(青黒)カラーのデッキで、流行りの「セルフバウンス」と同じく《逃げ場なし》《勢い挫き》《嵐追いの才能》などのカードも見られるが……セルフバウンスのキーカード《この町は狭すぎる》《孤立への恐怖》といったカードが見当たらない。セルフバウンスはエンチャントやアーティファクトを自分の手札に戻し(バウンス)て、その能力を使いまわしてアドバンテージを稼ぐデッキだ。一応は《今のうちに出よう》でエンチャント2枚を回収して使いまわせるが、それがメインの狙いではなく……本命は冒頭で触れたデメリットが大きすぎるカード、《強欲の計略》!

 このエンチャントは戦場に出た時に3枚ドロー・6点回復・2/1飛行を3体と4マナとは思えない破格のアドバンテージをもたらす……のだがウマい話には裏がある。ターン終了時にはこうして得たアドバンテージの三分の一を失ってしまうことになる。そんなデメリットが誘発するなら、計略自体を破壊したりバウンスするなりしたら良いのでは……というところだが、この計略は戦場を離れると、出た時に得られるものをそっくりそのまま失わせてくるというぬかりのない設計になっている。

 なので毎ターンのデメリットと付き合っていかなければならないのだが……こんなものは対戦相手に押し付けてやれば良い。というわけでセットで用いるのが《切望の隼》!この隼は裏面のクリーチャーとして唱えることが可能で、その状態でマナを払えばいつでも表向きにすることができる。この表になった時に能力が誘発、こちらがコントロールしているパーマネントのコントロールを好きなだけ対戦相手に譲ることができる。こうしてコントロールが移った数だけのドローをもたらすというカードなわけだが、この隼のコントロール譲渡を使って《強欲の計略》を対戦相手にプレゼント!こうすることで自分はメリットだけを受け取り、キツいデメリットは対戦相手に肩代わりしていただくという……賢いなぁオイ!

 

 さて、このリストには隼以外にも計略のデメリットを緩和するプランが用意されている。それが《知識の徳目》。あまり構築では目にすることのない1枚だが、これがなかなか面白い。パーマネントが戦場に出た時に誘発する能力を倍にするという、このデッキの様々なカードと相性が良いもので……計略の誘発が倍になれば6枚ドロー・12点回復・コウモリは6体ともうハチャメチャなことに。これだけオイシイ思いをしてそのまま隼でコントロールを移せたら最高だが、まあ倍になったのであれば毎ターンちょっとデメリットを被るくらいは……と余裕も出てくる。また徳目は出来事モード《ヴァントレスの幻視》としても唱えられる。このインスタントも誘発型能力をコピーするので、これで計略を2倍にしておなかいっぱいになりたいところ。

 デメリットを設けられたカードには必ずや理由がある。そしてそういったカードをデッキに採用することにも理由がある……時にはそのデメリットをメリットに変換するデッキすらある。《強欲の計略》とそれを活かすカードらで構築されたこのデッキのように、最大のデメリットを勝利の鍵とするデッキを組んでみよう。それこそこのリストにも《悪魔の契約》入れたいなぁ!

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