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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

空いている墓地デッキの席、座るはゴルガリ!(スタンダード)

岩SHOW


 2月末、日本もその他多くの国も真冬を迎えているタイミングだ。僕の住んでいる大阪は最低1度とかそんなのだったが、週末にSNSを見ると……友人らが「こっち-15度」みたいな投稿をしていてヤベェなぁと。彼らの言うこっちとはアメリカ合衆国の都市シカゴ。マジックの祭典、マジックコンと場内で開催されるプロツアーへと日本からマジックプレイヤーが旅立ち、シカゴの寒さに驚いている様子だった。風邪だけは引くなよ、欲を言えばプロツアーで活躍してくれと願いつつこっちはこっちで週末を過ごしていた。

 シカゴと言えばプロツアーの歴史においても重要な地で、名勝負が繰り広げられた舞台だ。そんなシカゴでは『霊気走破』のドラフトとスタンダードで熱戦が繰り広げられた。当コラムとしてはスタンダードで新しいデッキが存在感を示すのを楽しみにしていたが……新たな戦術を用いるデッキがプロツアーサンデー、即ち決勝ラウンドまで勝ちあがっており、大いにワクワクさせられた。では早速そのリストをチェック!

ゼヴィン・フォースト/Zevin Faust - 「ゴルガリ墓地利用」
プロツアー『霊気走破』トップ8 / スタンダード(2025年2月21~23日)[MO] [ARENA]
3 《ラノワールの荒原
4 《花盛りの湿地
4 《ウェイストウッドの境界
4 《地底の遺体安置所
4 《
1 《
-土地(20)-

4 《脱皮の世話人
4 《陥没穴の偵察
4 《かじりつく害獣
4 《迷いし者の魂
4 《ベイルマークの大主
2 《苦難の収穫者
2 《キチン質の墓地歩き
4 《虚ろなる匪賊
4 《鞘破りの群れ
-クリーチャー(32)-
4 《やり場のない悔恨
4 《豆の木をのぼれ
-呪文(8)-
1 《切り崩し
3 《恐怖の潮流
1 《苦難の収穫者
1 《強迫
4 《屑鉄撃ち
2 《機能不全ダニ
2 《強情なベイロス
1 《飢えた亡霊
-サイドボード(15)-
 

 このデッキは……ゴルガリ(黒緑)カラーの墓地利用デッキ。プロツアーまでその存在は秘匿されてきた、まさしくダークホース!《ベイルマークの大主》を搭載し、これで墓地にカードを送りながらクリーチャーを手に入れる。そうやって確保するのは……他のデッキでほぼ目にすることがない《鞘破りの群れ》や《虚ろなる匪賊》といった、墓地参照クリーチャー!これらは設定されたマナコストが無茶苦茶重いが、墓地のクリーチャーの数だけコストが軽減されるという能力を持っている。そのため現実的なコストで唱えることも決して夢物語ではない。特に匪賊は手札破壊だけでなくドローも狙えるのが使ってビックリ、かなりの高性能。鞘破りもえげつないサイズとキーワード能力を併せ持ち、しかも墓地が追放されてもそれらのカードを参照してコスト軽減されるのが偉すぎる!

 これらを戦場に連続で送りだせれば自然と勝利は近づいてくる。その性質上、クリーチャーを多く必要とするので《陥没穴の偵察》《かじりつく害獣》といったカードでデッキを墓地に送り込んでいくことになる。そうすればおのずと《迷いし者の魂》もデカくなる。というわけで見た目以上にムキムキマッチョなパンチの効いたデッキだ。

 

 非クリーチャー呪文がメインでは2種8枚という構成も潔くてなんだかグッとくる。クリーチャーらの除去に用いるのは《やり場のない悔恨》。5マナと重いが、墓地のクリーチャーの数だけコストが軽減されるので黒マナ1つだけで唱えることも容易い、インスタントでクリーチャーの対象が限られておらずさらにプレインズウォーカーも追放できるので、パフォーマンスを最大限まで引き出せればかなりの優秀除去として機能する。そしてこの悔恨や、コスト軽減されるクリーチャーらと相性抜群なのが……《豆の木をのぼれ》!コスト軽減カードとこれを組み合わせておけばとりあえずはデッキになるというレベルで、様々なところからお呼びがかかるこの1枚。このゴルガリでも実に20枚の呪文がドローを誘発させるため、常に手札を切らさずに補充しながら、墓地をカウントするカードで戦っていけるのである。

 

 さて、このデッキの誕生を促した『霊気走破』のカードの確認といこう。そのキーカードは《脱皮の世話人》!この昆虫はライブラリーを切削する能力、そして墓地からカードを追放して1マナ加える能力とを持っている。切削は1枚のみと爆発力はないが、タップするだけで起動出来て毎ターン繰り返し使えるという点で実は稀有な存在だったりする。墓地を一気に追放されたとしても、またコツコツ世話人で貯めていけば復旧できる。そしてマナ加速も条件付きとはいえエライ!単純にマナクリーチャーとして見れば《ラノワールのエルフ》の方が優れている点が多いが、先述の墓地肥やし役がいざという時にマナも出せるというのが素晴らしい。これが1マナというのが何よりも拍手ものだね。

 また墓地参照クリーチャーの追加枠で《キチン質の墓地歩き》も採用。クリーチャーだけでなくアーティファクトも参照してコストが軽減されるので、今後デッキ構築の幅が拡がりそうな予感もさせてくれるね。

 

 最後にこのダークホースがプロツアーで大きな結果を残したことについて……キーとなったのは参加者の大半が過剰なまでの墓地対策を用意しなかったこと、これが大きな要因になったと考えられる。現スタンダードの墓地対策と言えば《除霊用掃除機》であり実際にプロツアーのデッキリストをザザッと見てみると……サイドの墓地対策はこれか、あるいはもう用意しないかというような具合。《虚空の力線》の採用枚数はゼロだ。プロツアーという競技マジックの最高峰の舞台で、墓地に大きく依存したデッキは少ないという予測が主流となり、このような形になったのだろう。

 実際にこのゴルガリを使用していると、対戦相手が掃除機を出してきても、さして脅威には感じない。なぜならこのデッキは墓地に特定のカードが落ちるのを望んでいたり墓地のカードを対象に取ったりはせず、ザックリとクリーチャーやその他のパーマネントの枚数を数えるのみ。なので掃除機1枚で毎ターンちまちま1枚消されようが、ベイルマークなどでそれよりも多くの量を供給すれば何の問題もなく戦えてしまう。逆に《温厚な襞背》のような一気にすべて追放するタイプの墓地対策は苦手だ。このデッキは墓地利用デッキが少ない環境に置いて、その空いている席に腰を下ろしたことで高みに到達したわけだ。

 今後、墓地へのガードが上がると今回のような戦果を得られるとは限らない。が、《鞘破りの群れ》のように墓地対策を乗り越えるカードもある。今後対策されつつも勝てるデッキになるのか、それともまた忘れられた頃に爆発するのか?行く末が楽しみなデッキ筆頭だ。墓地利用デッキという席、空いてるなら座ったもん勝ちだ!

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