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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

その謎の笛は何を呼ぶ……ディジュリドゥ・スティル(レガシー)

岩SHOW

 ディジュリドゥを知ってるかい?ディジェリドゥ、ディジャリドゥとか呼び方にちょっとした違いはあるかもしれないが、そこはまあ置いといて。ディジュリドゥはオーストラリアの先住民、アボリジニーの方々の伝統的な楽器だ。

 ディジュリドゥは簡単に言えば長い笛。地につけた状態のものを座って吹く姿が独特なこの楽器は、その素材もオンリーワンの面白さ。ユーカリの木を用いるのだが、これが実にオーストラリアらしく、シロアリによって中を喰い尽くされて空洞の筒状になった木をそのまま笛にしちゃおうという、ワイルドなものだ。自然に食われた枯れ木を用いるのが主流だが、人の手で食わせたものを使うという手法もあるらしい。

 この筒の表面にアボリジニー文化特有のアートを施してあるものがとてもカッコイイ。その音色も何とも表現が難しいが、振動が効いたサウンドは妙な心地よさでクセになる。ちなみに独特なその名称は、入植してきた白人らがつけたもので元来の名前は各々のグループで異なるものとのこと。っておいおい、マジックの公式サイトで一体何の話をしてんだと。

 

 いやいや、マジックにもあんのよディジュリドゥが。その名もまんま《Didgeridoo》!確かにイラストにはこれぞディジュリドゥという笛を吹く人物が描かれている……そして奥からはこちらにやってくるミノタウルスの姿も。このイラストはまんまこのカードの効能を表しており、このアーティファクトは{3}を支払うことで手札のミノタウルスを戦場に出すことができる。

 ディジュリドゥとは本来精霊と交信するための儀式に用いるとのことで、エレメンタルが出せればそれらしくもなるが……なぜこれで牛人を呼び出せるのか、謎が多いがその点も実にマジック初期のカードらしくて素敵だなと。ミノタウルスの選択肢が少なかったころはこのカードでわざわざ戦場に出したところで……というものであったが、高コストの強力なミノタウルスが出現したことで注目を集めるように。レガシーではこれを用いるマニアックなデッキが一部のファンの心を掴んで離さない。そう、その音色に魅入られた人々がいるように……というわけで今回はディジュリドゥの音色で牛を呼び寄せて戦うレガシーのデッキを取り上げよう。この構成が……マジですごい。

Kojima Chihiro - 「ディジュリドゥ・スティル」
静岡クイックイベント 3-0 / レガシー (2025年1月8日)[MO] [ARENA]
4 《溢れかえる岸辺
2 《霧深い雨林
1 《Tundra
2 《行き届いた書庫
3 《古えの墳墓
4 《ウルザの物語
1 《平地
2 《
-土地(19)-

4 《アクームの怒り、モラウグ
4 《ボロスの布陣者
-クリーチャー(8)-
3 《剣を鍬に
1 《朦朧への没入
2 《呪文貫き
1 《狼狽の嵐
2 《否定の力
4 《意志の力
4 《渦まく知識
4 《思案
3 《悟りの教示者
3 《行き詰まり
4 《Didgeridoo
1 《溶岩拍車のブーツ
1 《水蓮の花びら
-呪文(33)-
2 《虹色の終焉
2 《神秘の論争
1 《精神壊しの罠
1 《剣を鍬に
1 《悟りの教示者
2 《安らかなる眠り
1 《墓掘りの檻
1 《真髄の針
1 《攪乱のフルート
1 《浄化の印章
1 《石のような静寂
1 《Helm of Obedience
-サイドボード(15)-
晴れる屋 より引用)

 

 

 青赤白の3色、ジェスカイ・カラーのコントロールデッキなわけだが……そこに見えるは《行き詰まり》!このエンチャントは、プレイヤーが呪文を唱えると能力が誘発、これを生け贄に捧げて、そして呪文を唱えたプレイヤーの対戦相手はカードを3枚引く。これを置いておけば対戦相手が動けば手札をたんまり得ることができる、コントロールにとってはこの上ないごちそう。ただしこれを置いている限りは何かを唱えて攻めることも出来ないので、にらみ合いになってしまう……昔はこのエンチャントと《ミシュラの工廠》のような土地を組み合わせて、相手をコツコツ攻めて嫌がったらカードをドカッと引いて戦う、そんな長期戦向けの「ランド・スティル」というデッキが頂点を極めていた時期もあった。

 そして久しぶりに眼にしたスティル系デッキがこの「ディジュリドゥ・スティル」。《Didgeridoo》なら呪文を唱えずにミノタウルスを繰り出せる!これで攻撃して対戦相手を圧倒、嫌がって動いてきたら3枚ドローで打ち消しを手に入れたり、次なるミノタウルスをチャージしたり……このデッキからしか得られない栄養素がありそうな、なんともそそられる戦術である。

 そして肝心の《Didgeridoo》から繰り出すミノタウルスは《アクームの怒り、モラウグ》と《ボロスの布陣者》。モラウグは全ミノタウルスの中でもトップクラスの攻撃性を誇る。クリーチャーが攻撃する度にそれのパワーを上昇させる能力、そしてメインフェイズ中に土地を戦場に出すことで、追加の戦闘フェイズを得ることができる……この《連続突撃》的な能力がマジで強い!《溢れかえる岸辺》など、1枚で土地が2枚戦場に出ることになるフェッチランドと組み合わせれば……1ターンに2度3度と攻撃を繰り返し、パワーが膨れ上がった猛ラグで一気にフィニッシュまで持っていける。

 布陣者はモウラグほどの猛攻を見せはしないが、戦場に支配という点では天下一。各戦闘で攻撃orブロックするクリーチャーを選び、そして攻撃orブロックしないクリーチャーを選ぶという、戦闘を完全にコントロールする強烈な能力を持っている。対戦相手の盤面に布陣者らよりも戦闘面で劣るクリーチャーがいるなら、強制的に攻撃かブロックに参加させることで叩き潰すことが可能だし、《引き裂かれし永劫、エムラクール》みたいな激ヤバなヤツはこっちくんなと完封できる。地味ながらむっちゃ強いんだよな、コイツ。

 

 上記のミノタウルスを《Didgeridoo》から繰り出し、《行き詰まり》で蓋をする「ディジュリドゥ・スティル」。このデッキの選択肢を増やす1枚が《ウルザの物語》だ。これはクリーチャー・トークンを生成できるため、《行き詰まり》後のフィニッシャーになり得る。さらに{0}{1}のアーティファクトを持ってこれるので、肝心かなめの《Didgeridoo》をサーチ!これだけでも強そうだが、ミノタウルスを繰り出すことが既に可能な状況であれば《溶岩拍車のブーツ》を持ってくるのがオススメだ。これを装備したクリーチャーは速攻を持つため、モウラグが飛び出てブールはいて殴って、追加の戦闘フェイズを得て……と一瞬で相手のライフを削り切ってしまうことも。構築物・トークンに装備させても良いし、護法がつくのでちょっとした除去耐性も得る。《Didgeridoo》やブーツが手札に来たら《渦まく知識》でライブラリーに押し込み、物語のⅢ能力でこれらをサーチすることでちょっとしたアドバンテージをGET。うーん、よくできてるぜ。拍手!

 唯一無二の挙動を見せる《Didgeridoo》。マジックには色んな意味で本当に面白いカードがあることを再認識させてくれる、そんな素敵なアーティファクト。マジックを通して様々な文化を学べる、さあお子さんにも推奨のゲームですよ!マジックで世界を知ろう!

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