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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
エスパー・ピクシー:派手さはないけど、おせちのようなデッキ(スタンダード)
改めまして、2025年。今年もマジックが皆に最高の時間をもたらしてくれますように。お正月も堪能してたかな?どこ行った、何買った、そうそうおせちはどうだった?おせち食べてない?まあそういうのもあるか。
お正月に料理をするのを休むため、前もって作り置きしておける、火を通して砂糖を用いたおかずを中心に構成されるのが伝統的なおせちだ。そういったベースがあるため、脂がのった肉や鮮度の良い海鮮が……というようなパンチが効いているわけではない。煮しめ、田作り、黒豆……ストレートに言えば、地味。単体で強力な寿司やピザやすき焼きやらに比べると、あまりにも力不足。今の日本ではおせちを食べる文化もグッと薄まっているのもやむを得ないか。ぼくは子どもの頃から食べ物の好き嫌いがなく出されたものはなんでも全部食うという生態をしているので、おせちにどうこうということもなかったが……親戚の子らがあまりテンションが上がっていないのを見て、それもわかるなとは思ったものだ。なのでうちのお正月では子どもウケの良いメニューも供されていた。まあ皆それを美味いと思うしそっちが主役だ。
でも年月が過ぎていって……自分が正月の準備をする側になった時。なんだかんだで地味で小粒なおせちの構成パーツを仕込んでいる。派手さやパンチはなく、主役ではないかもしれない。でもそういったシブい、仕事人系のものが集まることで、おせちはなんだか特別な存在になる。ほら、マジックでもそうじゃない。1枚1枚を別々で評価すると弱いカードの集まりが、得も言われぬ極上のデッキを生み出す。今日のデッキはスタンダードのおせち的な逸品、「エスパー(白青黒)ピクシー」。
3 《アダーカー荒原》 4 《地底の大河》 3 《コイロスの洞窟》 4 《金属海の沿岸》 4 《闇滑りの岸》 4 《秘密の中庭》 -土地(22)- 4 《養育するピクシー》 4 《呑気な物漁り》 4 《悪意ある呪詛術士》 4 《孤立への恐怖》 -クリーチャー(16)- |
4 《望み無き悪夢》 4 《逃げ場なし》 4 《幽霊による庇護》 4 《嵐追いの才能》 2 《税血の刃》 4 《この町は狭すぎる》 -呪文(22)- |
2 《胞子形成感染》 3 《邪悪を打ち砕く》 2 《喝破》 2 《今のうちに出よう》 2 《行き届いた採掘》 2 《安らかなる眠り》 2 《覆われた羊飼い》 -サイドボード(15)- |
○○ピクシーデッキはスタンダードにて《養育するピクシー》のこと。このピクシーは1マナにして2/2飛行という高スペックになるポテンシャルの持ち主。それを引き出すためには、これが戦場に出た時に他のパーマネントを手札に戻す必要がある。なので1ターン目にベストコンディションでというわけにはいかないが、2ターン目以降の早いターンに展開できれば小粒ながら確実にライフを削り取ってくれることだろう。
しかしながらこの能力はパーマネントを手札に「戻せる」というポジティブな能力ととらえることも可能だ。ピクシーのように戦場に出た時に能力を誘発させるパーマネントと組み合わせると、その能力を再利用できるためデメリットどころかメリットになったりする。《望み無き悪夢》を出して戻してと動けば、このどうでもいいようなエンチャントが複数店のライフと手札をさらっていく、強烈なジャブに早変わり。《税血の刃》などこういった軽量のパーマネントで対戦相手を妨害しつつ、それをピクシーで戻して再利用。このか細いカードを太く使う戦い方戦い方、これぞ玄人好みの大人の味。いかにもおせちって感じだ。
最近流行りのエスパー型は、エンチャントをふんだんに取り入れていることが特徴だ。軽いエンチャントをポンポンと展開、それにより《呑気な物漁り》の能力を誘発させることを狙っている。エンチャントが戦場に出るとクリーチャーに+1/+1カウンターを乗せる、この能力を駆使してピクシーらクリーチャーの打点を高めて、速攻で押し切ることを可能にしてくれる。この物漁りを、ピクシーに寄るエンチャントの出し入れでフル回転させることで、瞬く間に対戦相手のライフを0にする……ピクシーはカラーリングやカードチョイスからはイメージにしにくいが、実はグイグイ攻めるアグロデッキなのだ。物漁りやピクシーとの相性の良い《悪意ある呪詛術士》を筆頭に、《逃げ場なし》《幽霊による庇護》などを用いていざ勝負!
ここで注目すべきが《孤立への恐怖》。これは唱える時の追加コストでパーマネントを手札に戻す、ちょいデカのピクシー。これでエンチャントを使いまわすのはもちろん、これ自身もエンチャントでもあるので、物漁りのカウンターをばら撒きを一気に加速させる。タフネスも高く、+1/+1カウンターを1つ乗せればかなりの安心感。この恐怖とピクシーでエンチャントの本質を限界まで引き出す!
最近スタンダードの定番になっている組み合わせに《嵐追いの才能》と《この町は狭すぎる》がある。これらのユニットがこの「エスパー・ピクシー」にも搭載されている。才能は1マナと軽く、カワウソ・トークンを生成してくれるので戻して出し直すことでクリーチャーの頭数を増やせる。レベル2になれば墓地のインスタントかソーサリーを手札に戻せる。これで狙うのはもちろん《この町は狭すぎる》。このインスタントはパーマネントを2つオーナーの手札に戻す。自身のものを1つでも対象にしていればそのコストは{3}も軽減される。これで自身の才能を戻しつつ相手のパーマネントをどかす、という動きが強力だ。戻した才能からさらにカワウソを展開しつつ、レベルアップでこの町を回収だ。この町で戻すのは勿論他のパーマネントでも構わないので、その時々でベストなものを戻して美味しく使いまわそう。
どうかな、ド派手なドラゴンやデーモンや天使が火花を散らすデッキではないのだが……こういう地味シブのおせちのごときテクニカルデッキ。マジックを続けているとこういうのも良いものだって感じられるようになってくる。小粒なカードたちが集ってこそかなでるハーモニー、ぜひご賞味あれ。
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