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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
今週のCool Deck:繁殖鱗コンボ“Brood & Blood”(モダン)
今週もやってきました金曜日。マジックのカードやデッキを「クール」を第一に語るCool Deckのお時間だ。さて、今週はクールな思い出話。
その昔、プレイヤー自身がマジックの背景世界の登場人物になりきれるカードが配布されたのを知っているだろうか。それはヴァンガードと呼ばれる大判カードのシリーズで、ジェラードやスクイー、カーンなど背景世界の重要キャラクターが描かれている。
ヴァンガードを用いた対戦では、デッキの他にこのヴァンガードを1枚選び、プレイヤーはそこに書かれている恩恵を得る。ゲーム開始時の手札やライフ総量はキャラクターによって異なり、枚数やライフが増えるものもいればむしろ減ってしまうものもある。そしてそれぞれにそのキャラクターらしさを実感できる能力を持っている。お馴染みのカーンになれる《Karn》であれば、アーティファクトがクリーチャー化する、といった具合だ。これが通常の対戦とは異なるクールなもので、なかなか面白い。友人らとヴァンガードをランダムに配った後にドラフトなどして夜通し遊んだものである。実にクールな思い出だ。
このヴァンガードの中でも一際クールで人気が高いのが《Sliver Queen, Brood Mother》だ。《スリヴァーの女王》をモデルとしたこのカードは、イラストも素晴らしくクールで、同カードを再現した能力もイカす。この女王のヴァンガードはかつてマジックを取り上げた漫画でも登場した。当時の読者だったプレイヤーは記憶に残っていることだろう。その際にこのカードは「ブラッドマザー」として紹介された。しかしこれはおそらく「Broodmother」を「Bloodmother」と誤読したものであり、「ブルードマザー」と表記した方が適切だろう。broodとは卵やひよこなどの子どもたち、繁殖のために卵を抱える様子、種族や品種などを意味する。スリヴァー種族の子ども達の母という意味合いになるね。ただ日本人の感覚だと、ブラッドでも血統の母親のような響きに聞こえて違和感がないかも。クールなカードにクールなエピソードが付随して、忘れられない1枚となっている。
今回はこのBroodとBloodのエピソードを想起させるデッキを紹介しよう。どういうことかって?それはキーカードを見ればわかるよ……
4 《虹色の眺望》 4 《エルドラージの寺院》 2 《燃え柳の木立ち》 1 《ラノワールの再生地》 2 《耐え抜くもの、母聖樹》 1 《変容する森林》 4 《ウルザの物語》 4 《森》 1 《荒地》 -土地(23)- 4 《喜ぶハーフリング》 1 《機能不全ダニ》 4 《日を浴びる繁殖鱗》 4 《まばゆい肉掻き》 3 《歩行バリスタ》 -クリーチャー(16)- |
1 《バネ葉の太鼓》 4 《古きものの活性》 4 《邪悪鳴らし》 4 《コジレックの命令》 4 《一つの指輪》 4 《血の長の刃》 -呪文(21)- |
2 《四肢切断》 3 《存在を盗むもの》 1 《機能不全ダニ》 1 《真髄の針》 1 《宝石の洞窟》 1 《魂標ランタン》 2 《魂なき看守》 3 《夏の帳》 1 《苛立たしいガラクタ》 -サイドボード(15)- |
これはモダンのコンボデッキだ。そのパーツを形成するのは《日を浴びる繁殖鱗》と《血の長の刃》。これらは英名がそれぞれ「Basking Broodscale」「Blade of the Bloodchief」であり、Brood ○○とBlood ○○がデッキリストに並ぶ光景が、先述のクールなエピソードを思い起こさせるというものだ。
《日を浴びる繁殖鱗》は+1/+1カウンターが乗るとエルドラージ・末裔を生成する。《血の長の刃》はクリーチャーが死亡する度に、装備しているクリーチャーに同カウンターを乗せる。繁殖鱗にこの刃を装備させると……カウンターが乗って末裔生成→末裔を生け贄に捧げて無色マナを加える→生け贄=死亡で刃が誘発、繁殖鱗にカウンターが乗る→カウンターが乗ったので末裔を生成……と好きなだけループさせることが可能になる。
クリーチャーと装備品2枚で無限コンボ、しかもどちらもマナ総量は2以下、装備コストさえ{1}と軽い。コンボ始動は繁殖鱗にカウンターを置くか、各種カードから得られる末裔を生け贄に捧げることで行う。繁殖鱗自身が自分にカウンターを乗せる能力を持っており、コンボパーツをかき集めるための《邪悪鳴らし》で末裔も手に入るので、ハードルは高くない。総評すると、このコンボは間違いなくクールだ。
さて、無限に末裔を生け贄に捧げれば繁殖鱗が無限に育つ。肥大化したところで攻撃してライフを0に……できるなら理想的だが、そこはそうもいかないことも。なのでこのループを活かして勝利に繋がるカードを採用しておくことがスマートかつクールなやり方だ。まず末裔を生け贄に捧げ続けることで得た無限のマナで《歩行バリスタ》。ありったけのマナから唱えて、これに乗ったカウンターを投げつけて1点ダメージをガトリング砲のごとく連打する。無限マナ定番の一手だ。
それから末裔がうじゃうじゃと発生することを利用して、《まばゆい肉掻き》で勝つ方法。無色のクリーチャーである末裔が戦場に出ることで肉掻きが誘発、対戦相手に1点ダメージ。これまたバスバスとエンドレスで撃ち込まれ続ける。この能力は対象を取らないので《神聖の力線》などを置かれても安心。また肉掻きがいる状態で繁殖鱗や刃を唱えることで末裔が生成されるので、コンボのスタート役も兼ねているのが一層クールだ。これらのフィニッシュを持っていない状態でコンボを初めても問題はない。《コジレックの命令》でライブラリーを全て占術で並べ替えて、一番上にこれらのカードを持ってきてドローすれば解決だ。命令は除去であり、これまた末裔を並べるマナ加速でコンボの切り口にもなる。非常に優秀な1枚としてこのデッキでもクールな存在感を放っている。
BroodとBlood、その昔混同されたフレーズが最新のデッキで並び、しかも強力なコンボを成立させる。マジックの長い歴史が生んだクールな現象だ。繁殖鱗コンボも、ヴァンガード戦も、楽しくクールなゲーム体験になるのでぜひとも遊んでみて欲しい。それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Brood your deck!!
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