2つあるのは良いことだ。ピザのハーフ＆ハーフ、カレーの合いがけ、お寿司も２貫並んでると嬉しい。二刀流、二段構え、タッグチーム……2つってクールだ。マジックのカードやデッキをクールという観点を第一に語る当コラム、今週のCool Deck。ここでは何かが2つあるのはクールである、と言い張ろう。たとえば『ファウンデーションズ』にはあの人気カードが。

　《倍増の季節》……カウンター及びトークンの数を倍にするエンチャントだ。1つのトークンを生成する？そういわずに、2つあれば安心だから持ってきな。カウンターも1個1個ちまちま置かずに2個いっとこう！そんな大盤振る舞いっぷりが楽しい大人気のクールカードだ。１つだと、失敗した時に0になってしまう。2つならまだ1つが残る。この精神はマジックのプレイでも重要だ。今回紹介するデッキは、2つのプランを持ち、どちらかが決まれば良いというスタンスのもの。1つのプランを囮に、もう片方を成立させても良い。ダブルでクールなデッキの登場だ！

　スタンダードの黒単……おいおい、デーモンか？とお思いの方、まあまあそうあっせんなよ！確かにこれは今やお馴染みのデーモン系のデッキだ。《止められぬ斬鬼》は対戦相手のライフを半分失わせる、凄まじいダメージ効率を誇る。この斬鬼と共に《アクロゾズの放血者》をコントロールしていると、斬鬼が対戦相手に戦闘ダメージを与える→斬鬼の能力が誘発、対戦相手のライフを半分失わせる→放血者により対戦相手が失うライフは倍になる。つまり、ライフが18点あるとすれば、その半分の9点失うのが倍になって18点……つまりたった1回の誘発で対戦相手のライフを0に。一体何点のライフを持っていようとも、このコンボが決まれば問答無用の勝利確定。放血者はデーモンなので《不浄な別室》との相性も良い。このエンチャントはデーモンをコントロールしていると、相手のライフ2点を失わせる。個のライフルーズも倍になるので、かなりの痛手になる。コンボが決まらずとも、斬鬼やデーモン関係のカードで攻めて殴り勝てる、そんなデッキはスタンダードでももう一般的な存在に。むしろ黒単色の構成の方が珍しくなりつつあるのかもしれないくらいだ。

　それだけでクール、というのではない。このデッキには斬鬼と放血者以外にもう一つのコンボプランがある。そう、2つあるのだ。１つじゃないってクールなことだぜ。

　コントローラーがライフを得た時、対戦相手にそれに等しいライフを失わせる《永劫の不屈》。これ自身ではライフを得ることは出来ないので他のカードの力を借りなければならないが、本来防御的にしか機能しないライフを得るという行為を攻めの一手に変換する、貴重な能力を持っている。この不屈と相性の良いライフ回復カードを探すと、『ファウンデーションズ』の新規カードこそ最高のタッグパートナーだ。この吸血鬼は、対戦相手がライフを失うとこちらがその点数分ライフを得られる。先述の不屈と全く逆の能力で、こちらは「攻撃は最大の防御」という格言を実現してくれるものだ。

　……ってことは、この2体が並ぶとどうなるか？不屈と征服者がともに戦場にいて、攻撃するなどして対戦相手のライフを失わせると…征服者の能力が誘発して、ライフを得る。ライフを得たので不屈が誘発、ライフを失わせる。ライフを失わせたので征服者が……という具合に、ライフを得て失わせるループが発生。相手の妨害がなければあとは放っておくだけで対戦相手のライフが0になる。こちらも斬鬼×放血者と同じくクリーチャー2体で決まる必殺コンボだ。

　デッキ内にコンボが2つある、これは素晴らしいことだ。もし何らかの方法で……たとえば《叫ぶ宿敵》の能力でライフを得られなくなった場合。《永劫の不屈》でライフを失わせることができなくなってコンボは不成立になるが、《アクロゾズの放血者》と《止められぬ斬鬼》の動きにはそれは全く関係ない。ベクトルが異なるコンボをセットにすることで、対策されにくくする。こういったデッキ構築こそ勝率を高めるクールなテクニックだ。それに例えば斬鬼で相手のライフを大量に失わせれば、《血に飢えた征服者》で大回復を狙える、という具合にコンボパーツ同士でもちょっとした噛み合いが発生しているのがよりクールだ。デッキ1つに2つの勝ち筋、そうすれば数えきれないほどのクールな体験ができる。さあ、コンボを2つ合体させてみよう。

　それじゃあ今週はここまで。Stay cool! 2 cool is too cool!!