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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:コーマをコーナと秘宝で……スゥルタイ・レジェンズ(スタンダード)

岩SHOW

 マジックのカードやデッキをクールさを第一に語る、今週のCool Deck。今回は久しぶりにリリースされた基本セットである『ファウンデーションズ』について。このセットを見て懐かしいと感じるのは……次元や時系列など関係なく集められたカードで構成されているからだろう。

 かつての基本セットは再録カードのみだったので、その傾向が強いものだった。いつしか基本セットも新規カードを含むようになり、基本と言えど特定のキャラクターを主役にしてストーリー要素も備えるようになり、セット内の次元や時系列が同じベクトルに向かう形が主流になっていた。一度完全に途絶えた基本セットであるが、この度『ファウンデーションズ』として復活。このセットは本当に時間や次元に縛られていない。

 

 たとえば《戦慄衆の将軍、リリアナ》、黒のプレインズウォーカーの枠を担っているこのカードは……ニコル・ボーラス側で戦慄衆なるゾンビを率いていた頃のリリアナで、『灯争大戦』の頃の姿なので時系列的には少し前のものになる。この戦慄衆という固有名詞がついているため、背景ストーリーがしっかり設けられている通常のセットに再録することは難しい。しかしストーリー色がほとんどない基本セットであれば、何も気にせずに再録することが可能というわけなのである。これって改めてクールなことだな。基本セットは時空を超える。

 

 『ファウンデーションズ』に新規カードで収録されたキャラクターが複数いるが、その中でも注目したのはコーマだ。《世界を喰らうもの、コーマ》として、カルドハイム次元における最大の脅威としての姿がカード化されている……のだが、これはもしかしたら今のコーマの姿というわけではないのかもしれない。

 というのも『機械兵団の進軍』の背景ストーリーにて、新ファイレクシアがカルドハイムに侵攻した際にコーマはこれの侵蝕を受け、完成化。機械兵団、鋼の徒党の一員となって次元の住民に襲い掛かったのだ。しかしタイヴァーやフィンといった面々が活躍し、機械化したコーマは倒された……というところまで判明している。そこから尋常ならざる生命力で復活した姿なのか、それともリリアナのように過去の姿を収録しているのか。こういった背景を知る人間に色々なことを考えさせている時点で、このカードの収録はクールな出来事であったわけだ。

 そしてカードとしても、ロマンあふれる仕上がりだ。8/12というわけのわからない比類する者のないサイズ、打ち消されず護法のコストも{4}と重くて対策されにくく、トランプルで攻撃を通しやすい。そして対戦相手に戦闘ダメージを与えたら《コーマの分体》なるトークンを生成。蛇の頭がニョキニョキ生えてくるわけだ。このトークンは3/3とサイズに優れており、1体でも生成できれば戦闘では大きく有利になるだろう。殴れば殴るほど盤面が強くなっていく、強烈でクールなフィニッシャーだ。

 今回はこのコーマを使ったクールなデッキ案を見つけたので、紹介させていただこう。打ち消せないコーマを頑張って唱えるか、あるいはちょっとしたズルをするか…最もクールなのは両方をやることに違いない。

Incarael - 「スゥルタイ・レジェンズ」
スタンダード (2024年11月11日)[MO] [ARENA]
2 《闇滑りの岸
3 《地底の遺体安置所
3 《迷路庭園
6 《
5 《
5 《
-土地(24)-

4 《ラノワールのエルフ
2 《侵攻の伝令、ローナ
3 《正直者のラトスタイン
4 《救助のけだもの、コーナ
3 《復活したアーテイ
3 《偉大なる統一者、アトラクサ
2 《世界を喰らうもの、コーマ
-クリーチャー(21)-
2 《切り崩し
3 《喉首狙い
2 《怪物的出現
4 《伝説の秘宝
2 《全知
2 《ファイレクシアへの門
-呪文(15)-
Moxfield より引用)

 

回転

 

 というわけでスタンダードの「スゥルタイ(青黒緑)・レジェンズ」をご覧いただこう。3色の中から伝説のクリーチャーをメインに採用し、それらと《伝説の秘宝》を組み合わせる。秘宝は伝説のクリーチャーをタップすることでマナを加えられるので、これで複数体タップすればコーマや《偉大なる統一者、アトラクサ》を唱えるのもイージーだ。特に面白くクールなコンビネーションを発揮するのは《侵攻の伝令、ローナ》。彼女は伝説の呪文を唱えることでアンタップ状態になるので、秘宝でマナを加えて伝説クリーチャーを唱えてアンタップ、またタップしてマナを加えて……と展開力を高めてくれる。本人の手札入れ替え能力を起動しても良いし、変身すると対戦相手にとってかなり嫌なファイレクシアンにもなるしと、なかなかの仕事人である。

 この夏のローテーション以前のスタンダードでは、このエンジンに《正直者のラトスタイン》を添えた「5色レジェンズ」が活躍していた。このリストにもラトスタインは採用されており、「5色レジェンズ」のエッセンスを継承したデッキであることがわかる。ラトスタインで除去などされたクリーチャーを回収、コスト軽減能力を活かして盤面にレジェンドを並べて制圧を目指す。

 

 さて、このデッキの最もクールなパートは……《救助のけだもの、コーナ》!生存能力を持ち、第2メインの開始時にタップ状態であれば能力が誘発。手札からパーマネントを1枚出せるという、かなりの大盤振る舞いだ。4マナにしてはタフネスが控えめの3であり、同等コストのクリーチャーが向こうに立っている中で攻撃を仕掛けてもなかなか生き残れないというのもあってのこの能力なわけだが……攻撃が難しければ、他の方法でタップすれば良いだけの話だ。《伝説の秘宝》でタップする、それだけで何の労力もなく、戦場に出したターンにも能力を誘発させられる。コーナからコーマを降臨させる、そんなダジャレのようなムーブも決まれば相手が青ざめるクールなもの。さらには《全知》というクールさを極めたエンチャントまで仕込んである。コーナから《全知》、アトラクサを唱えて手に入れたカード全部唱えて……無茶苦茶なことが実現する。こんなにクールなこともないよな。さあ、コーナと秘宝で伝説の幕を開けよう。

 『ファウンデーションズ』は基本的なカードが中心となっているセットだが、そこにおけるカードチョイスからは様々なことが読み取れる。時間軸が定まっていないセットの特性を活かして集められたカードたちの中から、好きなものをみつけてデッキを組んで楽しもう。それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Build your foundation!!

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