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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:静岡と同日、海の向こうでは……ヨーリオン・エニグマ(パイオニア)

岩SHOW

 クールな週末が過ぎ去っていった……プレイヤーズコンベンション静岡2024、あっという間のクールなひと時……日本でそのような時間が流れている間、世界のマジックが止まっているわけじゃない。時計の針は同じように動いている。世界中の人々が国や地域を越えて、同じカードに熱狂している。一体何人が何枚のカードをシャッフルしていたのだろう?想像するだけでも世界の広さとマジックの素晴らしさが実感できてクールすぎる。

 というわけでマジックのデッキをクールという角度から取り上げる今週のCool Deck。静岡が最高の週末だったように、同じ時間に世界の皆がマジックを楽しんでいた。たとえば、シンガポールでは東南アジア地区におけるプロツアー権利をかけた地域チャンピオンシップが開催された。静岡で日韓のそれが行われたのと同じようにね。静岡でプロツアー参加権利を獲得した友人を祝福して僕がハグしている時に、シンガポールでも同じような……いやちょっと時差はあるかな。細かいことを抜きにして、マジックで世界は繋がっているってことだ。

 東南アジア予選でもフォーマットはパイオニアだ。そしてそこで上位に入賞したデッキは、日本のそれとは少し異なる結果に。静岡がアグレッシブなデッキたちがバチバチの殴り合いをするようなトップ8の顔ぶれだったのに対し、シンガポ―ㇽでは……日本のトップ8には残なかったアーキタイプが最大勢力となった。それは……

 

 「ヨーリオン・エニグマ」だ。エニグマとは《奇怪な具現》の英名由来の愛称。エンチャントを生け贄に捧げてクリーチャーをライブラリーから戦場に出す、特殊な挙動が魅力の1枚だ。毎ターンの終了時にクリーチャーをエンチャントを生け贄に捧げ、それのマナ総量に+1点したクリーチャーをライブラリーから探し、戦場へ。つまりデッキにはエンチャントとクリーチャーの両方を盛り込んでおく必要がある。そこで《空を放浪するもの、ヨーリオン》は好都合だ。エニグマの餌となるエンチャントをたっぷり採用しつつ、サーチしてくるクリーチャーを様々なものに散らした1枚挿しするのであれば、60枚のメインデッキは少々狭い。なので80枚デッキを構築し、ヨーリオンを相棒に据えるというわけだ。各種エンチャントやクリーチャーの能力もヨーリオンで再利用できるので、デッキの方向性と100%マッチ!というわけでパイオニアでは人気を獲得しているアーキタイプだ。

 東南アジア地域のチャンピオンシップではこれがトップ8に3名入賞。エニグマが最大の勝ち組となることに。それではどんなクールなリストが勝ち上がったのか、見てみようじゃないか。

Justin Chin - 「ヨーリオン・エニグマ」
MTG SEA Championship Final Season 3 Round 1 準優勝 / パイオニア (2024年10月12日)[MO] [ARENA]
2 《ジェトミアの庭
2 《スパーラの本部
3 《ケトリアのトライオーム
3 《ラウグリンのトライオーム
1 《インダサのトライオーム
4 《踏み鳴らされる地
4 《寺院の庭
4 《聖なる鋳造所
2 《繁殖池
2 《ソーンスパイアの境界
3 《ハッシュウッドの境界
1 《天上都市、大田原
1 《耐え抜くもの、母聖樹
1 《平地
1 《
-土地(34)-

1 《秋の騎士
1 《玻璃池のミミック
1 《スカイクレイブの亡霊
1 《忌まわしき眼魔
1 《温厚な襞背
1 《光輝の夜明け、ヘリオッド
1 《跳ねる春、ベーザ
4 《ホーントウッドの大主
1 《機械の母、エリシュ・ノーン
1 《ボイラービルジの大主
1 《聖域の番人
1 《偉大なる統一者、アトラクサ
1 《産業のタイタン
-クリーチャー(16)-
1 《塔の点火
2 《稲妻のらせん
1 《失せろ
2 《ポータブル・ホール
4 《豆の木をのぼれ
2 《ナイレアの存在
2 《真昼の決闘
2 《岩への繋ぎ止め
4 《力線の束縛
4 《鏡割りの寓話
4 《奇怪な具現
2 《咆哮する焼炉 // 蒸気サウナ
-呪文(30)-
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》(相棒)
3 《ドビンの拒否権
1 《チャンドラの敗北
1 《痛烈な一撃
1 《冥途灯りの行進
1 《失せろ
2 《安らかなる眠り
1 《エメリアのアルコン
1 《クレンコの轟音砕き
1 《自由なる者ルーリク・サー
2 《目覚めた猛火、チャンドラ
-サイドボード(15)-
Melee より引用)

 

 

 エニグマデッキは4色以上で組まれ、《力線の束縛》を使う傾向にある。除去として優秀であり、そして重いエンチャントでありながら実質的に1マナで唱えられる。除去した後も戦場に残るため、エニグマの生け贄要員として非常に優秀だ。追放したパーマネントが戻ってくる?《偉大なる統一者、アトラクサ》や《産業のタイタン》といった最強クラスの7マナクリーチャーを得られるなら些細なことだ。

 そしてこの束縛を用いるのを大きく後押しする新カードが参入。《ホーントウッドの大主》だ。この大主はその能力で《遍在地》という土地を生成するマナ加速だ。これはすべての基本と土地タイプを持っている。単に5色土地というだけでなく、基本土地タイプを参照する束縛のコストをこれ1枚で最大軽減してくれるのだ。しかもホーントウッドは3マナの兆候コストで唱えられる。そのコストで戦場に出しても《遍在地》は得られるし、しかもこれで唱えるとクリーチャーのタイプはしばらく持たない状態になり……エンチャントとして戦場に滞在する。つまり、エニグマの餌にしちゃえば良いと。3マナでマナ総量5の生け贄になって、6マナのクリーチャーを引っ張る……こりゃ強いぜ。

 

 6マナ域のクリーチャーには、まずアドバンテージが取れる除去されにくい大型フライヤー《聖域の番人》、そして新カードより《ボイラービルジの大主》を採用。戦場に出るか攻撃すると能力が誘発する大主サイクル、赤は4点ダメージ!除去しても対戦相手に撃ち込んでも強い、パワフルな性能だ。さらにボイラービルジ自身がエンチャントであるため、これをさらに具現の生け贄にして最強格の7マナ域に……という動きも。こういったカードで暴れ回るのはエニグマデッキの醍醐味だな。

 

 さらに『ダスクモーン:戦慄の館』よりエンチャントの新要素、部屋カードからこの1枚。《咆哮する焼炉》は手札の枚数分のダメージを与えるクリーチャー除去。《蒸気サウナ》は手札の上限を失くして、終了ステップの開始時に1ドロー。この2つのエンチャントが1つのカードにまとめられているので使い勝手が良い。どちらかで戦場に出したら、エニグマムーブでクリーチャーに変換しても良い。サウナはエンドにドロー→その後エニグマと解決することで、手札を消費せずに6マナクリーチャーが出せる。あるいはどちらかで戦場に出した後に、ドアを開放してもう片方の能力も用いるという使い方もできる。ここで注意したいのは、ドアが完全に開放された部屋は、両方のコストを足したマナ総量になる。つまりこのカードの場合は7になり、エニグマでは8マナのクリーチャーしかサーチできなくなる。完全開放後はドローソースとして戦場に残す、あるいは8マナのクリーチャーを採用して生け贄に捧げてフィニッシュ……どちらにせよ、他の部屋も合わせて注意して運用したいね。

 世界中で遊ばれているマジック、日本で何かイベントが行われているということは、同じ日に世界のどこかで他のイベントも開催されているということ。海外旅行のついでに遊ぶことができるゲームと考えれば、本当にすごいなと思うよ。皆がこのゲームを通じて他の世界・他の文化を知り好きになってくれることを願って、今週はここまで。Stay cool! See the world!!

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